U-kiの読書日記(99/9/11～99/9/16)

U-kiの読書日記(99/9/11～99/9/16)

『私と月につきあって』（富士見ファンタジア文庫）野尻抱介、読了。 - 99/09/17 00:00:00
本日の調子: 俺はジェットガールでもいいぞ。タンクガールでも（笑）。

コメント:
＃９月１６日
ネットでの噂を聞いた時は＜ロケットガール＞シリーズものだとは思わなかったのだが、探し始めてしまったものはしかたがない。という感じで購入、読み始めたのだが。
某ハード系先輩をして「年内最高傑作かも」といわしめただけのことはある。「宇宙へ向ってまっすぐな憧れ」系小説が苦手の俺でもかなり楽しめてしまった。まぁ、実際手にした理由は「女子高生が妊娠しちゃう話」だって聞いたからなんだけどねぇ。（不純）
ついに「地球を離れる」＝「宇宙へ飛び出す」から「月面着陸」＝「他の星へ」という、まさに宇宙へ向かってまっすぐＧＯＧＯ！の気持ちが着実にステップアップされた内容になっている。個人的には大学入学前にはやっぱり凄く空であるとか宇宙であるとかにあこがれたんだけど、アポロが月面着陸した年に生まれた身としては「アムロがガンダムに乗った年齢」に人類が月に基地も作っていない＝南極以下っていう現実を前にして「２０５０年には火星、木星」なんてゆーゴットシグマ的な設定が単なる絵空事でその宇宙進出への夢を妨げているのが技術的な問題ではなく単に「お金がない」という現実であることを認識した時点で「宇宙へ進出してゆく人類」というのが宗教のお題目なみに俺的には意味のないキーワードになってしまったんだよね。それでバラードだのゼラズニィだのかい！ってはなしもあるんだけどね。とにかく日大理工学部の航空宇宙学科を受験したわりには宇宙だのロケットだの飛行機だのに興味がなくなってしまって、ウチのＳＦ研でも（ＳＦの趣味においては）異端な方向に走ってるなぁ、という現状に至るわけだけどね。
野尻さんの「現実を少し延長しよう」的宇宙小説はそんな俺の心を再び宇宙へ向けてふるわせる力がある。うむ、これってやっぱスゴイことだと思うね。一度ふられた相手をふり向かせるのと同じくらい威力のある行為だね。
で、今回はイギリスの島国根性に対抗しっぱなしの頑固者の国おオフランスの新参ロケット娘「アリアン・ガールズ」に協力するゆかりたちＳＳＡの元祖ロケットガールズのお話で、なんといっても「対抗」させるためにＳＳＡのトップシークレットである超軽量宇宙服「スキンタイトスーツ」（まぁ、いうなればプラグスーツ）に対してアリアンガールズの宇宙服は硬い装甲に包まれてあまつさえ動力さえ備えているという「ハードシェルスーツ」いうなれば「強化外骨格＜宇宙の戦士＞スターシップ・トゥルーパーズ仕様」なのだ！イカス！（笑）しかも「硬くてよかった」事態が炸裂しまくり！（笑）
まぁ、今回もゆかりたちのミッションは「アポロ１３」並みかそれ以上にトラブル続きで、アポロといえば「十三（じゅうぞう）」と答える俺としてはたまんねー内容になっておりぐいぐい読ませる。おかげでまた一揆読みしてしまった。
いや、月でのミッションは２時間くらいと聞いていたのでまさかこんな『月は地獄だ！』状態にまでなっちゃうとは思いませんでしたよ。
月での困難な状態ってホント宇宙ＳＦとしては一番緊張感があると思う。『月は地獄だ！』を始めとして『渇きの海』とか『セレーネ・セイレーン』とか（笑）。それをあの「ロケガ」のノリでやるんだからたいしたもんである。
地球人類未曾有の危機に対して対立していた十代の少女二人が次第に協調しあい、それをクリアして行くというのは物語の構図としてはありがち過ぎるのかもしれないけれど、読んでいてなんともいえないカタルシスが味わえるのも事実である。
今回もヒドイ目に会うのは女の子で喜んでいるのは宇宙に行けなかった地上の年寄り連中だけ、というお話であったが、例によって科学大好き少女の茜ちんが「ワタシ今、とっても幸せです」状態になるラストは読んでいてこっちもくぅっ、となるので結果オーライ、オールＯＫという感じである。
やはり１作目２作目３作目とかなり作品発表の間隔があいているものを俺は短期間に続けて読んでいるので作者の文章のレベルアップが凄く良く分かる。会話のテンポとかもそうなのだが、エアバス不時着で始まり、妊娠で大弱りという中盤といい、ラストの月面地獄からの脱出、プラス最後の最後に「破壊力」を秘める物語の構造、文章全体のバランスとかも前作とは比べ物にならないほどこなれた、いや「洗練された」印象を受ける。
いやぁ、「沈黙のフライバイ」以来見直しっぱなしである。そうだ、ＳＦマガジン別冊『星ぼしのフロンティアへ』に収録の短編も読まねば！という感じで、やはり次回作にも期待してしまう俺であった。

マトリックスを見る。たれる。ジョルノ・ジョバーナ購入。猫がバロウズになる。 - 99/09/16 00:00:00
本日の調子: 久々に絶好調！（だった、マジで）

コメント:
＃９月１５日
「朝早く目覚めた。今日はいい天気よ！」と＜こみパ＞のオープニングのような休日の始まり。昼に噂の映画「マトリックス」を見ようと銀座に出る。昨夜狂ったようだった天気もやや落ち着いている。低い位置の雲が凄い勢いで流れているものの日差しはまぶしい。
「どーせあんな雰囲気の映画なんてＳＦ者しか見にこねぇよ」というふうに思っていた俺としてはたとえ上映してるのが銀座マリオンだとしても「ユニバーサル・ソルジャー」の時くらいの集客率だと読んでいたのだが、（それでも凄く混むという情報を得て珍しく１時間前に劇場にいたのに）これが大間違い。一時間前だというのに死人がでそうなほど並んでいて既に立ち見確定な雰囲気。後で後輩に聞いたところ、なにやら宣伝活動がスゴイらしいので「話題の映画」になっているのでこの有り様なのだろうという。紹介特番とかもやってたらしいので納得である。
「ここにいる連中の大半が、『スピード』みたいの期待して『ＪＭ』に裏切られた人みたいな思いをするんだぜ」とかうそぶいていたんだが、見た結果としては一般民間人が充分楽しむことができる娯楽映画としての特性と我々ＳＦチックでサイバーでマニアックな我々を死ぬほど楽しませる特性を兼ね備えた出来だったので前言撤回したのだった。いや、『ＪＭ２』だと思って見に行った身と」してはかなり意外だったッスよ。時間忘れてたし。最近、「前情報ゼロで見る映画の楽しさ」というのを堪能しているなぁ。よしよし。
内容は、サイバトロンのリーダーに代々受け継がれているというナゾの指揮官専用物質「マトリックス」をめぐる果てしないバトルを描く傑作でした。
いやーキアヌ・リーブス演じるロディマスが先代コンボイ（声：玄田哲章）から戦闘訓練を受けるシーンがジャッキー・チェンの映画みたいでとってもＧＯＯＤでした。そしてキアヌがコンボイからマトリックスを自分のものとして「ロディマス・コンボイ」として生まれ変わってからの無敵さが痛快でした。
次は是非同じエフェクトでスタンドを俳優で表現していただきたい。
って、また自分で改変ストーリー作ってるよ。最近そういう気分なのかもしれない。
本当は思いっきしネタバレな文章を相対フォント＋４くらいで書きつらねたい衝動にかられるが、上の改変ストーリーと「俺的マトリックス世界」の構築とかだけで我慢しておこう。帰って寝てから夢にまで見たもんね。
ストーリーはどこかで聞いたような気がするし、絵的には「未来世紀ブラジル」「１２モンキーズ」のテリー・ギリアムにクリソツな気もするし、特撮っつても「合成」や「クリーチャー造型」に使っているわけではないのでそんなにたいしたことはない。むしろここはＣＧです、とわかるように使っているところがいさぎよく、人間を使ったカートゥーンがやりたかったのだな、と思わせる。ガンアクション＋カンフーアクションも新しくも凄くもない。「ネメシス」の後に「酔拳」を見て「あー、両方面白かった」といってるような感じである。既に見たことのある映画の寄せ集めにしてはレベルが異様に高かった、というのが正しいかな。映画に忠実なノヴェライズが出たらただの屑にしかならないのは明白だ。失礼を覚悟で書かせてもらえれば、「ターミネーター２」的な娯楽映画といえよう。＜固有名詞的＞というからにはそれなりに共通点があるからだ。（以下ネタバレ。背景と同一色）
人類対機械知性で人類側が敗れた未来世界、死なないどこまでも追跡してくる敵、現在と未来が交錯する視点、一人の人間の行動が世界を救う点、凄い銃撃戦・肉弾戦、最新のＣＧ技術とかいいつつただのモーフィング、などなど。
ただ、「ＪＭ」の時に感じた無国籍Ｂ級感＝サイバー感をキアヌ・リーブスが主役のコンピュータネットワークの話という部分を利用したとはいえ、限りなくハリウッド的娯楽アクション映画にフィットさせたという点はかなり評価したいところである。
ぐだぐだ云ったが、見て時間が経って冷静になっているからで、見てる最中も見た後も死ぬほど大喜びしていたのは確かだ。一般民間人はともかくＳＦ者は必見の映画であることは間違いない。
見終わってからＳＦ研の後輩二人と純喫茶に入って
「俺的マトリックス世界の構築」（注１）とか
マトリックスに勝つためのキモは「炎のコマ」（注２）とか
この映画に不要なものは「ピカチュー」（注３）とか
「あそこで弾丸つまんでくるりと回り込んでザ・ワールドががっしり世界の歯車とかみ合った感触を絵的に表現して欲しかったよなぁ」（注４）とか
「ネオ、奥菜恵だ！」（注５）とか
「最後、ネオがどうやってイカくんを倒すかが楽しみだったのに」とか
「あそこでヘリコプターごとふんばって支えたら救世主だって認めてやったのに」とか
好き放題云ってました。
やっぱり俺の笑いのツボとしては、冒頭のあぐらかいて空中浮遊するトリニティ＆「未来世紀ブラジル」チックな超おおげさなカプラ＆ダイアリングマシン、地下鉄での回り込みスタンド銃撃戦＆オラオラ合戦、モーフィアス救出シーンの「ネメシス」＆「男たちの挽歌」を越えた銃撃戦＋屋上でのスタンド全開のけぞり合戦。あんな方法での特訓シーンも楽しかったがそれよりはラストのエージェント・スミスさんを踊りながら片手で相手するシーンの愉快さのが１００万倍楽しかったわい。まぁ、とりあえずここらへんのシーンは笑いをこらえてるのに本当に必死でマジで死ぬかと思いました。ここらへんのシーンの動きはいくらスチール見ても想像つかないもんね。
見終わって「現実ってなんだ」とか「ネットがどう世界と個人を変えるか」みたいな話をして面白かった。あと３人でポスターの配置に並んでサングラスかけて「つまんなそうな唇」をして『マトリックスごっこ』とか云ったりして楽しかったッス。そう、見た後、色々パロって遊べたり、考えさせられたりする映画はとても面白い！
パンフレットも確かに豪華（見た目）で中身も豪華。ありきたりのストーリー紹介と劇中のショットを並べるやり方ではないので事前に見てもＯＫな感じ。STUDIO VOICEとかファッション雑誌みたい。黒地に黒い文字のページとかもあるし。それにしても執筆陣がスゴイ。巽孝之、渡辺麻紀、樋口真嗣、大友克洋、ウイリアム・ギブスン。なんじゃこりゃ（笑）
そういえば劇場にもマトリックス・コート（ネオ・タイプ：４万円）が飾ってあって欲しかったけど、背が足りねぇなぁ（苦笑）。

んで、人混みを避けて動いていたら「ダースモール様の超ビッグポスター」と「たれぱんだ展」（無料）に遭遇。有楽町阪急の８Ｆである。最初に見たのはヒラノさんのトコでだったけどまさかこんなに流行るとは夢にも思わなかったわい。昼飯抜いていたので、というかさっさと落ち着いて映画の話をしたかったのでホントにざっとだけ見る。一番印象に残ったのは社員の皆さんが和室で和服でお茶会みたいのやってるスチールがあって、帯飾りやらかんざしやら掛け軸やらにさりげなくたればんだが浸透しているというもの。これはキッツイわ（笑）
「入場無料ってことは最後に死ぬほどグッズを買わされるんだぜ」とかいってたらそれは予想通りだったんだけど、まさかこんなにグッズがあるとは。俺はあるクッションの手触りがあまりにも××××とクリソツな触感だったので大変欲しくなったが「このままではたれぱんだに申し訳のない使い方」しかできないと思いってゆうかマジでヤバいと思ったので購入を断念。うん、やっぱ持ち運ぶのも恥ずかしいしね。

で、喫茶店で散々だべったあと秋葉原へ移動し、おもむろにjornada680を購入して後輩をびびらせる。いや、云ってなかっただけでちゃんと熟慮の上で購入したんだって。（Kanazawaさん、サンキューです）
久々にマシンに人間の名前をつけることにする。今現役の「モビ夫」と「偽モバギ」ってのはあまりにもかわいそうな名前だったしな。（ちなみにＭａｃはすべて女性名）よし、jornada680、君のコードネームは「ジョルノ」だ。超決定！
なるほど、反応速度が遅い＝ＣＰＵが貧弱なのを我慢すれば良いツールだ、と云って使っていた偽モバギことCE1.0のMC-CS12だが、それに対してこのジョルノくん、同じような大きさでここまで使い易くてインカ帝国？って感じですな。_（アンダースコア）を打つのがちょっと違和感あるだけでキーボードもバッチリ。使用したモバイル端末で最高の使用感だったOASYS Pocket2よりも俺としてはいいかもしれない。今も立ったまま片手でタイピングしてるけど全然快適！このキーボードを俺は求めていたのだ！リブレット３０のキーピッチも狭いと感じなかった俺ではあるが、クリック感＆ストロークというかホント、キータッチ全般にわたって心地よいです。これにATOK乗せて賢い変換できるようになったらクレイドルに乗せて部屋でもこれで文章打ってもいいくらいだ。（すでにデスクトップマシンのキーは打てなくなっている）
コンパクト・フラッシュを挿していなくてもＰＣカードを挿すと底面がせりだしてくる機構が働くとは思わなかったのでちょっと構造的にヤバイ感触は受ける。
まぁ、さらに詳しい使用感はできれば別にアップしたいと思う。
ＣＥ用のソフトが売っている場所というのがやはり少なくてちょっと歩きまわるハメに。ATOKはCE1.0マシンである偽モバギには乗らないのだど、PocketWZは欲しかったので以前から探していたのだが真剣に探していなかったこともあり、置いてあるのを見たことがなかったのだ。最初に行ったアイツー・モバイル館に至っては「うちはソフトは一切置いてません」とかだし。今は３件くらい置いてあるところを発見した。新宿じゃ入手は難しいかったかもなぁ。
後輩はトラックポイント付きのＩＢＭ製キーボードを探していたようだが売り切れだった。うーむ、やっぱマウスが嫌いな人は俺だけではないようだ。ちなみに俺はスティックタイプのデバイスが死ぬほど嫌いです。昔触った各社が真似したスティック型のデバイスの出来の悪さに辟易してしまったせい。だから実際触ってマウスポインタ動かしてみるまでは信用できない。東芝の奴を触って「これならいいかな？」と見直したのは最近のこと。ま、以前から本家ＩＢＭの奴は満足のいく動きをしていたので後輩の捜し物はちょっと興味があった。そういえば俺がＣＥを好きな理由にポインティングデバイスとしてのタッチパネルというのも大きな部分を占めていたりする。

休日出勤ご苦労様の先輩と合流し、レストラン・ジョースターにて食事＆歓談。
先輩の持ってきた「どこでもいっしょ」の猫の威力にメロメロになる。
いやー、こりゃおもしろい＆スゴイですよ！
昔、弁当箱よりも遙かにでかく重い９８ノートとかを使ってパソコン通信とかしていた頃、フリーウェアで「人工無能」「Ｄｒ．バロウズ」「ポエム・ジェネレータ」とかのテキストを色々と変換して遊ぶソフトに夢中になっていた時期があるんだけど、この入力した単語を使って意味不明な文法的に正しい言葉を出力してくれるソフトに奇妙で愛らしいアニメを融合させて電子ペット風に仕上げた物体がこのサイズでスケルトンでフツーのメモリーカードになってしまうというのはなんとも神業的ではないか。素晴らしい。まさにこれもサイバーエイジの象徴か、って感じでしたな。欲しいと思ったけど今はまだ入手が難しいみたいだし。俺、入れ込んじゃうタイプだからサヨナラの刻がきたら耐えられないかもしれないし。でも、「動物じゃなくてロボもあるよ」と云われたときはぐらっときたなぁ。ポストペット２０００もそれでぐらっときたけど耐えたんだよなぁ。
でもロボで「ワタシのこと忘れないでください。サヨウナラ」とかやられたら、それってマルチシナリオじゃん。耐えられないよ。我慢できないよ～！！！とかいったら
「でもゆうきさん、こぉーんな絵ですよ」とか云われた。馬鹿者！人間にはそのために想像力があるんだろうが！と叱っておく。いや、誰かこんな俺を叱ってください（苦笑）

というわけで久々に一人じゃない休日らしい休日を送ったのだった。
いやぁー、充実。満喫。

ネタバレ註釈解説（小さくてスマン）
（注１）仮想現実の世界では「信じる力」が威力を発揮する。普段ギャルゲーとかの世界にしっかり入り込んでいたり、普段から「だって俺スタンドだせるもん」とか云ってる俺がマトリクスの世界に居たら……というｉｆの世界。そのうち書きます。

（注２）コンピュータの処理速度を越えた動きをすれば勝てる、という原理に基づいたゲームセンター・あらしの必殺技。マトリックスにも同じ原理で勝てる。

（注３）マトリックスが人間を生かしている理由が電力確保のため、という設定が「ピカ」。これで一気に物語が陳腐になってしまった。人間を電気起こすだけなら人間の神経電流じゃなくても電気ウナギ培養とかでもいいわけで、マトリックスがそもそも人間の社会を仮想的に再現することを目的としており、人間の神経電流とのネットワークを渇望していた、というような人間との共生を求めていたという設定が欲しかった。
「チュー」は無論ラストのキスのことであり、トリニティとのラブロマンスが絡んで見えた時点でクールさが突然失われていかにもハリウッド映画、になってしまったんで我々としては不要、と。
まぁ他にも何でエージェントの皆さんは高速移動やテレポートができないのか、とか携帯電話はなぜ会話専用でケーブル電話でしか「接続」できないのか、とか頭のプラグ抜いただけなら植物状態にはなるけど死なないんじゃ？とか色々あるが、「発電」以外は許せる範囲だということで。

（注４）『ＪＯＪＯの奇妙な冒険』２８巻参照。ディオがスタンド「ザ・ワールド」の能力を得たとき、超スピードではなく時を止めるということを確認するために部下に銃を撃たせてその弾丸をつまんで回り込むという表現がある。また時を止める能力を「世界と一体化し支配する感覚」として表現している。

（注５）『幕張』８巻参照。「塩田、奥菜恵だ！」という必殺技で相手の意表を突き、動きを止めるシーンがある。ネオの戦闘シーンで何度も叫びそうになった。

『なるたる１』（アフタヌーンＫＣ）鬼頭莫宏、読む。 - 99/09/14 00:00:00
本日の調子: じゃあ俺はコスモ星丸でいいや。

コメント:
＃９月１３日
ううん、『ヴァンデミェールの翼』の鬼頭氏の作品である。がどうせ機械娘が出てくるわけじゃないんだろー、しかも『なるたる』だし。とかいって無視していたんだが、時間潰しにコンビニでたまたま読んだアフタヌーンの開いたページがたまたまこの作品で、しかも「竜の子」が全開で自衛隊と戦闘してるシーンだったので「えらいこっちゃ、マサトクさんのお言葉を信じない俺がアホだったんや、こりゃえらいこっちゃで！」と思って買いに走るも既に３巻まで出ていてしかも最近の本屋のコミックスはカヴァードであり立ち読み超禁止。ああ、戦い始めたのが最近だったらなんかヤバイかもしんないよなぁ、とかゆー恐れが発生し（基本的に好きな絵柄ではないんだろうな）躊躇して１巻だけ買ってきたのだが、なんだよ、やっぱ最初からこーゆーノリなんじゃんかよ、やっぱあんとき全巻買っとけば良かったよなんで近所の本屋では売ってねぇんだよ、『まるいち』のときとまったく同じだよボケがぁ！＞自分」とかいいながら悶絶するはめになった。
星丸のデザインとタルるーとくんを連想させるこのタイトルが俺を惑わせた根源だよな。最近の本はタイトルと表紙でスッゴク損しているやつが多いのでなんとかしていただきたいところではある。
さて、やはり只者ではなかった鬼頭莫宏。絵柄は好きじゃないんだが、発想はすごく好き。やはり『ヴァンデミェール』の鬼頭氏であったか、という感じだ。なんかわりとふつーの女の子とかが闊歩してる話のようなフリして異様に良く描けている自衛隊の飛行機とか異様な迫力のあるクリーチャー「竜」とか例によって「謎」の魅力満載の「乙姫」とかスバラシすぎである。そしてもはや最近の漫画・アニメのお約束になりつつある「特に説明することなく展開される非現実的世界」はこの作品でも全開である。『寄生獣』真っ青の戦闘能力と起源の知れない存在「竜の子」とパートナーになってしまった女の子。「竜の子」の存在を除けばそこは我々の世界となんら変わることはないのだが、という感じである。「竜の子」を知っている存在が次々と現れてくる、敵対、同盟、監視、といった関係が生まれてくる、という当たり前の展開。さて、これから何をどう見せてくれますか、といった期待感がこの作品にはあふれている。俺がたまたま読んでしまっ連載の内容に続くとするとやっぱこりゃ「えらいことになるでぇ！」なんだろうな（笑）
『エイリアン９』と似て非なる「ちょっとかわいくてちょっとヘンで、だけど凄く緊張感とセンスオブワンダーにあふれる漫画」になるんだろうな。少女と見た目がかわいげだけどスゴイ戦闘能力を持つ異生物との組み合わせ。うーむ、やはり美少女（１４歳以上推奨）と戦闘メカの次にくるものはこの組み合わせなのか？（エヴァが厳密なメカでなかったことがこのパラダイムシフトの起源であるような気はするのだが…）
さっさと続きを買って読もう。オススメである。

『ＡＬＬ　ＮＵＤＥ』（講談社KC DELUXE）すぎむらしんいち、読む。 - 99/09/13 00:00:00
本日の調子: …サムライダー愛蔵版、やっぱ買わなきゃ駄目か？

コメント:
＃９月１２日
これもまた自慢だが、俺の「欲しい本を欲しい時にＧＥＴする能力」はやっぱし誉めていいのではないか、というかやはり「スタンド能力」と表現するのが正しいかもしれない。まぁ、これも神田神保町という街が接続可能な範囲にあってこそ、だけどね。栃木の田舎にひっこんだままじゃぁこうはいかないんだろうけどさ。
というわけで、ダ・ヴィンチの「呉智英のマンガ狂につける薬」で『溺れた巨人』と並び紹介された本作品をすっげー読みてー！という衝動にかられてその足で思い当たる書店に直行。即ＧＥＴ。記事にもあったとおり、今年の１月に出た本だというのに店頭では既に見かけなくなっている本のようで、案の定、他の大手書店には置いていなかったのでした。
で、すぎむらしんいちって『サムライダー』の人で『右向け左』の人で『スタァ学園』の人だったのね。ちぃとも知らなかったわ。もともとヤンマガなんて『ＡＫＩＲＡ』以外は肌にあわん雑誌、ってイメージが昔からあったしね。少年マガジンに対しても昔はそういうのがあった。なんか、ヤンキー漫画、って感じがあったのだ。不良というか下品というか。今は充分に下品なので違和感ないんだけどね、大学生の頃なんて自分で云うのもなんだけど「おぼっちゃん」だったからねぇ（苦笑）。
というわけで『溺れた巨人』と並んで紹介されるシュールレアリスムの世界とはどんなもんかね？と勢いこんで読んでみたけどこれがまた、通俗すぎるっつーか、さすがヤンマガっつーかなのりで思わず笑ってしまいましたよ。ええ。
で、期待は見事に裏切られたわけだけど、時間を置いてダ・ヴィンチの紹介記事を忘れて読み返してみると確かに面白い。すぎむらしんいちという作家が面白い作家なのだということがわかるみごとな１冊に仕上がっているのである。ホントに「見直し」ちゃったな。
「少女カメラ」「小林君」なんかはヤンマガですぎむらしんいちで「少年少女の心の機微」をやったらこうなるだろうなって実験の成功である。今度アワーズで好感を持った「少年少女の心の機微」的作品『空からこぼれた物語』（大石まさる）が出たらちょっと比べてみたい感じである。（全然違うか？）
全部で７話ある「ＡＬＬ　ＮＵＤＥ」はまぁ、吉田戦車や『ゴールデンラッキー』とかに代表される不条理漫画のヤンマガヴァージョンということでまぁ、普通ですな。「ＯＬＤＫ築２５歳」の方が『溺れた巨人』って感じかも（別な意味で）。
ヤンマガ海賊版掲載時の欄外の形態もそのままに収録した初期作品「BUN BUN BUN」の試みも面白いし、丁度描いている時期も『サムライダー』と近い「タクシードライバー」がまさに「サムライダーの縮図」といった感じで一番好きでした。火炎放射男ＶＳ南部十四式男。この現実からポン、と飛び出てラストの「異次元決闘」風になる展開なんてまさに俺好み。もっとこーゆーの描いてくれないかなぁ。
メインで紹介されていた「ＣＡＲＮＡＶＡＬ１９９９」が９７年に描かれていてそれを１９９９年に読む、という行為がなんかメタでいいなぁ、とか思ったり（笑）
バイク人間の「おーっ、なんかサイバーな感じ。ふっきれたってゆーか」というセリフが心に染みる逸品でした。

ダ・ヴィンチNo.６６！「がんばれ！日本ＳＦ」とか。 - 99/09/12 00:00:00
本日の調子: おお、こんな号数だったのか。たまたまにしては出来杉。

コメント:
＃９月１１日
今売ってるダ・ヴィンチNo.６６、＜溝口さんの書物の帝国＞が紹介されているという話題しかネット上で見ないのだが、やはりメインの「がんばれ！日本ＳＦ」という特集が仮にも「本のための雑誌」で取り上げられるということは俺にとってはうれしいことなんである。まぁ、手にしたのは溝口さんの記事が見たかったからだけド。(^^;
『ブギーポップ・ミッシング　ペパーミントの魔術師』の派手な広告の次から始まる特集「がんばれ日本ＳＦ」は何故か海外ペーパーバッグの表紙で埋め尽くされている。何故だ？（苦笑）
まず最初は「この作家のファンならばきっとこの作品も読めるであろう」というスーパーいいかげんなブックガイド（笑）。こーゆーことやってるから信用が落ちるんだってば！選者の巽孝之さんは言うまでも無いがもう一人の田崎六助さんという人は最近知った人でなぜこの人が出てきたのか得体がしれない。巽氏が村上春樹に『夢幻会社』『世界の中心で愛を叫んだけもの』『砂の女』を持ってきているところに対して野崎氏は村上龍に『クラッシュ』『結晶世界』『第四間氷期』を持ってきている。……そりゃ俺も二人の村上、好きだけど要するにバラードと安部公房を読めっ！てことかい、ＳＦ周辺文学として！？さらに野崎氏の容赦ない攻撃は続き、京極夏彦に『たったひとつの冴えたやり方』『ヴィーナス・シティ』『ハイブリッド・チャイルド』小松左京を持ってきている。うーん、やはり読まねば駄目か？＞京極。
笠井潔と山田正紀の対談は当たり前のことしかいっていない気もするが面白かった。山田さんが年とっちゃったなぁ、という感じがショックだった。そしてかつて「和久井映美マニア」として俺のハートをブレイブさせたＳＦＭ塩澤編集長もコメント。神林長平、大原まり子、上遠野浩平（！）のインタビューも載っている。
んで目玉は人気作家６人によるオススメＳＦ５冊と復刊希望本。結果としてソウヤーが頑張っちゃったりしてるのだが、面白かったので許す！という感じだろうか。創元の復刊フェアで「宮部みゆきのベスト１」とかもかなり効くよなぁ、とか思ったので是非この手の企画をバンバン実施していただき、非ＳＦ系本読みさんに向かってＳＦを煽って、アジっていただきたいと願うのである。
メイン特集「あなたの人生、死んでませんか？」─今日ちょっと熱くなるために─、は読んだけどイマイチ。この記事を読んだ時点で熱くなれないのだからここで紹介されている本を手に取る気力も起きやしない。
直木賞についての記述。直木賞が作品にんではなく作家に与えられる賞になっている、というのは結構話題になっていたことだがこうして文章で読むと説得力があるよなぁ。
あと、「呉智英のマンガ狂につける薬」に何故か『溺れた巨人』が紹介されているのも個人的には大喜びであった。これととり・みきの『ＳＦ大将』を読めばバラードという作家がいかに楽しい作家かということがわかろうというもの。
んで、ちょっと気になったコーナーがある。
「オトコとオンナの深い穴」の＜お見合いパブ＞の話である。
ははぁ、こーゆーの読んじゃうと＜もてない男最後の反論＞で書いた「目薬の話」とか思い出しちゃうよなぁ。なるほど、この人はこーゆー体験をしてこーゆー視点で「お見合いパブ」を捕らえてこーゆー風に他人に伝えようとしてるのか。全然駄目じゃん。やっぱ世の中に出回ってる風俗勧誘系のムックとかに関するヌルさよりもこーゆーイノセントな人の「罪無き・穢れ無き・悪気無き誤認」が表の世界人が接するメディアでぱーっと広がってしまう恐ろしさってのはあるな。最近のトゥナイト２とかもかなり良い線いってるんだけど所詮取材できるような安全地帯であるという前提を見てる連中は意識してないからねぇ。こーゆーの見て「安全なんだ」って出かけちゃう人がいたらどーすんだ、ヒドイ目に会った人が出たら誰が責任とるんだって、気がするんだけどぼられるのは悪い遊びをしようとした悪い大人だけなんだからま、完全に自己責任なんだけどね。やっぱ『秘密』の旦那みたいな悲しい事情でふらっと遊びに出る人とかがヒドイ目にあったりするのかと思うとやっぱ風俗レポートはきちんとしていただきたいなぁ、と思う昨今。
なんだっけ？そうだ、ダ・ヴィンチって「本の雑誌」なのに創刊時とはえらい芸風が変わったなぁ、って話をしたかったんだ。「お見合いパブ」が実はサクラがいっぱいでそれにひっかかると系列のぼったくりの飲み屋さんとかカラオケ屋さんとかを引き回されていっぱいお金を落とすはめになるんだよってことにちっとも触れられていないことに腹を立ててる場合じゃなかったわい。
裏表紙がinfoseekの広告、というのもなんだか時代だなぁ、という気がする。雑誌は時代を映す鏡だよ。そう、今はネットワークの時代。善くも悪くもサイバーエイジなのだ。

過去の日記(99/8/16～99/9/10)を見る

私のホームページへ