腎がん(Renal cell carcinoma)
(改訂1997.2.15)
はじめに
がんセンターは1986年4月に前身の成人病センターから名称変更した紹介型のがん専門病院です。病床数は451床で、検診制度、訪問看護制度、緩和ケアー病棟はありません。臨床研究所を併設しています。
最新の治療成績を定期的に検討して、これからの治療方針の再検討および患者、家族への説明に基礎資料にしています。今回の治療成績は、がんセンターなって10年が経過したので、1986年4月から1996年3月までの症例の治療成績です。
現在3名の常勤医師と2名の非常勤医師で毎日(月-金)外来を開いています。泌尿器科では、初診時にアンケートで本人の意思を確認のうえで病名告知を行っていますが、がんセンター全体では50%程度の告知率と考えられています。
図-1 外来新患者数、入院患者数、がん新患者数の推移です。
最近は、年間外来新患者数500名、入院患者数200名、がん新患者数70名です。

図-2 尿路性器がん新患者数の推移
泌尿器科で治療する主ながんは、多い方から、膀胱がん(Bladder tumor:BT),
前立腺がん(Prostatic carcinoma:P.ca), 腎がん(Renal cell carcinoma:RCC)、腎盂尿管がん(Renal
pelvic tumor, Ureter tumor) そして精巣がん(Testicular tumor)です。この10年間で疾患別新患者数にそれほど大きな変化は認められていません。

それでは腎がんについて説明します。
図-3 患者数と特徴、年齢分布
10年間の新患者数は、147名で平均年齢は63才です。男女比は2.7:1でした。患者の住所は、35%が旭区、59%が横浜市西部医療圏でした。17%が重複がん(腎がん以外のがんにかかっている患者)患者で、13%がすでに他院で治療後の紹介でした。
これからの成績は、がんセンターで初回治療を行った124例で検討しました。

図-4 初回治療例の主訴
53%の患者が超音波検査やCT検査で偶然発見されて紹介受診しています。年々増加傾向にありますが、一方でがんセンターの特徴として、転移の症状で発見されて紹介受診した進行がん患者が残りの大部分です。

図-5 腎がんの悪性度、進展度分布と予後
悪性度分類では、G1(グレード1、おとなしいタイプ)では、がん死例は少なく、G2さらに G3にがん死例が認められる。進展度では、早期がんと考えられるS1では症例が少なくがん死例も認められない。S2、S3でもがん死をそれほど認ず、S4では大部分ががん死している。

腎がんの治療法、手術インターフェロン、化学療法(抗がん剤)
腎がんでは原則として腎摘出術が行われる。さらに肺転移巣に対しても外科的な治療法が行われる。残った反対側の腎機能で十分日常生活が送れるので、腎温存療法はまだ一般的な治療方針となっていない。進行がんでも有効な化学療法はいまだ開発されていない。放射線療法も有効性に乏しい。インターフェロンの有効性は20%弱と考えられている。
いよいよ治療成績
図-6 全体の非がん死率(がんで死んだ人だけ死んだとした時の生存率)と生存率(がん以外の原因で死んでも死んだとした時の生存率)
1年非がん死率は84.3%、5年非がん死率は60.3%、10年非がん死率は56.0%、10年生存率は48.9%でした。腎がんでは進行がんが、最初の1年間で死亡して成績が低下するが、5年を過ぎるとがん死例が減少し、成績は比較的良好である。10年後には10人のうち4人ががんで死亡し、1名が腎がん以外で死亡している。

この成績は前立腺がん(10年非がん死率38.1%)、膀胱がん(10年非がん死率83.4%)の中間に位置していることがわかる。(図-8)

図-9 悪性度別10年非がん死率
G1の10年非がん死率は85.9%、G2の10年非がん死率は61.9%、G3の10年非がん死率は0%(9年非がん死率は20.9%)でした。G3では成績の悪いことがわかります。

図-10 進展度別10年非がん死率
S1(直径2.5cm以下のがん)の10年非がん死率は100%、S2(腎臓内にとどまる)の10年非がん死率は94.7%、S3の10年非がん死率は68.0%、S4の10年非がん死率は13.7%でした。S4の成績が非常に悪いことがわかりますがこれは進行がんだからです。局所にとどまる状態で見つかったがんは現在の治療法ではほぼ100%生存しています。

図-11死亡例の検討
腎がん147例のうち、死亡例は67例で、がん死は55例で死亡例の82%、死亡場所では、院内死亡が40例(60%)、他院死亡が17例(25%)、自宅死亡が10例(15%)でした。

まとめ
腎がんは泌尿器科のがんの60才台の代表であり、最近は超音波、CTなどで偶然発見されることが多くなってきている。進行がんの10年非がん死率は不良である。根治的腎摘出術が一般的で、死亡例の大部分が腎がんが原因で死亡している。在宅死亡例は死亡例の15%である。早期がんの成績が良好なことから、今後も超音波検査などで早期に発見される症例が増加することを期待している。ただ患者自身に症状がないので自分ががんにかかったと信じず、治療に同意しない症例がいます。悪性度でG3が不良なことから、化学療法などの治療法の確立が望まれている。腎がん患者の約半数は予後は良好であるが、10年過ぎても再発例があり、再発の有無のチェックの定期的な検査が必要です。喫煙が腎がんの発生頻度を高める可能性が高いので禁煙をおすすめする。
過去10年間の悪性度、進展度別治療成績が、皆様のお役にたてれば幸いである。できたら感想をお願いします。