解説
いやー、17の時ほどおもしろく書けませんでしたよ、マックボーガー。
17の時もそうだけど、この手の特撮って、そのままでも十分おかしい(笑)ので、下手な脚色するよりも文章でいかにそのおかしい部分を伝えられるかが勝負だとおもいます。ザボーガーも不幸にしてあまり再放送されていない作品です。実は密かにLD化もされていたんですが私は買い逃しました(涙)。
(数年前に某ケーブルテレビの番組欄で見かけたのが最後か?ビデオはずいぶん前に出ていた)
ただ、「たけしのスーパージョッキー」で変な番組として何度もとりあげられており、それなら見たことがあるという人も多いかもしれません。
この小説もめちゃくちゃですが、「なんかヘン」と思われているところこそ、本物と同じ様に描いてる描写です。(たとえばいきなり主人公がいきなり死ぬくだり)覚えてる人はコレをたよりに電人ザボーガーの一話の記憶をたぐってみてください。

p.s.
で、97年12月に私が買い逃したLDボックスが再版されました。でも、お金がなかったのでやっぱり買えませんでした。このようにLDで過去の作品を簡単に復活させられると私のような記憶自慢の記憶も自慢にならなくなってきてちょっと悲しい。
ま、検索エンジンとしての能力は何者にも負ける気しないけド。



電人マックボーガー

第1話『戦え!電人マックボーガー』

「できた、できたぞ!」
「博士、おめでとうございます」
「おとうさんおめでとう」
日本が世界に誇る情報工学の権威、幕練博士はついに長年の研究のすえ、画期的な「邪場合金」を完成させていた。「邪場合金」を使えば、どんなコンピューターのCPUも今までの技術の100万倍の集積度で作成が可能で値段も一個10円くらいになって、しかも超伝導効果によっていかに重いOSもさくさく動いてしまうというまったく困った発明だった。
「これで作ったパソコンで坂村博士のスーパーGトロンが動くようになれば、日本のコンピューティング技術は世界の頂点に立てますね」
「そうだな、この成功を早速坂村博士と大門博士に伝えねば」
この技術が新聞のトップ記事を飾ったころ、一人の科学者の目に邪悪な光りが宿っていた。

日本コンベンションセンター。そこで幕練博士は講演会を開くことになっていた。
「おめでとう、幕練くん」エリソンもはだしで逃げ出すほどりっぱな髭を生やした老紳士に声をかけられ、幕練は振り返った。
「大門博士、ありがとう。研究は進んでおられますか?」
「ぼ……ぼちぼちでんな……」
今にも死にそうなよぼよぼさかげんに絶句する幕練だったが、この大門博士は「ダイモニウム」という超合金でとっても便利なパソコンを作ることで有名な日本でも指折りの情報工学の権威だったのだ。
「お父さん、そろそろ会場へ行かないと」
娘のマキにせかされた幕練博士がイベントホールへ向かおうとしたその時!
ぼがーーーん!
突如床を突き破って、2本の巨大なマジックハンドが飛び出してきた。
「きゃーーーー」マキが悲鳴を上げる。
鉄の魔人。鉛色でピエロのような顔をしたその人型のロボットはマジックハンドで幕練博士の首をとらえた。
「うげっ」
「お父さん!」
ロボットは幕練を連れ去るつもりだ。
一部始終をぷるぷる震えながら見つめていた老人はその手に持っていたステッキを魔人に向けた。
ドガガガガガガガガガ……・
信じられないことにステッキからは5.56ミリ鉄鋼弾66連発発射され、ロボットは一気に蜂の巣になった。
「お父さん!大丈夫?」マキは父に駆け寄った。
「ああ、大丈夫だ」幕練博士は首をさすりさすり答える。「大門博士、ありがとうございました。しかし、この怪ロボットはいったい?」
老人はステッキの先で床に転がるロボットの頭をこずいた。額には流れる窓のマーク
「動きだしたな、下逸乃宮……」一人、冷たい目でつぶやく。

男は返ってきた。精悍な顔立ち。ダークスーツ。光るレイバン。
男は日本国際空港に降り立ち、車を拾おうとしていた。
「ユカタさーん」
「こっちこっち」
男を迎えに来ていたのは幕練マキと坂村マサルだった。
「やぁ、ひさしぶり。マキさんはきれいになったな。マサルくんは大きくなったな」
男の顔から笑みがこぼれる。
彼の名は「大門ユカタ」。彼は秘密刑事である。
彼はアメリカにある秘密刑事養成所での厳しい修行に耐えて、故郷である日本に帰ってきたのだ。
父の命を受けて……
マキの車へ歩み寄るユカタ。その彼を数人の黒づくめの男たちがとりかこんだ。殺気立つユカタ。
「大門ユカタ、だな」
「だったらどうする?」
「死んでもらう!」
男たちは手に手に飛び出しナイフを持ち、ユカタに切りつけてきた。
どぉぉおぉおおおおりゃぁぁああああぁあ!!
破裏拳ポリマーの声優、曽我部さん
もびっくりの唸り声を喉の奥底から絞り出し、ユカタの両目がカッと見開かれた。
切り付けたはずの男は腕を取られ、ひねりあげられ、みぞおちにきつい一発が入る。
おらららららおら!
スタープラチナ
のような連打が叩きこまれ、男は地に這う。
後ろから切り付けた男は背負い投げ、挙げ句に馬乗りになって顔面に渾身の一撃が入る。すかさず横転し、回し蹴りをみまい、相手の動きが停止するまで容赦ないストンピング。そんなこんなで男たちは全員のびてしまった。
「すげー!まるで実写版のガッチャマンみてーだ!」マサルは痺れ、あこがれた。
タツノコの名作、ガッチャマンは実は今見るととても正視に耐えられないほどひどいアクションでギャラクターをめった打ちにするアニメで全米23州で上映が禁止されてしまったほどだ。アニメならまだしもそれを恥ずかしいまでのオーバーアクションで実演してしまうこの男は……
「すてき、ユカタさん!」抱きっ!マキはユカタに抱きついた。
「む!」ユカタは黒ずくめの男の一味が車の影にまだいることに気が付いた。
「危ない!」
ズギューーーーン!
一発の弾丸がユカタの胸を貫いた。
「!ユカタさーん!」

ぴーーーーーーーーーーーーーー
心臓の鼓動を示すオシロスコープは悲しいくらいまったいらだった。
「残念ながら、彼の心臓は停止しています。ご臨終です。ご愁傷さまです」
「そんな、いやっ!ユカタさん」マキは病院で泣きくずれた。マサルも半べそだ。
「インターポールからの応援が、到着そうそうこんな目にあうとは……」
警視庁の敏腕、襟村警部もユカタの亡骸を前に絶句していた。彼は最近起こっている一連のロボットによる科学者ら致、未遂事件を担当しており、ユカタの捜査協力者になる男だった。
どっくん!
その時、ユカタ胸が大きく波打った。
ばばばばばばばっばばばっ!
突如ユカタの全身がスパークした。
「うわっ!?」「なに?」
どくん・どくん・どくん・
心電図も元気良く波打っている。
「なんだ?なにが起きたんだ?」
医師が慌てて脈をとる。

その頃、幕練邸。(純和風)
ちゃーちゃらっちゃー!ちゃちゃちゃーん!
特攻野郎Aチームのテーマ
に乗って突然車が邸宅に突っ込んできた。
「うわー、な、なんだ」
乗用車に見えたが、そのてっぺんにはブルドックのような顔がついている。
その口が開きブラウン管がにょきにょきと生えてきた。
「……やぁ、おはよう。幕練くん」
金髪のまき毛、銀縁の眼鏡、とがった鼻、欠けた前歯。顔の半分は機械で覆われており、まるでボーグに改造されたピカード艦長のようだ。醜悪な笑みがそこにはあった。
「だ、誰だ貴様は!」
「……私の名は下逸乃宮。君の開発した邪場の秘密を私に渡してもらおう。さもなくば、私の元に来てもらうことになるが……」
すごくおちつきなく、ロッキングチェアを揺らしながら画面の男はいった。
「断る!」強い意志力で幕練は即答した。
「では死ぬしかないな、幕練くん!」
車のボンネットからマジックハンドが伸びる!
ガガガガガガガッガガ……
またしてもそこには機関砲を持った大門老人が現れ、マジックハンドをなぎ払った。
「幕練くん、逃げたまえ!」
「大門博士!」
「ここはわしにまかせるんじゃ」
ほうほうのていで逃げ出す幕練。
「ひさしぶりじゃのう、下逸乃宮」
「フン、老いぼれMEGA。まだ私の邪魔をする気か!」
どががががが……
機関砲がブルドック顔に打ち込まれる。が、それは無傷だった。
「死ね、大門。我が殺人ロボ、ブル・ゲイツの威力を見よ!」
ボンネットがガバリと開いた。


アイキャッチ


「いやー、信じられませんな。息を吹き返すとは」
「このレントゲンを見てください。ここ、ここに何かペースメーカーみたいなものが」
医師の示したレントゲン写真にはあからさまに安いプリント基板が写っている。
「いやぁ、俺、これでも子どものころは虚弱体質で。心臓も弱かったものですから、父が作ってくれたんですよ、この電極回路
「なるほど、それで貴方の不死身の理由がわかりましたよ」医師はあっさり納得した。
「子供のころ虚弱体質?それが今じゃ死の淵からも蘇る鋼鉄の秘密刑事か、」
がはははははは、と襟村は笑った。
そこへマキが駆け込んでくる。
「大変よ、ユカタさん!おじさまが!」

一回死んだくせに包帯まいただけでユカタは退院し
、幕練邸に向かった。

そこは凄惨な光景だった。幕練邸の壁はぶちやぶられ、その破られた壁と反対側には
人型の血のりがべったりとこびりついていた。それがユカタの父の変わりはてた姿だった。
「と、父さん……」
「すまん、ユカタ君。大門博士は、私をかばって……」
言葉を失うユカタに襟村があごをしゃくった。
「見ろ、あのマーク。また奴等だ」
みれば血の海の中に焼けこげた流れる窓のマークがあった。
「奴等とは?」
「わからん。ただ、恐るべき科学力をもった犯罪集団、としかいいようがない」
「すいません、今日は家に帰ってじっくり考えたいんです……」
「わかったよ」襟村はユカタの肩を叩いた。

ひとり、暗い家に帰ってきたユカタ。
(……お父さん。すいません。せっかく帰ってきたというのに。僕は何もできなかった……)
うな垂れるユカタ。
「おかえり、ユカタよ」
その時、突然父の声が響きユカタは飛び上がった。
見れば壁に映写機で父の姿が浮かびあがっている。
「父さん、これはいったい?!」
「ユカタよ、これを見るとき、私は死んでいるだろう。私が死に、おまえがこの家に帰って来たとき、この映像は流れることになっているのだ」
さすが父さんですね!父さん、父さんを殺したのは一体何者なんですか、教えてください!」
おいおい、映写機に聞くなっつーの、と突っ込む者もなくフィルムの中の博士は語る。
「この一連の犯罪には恐ろしい男の陰謀がかくされているのだ。やつの名は下逸乃宮博士。かつて私とともにコンピュータの研究をし、世界征服の野望に取りつかれた恐ろしい男だ」
「げいつのみや?」
「彼は持てる科学技術のすべてを動員して作り上げた犯罪組織MS団を率いて、なにか大きな陰謀を企んでいる。私は彼の起こす科学的な犯罪を捜査し、支援するパソコンの開発に全力をつくし、完成させておいた」
「さすがです!父さん」
「これを受け取れ、ユカタよ」
ういーーーん、と壁が開き仏壇のようなものが現れた。
それはロボットの顔のついた巨大なタワー筐体だった。顔には横線が入っており、6色の虹で作った林檎のようなデザインだった。
「これが、犯罪捜査パソコン『マックボーガー』だ」
す、すごい、これがマックボーガー……!
誰がどう考えてもだっせーデザインで一つも使いたくない感じのそのパソコンにユカタは頬擦りし、うっとりしていた。
「はっ、父さん、電源が……パワーオンキーがありません!キーボードも、マウスもディスプレイも!」
だから映写機にきくなっつーの。でも、ほんとそれじゃ使えないよね。
「ユカタよ……」もはや「たーけーしーよぉぉー」のダイバダッタに近い声でビデオはささやく。
「電源はおまえだ!おまえの中に電源はある」
「俺の?」
「お前の体には『怒りの電流発生装置』が内蔵されている。その特殊な電流でしかマックボーガーは動作しないのだ。下逸乃宮を許さない怒りの心がマックボーガーには必要なのだ」
ユカタの脳裏には病院でみた己の胸部レントゲン写真が思い浮かんでいた。
「そしてMacOSは音声コマンディング可能だ。ただし、ネイティブ・アメリカンの発音しか受け付けんがな。そのためにお前をアメリカにやっていたのだ。これを使え」
ドリフの金たらいのようにそれは天井からユカタの頭上におちてきた。
液晶ディスプレイが内蔵された超イカスバイザーとヘッドフォンとマイクロフォンがセットされた超サイバーな感じのヘルメットだった。
「タワー筐体でモバイルするための最高のインターフェース、『モバイルX』だ。叫べ!ユカタ、
『電人マックボーガーGO!』だ」
超イカス電子デバイスを前に思わずユカタの全身は盛り上がっていた。
モバイルXと呼ばれたそのメットを装着し、バイザーをおろす。マイクロフォンを口の前に合わせる。
「電人マックボーガー、GO!」
ばりばりとユカタの全身がスパークし、タワー筐体にそのスパークが延びて行く。
きゅぴぃぃーーーーん!
タワー筐体に付いた顔の目玉がびかびかと光る。
カシーン。延びる腕。
カシーン。延びる足。
カシーン。格納されるタイヤ(?)。
マグマ大使もビックリの、んげーはしょった変形描写によって、タワー筐体は等身大の人型ロボットになっていた。
「ゆけ!ユカタ!倒せゲイツを!」
男はガァアァアアッツ!ガッツ石松直伝のガッツポーズをユカタはとった。

「じゃまな大門のじじいも死んだ。ブル・ゲイツよ、今度こそ幕練から邪場の秘密を奪ってくるのだ!そして幕練は殺せ!」
下逸乃宮は機械の目玉をビカビカ光らせて殺人犯罪ロボに命令を下した。

幕練博士の革命的発明が敵の狙いだとわかり、博士は別荘に身を隠していた。無論、襟村警部他、警察の護衛付きでだ。

ちゃーちゃらっちゃー!ちゃちゃちゃーん!
特攻野郎Aチームのテーマに乗って突然車が邸宅に突っ込んできた。
「うわー、まったく同じ手口だけど、どうしようもないーーー」
襟村も部屋の端までぶっとばされ、車のボンネットから延びたマジックハンドに幕練博士は捕らえられ、無理矢理車の助手席に格納され、そのまま連れ去られてしまった。

ぶるぶるぶる……
一見ただのオート3輪に見え無くもないが、ユカタの乗ったミゼット改が事件現場に到着した。荷台部分には顔の付いた巨大なタワー筐体が積んであり、はっきりいってガソリンスタンドに寄るのはかなり恥ずかしい感じだ。だが、ユカタはみじんもそのようには思っていない。
「すまん、大門くん。オレが付いていながらこのざまだ」
「襟村さん、あとはこの俺と俺の兄弟『マックボーガー』にまかせてください」
「まっくぼーがー?」
「さぁ、マックボーガー、お前の出番だ!」
search & pursuit
そうユカタはマックボーガーに命令した。すると見よ!マックボーガーに付いた頭の部分が左右にパカッと割れて中からヘリコプターが飛び出した。
(げ、こいつ頭空っぽじゃん!)と、襟村は思ったが口には出さなかった。
続いてばかっと筐体の側面が開いたと思うとコードのないMacの角マウスが飛び出していった。なんかラジコンカーのような動きでそこいらじゅうを走り回っている。
やがてそれらはビカビカと目玉を光らせて外へ飛び出した。敵のロボットを追跡出来る材料を見つけたらしい。
犯罪捜査用パソコンってこーゆーことかよ!って突っ込みは不要だ。
「どうやら、犯人の追跡が始まったようです。行きましょう」
しかし所詮、マウスと直径10cmのローターのヘリコプター。移動速度は自転車の10分の1にも満たないのではないか。と、やきもきする襟村に対してユカタは
「凄い、凄いぞ父さんの作ったマックボーガー」とか一人でHER、HERしているのだった。
なんかあからさまに石切場らしいところで、ユカタ達は敵の犯罪ロボに追いついてしまった!さすがすぎるぞマックボーガー!
「まてェぃ!」乗用車型のロボの前に立ちふさがるユカタ。だが、相手は馬鹿の下逸ロボである。勝手に一般保護エラーでもでない限りは止まるはずもない。
勝手に立ちふさがったあげくにユカタははねとばされてしまった。
一気に血まみれである。
「くっそー、下逸乃宮め!」ユカタの感情は勝手な逆恨みによって頂点に達した。
「電人マックボーガー、GO!」
ばりばりとユカタの全身がスパークし、タワー筐体にそのスパークが延びて行く。
きゅぴぃぃーーーーん!
タワー筐体に付いた顔の目玉がびかびかと光る。
カシーン。延びる腕。
カシーン。延びる足。
ビカビカ光る目玉!
完成、ダイナ・ロボ!とポーズを決めたいくらい決まりすぎていた。クレヨンで描いたようなビカビカも後光のように光っている。
「さぁ、マックボーガー、後は頼んだぞ!」
しかし、かっこよく登場したマックボーガー(ロボ形態)だが、つったったままだ。
逆にブル・ゲイツはマックボーガーの姿を見て停止した。
「どうした、マックボーガー?!」焦るユカタ。
ブル・ゲイツはボンネットよりマジックハンドを伸ばしてマックボーガーにダブルチョップを食らわした。キカイダー直伝である。マックボーガーはよろけもせずにその場に立っている。びくともしないところはさすがだ。
「はっ、しまった。マックボーガーには『人工知能AI』は内蔵されていない!1から10まですべて命令しなくてはならないのか?!」
そうなのだ。歩けとか追えとかそーゆーレベルでいいから命令しなければ何一つしない。鉄人28号型ロボの悲しい性と言えよう。そういう意味では「ロボ、がんばれ!」で一次冷却水の涙を流しつつ頑張ってしまうジャイアント・ロボはかなり偉いロボだといえよう。
「コンチクショー!めんどくせー!殺レ!マックボーガー!KILL! KILL!!」
もはや死ね死ね団なみに貧弱なボキャブラリーでユカタはマックボーガーに命令した。
舶来のMacOSなどではなく、アプティバにでもしておけばよかったのにね。
きゅぴーーーぃん!
だが、マックボーガーはユカタの命令を理解したようだ。猛然とブル・ゲイツに突進してゆく!
ブル・ゲイツはボンネットからマジックハンドを伸ばした。
「マックボーガー!リストラ・カッター!
おいおい、なんで突然技の名前が言えるんだよ!というつっこみはしないで欲しい。
マックボーガーは頭の林檎のへたの部分をつかんで横に引いた。すると顔の断面の形の刃が現れ、それをおもむろに放り投げた。
ギル・アメリオ直伝のそれは見事すっぱり、マジックハンドを切り裂いた。ブーメランのようにもどってきたそれはガシッとマックボーガーの顔にはまった。ってゆうか縦にはまった。
(ま、まちがってる……)
「い、いいぞ、マックボーガー!チェーン・パンチ!
続いてどー考えても著作権違反の必殺技、チェーンパンチが両腕から飛び出した。
がつ!がつ!
ブル・ゲイツのブルドック顔に見事命中したそれは、だらしなくぼてぼてと地面に落ちた。飛び出した拳には鎖でつながっており、ウインチでずるずるとマックボーガーへ巻き戻されていった。なんかかっちょ悪い。しかもさっぱり強そうに見えない。
ディ・モールト!(最高!)いいぞ、マックボーガー!」
ぶがー!!!
チェーン・パンチはブル・ゲイツを挑発しただけだった。ボンネットが再び開いて6本のマジックハンドが延びてきた。マックボーガーはがっちり腕を押さえられ、拘束されてしまった。ブル顔の口が大きく開いてバリバリと光線が発射されマックボーガーを襲う。
ドリフのコント並みに真っ黒くなったマックボーガー。
「ああぁっ!脱出せよ、マックボーガー!」
身をよじるが脱出不可能である。
「このままでは、このままではやられてしまう……」
ユカタは悩んだが、さっぱりいい方法は思いつかない。
「コンチクショー!マックボーガー根性見せろや!怒りの電流じゃぁぁああい!」
無意味にりきんだところ、ユカタの胸の電極回路はバリバリと過電流を発生した。それがマックボーガーを包み込む。すると見よ!ゲイツビームで真っ黒だったマックボーガーが拘束具を外したあげくに、脱皮でもするように黒い煤を払って新品同様のピカピカボディに!
「目覚めたのね、彼女が!」りっちゃんも大喜びだ。
「よし、とどめくらえやぁ!マックボーガー、ロボット破壊銃!
センセ、そりゃ番組が違いますがな、という突っ込みも見せず
『コマンド、もしくはファイル名が見つかりません』
というそっけない答えが返ってきた。
「失礼!マックボーガー、カノン・ショッター!
それも口からでるヤツだけど、番組が違いますがな、
『コマンド、もしくはファイル名が見つかりません』
「くっそー!マックボーガー、速射破壊銃!
びきーーーん!ようやく反応があった。
口のシャッターが開き、銃口が出現する。
どがっがががががが……!!
9ミリパラベラム弾が凄い勢いで発射され、ブル・ゲイツは蜂の巣、ゴミクズ同然になった。
「あ、あんなところにバルカンが……」
それが助手席に捕らえられていた幕練博士の最期の言葉だった。博士の顔には満足そうな笑みがたたえられていた。
「幕練博士ーーっ!」襟村は絶叫した。
ぼがーーーん!
見事、MS団の犯罪ロボットブル・ゲイツは破壊された。これで悪魔の下逸乃宮博士に神の技術『邪場』を渡すことは阻止された。
ありがとう、マックボーガー。
「くそう、下逸乃宮め、俺は許さんぞ!」
いつのまにかタワー筐体の姿に戻ったマックボーガーを抱えたユカタの頬も涙で濡れていた。
新たな怒りを胸に、行け、ユカタ!ススメ、電人マックボーガー!

おわり