##わが心のオールタイムベストSF##

オールタイムなんてものはない!
いきなり矛盾したこといってるなーとは思いますが(笑)。
人の心も体の一部。時間が経てば徐々に変わって行くものです。
それで「オールタイムベストSF」を選べというのも酷な話ですよね。

一時、SFMでも話題になった「SFの冬・ここ10年のSFはくず」発言、日本SFだけでなく海外SFも含めたSF界全体に及んでいる印象が自分の中にもあった。
大学を卒業した92年頃、既に新しい出版物が自分の中のベストを塗り替えることってけっこう少ないように感じたからだ。
と、いうわけで、1998年になってしまった今、「ここ10年」というのは92年 当時から思っていたので「ここ15年はSFはクズ」に訂正したいです(苦笑)。
1950年から80年前半(おお、ニューロマンサーまでか?)が楽しいSFだった気がしますね。その後はテクノロジー汚染が始まってSFが現実に負け始めちゃったからかなーと個人的には思います。
日本SFについては「ヤングアダルト」、つまり大人になった人の為の子供だまし作品が氾濫したために重みのあるSFがへっちまったのかなー、なんって思います。
「活字離れ」が叫ばれる昨今、SF研部員でたとえキャラ萌え「スレイヤーズ」とかでも漫画でなく文字の本を読んでいるというだけでも貴重かもしれないと思いますけどね。

90年代に書かれたSFが心を揺さ振るケースが少なくなったといったけど、再版や古本で古い作品を最近読んだりして順位が変わることもある。
ってなわけで、91年からマイベストSF記録してたんですが、いつからかサボるようになってましたね。SF以外も読もうっていつからか思ったからかなぁ。
私が一番SFに熱心だったのはやはり卒業まぎわの91〜92年にかけてですね。
自分が卒業するにあたって、SF研での活動に何か結果がほしかったのか、それともSF研の先輩が抜けてかわりに大量に入ってきた銀英伝とかライト系ノベルにかぶれた新入生をなんとか啓蒙したかったのか、それともたまたまそんときの趣味が「SF」だったのか・・・。
とにかく、私が91年から92年にしたおもしろい仕事の中で、「SF研が選ぶ100冊」「GENESIS(SF研会誌)掲載作品目録」があります。
後者は未発表ですが、前者は学園祭で売りました。当時の部員からアンケートをとっていて「お、結構『名作』はみんなおさえているんだな」と感心した覚えがあります。
で、それらについてあまり語り合われなかったのはSFに「お手軽さ」がなかったためだと思っています。「キャラ萌え」だってク・メルやシャンブロウよりスレイヤーズだの銀英伝だののほうが簡単だものねー。

私はけしてある作家について「xxの作品だから間違いなく購入&購読」ということはしないタイプだった。好きな作家でも失敗はあるもんだ。
でも、時として例外もある。大槻ケンヂだとか、姫野カオルコだとか、何をやっても「許せる」というか、無条件に受け入れて好きになってしまうことが。自分と感性が近いという判定がくだるとそうなるようです。
作家によっては「一定の質で、一定のノリ」の作品を書いている場合があり、それが好みだった場合は全作品が至上の作品になってしまうという困ったことになる。
海外SF作家で言うと、コードウェイナー・スミス、ロジャー・ゼラズニィがそれに相当する。加えて、嫌いな作品の方が少ない作家になるとジョン・ヴァーリィ、J・G・バラード、ハーラン・エリスン、サミュエル・R・ディレーニィが該当する。
彼らの作品は正直に評価すると全部他の作家の作品の上位に来てしまう可能性が高いので、マイ・オールタイムベストをセレクトするにあたっては1作家1作品に絞る、という制限を入れる事になる。ようするに好きな作家のベスト1を選ぶ作業が既に入るのでその作業だけでも既に楽しいモノがある。毎年その作家の部分だけ入れ替わったりするのだ。まさに、「いとおかし」。

また、こーゆーベストはいかに「とがった内容にするか?」に楽しみがあるので、意図的に「御三家」SFを外したりもします(苦笑)。いや、わざとじゃなくてもハインラインもクラークもアジモフも「よくできました」で以上の感想がない場合も多いんだよなー。映画と同様、SF小説についても「B級嗜好」が強いんだよね。
(学生の頃のメモでは恥ずかしげも無く『幼年期の終わり』や『宇宙の戦士』が1、2位で少し微笑ましくもある。)



そんなわけで参考までに私の今のマイベストSF。 海外については5ではどうやってもたりないんで20にしてみました。(安全係数大)

海外長編

1.『スターシップと俳句』 ソムトウ・スチャリトクル
2.『光の王』 ロジャー・ゼラズニイ
3.『コンピュータ・コネクション』 アルフレッド・ベスター
4.『ハードワイヤード』 ウォルター・ジョン・ウイリアムズ
5.『さよならダイノサウルス』 ロバート・J・ソウヤー

6.『超生命ヴァイトン』 エリック・フランク・ラッセル
7.『太陽神降臨』 フィリップ・ホセ・ファーマー
8.『逆転世界』 クリストファー・プリースト
9.『海魔の深淵』 デヴィッド・メイス
10.『地球最後の男』 リチャード・マシスン

11.『ストーカー』 A&B・ストルガツキー
12.『幼年期の終わり』 アーサー・C・クラーク
13.『ハイライズ』 J・G・バラード
14.『宇宙の戦士』 ロバート・A・ハインライン
15.『キャッチワールド』 クリス・ボイス
16.『降伏の儀式』 L・ニーヴン&J・パーネル
17.『マン・プラス』 フレデリック・ポール
18.『中継ステーション』 クリフォード・D・シマック
19.『人類皆殺し』 トマス・M・ディッシュ
20.『木曜の男』 G・K・チェスタトン


<総評>
無理矢理5位にソウヤーを入れてみた。90年代にもこういう夢のあるSFが書けるという一つの可能性を示した。9位のメイスはいつ消えてもおかしくない。ハードワイヤードを超えるソノラマ的カッコ良さを持つ小説はなかなか出てこない。作品は84年の作。3位の『コンピュータ・コネクション』は『虎よ、虎よ!』と入れ替えされる可能性はあるが、数年は入れ替わらないか。同様に2位の『光の王』もきまぐれに『ロードマークス』に変わる。1位は洒落だが、これ以上に腰をぬかす話にもお目にかかっていない。

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海外短編

1.「しばし天の祝福より遠ざかり…」 ソウムトウ・スチャリトクル
2.「スキャナーに生きがいはない」 コードウェイナー・スミス
3.「さよなら、ロビンソンクルーソー」 ジョン・ヴァーリイ
4.「死の鳥」 ハーラン・エリスン
5.「十二月の鍵」 ロジャー・ゼラズニイ

6.「ちんぷんかんぷん」 エリック・フランク・ラッセル
7.「然り、そしてゴモラ」 サミュエル・R・ディレーニイ
8.「きず」 リサ・タトル
9.「サンドキングズ」 ジョージ・R・R・マーティン
10.「我が心のジョージア」 チャールズ・シェフィールド

11.「コー川の罪喰い」 ブラッドリー・デントン
12.「時の声」 J・G・バラード
13.「ガーンズバック連続体」 ウイリアム・ギブスン
14.「接続された女」 ジェームズ・ティプトリー・Jr
15.「闘士ケイシー」 リチャード・M・マッケナ
16.「鉛の兵隊」 ジョーン・D・ヴィンジ
17.「ブロードウェイ上空三〇分」 ハワード・ウォルドロップ
18.「ミラーグラスのモーツァルト」 B・スターリング&L・シャイナー
19.「九月は三十日あった」 ロバート・F・ヤング
20.「広くてすてきな宇宙じゃないか」 ヴァンス・アーンダール


<総評>
1位から5位はここ6年間不動。もう無理か?10位には95年の「我が心のジョージア」。丁度バベッジ熱が出ていたので95年当時はもっと上位だった。その上の話の存在感の強さに負けたのだ。同様に11位の「コー川の罪喰い」は92年にはもっと上位だった。短編は受賞作なんかだと結構いい線いくのだが。時が経っても評価が残るかが課題。

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国内については恥ずかしながら分母が小さすぎます。短編はSFMで読んだ草上仁がいっぱいになってしまうのでそれ以外の10にとどめました。(要勉強)

国内長編

1.『百億の昼と千億の夜』 光瀬龍
2.『石の血脈』 半村良
3.『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』 村上春樹
4.『総門谷』 高橋克彦
5.『サイボーグ・ブルース』 平井和正

6.『戦闘妖精・雪風』 神林長平
7.『復活の日』 小松左京
7.『継ぐのは誰か』 小松左京
9.『FUTURE WAR 198X年』 岩野正隆
10.『19分25秒』 引間徹

11.『戦闘員ヴォルテ』 谷甲州
12.『ふたり』 赤川次郎
13.『地球0年』 矢野徹
14.『処女少女漫画家の念力』 大原まり子
15.『新興宗教オモイデ教』 大槻ケンジ
16.『愛と幻想のファシズム』 村上龍
17.『ゲルニカ1984』 栗本薫
18.『龍は眠る』 宮部みゆき
19.『火星甲殻団』 川又千秋
20.『エメラルド妖麗伝』 竹河聖


<総評>
国内は読んでる数が絶対的に少ないので「もっといいのがあるでしょ」的な思いが強い。村上春樹を食い込ませてから上位5位は不動。10位の『19分25秒』はもっと世間に知られていてもいい作品だとは思うがSFか、というカテゴリ分けに自信がない。これは他の作品にもいえるかもしれない。



国内短編

1.「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」 大原まり子
2.「雨の檻」 菅浩江
3.「消えた神の顔」 光瀬龍
4.「遥かなる巨神」 夢枕獏
5.「太陽風交点」 掘晃

6.「星空のフロンティア」 谷甲州
7.「ネプチューン」 新井素子
8.「邪眼」 柾悟郎
9.「滅びの風」 栗本薫
10.「白壁の文字は夕陽に映える」 荒巻義雄


<総評>
国産短編はSFMでもっと読んでいるはずだが、全体的に印象に薄いので書けないのだった。多分、再評価すればもっと順位が変わると思う。早く1位の作品を忘れさせて欲しいもんである。(できりゃ30前にね)




ちなみに、SF研が選ぶ100冊のとき、得票が多かった作品を思い出してみると、
海外では
・幼年期の終わり
・宇宙の戦士
・夏への扉
・アルジャーノンに花束を
・楽園の泉
みんなクラークは読んでるけど、アジモフ・ハインラインは読んでいなかった。
国内では
・戦闘妖精 雪風
・<銀河英雄伝説>
・<航空宇宙軍シリーズ>
・<火田七瀬シリーズ>
・ドグラ=マグラ
私がほとんど読んだことのない筒井の本をみんな読んでいた。
大原まり子よりも新井素子の方が読まれていた。ただし、単一の作品に票は集まらなかった。谷甲州についても同じ。
漫画やアニメ作品を書いてくるヤツも多かった。百冊、ということで本ならOKした。
これらは一部ワープロ「Rupo90」にデータ化されていたが、力つきた形跡がある。
まだパソコンに復帰したばかりの頃だったので資料はすべてワープロ内だった。
手間はかかるが、文書コンバータもあるので機会があったら91年当時のSF研が選ぶ100冊をアップしてみようと思う。入手不能な本がどれくらいあるか、考えただけもぞっとするが。


(各作品への一口コメントは次回更新時)

(98/5/24)