前立腺がん(Prostatic cancer:P.ca)




目 次

1.前立腺がんとは
2.症状
3.診断
4.前立腺肥大症との鑑別
5.病期(ステージ)
6.治療
1)ホルモン療法 2)外科療法 3)放射線療法 4)化学療法
7.病期(ステ−ジ)別の治療
8.再発
9.治療の副作用と対策
10.治癒率・予後

参考図書



1.前立腺がんとは

  

前立腺の構造

 前立腺は男性にだけある臓器で、前立腺液(精液の一部)をつくる臓器です。これは、膀胱の出口にあり尿道を取り巻くように存在し、栗の実のような形と大きさをしています。ちょうど骨盤の骨(恥骨)の後ろにあるために体の表面から直接触れることはできませんが、直腸に接しているので、肛門から指を入れるとその一部を触れることができます(直腸診)。

前立腺がんの統計

 前立腺がんは、欧米では男性がん死亡者の約20%を占める頻度の高いがんですが、日本では約2.5%と比較的頻度の少ないがんです。しかし、日本でも食事の欧米化および高齢人口の増加に伴い、その発生頻度は増加傾向にあります。ちなみに泌尿器科領域においては、最近膀胱癌を抜いて最も多いがんとなっています。10万人あたりの男性が1年間に前立腺がんにかかる人数は、10人程度ですが、前立腺がん検診を行うと20人前後に上昇するという報告があります。年齢別にみますと、膀胱癌と異なり45歳以下の男性ではまれですが、50歳以後その頻度は増加し、初診時平均年齢は70歳前半です。このように、前立腺がんは高齢者のがんであるといえます。

前立腺がんの発生

前立腺がんは前立腺の中の腺細胞ががん化したものと考えられています。それも外腺といって前立腺の外側から発生する率が高いと考えられています。前立腺がんの約90%は主に精巣(一般にはこう丸)で作られる男性ホルモンにより増殖するという特徴を持っています。そのため、男性ホルモンの作用を抑えることによりがんの増殖を止め、がん細胞の一部を死滅させることができ治療に応用されています。

前立腺がんの原因と予防

 前立腺がんの原因は、未だ明確ではありません。そのため、効果的な予防法も明らかではありません。欧米の報告によると脂肪分が多く含まれている食事を多く摂取することにより前立腺がんの発生が増加すると考えられています。青年期における性生活の頻度も影響するようですがまだはっきりしたことはわかりません。喫煙との関係を現在検討中です。

2.症状

 前立腺がんは前立腺の外側の腺上皮から発生する率が高く、初期にはほとんど症状がありません。ですからこれまでは、前立腺がん患者の多くはがんが進行してから見つかっていました。前立腺が尿道を囲むように存在しているためやがてその増殖により尿道が圧迫されるとさまざまな症状がみられるようになります。症状としては、排尿困難(尿が出にくい)、頻尿(尿の回数が多い)、残尿感(排尿後、尿が残った感じがする)、夜間頻尿、尿意切迫(尿意を感じるとトイレに行くまでに排尿を我慢できない状態)、下腹部不快感など前立腺肥大症と同様な症状があげられます。がんがさらに増大すると排尿困難が悪化し尿が出なくなって(尿閉)しまいます。がんが尿道または膀胱に浸潤すると、膀胱刺激症状が強くなり尿失禁状態や肉眼的血尿が認められるようになります。また、前立腺がんは進行するとリンパ節や骨に転移しやすいため、それに伴った症状がみられるようになります。リンパ節に転移した場合は足がむくんだりします。骨転移しやすい部位は骨盤骨と腰椎、胸椎があげられ骨に転移した場合には、その部位の痛みを生じることがあります。

3.診断

 前立腺がんの診断で従来より行われている方法には、直腸診があります。これは、肛門から直腸の中に指を入れて、前立腺の状態を調べる検査です。指の感覚により、前立腺表面の不整の有無、硬さ、周囲との境界、痛みの有無などを検査します。前立腺がんの初期の段階では、硬いしこりとして前立腺内に触れます。がんが進行していくと前立腺全体が硬く、表面が不整になり、さらに進行すると前立腺と周囲との境界が不明瞭になります。炎症がなければ、多くは痛みがありません。直腸診は泌尿器科では普通の検査ですが、患者の醜恥心から一般の内科では行われず、またいくぶん経験が必要です。直腸診とならんで、最近の重要になった検査は、前立腺の腫瘍マーカーで血液中の前立腺特異抗原(PSA)の測定です。PSAは、非常に鋭敏に前立腺がんの存在を検出できる血液検査です。がんの進行とともにPSA値も上昇し、病期までも予測することができます。そこで最近は前立腺癌の検診に利用されています。しかし、PSAは前立腺肥大症、前立腺炎、尿閉でも上昇することがしばしばあります。そこで、前立腺の大きさとの比率や時間の経過などで補正してより正確な診断法として利用する努力が続けられています。最近経直腸による超音波検査も普及してきました。これは、肛門より超音波の機械をいれて直腸を通して前立腺の状態を調べます。正常の時は前立腺は左右対称であり、前立腺内の各領域の境界が判別できます。がんになりますとその多くは正常部位と異なる像がみられ、左右不対称や各領域が不鮮明になることが多く見受けられます。さらに進行した場合には、前立腺と周囲組織との境界が不鮮明になり、周囲への浸潤が疑われます。ただ直腸診と同様 醜恥心の問題と検査する人の経験が必要です。これら3つの方法により前立腺がんの疑いは診断できますが、確定診断となりますと、穿刺吸引生検法や経直腸または経会陰的針生検にて、前立腺の組織を採取し、顕微鏡で検査する組織診断をしなければいけません。組織診断で大切なのは局所の広がりの診断と悪性度の診断です。悪性度は高分化(1)、中分化(2)、低分化(3)と分けられ、数が増えるほど悪くなります。  前立腺がんと診断した後は、がんがどこまで拡がっているかを調べます。これが、病期の診断です。前立腺内および周囲への進展は経直腸的超音波検査の他に、CT(腹部リンパ節)、MRI(骨盤部)により調べます。前立腺がんの転移部位としてもっと多いのはリンパ節と骨です。骨転移を調べるために骨シンチグラムと骨の単純X線撮影があります。全身の骨転移は、骨シンチグラムによる検査が一番鋭敏です。局所の転移はMRIが 有用です。骨転移が進むと単純X線写真でもわかります。  前立腺が尿道を囲んでいるため、尿道造影を行い前立腺部尿道の変形、不整を調べます。

4.前立腺肥大症との鑑別

 排尿に関する症状は、中等度の段階まで肥大症と前立腺がんに差はありません。これは、両者とも尿道を圧迫することにより同様のいろいろな症状を起こすためです。がんの場合、進行すると膀胱浸潤をきたすため、肥大症に比べ、血尿や膀胱刺激症状が多く見られます。また、がんは骨に転移をきたし、転移した部位の痛みがみられることがありますが、肥大症ではこれは決してみられません。直腸診では前立腺肥大症では、弾力性軟の腫大した表面平滑な前立腺として触れますが、がんでは、硬いしこりを前立腺の表面に触れます。血清PSAは、前立腺の大きさに比べ、前立腺がんの方が高値を示すことが多くあります。画像診断(CT,MRI,超音波検査)では、前立腺肥大症に比べ、前立腺がんの場合、前立腺壁の不整や前立腺内の画像の不均一性を示すことが多く認められます。最終的には肥大症とがんとの鑑別は、前立腺の生検を行い組織を顕微鏡で調べることにより決められます。

5.病期(ステ−ジ)

 診断の項目で述べましたように、前立腺内および周囲組織の病変はCTおよびMRI検査を中心に調べ経直腸超音波検査、尿道造影、排泄性腎盂造影検査で補足します。リンパ節転移は、CTおよびMRI検査により検索します。全身の骨転移は、骨シンチグラムによる検査が一番鋭敏です。骨転移の局所変化はMRIが 有用です。骨転移が進むと単純X線写真でもわかります。
 これらの結果から臨床病期が決められます。たくさんの分類方法があるため、日本泌尿器科学会が用いている規約に基づいて述べます。

病期A:がんではなく、良性病変の診断のもとに手術を受けて、切除された前立腺組織内に偶然発見されたがん(偶発がん)をいいます。
 A1:前立腺内に限局した1.0cm以下の病変で高分化のがん(性質のおとなしいがん)をいいます。
 A2:前立腺内にびまん性(1カ所に留まらず、拡がった状態)に拡がったがん、もしくは中または低分化のがん(高分化に比べ悪性度の高いがん)をいいます。


 以下は臨床的に前立腺がんを疑って、吸引細胞診または針生検により組織学的にがんと診断された病期です。

病期B:
前立腺内に限局するがんをいいます。
 B1:
前立腺を左右に分けるとその片側に病変が限局している1.5cm以下のがんをいいます。
 B2:
前立腺内の1.5cmを越えるがんまたはびまん性や結節性(塊として発育する状態)に拡がるがんをいいます。


病期C:前立腺被膜を越えて拡がっているが、転移がみられないがんをいいます。前立腺に隣接する精嚢、膀胱頚部への拡がるがんも含みます。


病期D:臨床的に明かな転移巣がみられるがんです。前立腺内でのがんの大きさは規定されていません。
 D1:骨盤内のリンパ節にのみ転移がみられるがんをいいます。
 D2:D1より広い範囲のリンパ節や骨、肺、肝臓などの離れた部位の転移がみられるがんをいいます。


 大きく分けると、がんが1.前立腺内に限局している場合(A-B)
、2.前立腺周囲に拡がっているが転移がない場合(C)、3.リンパ節転移がある場合(D1)、4.遠隔転移がある場合(D2)の4つに分けられます。

6.治療

 主治医は、がんの悪性度と病期や年齢、今までの病気や一般状態に基づいて治療の方法を計画し、本人に説明し同意を得たあとに治療を開始します。前立腺がんの治療法としては主に4種類のものがあります。ホルモン療法、外科療法、放射線療法、化学療法です。

1) ホルモン療法

 前立腺がんの治療として、もっとも有効で基本となる治療法です。前立腺がんの90%は、男性ホルモンの影響を受けて増殖すると考えられています。男性ホルモンは脳の一部である下垂体からでるホルモン(LH-RH)により刺激を受けて、精巣と副腎から分泌されます。治療としては、この男性ホルモンが作られる過程を抑えるか、前立腺に作用しないようにすれば良いわけです。従来から行われていたのは男性ホルモンが多く作られる精巣自体を摘除する方法(去勢術)です。その他、男性ホルモンを抑える作用がある女性ホルモンや抗男性ホルモン剤を1日に数回内服する方法や下垂体に作用して、男性ホルモンを低下させる薬(LH-RHアナログ)を月に1回皮下注射する方法です。いずれの方法も治療効果には差がありません。
 最近TAB(Total androgen brockage)という考え方が一般的になってきています。去勢術かLH-RHアナログのどちらかにリセプターブロッカーという薬を加えて男性ホルモンを完全にブロックする治療法です。

2) 外科療法(前立腺全摘術)

 がんが前立腺内に限局しているとき、手術により前立腺全体を摘出してがんを取り除く方法です。下腹部を切開し、前立腺を摘除し、膀胱と尿道を吻合します。このとき、もしリンパ節に転移が明らかに認められた場合は前立腺を取る手術は中止します。がんが前立腺被膜を少し越えている場合でも、転移がなければ、ホルモン治療を併用することにより手術をすることがあります。

3) 放射線療法

 高エネルギ−の放射線を使ってがん細胞を殺す方法です。前立腺がんの場合、通常、体の外から患部である前立腺に放射線をあてます。一般的に1日1回週5回照射し、5週間から6週間の治療期間が必要です。

4) 化学療法

 ホルモン治療が有効でない症例や、ホルモン治療の効果が少なくなったときに行う治療です。現在は比較的若い患者で低分化の組織を含みT3以上の進行癌には早期に行っています。点滴を用いる場合は、通常2種類以上の抗がん剤を用いて、6週間以上行います。ホルモン療法と同じように全身に作用しますが、効果が続く期間が短く、有効性を認めない医師も多くいます。

7.進展度(ステ−ジ)、悪性度(グレード)別の治療

1)前立腺内にがんが限局(ステージA-B)している場合、治療は次のいずれかから選
択されます。

1.経過観察のみで、積極的な治療は行いません(高分化がん)。
 ステージA1の場合で、定期的なPSAの測定などによる経過観察が必要です。
2.ホルモン療法を行います(高、中、低分化がん)。
3.外科療法を行います(中、低分化がん)。
 80才以下で、ステージA2-B2までが絶対的適応です。
4.放射線療法を行います(中、低分化がん)。


2)前立腺周囲に拡がっているが、転移がない(ステージC)場合、治療は次のいずれかから選択されます。

1.ホルモン療法を行います(高、中、低分化がん)。
2.外科療法にホルモン療法を加えて行います(中分化がん)。
3.放射線療法にホルモン療法、抗がん剤投与を加えて行います(中、低分化がん)。

3)リンパ節転移がある(ステージD1)場合、治療は次のいずれかから選択されます


1.ホルモン療法を行います(高、中分化がん)。
2.放射線療法にホルモン療法、抗がん剤投与を加えて行います(中、低分化がん)。

4)骨、肺などに遠隔転移がある(ステージD2)場合、治療は次のいずれかから選択
されます。

1.ホルモン療法を行います(高、中分化がん)。
2.ホルモン療法に化学療法を加えて行います(中、低分化がん)。
3.骨転移部分に痛みがみられるときは、痛みの改善目的で痛む部位に放射線照射を行うことがあります。



8.再発

 PSAが治療により低下していたのが再び上昇したり、リンパ節または他臓器に転移や新病変がみられたときをいいます。外科療法例は前立腺摘除部位にがんの増殖がみられたときも再発といいます。治療は次のいずれかが選択されます。

1.他のホルモン療法を行います。
2.化学療法を行うときもあります。
3.再発部位が局所であれば、放射線療法または外科療法を行うときもあります。




9.治療の副作用と対策

 治療によりがん細胞のみならず、同時に正常な細胞も障害を受けることはさけられません。医師はできるだけ副作用がでないように努力しますが、治療にともない種々の症状が現れることがあります。

1) 去勢術

 他のホルモン療法と異なり、3〜10日の入院が必要です。そして局所または下半身麻酔をかけ、手術を行います。手術は簡単で、危険はほとんどありません。手術の合併症として、術後出血があげられますが、まれにおこる程度です。術後7日目位で抜糸し、その後は再発しない限り薬を飲む必要はありません。また、術後男性ホルモンが減少するため、インポテンスがみられることがありますが、他のホルモン療法に比較すると副作用はほとんどない治療方法です。

2) 女性ホルモン剤(ホンバンなど)

 使用する薬剤の種類で多少異なり個人差もありますが、電解質代謝異常(体液のバランスや物質を変化させるバランスが異常をきたす状態)、心電図の異常、過敏症、悪心、嘔吐、肝機能異常、インポテンス、女性化現象および血栓症などがおこることがあります。この中で特に注意をしなくてはいけないのは、脳や心臓の血管への副作用で、胸部痛、手足の浮腫、動悸、息切れ、立ちくらみ、手足のしびれまたは麻痺などが出てきたときは、すぐに担当医師に話して下さい。そのまま放置した場合、致命的になることがあります。他の薬剤で副作用で抑えることができれば、そのままその女性ホルモン剤を内服してもらいますが、コントロール不能と判断したときは、他のホルモン療法を行います。

3) 抗男性ホルモン剤(プロスタールなど)

 薬の種類で多少異なり個人差もありますが、過敏症、悪心、嘔吐、呼吸困難、女性化乳房および肝機能障害がみられることがあります。副作用がみられたときは他の薬剤による対症療法を施行しますが、コントロールができない場合には、投薬を中止し他の治療法を行います。

4) LH-RHアナログ(リュープリン、ゾラデックスなど)

 脳の一部である下垂体に作用して、中枢性に精巣の男性ホルモンの産生を低下させます。しかしその作用機序から初めての注射後2、3日は男性ホルモンが急激に多くなるため、進行がん症例では排尿困難、骨転移部の痛み、肺炎様の症状、全身の火照りなどが起こる(フレアアップ)可能性が高くなります。これを防ぐ目的で2週間ぐらい女性ホルモンを前投与します。状態により対症療法を行います。皮下注射のため、一生だいたい1カ月に1度注射を受けなければいけまん。やめると精巣での男性ホルモンの産生は元にもどります。最近はさらに長期に有効な注射薬の開発がすすんでいます。副腎での男性ホルモンの産生には影響ありません。

5)リセプターブロッカー(オダインなど)
 男性ホルモンと前立腺細胞との結合をブロックします。働きが弱いので、去勢術かLH-RHアナログとの併用で治療します。肝臓障害や下痢などの副作用がでることがあります。この治療法をTABといってこれからの治療法の主流になると考えている人もいます。

5) 外科療法(前立腺全摘術)

 全身麻酔で約5〜6時間を要するため、かなりの体力と約4週間の入院を要します。手術の早期合併症として、出血による輸血の可能性(最近は自己血輸血を行います)があります。後期合併症として、尿失禁、インポテンス、尿道との吻合部狭窄などがあります。尿失禁に対しては、骨盤筋群の強化、薬物投与、シリコンの局所注入などで対処します。インポテンスは手術操作中に神経を切断することにより起こりますが、最近は神経を温存してインポテンスを予防する努力がなされています。。尿道狭窄に対しては、尿道を定期的に拡張あるいは手術で切開することにより対処します。前立腺を切除するので射精もできなくなります。

6) 放射線

 主な副作用は、放射線による一種のやけどで放射線治療中から終了後しばらくの間は、排尿痛、血尿、腹部またはお尻の皮膚のただれ、直腸からの出血などがみられます。皮膚のただれに対してはステロイド剤を塗り、直腸からの出血に対してはステロイド剤や痔の薬を投与します。

7) 抗がん剤

 使用する抗がん剤の種類によって異なり、個人差もありますが、治療中の主な副作用は1)骨髄毒性(貧血、白血球減少による感染、血小板低下による出血傾向)です。これに対しては、まず抗がん剤投与前に感染源の治療を行います。また白血球増殖因子(血液を産生する骨髄に作用し、白血球を短期間で多く作らせる薬)を予防投与します。2)吐き気、嘔吐、食欲不振などに対しては、まず患者自身によく説明して不安感を除去する努力をします。また最近開発された制吐剤を予防投与します。3)腎障害に対しては十分な水分摂取を行います。口内炎に対してはアロプリノールの予防的うがいを行います。4)脱毛は必ず元にもどることを説明して特別な処置はしていません。その他、下痢、手足のしびれ、肝機能障害、疲労感など予期せぬ副作用もみられることもあります。原則として、これらは抗がん剤投与後2〜3週間で改善するため対症療法を行います。

10.治癒率・予後


 前立腺がんの予後は、全身状態、年齢、進展度および悪性度そして選んだ治療法とその反応性などにより決まります。がんセンターでの過去10年間の最新治療成績では、前立腺がんでは1年非がん死率は94.9%、5年非がん死率は50.8%、10年非がん死率は36.1%、10年生存率は22.9%でした。悪性度でみると前立腺がんのG1の10年非がん死率は93.3%、G2の10年非がん死率は71.6%、G3の10年非がん死率は0%(G3の8年非がん死率は3.6%)でした。G3の成績が非常に悪いことがわかります。進展度では前立腺がんではA-Bの10年非がん死率は100%、C-D1の10年非がん死率は37.4%、D2の10年非がん死率は11.2%でした。D2の成績が非常に悪いことがわかりますがこれは進行癌だからです。局所にとどまる状態で見つかったがんは現在の治療法で100%生存しています。前立腺がんはホルモン療法が有効なため、進行がんでも他のがんと比べると治療開始後数年間は比較的予後の良いがんといえます。


[注:]
CT:X線撮影を合成して体の断面像を合成し解析する検査。
MRI:磁石の原理を応用した磁気共鳴装置と呼ばれる機械を使った検査。体の状態を横断面および縦断面に解説できる。
IVP:排泄性腎盂造影は、血管内に造影剤を入れて、腎臓から排出される造影剤の流れを経時的にX線撮影し、腎、尿管及び膀胱の状態を調べます。
尿道造影:尿道口から造影剤を入れて、尿道から膀胱の状態を調べます。
骨シンチグラム:骨転移巣に集積する放射性物質を注射し、全身の骨を調べる検査です


がんとは

がんとは  がんは正常の細胞が無秩序に自己増殖することにより発生します。最近、遺伝子の異常が原因といわれていますが、正常の細胞がなぜがん化するのかまだ十分に解明されていないのが現状です。ただいくつかの遺伝子の異常が段階的におきているようです。またがん化を抑える抑制遺伝子があると考えられその遺伝子の異常でがん化する可能性も考えられています。ヒトの場合一個の細胞ががん化しても実際に症状が出る(臨床がん)までに10-20年かかる(潜在がん)といわれています。やがてがんは周囲の正常組織や器官を破壊して増殖し(局所浸潤)、他の臓器に拡がり腫瘤を形成(遠隔転移あるいは転移)し症状が出現してきます。そこで臨床がんになる前に早めにがんを発見(早期発見)する努力としてがん検診が行われていますが、検診効率が悪いためにその意義が論争(肺癌、乳癌、子宮癌など)となっています。

元にもどる