##俺が勧めるSF##

*現在でも比較的簡単に入手可能と思われるモノを書いてある。
(早)はハヤカワSF文庫、(創)は創元推理文庫。
*はっきりいって第一弾は俺が一人で薦めているので内容的に偏っていて正しいSF道から外れている(笑)
*はっきりいって、現在も入手可能な、常にハヤカワSFのコーナーに常設されてるような作品は確かに名作かもしれないが「個性」にかける魅力のない俺的には「くず」SFがほとんどで、そんなものは当然山のように古本屋で見かけるので古本で済ませればいい。ってゆうか、俺の勧める本ももはや神田の三省堂や書泉にしか常設されていない可能性もある(たぶん絶版ではないので注文すれば買えるかもしれない)ので、だったら最初から古本屋にでもいってあったら即GET!というのがBESTな買い方かもしれない。




##とりあえず、第1弾。なぜか短編集が多くなったので次回はそこを改善します##


『虎よ、虎よ!』アルフレッド・ベスター(早)
超能力、ミュータント、光線銃、宇宙戦争、破滅兵器、復讐劇、難波弘之、そうだ、これがSFだ!しかし、リアリティを求めるハードな方々にとっては陳腐なスペオペかもしれない。しかし俺にとって屑スペオペというものは宍戸錠が宇宙船に乗って気に入らない奴にプロトン砲を発射するような話とか、なぜか宇宙空間なのに半裸の美少女二人組みが惑星を破壊したりする話であって、こーゆ雑多でおお風呂敷きな一冊こそが良書なのだ。
#あらすじ#
時は25世紀の地球。人々は『ジョウント』と呼ばれるテレポーテーション技術を身につけていた。ジョウントにより、既存の価値観や文化は崩壊し、超能力とミュータントと宇宙戦争による混沌が世界を包んでいた。永遠に続く内惑星連合と外惑星連合の戦争がつかの間の停戦を結んでいた時、知能指数がちと低めの宇宙船雑役夫ガリヴォー・フォイルは大破した宇宙船ノーマッド(No Mad だぜ!)号の中の極限状態で必死に生きる努力を続けていた。彼の乗った宇宙船は宇宙戦争の行方を左右する超物質「パイア」を積んでいたがために謎の宇宙船に襲撃されたのだ。知能指数の低いガリィにはなぜ自分がこんなひどい目にあうのか理解できなかった。酸素・水・食料が欠乏するなかで必死に生にしがみつく男を支えたのは宇宙船に刻まれた「ヴォーガ」の文字。「ヴォーガ、殺す!見つけ出して俺の受けた苦しみを100万倍にしてお返ししてやる!」そしてその復讐心が彼を生き延びさせた。漂着した小惑星帯に済む原始的な宗教を信奉する部族によってガリィは助けられると同時に「死ぬほど恥ずかしい刺青」をなんと顔にされてしまう。「んんぁぁあ!馬鹿にすんなぁ!こんな顔じゃ恥ずかしくてどこにもいけねぇぜ!これもみんなヴォーガのせいだぜ!殺す!」という具合に彼は宇宙船をかっぱらい地球へ復讐しに行ったのです。地球についたガリィはノーマッド号のパイアをめぐって、両陣営から追い立てられ、拷問されます。そのたびに思うのです。「くそぅ!ヴォーガめ!」ある時、おっぱいプリンなお姉さんに、「(アスカ風に)あんたバカァ?!その『ヴォーガ』ってのは宇宙船の名前よ、復讐するなら宇宙船の持ち主を探して宇宙船に乗ってた奴を探さなきゃ」「そうか、俺は馬鹿か!」知能指数49だったガリィは「復讐」の二文字のもと、学習し、ジョウントを訓練し、サイボーグ化し、戦い、富を、地位を手に入れる。人が手にいれられるすべてを手にしたと思われたとき、彼は噂を耳にする。「ヴォーガ号とよばれる海賊宇宙船が出現している」その名を耳にしたとき、彼の顔には隠すことのできない復讐の模様−虎のような縞の刺青−が浮かび上がるのだった!
・・・本来はあらすじなんてない方が読んだときの衝撃がでかいのだが。これは俺が書いていて面白くなったので許して欲しい。でもこれ、まだ最初の50Pくらいだよ(笑)



<人類補完機構シリーズ>コードウェイナー・スミス(早)
某エヴァとかゆーアニメでこの作品世界のキーワード<人類補完>という言葉が使われたため、内容的には全然関係ないのに大量に再版されていてスミスファンにはいろんな意味で「たまんねー」事態になった。
スミスの宇宙は生物の精神を狂わせる存在「一次効果」「二次効果」があって、人々が宇宙へ漕ぎ出してゆくのには限られた方法しかなかった、という前提がある。そこらへんがいたく俺の気に入るところとなっていたりする。
ことぶきゆうきを支える謎のキーワード『ヘイ・チャイ・パオ・ウナ』の「ヘイ」・「チャイ」がからんでくる下記の2冊は死んでも読んで欲しい。

『鼠と龍のゲーム』
人間の精神を狂わせる宇宙の「一次効果」から人間を保護し、活動させるべく考案されたサイボーグ技術それが「ヘイバーマン」テクノロジーだ。視神経以外は脳から切り離され、体のコントロールは胸に取り付けられたボックスのダイアルとメーターで行われる。死と隣り合わせの危険な任務を人間としての感覚を切り捨てて行うヘイバーマンは死刑囚などから選ばれて製造されていたが、そんな彼らを統べる志願してヘイバーマンになった者もいた。それが「スキャナー」だ。彼らスキャナーは「自らがスキャナーであること」を誇りにすることでのみ自身を支えていた。だが、ある科学者が「一次効果」を征服する技術を開発したという噂が流る。「スキャナー不要の時代が来る」その時、スキャナー・マーテルがとった行動は?『スキャナーに生きがいはない』。宇宙の辺境で航海データが消失!船長がとった行動は?『燃える脳髄』人間を襲う「二次効果」を人間のパイロットと猫のパートナーがやっつける猫好きにはこたえられない表題作『鼠と竜のゲーム』などポイント高い一冊!

『第Q81戦争』
長らく幻の作品とされていた「チャイ」に関する小説『人々が降った日』が収録された最後の短編集。同作品は金星をテラフォーミングするんならどこかのすげー人口が増えて増えてしょうがねー国の人間でもどかどか使ったら?という、当時作者が米国大統領の中国方面問題担当顧問官だったなんて絶対に言えない内容のショートショートがGOOD!その他にデブで奇形のロシア人に美少女が陵辱されそうになった時!ロリーな科学者が彼女を守るためにネズミの脳のスライスから作ったスタンドのオラオラが炸裂する!迷作『青を心に1、2と唱えよ』も入っているし、ドイツ第六(第三ではない!)帝国の科学は世界一ィィィイ!とかいって人間狩猟機械(メンシェン・イェーガー)が人々にドイツ語の試験をしてまわる『マーク・エルフ』とかあって最高ですが、<人類補完機構>は副読本なしにはただのキチガイの妄想に思えてしまうのが難点ですね。

『ノーストリリア』
コードウェイナー・スミスが変な話ばかり書くから人気があるのかなーというと、実はC.L.ムーアの「シャンブロウ」と並び賞されるSF猫耳娘「ク・メル」が登場するからだ、という説もある。(実際同人誌はこればっか。もっとヘイバーマンとかメンシェン・イェーガーとかも出してほしいのに)寡作なスミス唯一の長編はそのク・メルがヒロインのこのお話。「ゲラゲラ・ハウス」とか見逃せないガジェットも登場するが俺的な評価はイマイチだったりする。




『世界の中心で愛を叫んだけもの』ハーラン・エリスン(早)
SF短編は長編より面白かったりする。星新一やヨコジュンのショートショートの様に1アイディア、1作品、ヒットアンドウェイって感じのモノも面白いんですが、小さいながらもめちゃくちゃつまってる作品が俺は好きです。残念ながら読み慣れてないと、読みづらい挙げ句に意味不明、ってことで倦厭されちゃうんですけどねー。
世界最悪のSF作家、70年SFのカリスマ、アイザック・アジモフの漫才相手、等様々な呼び名と伝説を持つエリスンの日本で唯一読める単行本。これも入手が難しかったが、某エヴァの最終回のタイトルに使われたおかげでめでたく再版。アニメおたくが期待している内容ではないので消えるのもすぐなはず。買っておけ。
エリスンの小説を読めば、世の中の小説が理性やお情けや計算で埋め尽くされていることに気が付くはずだ。きわめて反社会的、反道徳的、欲望丸出し、人間は性悪説の生き物だということに気が付くだろう。これはSFという名のロックなのだ。
「時計仕掛けのオレンジ」と「ライ麦畑でつかまえて」があわせて50ページで読めるんだから『少年と犬』はやっぱいい話なんだろうな。
ヒューゴー・ネビュラ賞を受賞した作品群が収録されていないのは残念。


『継ぐのは誰か?』小松左京(角川ハルキ文庫)
「いぇーい、俺達『アキハバラ・電脳組』!又の名を怪奇大作戦SRIだっゼ!」
「犯人は誰だぁ!」「俺ってばインディオだから地黒なんだぁ」
「長瀬ちゃん、電波届いた?」「電波人間はタックル、ストロンガーは電気人間だ」
「第三の選択で、秘密を知ったバレンタイン博士は電子レンジ兵器で黒コゲに・・・」
「篠沢教授に、1000点!」「サイコ・アクティブ!」
「生身の脳1個でこのコンピュータに挑むとは愚かですねぇ」
「ギアナ高原での厳しい修行は何のために?」
「ああぁ、どうしよう、まちがっちゃったよ!」
「認めたくないものだな、若さゆえの過ちというものは」
・・・鉄を食う「日本アパッチ族」が小松左京のデビュー長編であることは意外と知られていない。だから日本沈没しか知らない人にこの本勧めるとすげー喜ばれます。
多分、上記の内容がこの本のすべてです(笑)人類の進化について色々考えていた時期に読んだので好印象だったのだと思います。
あ、ゼラズニィ&セイバーヘーゲンという反則コンビの『コイルズ』もこんな話じゃなかったっけ??(違うか?)


『石の血脈』半村良(角川文庫、祥伝社ノンポシェット文庫)
クーンツやキングの「モダン・ホラー」はどこがモダン?なのかイマイチわからない。超能力や宇宙人がからんできて事件が起きるのがアメリカの都市のどこかであればいいのか?ホラーやファンダジィとSFの線引きが「起きた事象の理屈付けの有無」であるとするならば、石の血脈はSFなんだろうな。いわゆる「伝奇ロマン」の始祖だといわれてます。これとためはれる吸血鬼と狼男の理屈付けを俺は見たことないなー。あと、大人の読み物にするために盛り込まれたエロスの香りがなんとも妖しい雰囲気をかもしだしていてもう最高。ただバイオレンスとエロだけつめこみゃいいってゆうもんじゃないよと、某菊地さんや某夢枕さんの作品を読むたびに思うんですな。雰囲気的には「痕」に近い感じかしら?渦巻く愛と憎しみを神の視点で締めるあたりの演出もしびれました。


『百億の昼と千億の夜』光瀬龍(早)萩尾望都でたぶん秋田書店で漫画文庫あり。
人生にたそがれすぎちゃった「ロン先生」の孤高の一冊。小説よりも萩尾望都センセの漫画の方が理解しやすかったりします。ってゆうかこの難しい小説をよくビジュアル化したもんだ、と萩尾センセの力量に感心を隠せませんでした。
仏教の神=善、キリスト=偽の神、という当時の私の大好きな構図があったのも入れ込んだ理由かもしれません。でも、一番入れ込んだ理由はバラードよりも先に「宇宙の熱死」に対する押さえようもない怒りを描いてくれたからかもしれません。姿あるものはいずれ壊れ、生あるものはいつか死ぬ。時間は過去から未来に流れさかのぼることはおろかとどまることも許しません。そんな、諸行無常を宗教ではなくSFで改めて描かれたことにショックを感じたのかもしれません。ノヴァ先生が憎んだ「熱力学第二法則」への飽くなきチャレンジを俺はこの作品の中に見たのだった。


『戦闘妖精 雪風』神林長平(早)
日本中の戦闘メカフェチの聖書である。難解な精神SFモノの多い神林作品の中にあって単純明快な未来戦闘機の話である。
単純な戦記モノかというと実は機械に汚染される人間の精神というふか〜いテーマが横たわっており、さすが神林SF!という感じもする。「ワープロで書いた文章はワープロの意志が入ってる」なんていわれて一時期ワープロ恐怖症になったけど(笑)
谷甲州の航空宇宙軍史と共にSF研内のハードSFファンの心をつかんで離さない。現在新・雪風シリーズがSFMでぽつぽつと書かれており、一部歓迎され、一部悲しまれている。俺も雪風はこの作品の終わりかたでよかったと思っている一人ではある。


『逆転世界』クリストファー・プリースト(創)
イギリスとアメリカって全然違うんだよな。同じ英語しゃべってるのによ。
で、俺は断然エゲレスの方が好きだね。日本と同じ島国根性入ってるし。IRA居るし。話全体的に暗くてじめじめして、びっくり仰天なオチが多いし。ま、簡単に言うとイギリスSFは変な話が多いので大好きです。
で、これは「びっくり仰天、ぎゃふんオチ」のかなり優秀な例(笑)。でも、科学考証とかの面でいえば「ハード」SFに入るのだろうか?ま、かなり貴重な作品であることに変わりはない。「線路を引いて移動し続ける都市」という設定からしてもうなんか普通じゃない。「すごいや、ラピュタは本当にあったんだ!」どこの騒ぎじゃねー(笑)
サンリオで出版され長らく絶版だったが、最近カッコイイ表紙になって創元から再版されたので買って読むべし!この調子でサンリオのゼラズニィも復刊して欲しいんだけどな。


『幼年期の終わり』アーサー・C・クラーク(早)
SF御三家、というとクラーク、アジモフ、ハインラインのことである。で、最後の生き残りがこのスリランカ在住のおっさん。いまだに共作で名前が出てくるんだから凄い。
先ほどイギリス作家はアメリカと違って変でイイヨ!とかいったばかりだけど、このクラークはイギリス作家である。でも、「清く正しい宇宙少年」向けの話しか書かないので俺の評価は対して高くない。まっすぐな心でまっすぐ科学の演繹をしてまっすぐな科学万歳SFを大量に世に送り出してきた。超能力やベム(巨眼の宇宙生物)がうずまくいわゆる「ホラ話系のSF」とその対極になる科学考証突き詰めまくりの「ハードSF」とがあって、クラークはその「ハード」なSF寄りの作家といえましょう。
で、そのクラーク先生の代表作の中で、「人類の進化」についてまじめに語ったこの作品はヴィジュアル的に「V」に影響を与えた作品でもあり、また見事な人類滅亡を描いた「ホロコースト」小説でもあり、「人はどこから来てどこへ行くんだろう?」なんて真剣に考えてた高校生の俺にはっきり文章にして回答してくれた本の一つだったわけで、だからアポロが月に行く前に書かれた古い話なんだけどやっぱり新鮮だと思うのでお薦めしちゃうわけです。


『月は無慈悲な夜の女王』ロバート・A・ハインライン(早)
さて、クラークが「いい子ちゃん」だとすれば、ハインラインは「悪ガキ」そのものといったところか(笑)。ま、極端な性格で話もなんとなくヘミングウェイっぽい、そう骨太い作風が感じられると思います。『宇宙の戦士』で思いっきり右翼を極めた挙げ句に『異星の客』でヒッピーに絶大な支持を受けるなどと行った具合で、右翼と左翼の両極を極める私が最も敬愛する作家の一人でもあります。『悪徳なんて怖くない』でエロ爺ぶりも炸裂させたりして本当にエンターテイメント性の高い人です。矢野徹センセのおかげで日本での訳本が多く読めるのもありがたいことです。
この『月は・・・』も非常に多くのアイディアが詰め込まれた話ですが、月と地球の戦争モノの元祖ではないかと思います。質量射出機(マスドライバー)を兵器としたのもこの作品です。(実はドラグナー放映時に読んだのだった)月面都市の雑多な感じや、コンピュータ知性マイクの存在など今で言えばサイバーパンク的な要素が盛りだくさんな気がしますね。こーゆー元気なSFが好きです。


『鋼鉄都市』アイザック・アジモフ(早)
実はもうこいつさえ本屋にないかも、ということに気が付いて焦ってあえてお薦めに入れた。俺は個人的にはアジモフは「でぇっきれぇだぁ!」という感じなのだ。
え、ロボフェチのあんたがなんで?と思われるかもしれないが、アジモフの野郎はくだらないミステリー書き野郎で、かの名高き「ロボット三原則」もミステリーの小道具にすぎないからだ。ロボットは本来、無慈悲・無感情・無痛覚、人間の何倍もの力を持ち、人間の何倍もの環境適応力を持ち、人間の何倍もの戦闘能力を持っているべきなのであるが、アジモフの三原則にのっとったロボットどもは人間そっくりな挙げ句に武器を携帯することを許されていない挙げ句に、時として人間より感情的だったりするのだ!もう、死ね!って感じである。(私の「反ロボット三原則」は以前SF大会で翻訳家、矢野徹センセに話して結構喜ばれた記憶がある)この鋼鉄都市のR・田中・オリヴォーもまるで変身前のキカイダー、ジローかお前はっ!って感じである。ま、俺の好き嫌いは別として「ロボットの父」アジモフの代表作として読んでおいた方がいいだろう。
『われはロボット』の方が入手しやすいかもしれない。




##春だ一番!ロジャー・ゼラズニィ祭り##


荒木飛呂彦に漫画化してもらいたい度ナンバーワン作家、ロジャー・ゼラズニィの登場だぁ!
ゼラズニィの作品の登場人物は絶対に関節を変な方向に曲げながら「ドドドドドド・・・」という音と共に登場するのがお似合いなんだよ!ファンタジィものならいうにおよばず、宇宙人とかロボットとかが出てきた日にゃぁ、もうスタンド同然。人物はもう絶対(主人公ですら)新手のスタンド使いって感じ以外しません。描写もいちいち映画的で飛呂彦ティックとしかいいようがありません。
幸いなことにゼラズニィは何故か著作の多くが翻訳されています。
しかし不幸なことにはその訳書の多くは絶版になっています。(くそぅ!)
『ロードマークス』『我が名はレジオン』の2冊は絶対外せないのだが、両方ともサンリオ文庫で絶版。くそう!飛呂彦に絶対漫画化してほしいよ!


季刊・「風の十二方位」さんのゼラズニィ特集も見てみましょう!(素敵Death!!)


『伝道の書に捧げる薔薇』(早)
俺的には「死んでも読め!」といいたい短編集。再版されているという情報があるので是非本屋で見かけたら買っておいてほしい。損はさせない。
個人的には『キャメロット最後の守護者』を押すんだが、絶対手に入らないので我慢。
火星版『舞姫』って感じの表題作のほか、やむを得ず神を演じるはめになった猫人間の話『十二月の鍵』は百回読んでも泣きそうになる名作。
ゼラズニィは詩人で悲劇作家だよ絶対。

『光の王』(早)
この本も手に入るかどうか怪しくなってきた。
神話とSFの融合を試みるゼラズニィの集大成。彼の描くお釈迦様はここまでワイルドでカッコイイ!次々と襲い掛かるインド神話の神々はまるで「新手のスタンド使い!」(読んだ当時JOJOはまだ一部だったしなー)。インド神話の神様って、仏教に取り込まれてるから訳が難しいんだけど(例えば「インドラ神」は日本では「帝釈天」として知られている。「地獄の王ヤマ」はすなわち「閻魔大王」だし)深町眞理子さんの名訳でとても雰囲気バッチグーです。

『地獄に堕ちた者ディルヴィシュ』(創)
『変幻の地のディルヴィシュ』(創)
うう、ぼやぼやしてたらゼラズニィは死んじまうし、創元からいっぱい出てたゼラズニィ本は消えてるしー。って、俺が大学生のとき出た本ってもう10年から前になっちまうんだよね。本屋の本棚にいつまでも残ってろってほうがまちがいかもしれない。
ゼラズニィの描くヒーローはみな「ダーク」あるいは「ダーティー」だ。絶対無敵に強くて、勝つためには手段を選ばなくて、何か公共の正義のためにはなく己の信じる道を貫く為だけに行動する。それは復讐であったり、巨大な野望であったりする。簡単に死んで簡単に地獄から蘇ったりして質が悪かったりもする。
ディルヴィシュも『影のジャック』より入手しやすそうだからという理由でここに書いたが、すでに新品は買えない状態かもしれない。
ディルヴィシュは自分を地獄に送った魔法使いに復讐するため、地獄の生き物を相棒の馬にして蘇ってきた男だ。地獄帰りだし、お供は地獄そのものだし、ふつーの騎士や魔法使いが襲ってきても「地獄にくらべりゃ生ぬるいわぁ!」とかいってあっさりやっつけてしまうところが半分快感。「わしの絶対防御魔法のかかった鎧には傷もつかんぞぉ!」とかいばってるおっさんに、もう地獄そのもののお馬さんがひずめでちょこんと触ったら黒い染みができて「地獄の前には紙もどうぜんよのー」とかいってあっさりそこを剣で突き刺して勝利!とかけっこうゼラズニィ節が効きまくっていて良い。妖精の見えない剣を見切るためには?無論自らの血しぶきで!「覚悟はできてんだろうな!」あぁぁ、ジョジョティック!
(『変幻の地のディルヴィシュ』で完結)

『アイ・オブ・キャット』(創)
「奴は生物、無生物に関わらず変身することが出来る。変身できないものは、複雑な部品を使うもの、化学的な反応をするもの・・・」とここまでくるとターミネーター2のT−1000型を思い出すでしょう。寄生獣のミギーの真似か?とか一部でいわれてましたが、ゼラズニィ先生も「変身獣キャット」という形で既に作品化しており、案外SFでは珍しくないアイディアなのかなー、などと思ったりします。主人公は未来で異星生物ハンターをする最後のインディアンで、なんか読んでるとバオーのウォーケンの姿しか思い浮かんできません(笑)。最後の変身獣キャットを捕獲した主人公ですが、実はキャットには人間並みの知性があって、単なる「動物」として動物園に送られたことに対して激しい怒りをもっています。ある宇宙規模の事件の捜査にキャットの能力が必要になってくるのですが、キャットが協力するために出した条件はただ一つ。「任務終了後、勝負すること」かくして最後のインディアンと最後の変身獣の戦いが始まるのだった。「そ、それは戦士の化粧!」うーん、なんともジョジョティックだよ、スタンド合戦だよ!!


以下続く(予定)....(98.3.26)