姫野カオルコ単行本リスト


実は姫野さんのSM小説を読んだことがありません。
ファンなら死んでも読まねば、と思うところではありますが…。
よって、SM作家でなくなってからの姫野さんの単行本リストです。

12冊の小説と7冊のエッセイがあります。
11冊は文庫化です。文庫になる時、出版社が変わってタイトルも変わることが多いようです。



<<小説>>

チゴイネルワイゼン (双葉社) 1988年
ひと呼んでミツコ (講談社) 1990年3月
空に住む飛行機 (主婦の友社) 1992年2月
四角関係 (講談社) 1992年10月
変奏曲 (マガジンハウス) 1992年11月
ひと呼んでミツコ (講談社文庫) 1993年4月 文庫化
空に住む飛行機 (講談社文庫) 1994年4月 文庫化
喪失記 (福武書店) 1994年5月
短編集H【エッチ】 (徳間書店) 1994年10月 短編集
変奏曲 (角川文庫) 1995年1月 文庫化
ラブレター (光文社) 1996年4月
愛はひとり (幻冬舎) 1995年9月 短編集
不倫【レンタル】 (角川書店) 1996年7月
喪失記 (角川文庫) 1997年2月 文庫化
受難 (文藝春秋) 1997年4月 第117回直木賞候補作品
H【アッシュ】 (徳間文庫) 1997年9月 『短編集H』の改題・文庫化
ドールハウス (角川文庫) 1997年10月 『空に住む飛行機』の改題・再販
A.B.O.AB (集英社文庫) 1998年2月 『四角関係』の改題・文庫化
整形美女 (新潮社) 1999年1月
終業式 (新潮文庫) 1999年3月 『ラブレター』の改題・文庫化


<<エッセイ>>

ガラスの仮面の告白 (主婦の友社) 1990年2月
恋愛できない食物群 (毎日新聞社) 1991年11月
ガラスの仮面の告白 (角川文庫) 1992年9月 文庫化
禁欲のススメ (角川文庫) 1993年10月 『恋愛できない食物群』の改題・文庫化
愛は勝つ、もんか、 (大和出版) 1994年10月
ブスのくせに! (毎日新聞社) 1995年10月
バカさゆえ…。 (角川文庫) 1996年7月
初体験物語 (朝日新聞社) 1997年11月
みんな、どうして結婚してゆくのだろう (大和出版) 1997年12月
初体験物語 (角川文庫) 1998年11月 文庫化




作品一口コメント


一応発表順に一口コメントを書いてみました。
タイトルは文庫で現在入手が簡単だと思われる方を記述してあります。
けっこー内容って忘れちゃうもんですねぇ。と、いうわけで前後の作品の内容と間違って記述してる可能性もあります。(これから内容検証します…)


<<小説>>
チゴイネルワイゼン(双葉社)
実は唯一読んでいない作品だったりします。当時、一緒に姫野にはまっていた後輩に聞くと、「いつもと一緒」だったそうです。「ミツコ」と「空に住む飛行機」の原形か?

ひと呼んでミツコ(講談社文庫)
女が堪え忍ぶ時代は終わった?!そこのけそこのけ、姫野が通る。という感じで自分のやるせねー境遇を吹き飛ばそうとする怒り爆発型小説。

ドールハウス(角川文庫)
こればかりは「空に住む飛行機」(講談社文庫)のタイトルで読んでいただきたい。
ミッシェル・ポルナレフの同名の曲から構成されるチャプターが果てしなくオセンチ。
まるで詩の様に一人の女性の失恋とそれによる自立=再生が描かれている。
個人的にはこういう「季節」みたいなものが俺にもあったように思えてえらく共感。泣きました。
これは女性の為の本ではない。男も読め!

A.B.O.AB(集英社文庫)
占いは信じる信じない?星座や血液型による分析を信じる信じない?
俺は信じる信じないに関わらず「因縁めいたもの」がそれらの記号の中にあると思う。
好きになる男が必ず「××座の×型」だ、と嘆く姫野さんの思い描く血液型タイプ分けシミュレーション小説。あたらずとも遠からずな恐怖がそこにある。

変奏曲(角川文庫)
この頃、オオケンも「月刊カドカワ」に連載を持ち、角川から本を出すようになる。TVや雑誌への露出度が高くなる。で、姫野さんも出した本が角川に文庫落ち、なんてことがあったせいか知らないが、オオケンとお互いの本の後書きを書きっこしたりしている。
で、そんな姫野さんはケンちゃんという義理の弟に「お姉さんって呼んでもいいのよ」といってHしちゃう小説を即発表。……だから、そーやってすぐ自分の願望を切り売りするのはやめなさいってば。
文体は全体的にお耽美。

H【アッシュ】(徳間文庫)
姫野さんの短編はほとんどエッセイと変わらない。エッセイで「男の人はこうあるべきよ、無論女はこうあるべき」といったことが登場人物に反映されてるし、「あのとき、私はこうして欲しかった」みたいなことがこうされちゃってたり、やっぱりされてなかったりしているのです。前者は欲望実現型、後者を怒り爆発型、と呼んでいます。
比較的欲望実現型の作品集。

喪失記(角川文庫)
「空に住む飛行機」を第一弾とする<処女3部作>の第二段。おそらくこの作品を書いた時点で<処女3部作>構想ができあがったと思われる、鋼鉄の処女・姫野の中核をなす作品。
前後の2作が前向きに終わっているのに対して自分を厳しく見詰め直して終わっている本作品こそ姫野文学の底辺を支えるものかもしれない。
衝撃の「一人破瓜シーン」を貴方はどう受け止めるか?

愛はひとり(幻冬舎)
「H」がタイトル通り、エロス文学を実験的に目指したとするならば、こちらはあくまでストイック。それゆえより一層エッセイとの境が希薄になってるような気がします。
どーしてうまくいかないの型作品集。

終業式(新潮文庫)
これも「ラブレター」(光文社)の方がしっくりくるなぁ。姫野さんは短編作品で良く実験的な物を書いているが、これも全面が「手紙」という形式を取っており斬新奇抜。
姫野節はそこそこに抑えられ、人生の機微をうまく綴った秀作に仕上がっている。
70年代から80年代を学生として生きてきた人たちの青春グラフティとしても最適。

不倫【レンタル】(角川書店)
<処女3部作>のトリである。ここに登場する主人公たちは同一人物でも関連性もないが、共通しているのはまちがいなくモデルが姫野さん自身である、ということだ。
「空に住む飛行機」が実家をでる頃、「喪失記」が作家として一人だちをした頃、そしてまぁ、ファンなら知ってることだが彼女がいれあげていた某有名作家との関係を綴ったのがこの作品。でも、エッセイ等から推察するに結果として一番虚構が多い作品になっているのではないかと思う。
人生の再出発、というよりは気に入らないものは蹴飛ばして強く生きよう!みたいな本。

受難(文藝春秋)
これはもう、是非直木賞を取って欲しかったですね。もう、半分泣きながら大笑いして読みました。
何もかも吹っ切れて「悟り」の境地にいたったのか?姫野ついにメジャーになるのか?と思った作品。
だってー、あんまりにも使わないからってあそこに人面疽が出来て、あまつさえそれに「古賀さん」という名前をつけて話相手とかにするなんて、もうやけっぱちみたいじゃん(笑)。
ついに自分の怒りや欲望をメルヘンの域に昇華させた、姫野文学の頂点。是非、一般民間人に読んでいただきたい。

整形美女(新潮社)
「受難」でニュー・シルヴァーバーグならぬニュー・姫野路線を切り開いたか、と思っていたので非常に期待過剰なまま読んでしまったが、感想としては結局元の作風のままであった。
女性の内面と外面のありかたについて、自然と不自然との境界について真正面から取り組んだ作品。


<<エッセイ>>
ガラスの仮面の告白(角川文庫)
おそらくこれが姫野先生とのファーストコンタクトではなかったか。その奇妙な響きのペンネームと本作品の奇妙な響きで手に取ったのだと思う。
漫画のタイトルをもじった各チャプターの付け方が素敵。充分笑える。

禁欲のススメ(角川文庫)
タイトル通りの<鋼鉄の倫理観>に縛られていた俺にとって目から鱗の大傑作。
<あ>〜<ん>までのチャプターで構成されていてとってもお洒落。
プリズナーについての記述、3行。うなぎについての記述1行。ライブオナニー遭遇記、3章。

愛は勝つ、もんか(大和出版)
姫野さんが世間一般にある恋愛の幻想を打ち砕く!
各女性誌へ掲載されたエッセイをまとめたもの。これが載ってる雑誌を見た女性の考え方を改変できたのか、そこらへんに興味がある。
幻想抱いていないで現実を見ろ!という姫野先生の叱咤が炸裂。
『どうすれば恋愛上手になれるの?』とかゆー特集号で「化粧をする暇があるなら本でも読んで自分を磨け」という発言をしてるのは彼女だけだった。
ちなみにどのパソコン雑誌もWINDOWSをよいしょしてるなか、『ウインドウズのトラブル解決法100』とかゆー特集号で「もっとも良いのはWINDOWSなんて使わないことです」という発言をしたスタパ齋藤先生も俺は尊敬している。

ブスのくせに!(毎日新聞社)
今度は世間一般でうまくいってる連中をやりだまにあげて、「もてないあなた、がっかりしないで。そんなあなたはきっと素敵。だーって、もてる女なんてこぉーんなにあざといのよ。人間失格よ」みないな文章を書いている。これで救済されている全国のもてない系の女子は果たして何人いるんだろうか?
タイトルの後ろに続く言葉は「私より充実したSEXライフを送りやがって」であることは言うまでもない。

バカさゆえ…。(角川文庫)
この本はタイトル通り、姫野さんの妄想ワールドがえんえんと繰り広げられるだけのお笑い本なので、人生の教訓みたいなものは一切得られません。笑って済ませましょう。
特に「あしたのジョー」を見ているときの妄想の激しさは俺の「西荻版エヴァンゲリオン」の5倍ぐらい強烈。(もうそのへんで勘弁してやれ、って感じ)

初体験物語(角川文庫)
ダ・カーポに連載されていたものを編集して1冊にまとめたもの。実際はあと一冊分くらいあるのではないだろうか?
キリスト教的倫理観を植え付けられてこの日本で生きてゆくにはあまりにつらすぎる、ってゆうかジャップの男子、おめーらあまりにも見る目ねぇよ、ってゆうかフィーリングあわねぇよ、こっちからおサラバさ、へん!といわんばかりに日本からスウェーデンに脱出してしまった姫野さん。村上春樹のようにずーっと国外で仕事するのか?それほど嫌なことがあったのか?と思ったが無事に帰ってきたようだ。
つまり、外国にいったらそれはそれで価値観があわなかったらしい…。
旅行記みたいな部分が多いので俺の評価はイマイチだったりするが、充分笑える。

みんな、どうして結婚してゆくのだろう(大和出版)
もう、タイトルそのまんまです。これが女性誌の『結婚特集』とかにたまーに載っちゃってるのかと思うとなかなか目眩がする内容です。
「そんなもん、しなきゃいけないと思ってるのが幻想よ」「したくたって相手がいなきゃしょうがないでしょう」わかった、もうやめてくれ姫野さン。
女がそう思っているのと同様に男もそう思ってる人はいるんだからさ……。



──1999.03.05.