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望月太喜之丞 Website/タキノ庵 <暮らしのツケ帳> 001005更新


私のカバン遍歴







 この仕事をしているとなぜかカバンオタクになる人が多いそうです。自分の大事な楽器を収納するためのベストなカバンを探そうと思うのです。逆に言えばそれだけなかなかベストなカバンに巡り合えないということかもしれません。
 私もご多分に漏れず、町を歩いていて鞄屋さんを見つけるとつい、中を覗いてしまいます。
 楽器のために最適な鞄というのは外殻が堅くて中がソフトなこと。これにつきます。バイオリンのケースなんか中があったかそうでいいですよね。
 
 初めて鼓のために買った鞄は三味線屋さんからでした。三味線用の鞄を鼓用にリサイズしたもので二十年前に2万2千円もしたんです。段ボールの筐体にビニールを張っただけのいかにも邦楽の楽器が入ってますってかんじで、それもなんだか嬉しくて使ってました。
 大小鼓の胴がちゃんと納まり、結構便利でした(大鼓の皮も入れるのはちょっと無理がありましたが)。この鞄、何回か盛大な修理をして、いまだににウチにいて余生を送っています。
 
 次に購入したのは、「パイロット・ケース」というタイプのものでした。鞄が横に開くのではなく、上が開くタイプです。これはベニヤの筐体にビニール張りで2万円でした。
 これは大小鼓が一組ずつしっかり入るサイズでしたが、上開きのために仕事場では組み立てた小鼓を置いておくのはちょっと怖かったです。横開きだとワリと小鼓を守るように置けるのに対して上開きの鞄だと鞄の上に乗っけておくだけなので、鞄から落っことしそうで怖かったんです。
 このカバン、既に現役を退いて宅急便用のケースとして何回か使用した後、廃棄処分となりました。
 
 三番目のカバンは私がデザインしました。
 というか、ただ単に行きがかり上のことなんです。10年くらい前にそれまでのカバンがくたびれてきたんで、楽器屋さんにカバンを買いに行ったんです。そこで思うようなサイズのカバンがなくて、クレームをつけたら「じゃ、どんなカバンだったら気に入るのか」って言われてこっちも散々言いたいことを言ったんですね。しまいにメジャーまで持ち出してお店の楽器をならべてサイズを測って「これだぁ!」って大小鼓がちゃんとはいるカバンの大きさを決めました。「こんなカバンがあったらすぐに買うんだけどなぁ...」ってボヤいたら、ホントに作ってくれちゃったんです。
 ある日、楽器屋さんからカバンが送られてきてビックリしました。私、忘れてたんですよ。すっかり。すぐに電話したら「コレ、ウチで売らせてもらいます」って、お礼まで言われてしまいました。
 私は二つ持っています。一個1万5千円でした。安いだけあってそれなりの欠点はありますが、注文をいっぱいつけただけあって使いやすいことは折り紙付きです。
 
 次に私が購入したのはジュラルミン製のケースでした。
 海外に仕事に行くのにベニヤの筐体のカバンではどうしても不安だったもので、町のカバン屋さんで購入しました。1万5千円。安かったんですけど、重かったなぁ。
 ケースの重さだけで5キロぐらいあるかな。頑丈で、小鼓を入れて海外に行くのにはとっても安心だったんですけど、とにかく重くて持って歩くのはたいへんでした。今ではウチの小物楽器を収納して使っています。丈夫なので中身が重くても平気です。
 
 その後、行きがかり上で仕方なく小鼓専用カバンというのを購入しました。小鼓が組み立てたまま入れて置けるというやつです。これも当時1万5千円位したかな。
 これはかさばるのでほとんど持って歩いたことはありません。普段は楽器の保管用にしておいて、まだ楽器の組立ができないお弟子さんに楽器を貸してあげるときに鼓を組んだまま入れて持たせる、という使い方をしています。
 
 昨年、私は「ゼロ」というメーカーのアタッシュケースを購入しました。正規に購入すると10万円近くする型が新宿の安売りカメラ屋さんで並行輸入で4万円でした。
 「ゼロ」のケースは前からいいなと思っていたのですが、大きな欠点がありました。カバンのフタがある程度以上に開かないようにするためのストッパーのオレオが中に出っ張っているのです。これがいかにも楽器を傷つけそうなので敬遠していました。ただ、並行輸入のせいか写真機用のためか内装が全くしてなくて、スポンジが詰まっているだけなんですね。別売りのプラスティック製の内装を購入したら1万円もかかってしまいましたが、これで金具のところをがっちりカバーすることができました。
 当初、サイズも「大小鼓を入れてバッチリ」なんて思ってたのですが、くだんの内装をしたら大鼓の胴が入らなくなってしまいました。これは全く大マヌケでした。マ、ここんとこあまり大鼓を打つことがないので悔しいけど現役で使ってます。とにかくブランド品なせいか頑丈だし、しかも軽いんです。先のジュラルミンケースとは大違いです。
 
 しかし、大鼓も入るケースがどうしてもほしいと思っていたところ、「東急ハンズ」でとてもいいジュラルミンケースを見つけました。
 「ロンカート」というイタリアのメーカーのケースで、剛性はさきの「ゼロ」に少し譲りますが非常に軽いのです。さすがイタリア製なだけあってデザインも素晴らしいものでした。角が黒の強化プラスティックで保護されていてそれが良いアクセントになっています。パンダみたいだって言う人もいますけど私は気に入っています。値段も2万8千円とゴキゲンなプライスでした。
 また、「ゼロ」を購入するときに気にしたオレオもなく、ヒンジの外側にストッパーがついているのも気に入りました。これは街のカバンやさんで買った重たいジュラルミンケースも同じ仕組みのものがついていて、中身を傷つける心配がなくてとても安心なんです。
 「ハンズ」で見つけたときはケースの深さが少し足りなくて一旦は諦めたのでしたが、参考に見せてもらったカタログの中に私が希望するサイズのものを発見。店の人に交渉して輸入元にお願いして1個だけロットに混ぜて輸入してもらうことができました。
 品物が届いたと連絡を受けて早速渋谷に駆けつけたのですが、売り場で現物を見てビックリ。深さが厚くなった分、中の書類が遊ぶのを防ぐために金属製のベロが中にむき出しで出っ張っているのです。これは「ハンズ」にあった薄いケースの方にはなかったものでしたが、これでは楽器を傷つけてしまいます。
 考えたあげく、「ハンズ」の工具売り場で金属のこぎりとダイヤモンドやすりを購入。家に帰ってギコギコとベロを切り取ることにしました(3時間もかけて!)。
 現在、このカバンは大鼓用にしてます。大鼓二組を収納可能で、大小一組づつは楽に入ります。欠点はちょっと金具類がセコイ事かな。
 
 今私がほしいなと思っているのは、こないだフランクフルトに行ったときに見つけた「リモワ」です。
 現地では日本の三分の二くらいの値段だし、日本に輸入してない型番で良さそうなのがあるんです。
 
 最近は金属製のケースが好きなのですが、重いこともさることながら、着物に似合わないのが一番大きな欠点です。丈夫なのは良いんですけどね。