とってもプリズナーな本たち



世界の終わりとハードボイルドワンダーランド(新潮文庫) 村上春樹 著
高い壁に囲まれ、外界との接触がまったくない街、『世界の終わり』。
老科学者によって組み込まれた特殊な思考回路をめぐって「組織(システム)」「工場(ファクトリー)」間の抗争に巻き込まれる主人公が活躍するスパイアクション風の『ハードボイルド・ワンダーランド』。
この平行して進められる物語が一つに融合するとき、和製プリズナーが誕生する。
非常に完成度の高い不条理モノと言えましょう。
プリズナーはその難解なところがおもしろいんですが、こちらはすべてに一応つじつまが合う回答が用意されている。ま、この程度の回答ならノベライズ版でもされていますが。
買った当時は『世界の終わり』のパートだけなんども繰り返し読んで泣きそうになりました。今ではどちらの世界も好きだけどね。
特にどの文献にもこの作品とプリズナーNo.6の関連性は語られていないが、偶然にしては出来すぎの感もある。(無粋かな〜)
勝手にビレッジマップの日本語版とかいってるのはこの『世界の終わり』の街の地図です。


木曜の男(創元推理文庫) G.K.チェスタトン/吉田健一 訳
ブラウン神父の推理モノでお馴染みチェスタトンの知られざる名作。
ロンドンに暗躍するアナーキスト秘密結社の「王室を爆弾でぶっとばしちゃえ」計画。
詩人ガブリエル・サイムはその陰謀に巻き込まれ、敢然と立ち向かって行く。
日曜は誰だ?何処にいる!
お前は木曜だ。木曜にはその権限が与えられていない」
「そういうお前が新しい月曜か? 私を曜日で呼ぶなー!」(<−これはウソ)
という、マジでプリズナーの7曜版Death。
おちがスゲーところもプリズナー。しかも7−1=6という関係もGOOD!


地図にない町(早川文庫) P.K.ディック/仁賀克雄 訳
知る人ぞ知るSF界の重鎮、ディックのしかもハヤカワのくせに「SF」ではなく「NV」の文庫。
幻想短編集と銘うたれている。私はディックは短編が好きなんだけど、ここに収録された
同名の作品は実にプリズナーな内容である。
プリズナーは朝目が覚めると主人公は見知らぬ「村」につれてこられ、そこはどこの村かわからないわけだけど、この作品は逆。自分の越してきた町を知っている人がいないのだ。
自分は越してきたのに!
・・・ま、きちがいディックにしちゃーハッピー(笑)エンド。


囚われの世界(サンリオSF文庫) ハリイ・ハリスン/島岡潤平 訳
死んでも買えない、手に入らない本シリーズ、といえばサンリオSF文庫。
紹介しても誰も読めないんじゃ意味ないでしょ、と叱られてもオレはやるのだ。
これも別の意味でプリズナーの対局に位置する話。
巨石に閉鎖された世界に生きるアステカ人の村。チマルは掟を破って脱走を試み、
処刑されそうになるが、脱走、「世界」からの脱出に成功する。
ネタ的にはディックの十八番だが、ハリスンが書いているので只ではすまない(笑)。意味不明だ。


禁欲のススメ(角川文庫) 姫野カオルコ 著
僕の大好きな姫野センセの露悪趣味エッセイ。
「あ」〜「ん」までの50音で一話がなりたっているが、
なんと「お」が『オレンジ』で、
「オレンジ警報発令」である!読んでいて飛び上がって喜んだのは云うまでもない。
せっかく3行だからまるまる引用しよう。

オレンジ警報発令−−−。昭和45年ごろ、NHKで放映されていた『プリズナーNo.6』は、ダリやキリコの絵の中に入れ込まれたようになる奇妙なドラマだった。当項では私の奇妙な体験を話す。

the Prisoner が日本で『プリズナーNo.6』として放映されたのは、おりしも私が生まれた年、
1969年−昭和44年のことでした。そーゆーことだよ、姫野センセ!


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