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望月太喜之丞 Website/タキノ庵 <暮らしのツケ帳> 01.04.06更新



 1999年の日本音楽集団のアメリカ・ツアーでは思うところあって東京から蕎麦を持参しました。

 正月に芝居の仕事で浅草にひと月出勤しました折に、仕事場の近くの蕎麦屋で毎日のように盛りそばを食しましたところ、体調(特にお腹の)がすこぶる良好であったためです。

 麺は岩手県の武田製粉製麺の「かくさん・干しそば」。知人からいただいて家で茹でてみたら、これがなかなかの美味でありまして、ことに蕎麦を茹でた後にできるそば湯の風味が非常によろしかったのが大きな理由です。乾麺というものは生産するときに大量に塩を混入させるのか、市販のものはたいがいそば湯が塩辛くなってしまうものなのですが、この「かくさん・干しそば」からできるそば湯はほとんど塩辛くなりません。

 というわけで急遽東京に託送させてスーツケースに同梱いたした次第であります。

 大きめのタッパウェアにくだんの干麺を6袋(12食分)、醤油唐辛子、割ばしを10数膳詰めました。意外と重かったです。

 あと、それとは別にプラスティック製のザルにソバ猪口を入れてスーツケースにしまい込みました。

 この蕎麦を旅行用の鍋で茹でて食そうというのです。

 出発の前々日、東京で実験いたしましたところ見事に失敗をいたしました。

 まず、麺の長さが鍋の口径よりもだいぶん長くてはみ出してしまうので思い切って半分に折ってみました。これは正解。

 初めは鍋のパワーが弱くて、湯が沸騰しきらない内に待ちきれず、麺を入れてしまいどうも上手に茹で上がりませんでした。

 取り出した蕎麦はモソモソしていて、粘土を噛んでいるようでした。ただ、濃厚な蕎麦湯ができ、これで蕎麦焼酎を割ったらうまいだろうなと思いました。

 実験では失敗したものの、とりあえず蕎麦セットをスーツケースに入れて出発しました。

 醤油のペットボトルはダシ昆布を入れるために一度フタを開けてしまいましたので、少々心配でしたが、しばらく横にしておいたら案の定、フタの所から凍みだしてきました。フタの締具合が足りなかったのかもしれませんが時間がないのでビニールの袋で包んで輪ゴムで念入りにパッキングしました。

 Columbusに着いて早速取り出してみますと漏れは皆無でした。

 後に、横にしておくとどうしても漏れ出すことが解り、なるべくタテになるようにスーツケースに入れるようにしました。

 アメリカ合衆国ではコンセントの形状は日本のそれと同じですし、電圧もほとんどが120Vですので日本製の湯沸器はそのまま使用できました。この湯沸器、電圧が高いと内部で自動的に切り替えて電圧を調整してしまうので、どこへ行ってもあまり神経を使わなくても良いのが長所です。

 まず、湯を沸かします。水から沸かすと時間がかかるので洗面台のお湯を汲んで沸かします。この時、鍋にフタをすること。なんでもないことですが、これで沸騰するまでの時間がずいぶん違います。

 泡がブクブクと盛大にでてきたら、麺を半分に折って湯に放り込みます。茹で時間は六分。私の経験では、時計かタイマーでなるべく正確に計った方がうまくいきます。

 湯に放り込みましたら、即座に箸にて掻き回します。これをやらないと麺同志がくっついてしまってたいへんなことになります。二分くらい掻き回してやれば、あとはもうくっつかなくなります。

 フタを取ったままだと湯の温度が下がったままなかなか上がってこないので、フタをしてみましたところ、吹きこぼれてしまいました。これでは、湯沸器自体を傷めてしまいます。普通は差し水をして吹きこぼれを防ぐのですが、この湯沸器では温度が下がりすぎてしまい、蕎麦が茹でられなくなります。そこでフタを斜めにして反蓋として温度を調節することにしました。

 さて、茹で上がるのを待つ間に蕎麦ツユを作ることにします。

 用意した蕎麦猪口に1cm程、醤油を入れます。それに約同量の水で薄めてでき上がりです。私はこれでOKですが、お好みで砂糖(コーヒーシュガーで結構)をごく少量混ぜますと、いっそう蕎麦ツユらしくなりますね。因みに私、東京では水ではなく大根のオロシ汁で割ります。

 この蕎麦ツユに薬味加えても良いのですが、野暮ったいので私は入れません。薬味はでき上がった蕎麦に直接ふりかけていただきます。この方がワサビとか唐辛子とかの風味が少量でストレートに楽しめますし、節約にもなります。

 また、この蕎麦ツユは非常に濃いので蕎麦の下の方をチョコッとつけてすする、という、噺家さんのようないただき方になります。ユメユメどっぷり浸けるような召し上がり方だけはなさらないでください。

 さて、蕎麦が茹で上がりましたら蕎麦をザルに移して手早く水で洗います。蕎麦をザルに移すのは、ダーっとあけてしまうよりも箸でつかんでいった方が能率が良いです。(蕎麦湯を飲むところまでが能率の計算にはいってます)

 当初は鍋に付属のプラスティックの容器(どんぶり替わりに使うらしいです)にダァーッとあけていたのですが、こぼれやすかったり、食後蕎麦湯を注ぐときに熱くて持てなかったりで結局箸で移すのがベスト、という結論に達しました。

 蕎麦が全面的に冷たくなったらザルの底を手で叩いて余分な水気を切ります。

 ザルをテーブルに直接おきますとまだまだ水気が出ますので、先ほどの鍋に付属のプラスティックの容器を下に敷きました。

 さて、この蕎麦作りでもっとも困ったこと。それは使用した電熱器の冷まし方でした。

 少し冷ませば、そのまま片づけても大丈夫なのかもしれないのですが、私は心配性なので電熱器の熱がこもってスーツケース内の衣類が焦げやしないかと気が気ではないのでした。ドライヤーで風を送ってみたりしてなんとかして冷まそうとしてみましたが、これではその間何もできませんし、また急いでいるときに限ってなかなか冷めてくれないものです。

 これは冷たい水を鍋に満たして、電熱器の上に乗せておくことで一気に解決しました。ものの2〜3分でひんやりと冷めてくれますし、他の用事もできるというものです。

 1日1食のつもりで12食分を用意したのですが、仲間にごちそうしたりしていたら中日ぐらいにはほとんど底をついてしまいました。
 

  そこでロサンゼルスで、知り合いの日本舞踊の先生にお願いをしまして、麺を補給させてもらいました。ロスでは日本人の居住者が多いせいか、大概の和食の食材が手にはいります。また、麺だけではなく練りワサビ海苔まで手に入り、モリがザルに格上げとなりました。

 おかげさまで最終公演地のアイオワシティで「蕎麦処・タキノ庵」を開店し、仲間と盛大に「ソバ・パーティ」を開くことができました。

 東京へはサンフランシスコからのANAで帰りました。

 朝のサンフランシスコ空港の、まだ何件も開いていないショップの1軒で、星条旗や猫の顔をデザインしたパスタのパックを発見。早速これを購入し日本に持ち帰りました。これで、「パスタの店・タッキーノス」でも開こうかと思っています。



材料ロサンゼルスで補給できた食材
    蕎麦:福島県白石産 3袋12食分(1袋の量が倍)
    ワサビ:ハウス製「練りワサビ」(チューブ入り)
    海苔:おむすび用

    1.麺の量は親指と人差指でOKマークを作り、その中につかまえるだけの分量が約1人前であります。また、旅行用の鍋で1回に茹でられる限度かとも思われます。

    2.干麺は鍋に合わせて半分に折ること

    3.湯は完全に沸騰しているのを見届けること

    4.麺を湯に放り込んだら、即座に箸で掻き回すこと。(麺同志がくっついてしまうのを防ぐため)

    5.茹で時間は、今回使用した「かくさん・干しそば」の場合約6分ですが銘柄によって変わりますのでパッケージに記載してある茹で時間を参考にしてください。自分の経験では指でつまんだりして様子を見るよりも、タイマーで正確に時間を計った方がミスは少ないです。

    6.同じお湯で続けて2度目を茹でるときは茹で時間を長めにとったほうがよいようです(プラス1分弱くらい)。何故か同じ時間では茹で足らないのです。