U-kiの読書日記(99/7/22～99/7/30)

U-kiの読書日記(99/7/22～99/7/30)

『黒騎士物語』（日本出版社BOM COMICS）小林源文、読む。 - 99/07/31 00:00:00
本日の調子: スターリングラードに散ったシュトロハイムに思いを馳せる。

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＃７月３０日
これも再発行版を買った。無論、最初にホビージャパンから出た大きい単行本も持っているがダンボールに入ったままで取り出すのが面倒臭いので衝動的に買ってきてしまった。
引っ越してから読んでいなかったので７年ぶりくらいに読んだけど、初期に描かれたにもかかわらず、源文漫画の最高峰としての地位は揺るがないことを再確認した。
今読んでも古びていない。ガンダムが「ヒーローストーリー」でなく「戦争」を描いたものだ、というのは俺がここに書くまでもないことだが、戦争モノでもこう、オトコノコのハートにグッとくるお約束な展開、シーン、台詞、なんてものがあるわけで、うまい監督さんや脚本さんはそれを適度に織り込んだりしてくれるんだけどね、アニメ版宇宙の戦士みたくすべからく拍子抜けなできのものもこの世の中にはたくさん存在したりするのだった。そういった連中はこの『黒騎士物語』を読んで勉強していただきたい。これには「カッコイイ戦争モノ」のお約束がそれこそ幕の内弁当状態で詰まっている。
特に戦車５両を失ったところで、列車で輸送中の新型パンテル戦車を手に入れて反撃する話なんてロボットモノではお約束な展開ですな。まさに「ガンダム的」というか。
あと敵ソ連戦車が次々と新型を繰り出してスターリン戦車なんかが「化け物」扱いされるところも「ジオン軍」していてこれまた「ガンダム的」というかアニメ・特撮ヒーロー物ではお約束の展開。
実は＜ゆうき語録＞の３０％はこの漫画が元になっている。
「正面装甲が傾斜しているぞ、新型だ！」とかは一時期死ぬほど口にしていたっけ。
で、最後の突撃シーン
「お前達は義務を果たした。古いドイツのために死ぬべきではない、新しいドイツのために生きろ。ジーク・ハイル！（祖国万歳）」
というシーンは何度見ても泣ける。戦争賛美だろうとなんだろうと、愛国心、友を思う心、そういったものは誰がなんといおうと美徳なのだ。
最初に出た単行本で作者が語っている様々な思い入れがこの本ではカットされて中途半端なソ連軍の日本侵攻作戦モノが入っていて残念だ。『黒騎士物語』の最初の単行本が出たときはいかにしてフツーのミリタリ好きなサラリーマンが戦争劇画家になって行くかという過程が見えて楽しかった記憶があるのだが。小林源文を知ったのはホビージャパンに掲載されていたこの「黒騎士」で、かなり初期の作品だと思っていたのだが、うちにある唯一の＜ジャガーバックス＞・『ドイツ機甲師団』（中山立太著）が小林源文のデビューだそうだ。「中山立太氏に師事」と書いてあるのを見てなるほど納得、である。
初めは新兵クルツの成長記にするつもりだったのが（確かに第１話はそんな感じだ）、第１話で負傷させて片目にアイパッチをせさた中隊長が勝手に一人歩きしてこうなったのだそうだ。うーむ、漫画の出来るまでって不思議ですねぇ。
俺はこの漫画で第二次大戦中のドイツとソ連の兵器といわゆる戦争用語の基礎を身に付けた。「ミリタリー」という趣味のカテゴリが少なからず俺にあるのはこの漫画のおかげだったりする。
高校生の時ちょっと入院したことがあったんだけど、その時持ち込む本として選んだのがこれだった。生と死に意味を求め続け、人生＝戦いとする俺にとってこの戦争漫画は普通の人以上に意味のある、勇気を与えてくれる漫画だったのだ。そーゆー意味で俺の内部では非常に特別な位置を占める一作である。

『ゲルマンの騎士』（世界文化社SEBUN COMICS）小林源文、読む。

つ、つまんなかった。買わなきゃよかったです。
コンバット・コミックの第二次世界大戦ドイツ物の寄せ集めですな。
ボム・コミックスから出てる各種第二次世界大戦ものでもうゲップがでそうなので、源文先生にはもっと仮想戦記というかフィクションを書いて欲しいところですな。しかももう「ソ連」はないので、「レイド・オン・トーキョー」（今は『TOKYO WARS』の名でSEBUN COMICSより再販中）を越える作品の予感もないわけで、幻の『東京兵団』とか『ゲイツ』『ハイト』のようなＳＦチックでパワードスーツとかバリバリでハリウッドで映画化されそうな作品をもっと描いて欲しいです。
本当はこれを買いにいったのに、ついでで買った『黒騎士物語』の方が面白いんだもんなー。所詮短編は模型雑誌やミリタリー雑誌のお惣菜にすぎぬ、といったところか。
それでもスツーカ（急降下爆撃機）乗りのおっさんの話やスウェーデン義勇兵のお話なんかは知らなかったこともありそこそこ楽しめてしまったんだけれども。

『犬狼伝説』（角川・藤原カムイコレクション１）藤原カムイ、読む。 - 99/07/30 00:00:00
本日の調子: 神田カルチェルタン闘争に思いを馳せる。

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＃７月２９日
この作品に対する俺の思いを綴るとなると難しい。
「プロテクト・ギア」は高校時代から俺が求めてやまなかった「心の鎧」の具現だった。そして大人になった今、すっかりそれを求めることを忘れてしまったわけではないからだ。
アメージングコミックスも持っていたし（過去形なのが悲しい）、単行本も持っているので「小さくなって見づらくて申し訳ない」という著者のこともわからんでもない。確かにこのサイズでは窮屈かも。でも引っ張り出しやすいだろうな、と思って買った。もともとノートパソコンとかも小さい分には文句なし、の男だからな。あと表紙も良かったしね。
＜藤原カムイコレクション１＞ということだが、まぁ、そろえるかどうかは別問題だな。俺は別に藤原カムイのファンではなく、『紅い眼鏡』と「プロテクト・ギア」のファンだから。
プロテクト・ギアの幽鬼のような姿と紅い目玉。ケルベロスの紋章。全てに俺にとって深い象徴的な意味がある。今だにこのシリーズの同人誌を発行してるサークルもあるので「単なる押井守作品」を超えたところでファンを惹きつけるそんな力があるんだと思う。
さらにこの漫画ではオルターネートストーリーがハッキリと描かれている。
学生運動とパワードスーツと犬。そして求め続けて永遠に得られないもの。孤独。闘うことの意味。そんなものがキラキラと輝きながら詰まっている。
俺も所詮は少しハズレたオトコノコだったのだ。それを充分理解しているだけにこの作品のパーツの全てが愛しい。
鎧と翼、鋼と鉛の物語は高校時代の俺の永遠のテーマだった。そこへ現れた「プロテクト・ギア」のデザインは俺にとって「物語」そのもの、あるいは「世界」そのものであった。それが出演する押井守監督の映画『紅い眼鏡』も『ケルベロス──地獄の番犬』も俺が望んでいる「絵」は提供してくれなかったのだが、『紅い眼鏡』の冒頭数分間でカットバックされる「世界観」の描写だけで俺の求めていた世界は補完されてしまったので、それ以上映画に求めるところはなかったはずなのだ。
「ターミネーター」の中で数分描かれる未来の殺戮機械たちと人間のレジスタンスの戦闘シーン。あそこを俺は何万回も繰り返し見ているが、小林源文もあのシーンにインスパイアされて名作ＳＦ漫画『ゲイツ』を描いたふしがある。『紅い眼鏡』の冒頭のカラーシーンが俺の中に築き上げた物語はこの『犬狼伝説』の世界そのまんまだったのだ。だからこれをアメージング・コミックスで見つけたときの俺の喜びといったらこの上ないものだった。（確かその世界が描かれるという予定だった続編『ケルベロス』が押井監督の気まぐれでただの台湾野良犬映画になって失望していたこともあり、その喜びもひとしおだった）
『ＡＫＩＲＡ』風の雰囲気の中に映画『紅い眼鏡』の登場人物が投影されている、というシチュエーション自体が特異なものなのだが、やはり最後の「戦闘犬」の章への入れ込みようといったら尋常ではないのである。もはや「こーゆー作品を描いてくれてどうもありがとう」状態なんである。そう、これは俺が「欲しかったモノ」そのものなんである。
この作品も不遇であちこちと連載を渡り歩いたり、発表される雑誌がことごとくマイナーだったりしたんだけれども、人気があったせいか、単行本は２回も出ている。これは３つ目の単行本になるわけである。
何やら続編が描かれているようだが、まぁ、一冊にまとまったら無条件に読むでしょう。
もうこの作品の世界観に溺れて泣いたりすることも、たぶんない、と思う。

『ＥＤＥＮ１～３』（アフタヌーンコミックス）遠藤浩輝、読む。 - 99/07/29 00:00:00
本日の調子: Ｔ２のサイバーダイン１０１型の父性に痺れるジョン・コナーなみ。

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＃７月２８日
この１巻の１００ページ超えのプロローグの話だけでも買ったかいがあるというもの。
ケルビムがかっこよすぎます。少年は犬じゃなくてロボットを愛してもいいんだと思います。
『ＥＤＥＮ』と『ＢＬＡＭ！』は＜アフタヌーン＞から離れて以来、書店で単行本を見て気になっていたけど手を付けてなかった作品。今回、サイトウマサトクさんのとこの記事を読んで３巻だけ読んで感動し、結局１巻からそろえたが、１巻のプロローグがとても気にいったのだった。
本屋で高校生くらいのお兄ちゃんが生意気に作品について論じているのを聞いてふむふむと思っていたのだが、なるほどなかなかズバリなこと云っていたのだなぁ、と感心。ストーリーはまだ「描き切っていない」せいもあるだろうが確かに好みがわかれるというか、まだ「希薄」だよね。絵のうまさというかセンスに対しては文句の付けようもないのだが。
トラビスとソフィアの電子戦やケルビムＶＳアーマード・トルーパーというおかずだけでマンゾクできない人のほうが世の中は多いからね。
眼鏡、バイザー、アーマード・トルーパー、ガスマスク。高校時代の俺の創作ノートにはそんなものばかりがぎっしり詰まっていた。８４年頃、機械を制御するために脳にプラグを直結する、というアイディアは友人たちの目にはかなり奇異に映ったようだ。サイバーパンク・ムーヴメントがＳＦ世界に与えていった影響でピアッシングなど「自損の文化」が世に受け入れられていった今でこそ珍しくなくなったアイディアだが、当時から俺は視力が落ちれば人工眼球にすげ替え、脳に計算専用のチップを埋め込み、ロボットを制御するには脳直結で当たり前、だと思っていた。体が弱かったので健康な肉体でも強力な機械装置に置換したい願望が強く存在したわけだ。
そして戦闘装甲服をまとって、ヘッド・マウント・ディスプレイと防毒マスクを備えたヘッドギア──仮面──を付けた兵士たちが「権力」や「組織」と戦う、そんな構図の物語ばかりを創作ノートに付けていた。『ＥＤＥＮ』を読んだ時、「こーゆー漫画を俺は描きたかったんだ」と素直に感動したわけである。
ただ、『ＥＤＥＮ』は俺の様な「古い機械信仰」のようなものに基づいて描かれているわけではない。サイバーパンク以降に描かれた物語であり、『ＡＫＩＲＡ』に代表されるように、クールに機械文明を扱っている。ま、簡単に言えば俺が主役に据えていた「サイボーグ」や「戦闘装甲服」や「ロボット」は脇役であり小道具でしかないということだ。世の中の大半の作品がそうであるように、この作品でも世界の主役があくまでも人間である、観点に違いはない。単に俺が必要以上にパーツの描写に入れ込んでいるだけだ、ということを強調しておく。
しかし、この作者の考えがおもしろい。カバーに書いてある彼の言葉がいちいち俺の心を打つ。ようするにこの作品はエヴァを見てしまった作者がそれにたきつけられて、消化不良に陥った部分をこの作品という形で吐き出しているのだ。
そうなんだよな、エヴァみた俺らの世代のショックってこんな感じだったと思う。だけど彼はそれに対抗してこの作品を描いている。すばらしいことだ。我々の世代は同じ「空想の元ネタ」を植え付けられながら、新しいものをクリエイトしていかねばならないという、一種の世代病のようなものを背負っている。そう、それに負けずに頑張って欲しいのだ。俺は応援しているぞ。俺ができなかったことをやっている連中を。
世界人類が肉体が結晶化して死に至る謎の伝染病の前に滅亡の危機に晒される、という衝撃のプロローグから２０年後。
人が人の姿を模して作った戦闘兵器、天使の名をいただく戦闘用アンドロイド・ケルビムを従えて、荒廃した都市をさすらう少年エリヤ。彼は謎の戦闘集団に協力を強制され、戦いに巻き込まれて行く。これが物語りの骨子である。
１５才の少年が感じる「世界」を少年の視点から素直に綴っている。エヴァがやったように「世界」をちょっとかっこよく、果てしなく理不尽で残酷にするために、正体不明の勢力同士が正体不明なものをめぐって争いを続けている。少年はそれに否応なく巻き込まれてゆく、という構図に変わりはない。だが、その作品が訴えかけてくるメッセージはエヴァに比べてとてもわかりやすくてＧＯＯＤ。

僕がまだ小さかった頃、世界は僕のものだった。
１５才になった今、自分は世界が作った「かけら」の１つでしかない事に気づき始めている。
それはとてもささやかで、何の力もない。
子供でいるのはうんざりだ。何も知らないし何もできない。
自分ではどうにもならない。だから僕は神様に祈った。
「世界中の人々が幸せになりますように」

せつせつと語られる、少年が「世界」を意識し始めたときに感じる自分の無力感に俺は涙を禁じ得ない。

大切な人には限りなくやさしく、そうでない人には限りなく残酷になれれば一人前だ。
（じゃあ、）早く好きな人ができるといいな。

ここらへんもかなりジンとくるものがある。こーゆーふうに「世界」とのかかわりあいをわかりやすく言葉にしてくれる存在というのがとても重要な時期があるものだ。それはＴＶでも漫画でもいいのだ。

そして衝撃の第３巻のラスト、「僕は間違っていく」の圧倒的な残酷さ。
この描写の持つ圧倒的なパワーが俺に３巻一揆買いをさせるに至ったわけだ。
「神は確かに存在するわ」
ソフィアの説く「神」の姿は正しい。神は確かに存在する。だがしかし、人間を救ってくれるシーンにのみ神の存在を感じるというのは間違っている。
そう。神様の下では人は誰だって平等なのだ。どんなシーンにおいても。敵も味方もない。

『ただいま寄生中』（白泉社JETS COMICS）あさりよしとお、読む。 - 99/07/28 00:00:00
本日の調子: アニメのガイバーにこんなシーンがあったような…。

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＃７月２７日
苦労して探しあてたわりにはつまんなかった。ほんと、金返して欲しい。
この「寄生虫スーツ」の頭部のデザインって、サナダムシの顔なのね。昔寄生虫の本で見たのを思い出した。たぶんリアルタイムで連載読んでも気が付かなかっただろうなぁ。それ読んだの社会人になって入院したときのお見舞いの本だったから。（病院で読んでなお気持ち悪くなった）
なるほど、あの「エロ漫画規制」に対するあさり氏の反骨心の顕れがコレだ、と。
うーむ、本人も自己嫌悪しているがまったくその通り。見られたもんじゃないっすね。ピントずれまくり。どんな作家にもあたりとハズレってのはあるもんだよね、と思わせる作品だった。
『ワッハマン』のラストで感動したからといって、全点買いに走ってはいかんなぁ。

『エイリアン９　１～２』（ヤングチャンピオンコミックス）富沢ひとし、読む。 - 99/07/27 00:00:00
本日の調子: ヒドゥンだの二十億の針だのこの手のネタは尽きないよなぁ。

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＃７月２６日
【RIKI】さんにカレーオフの時１巻を読ませられて、即座に２巻目を買いに行った。
けっこう話題の本だったし、どこかでかなり詳しい内容の紹介も見ていたし、絵も見ていたのでそれでも買わなかったのはやはり内容を勘違いしていたからである。
エイリアン９って野球漫画じゃないのか？！
しかも女の子は９人じゃなくて３人じゃないか？！
それになんでみんなゼッケンに「６」って書いてあるの？
いやー、全部大誤解。ゼッケンに書いてるのは名前じゃなくて「クラス名」だよね。
横から入ってくる情報が「小学生萌え」とかのネタが多すぎたのもイカン。
ただ単に小学生のオンナノコだからって萌えてる奴等、お前らは死ね！って感じですな。いやー、あぶねー、あぶねー。見逃し続けるところだったぜ。
ＳＦ研の一部のＯＢ連はこの手の嗅覚も鋭いしオススメもしてくれるんだけど、他の世代はもうゲーム一筋って感じだし、俺より下になっちゃうとなかなか俺にプッシュしてくるのはつらいらしい。もっと攻めて欲しいのに（苦笑）。
ヤングチャンピオンコミックス自体置いてある店が少なくてとても探すのに苦労した。１巻は既に５版。売れているんである。
「エイリアン対策係」という学校の係に任命されてしまった３人の小学校６年生の女の子の奮戦記、というような紹介を読んだのだと思う。エイリアン対策係になると「ボウグ」と呼ばれる共生型のエイリアンを頭に帽子のようにかぶって生活しなくてはならない。この「ボウグ」、見様によっては非常に愛敬があってかわいらしいのだが（それこそ「パタピー」なみ）所詮は「エイリアン」。女の子にとっては虫やカエルやトカゲと同じ「イヤンな生き物」なんだそうである。なるほど、トカゲが嫌いな女の子がクラスで飼ってるイグアナの飼育係とかに任命されちゃったら嫌だろうなぁ、という感じである。どうしても嫌なら先生に言って変えてもらえばいいのに、とも思うんだがあっさり「ごめんなさいね、この係は一度なったら変えられないの」でかわされてしまう。その他にもなぜ、学校にエイリアンが出現するのか、といった根本的なことについて一切説明はなされない。この辺がうまい、というか話の中で設定を見せていくというハヤリのやり方だなぁ、と思う。
アキハバラ電脳組みてーだなぁ、と思ったけど、本質的には月とスッポン。この漫画くらい電脳組がおもしろければ俺もはまったんだろうけどね。
なにかこう、旋盤ドリルのようなものが「チキチキ」いいながらハイエロファント・グリーンの触脚のように伸びる描写がなんとも俺の心をくすぐる。ボウグの戦闘時の目玉がネジ山になってしまうのもＧＯＯＤ。
キャラの立て方も「生まれついての学級委員長タイプのくみ」「お嬢様で天才型のかすみ」「もーどうしようもないくらい平凡なゆり」ときっちり描き分けているところも良し。
ちょっとネタバレだけれども、次々に襲いかかってくるエイリアンたちと「学校側」＝校長＆先生の関係や如何に？という部分と「対策係」に課せられた意味とは？くみちゃんとかすみちゃんはホントにもう「お嫁にいけないカラダ」になっちゃったのか？（＞個人的には一番気になる＆許せんトコロだ！）とかもー気になるところが満載なんである。
というわけで、久々に「ＳＦマインド」を感じさせる良い作品である。未読の方には強くオススメする。

『ＳＦを極めろ！この５０冊』（早川書房）野田昌宏、読む。 - 99/07/26 00:00:00
本日の調子: 死刑宣告に味をしめたガンツ先生なみ。

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＃７月２５日
これが怒涛の５０冊だ！
月世界へ行く／タイムマシン／火星のプリンセス／大宇宙の魔女／宇宙のスカイラーク／時のロストワールド／火星年代記／われはロボット／宇宙船ビーグル号の冒険／幼年期の終わり／人間以上／火星人ゴーホーム／虎よ、虎よ！／地球人のお荷物／夏への扉／タイムパトロール／ゲイルズバーグの春を愛す／ソラリスの陽のもとに／恋人たち／地球の長い午後／猫のゆりかご／＜デューン＞砂の惑星／ジョナサンと宇宙クジラ／アルジャーノンに花束を／バベル－１７／光の王／アンドロイドは電気羊の夢を見るか？／闇の左手／リングワールド／九百人のお祖母さん／世界の中心で愛を叫んだけもの／ヴァーミリオン・サンズ／ストーカー／夜の大海の中で／ノーストリリア／愛はさだめ、さだめは死／ゲイトウェイ／無伴奏ソナタ／竜の卵／いさましいちびのトースター／銀色の恋人／ソフトウェア／ニューロマンサー／蝉の女王／ハイペリオン／銀河おさわがせ中隊／凍月／ジュラシック・パーク／ヴァーチャル・ガール／大いなる旅立ち
（帯より抜粋）
いや、これはかなり感心な作業ですよ。第一にほとんどが現在も入手可能──気力があれば読める本になっている。初心者に薦めるためのガイドなんだからそんなにとがったラインナップにする必要もないと思うし。とはいえ、「可能な限り幅広い内容と作家」を選んでいるのがわかるので泣けてくる。そういえば一年とちょっと前に俺も入手可能なＳＦ本のなかからオススメＳＦ第一弾、第二弾を作ったのだが、その時の気分が思い出される。
古典を薦めると先輩なんかはなんだかはずかしいようなことを云う。俺もそんな気はするのでなかなかスタンダードなところで『月世界旅行』や＜スカイラーク＞は薦められない。けどね、中学生だとか俺みたいに高校生までＳＦ小説未体験、みたいな人もいるわけだし、逆にこすっからいところばっかり読んできた大学生なんかに温故知新で読ませてみるのも良いかもしれないし、特に悪いことはないんだけどなぁ。やっぱ「気恥ずかしさ」があるんだよな。
「この本もおもしろい！」として各章の最後に付記されている同じ著者や関連図書の推薦も大体は的を射ていてかなりＧＯＯＤ。そうなんだよ、『ニューロマンサー』で挫折しそうな人は『クローム襲撃』で表題作を読んでくれっていつも俺が云ってる通りのことが書いてあるよ。でも『タイム・マシン』の頁で『タイム・シップ』がきちゃうところが時代だなぁ、なんて思うんですけど（苦笑）ま、星雲賞受賞作だしいいのかな。
『世界の中心で愛を叫んだけもの』で「サンタクロース対スパイダー」をもってくるところなんざぁ、我々と変わりゃしませんぜ、大元帥！俺達もこの話が大好きで（笑）
そしてバラードは『ヴァーミリオン・サンズ』、セラズニィは『光の王』を持ってきてるところも超感激。
ディレイニーの『バベル－１７』はこれだろうなぁ、という感じ。わかりやすいしスペオペしてるしね。『アインシュタイン交点』や『ノヴァ』の方が名作の誉れは高いけどとっつきやすさでは負けてる気がするもんね。
それにしても、野田元帥、文章が若い（笑）
俺の書いた文章とたいして変わりねぇんでやんの（苦笑）
ストーカーの紹介で「最近ストーカーといえば…」なんてーのも同じように感じているしね。何しろ『銀色の恋人』『ヴァーチャル・ガール』をセレクトしてるなんて、まさに時代を読んでるとしかいいようがないジャン！（あくまで俺本意）
そういえば、元祖「死刑宣告」って野田元帥だったもんね。（俺、直接聞いてないからすっかり忘れてたけど）ノリが似てるのも当然といえば当然か。
そういえばこのサイトを立ちあげたのも「あまりにもＳＦの話じゃなくギャルゲーの話をしすぎるから、ＳＦ研パティオから分離」という目的だったんだけど、「あまりＳＦを読まないＳＦ研の連中にＳＦを啓蒙する」って目的もあったんだよな。あんまり成功していないが、読書日記のいくつかを読ませることには成功したりしているからま、いいっか、という気にもなる。それに何よりも熱くＳＦを語れるネット系ＳＦ者の皆様と親しくなれたというのがなにより大きい。ああ、ビバ、サイバーエイジ。じゃなくて、サイバースペースからこーゆーアナログ媒体へのフィードバックの働きかけも大切なのだ、と思う昨今。
とりあえず、これで極められるほどＳＦは甘くないのだが「ＳＦ初心者」の自覚がある人には是非読んでいただきたい一冊である。あ、この本を読むだけじゃなく、この本に紹介されてる本を読もうね、ってことで。
初級を卒業した人も自分が５０冊挙げるとしたらどんなラインナップになるか、とかをこの本を読んで刺激されるのも良いかもしれない。

夢見るロボ子アニメと遠隔操作による巨大ロボット戦闘の夢を君は見たか？ - 99/07/25 00:00:00
本日の調子: 敵に命の次に大事なリモコンを壊されちゃった大作くんなみ。

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＃７月２４日
リモートコントロールダンディ、最高！超イカス！
ってゆうか、巨大ロボマニア（特に特撮系）はプレイ必須！やれ！
って感じですな。
だいたいが、本家サイトを見ればわかるように俺は巨大ロボおよびサイボーグファンなのであり、「日本で最初のロボジョックス・ファンページ」を目指して挫折した経緯を持つ。そんな俺にはこのコンシューマ・ゲームは「ああ、長生きはするもんだ」というくらいに涙ちょちょぎれるほどの完成度だったのだ。素敵ッ！
「デコトラ伝説」という非常にマニアックな路線をうち出して成功したヒューマンだが、実はその経営はそーとーやばい状態だったと聞いていた。んが、また素晴らしいマニアとしてのこだわりを見せてくれたわけで。この作品で息を吹き返してくれることを切に願うのみである。
そもそもロボジョックスに入れ込む前の俺を魅了したのは実写版ジャイアント・ロボだった。ＦＲＰ製の硬質感あふれるボディ、ラジオ体操第二がメカメカしく見えるという不思議。指先にカツカツと生えるペンシルミサイル、ＧＲ２、カラミティといったライバルロボの登場。それになによりも音声コマンディング可能！というところが俺を魅了した。以後、ジャンボーグＡ、レッドバロン、マッハバロン、バトルフィーバーロボ、ダイレオンと脈々と実写系巨大ロボをせめてゆき、マペットアクションによる超迫力作品「ロボジョックス」にたどりつくのだが、まぁ、この辺は機会があれば別ページを起こして語りたいと思う。
で、この「リモートコントロールダンディ」、鉄人２８号そのまんまに見えるがジャイアントロボのテイストがそのまんま見られ、ああやっぱ横山光輝はイイ、などと感心。しかも攻めてくる敵怪ロボットってーのがまた雰囲気たっぷり。俺はウルトラセブンのファンでもあるんだけれど、そこに出てくる魅力的なメカ怪獣──キングジョー、クレージーゴン、ウインダム──それらの「グワッシ、グワッシ」というＳＥが脳裏に浮かぶほどソックシの雰囲気を引きずって、敵ロボットがポリゴンの町を破壊しまくる様はもー感涙ものであった。しかも俺がコントロールするロボでそれらを撃退できるとは！！！って感じである。
アニメのストーリーモードが例によって挿入されるが、それはマジンガーＺとかの昔懐かしい巨大ロボットものにふさわしい設定（古代ミケーネ帝国の遺産を悪の天才が時に野心を抱き、、ってなテイスト）なのかと思って見るとしっかりエヴァはいってたりする。いや、エヴァに影響されてることを非難してるわけじゃない。むしろこのようなウマイ味付けにもっていったことを誉めているのだ。レトロフィットに溺れることなく時代にそぐった傾向、というのを表現していくことはとても大切なことなのだ。
ポリゴン数を減らすことを無骨さに結び付け、描画の遅さを重量感に結び付けるとこなんざぁ、勝利でしょう。
こーゆーのを見るとやっぱゲームってアイディア勝負だなぁ、っと思う。
お金とか人をかければいいものができるかっていうとそうじゃないヨネ。（またスクゥエアの批判になっちゃうけど。）同じ素材をどう料理するかっていう点において、ゲーム開発はやっぱいい土俵だと思う。ま、やってる方はそれどころじゃないんだろうけどね。
しかもオトコのツボやお約束を知りつくし、要所要所でこれでもかっ、これでもかっ、と突いてくる。もーたまんねーっすよ。
腕が回転しながら火ィ吹いて飛ぶのを見てロケットパンチでなく「ブロウクン・マグナム！」って叫んでしまう世代に最適（笑）しかも、放った腕がカシンカシンと戻ってくるときのモーションもこれまたたまらん、って感じですな。
基本的にレーザーだのミサイルだの火器がほとんど登場せず、巨大な鉄の塊どうしが正面からガッツン、ガッツンぶつかるっちゅーだけの描写がこんなに迫力満点で面白いとは！って感じですな。オプション凝りまくったシューティングが多い昨今で久々にムーンクレスタやったような感覚、といえばいいだろうか？火器で武装してるくせにメカを正面からガッツン、ガッツンぶつけただけの「ガンヘッド」の屑さ加減とは大違いだ。
とはいえ、火器も好きなので肩に糞の役にもたたない「ジェットバルカン」を装備して、
「ヴォーダン、モーターカノン全開射撃！奴の注意をこちらに向けろ！」
とかやってましたけどね。ええ、そうですよ、一人でゲームやってる俺ってばはたからみたらスゲーやばいですからね（苦笑）
その他、学校を守るべく飛び出してノックアウトされ、学校に向って倒れちゃって先生・生徒皆殺しにしちゃったときは「俺はもうジョックスをやめる（涙）」とか一人ロボジョックスごっこにひたったりとかして。すげー楽しいひとときを過せましたよ、ええ。
本当はお金を貯めてロボを強化するフェーズとかあるんだが、俺は赤字で破産寸前でロボットバトルにのみ専念してしまったのでほとんど「素」の状態でもうまくコントロールすればラストまではいける、というゲームバランスにも感心。
操れるロボットが鉄人２８号似のジェット・ロボ「ヴォーダン」だけだと思ってる方も多いでしょうが、蒸気ロボ「ガレス」、原子力ロボ「ライオネル」、電気ロボ「ペルスヴァル」、と最終的には４体のロボットが使えるようになります。特に膝に車輪を付けてそれをグルグル回しながらのキックを得意とするガレスに燃え燃え。ガ・キーンとかを思い出させるっつーよりは、車輪だの歯車だのが大好きな俺の嗜好にマッチしてるだけではあるが（笑）。しかもタンクモードへの変形もあり。燃えまっせー。
敵ながらエメラルドスプラッシュを放ってくるソーラーロボ「ランス」を倒す時には燃えまくったものよ。あとロボット装甲理論により、正面装甲を徹底的に強化したタイプや「稲妻掌砲」という必殺技を持つロボット、腕が伸びるロボットや偽ヴォーダン、なんかも出てきてウハウハって感じですな。惜しむらくは「漢（オトコ）はドリル」という諺があるにもかかわらずドリルロボが出てこないことです。まぁ、グラビトン砲装備のロボが出てきた時点で帳消しだが。ああ、腹からグラヴィトン発射するロボも欲しかったぞ！とかここらへんはいいだすときりがない。
そしてラストはお約束ながらも、実写版ジャイアントロボの感動をそのままに味わえました。いや、ほんと買ってから終えるまで一揆でした。本とゲームの進行速度は面白さの度合いに比例するよなぁ、と思った次第。
それにしても守君、泳ぎくらい覚えろよ！（怒）
というわけで、「巨大ロボを操って闘う」という夢を持った子供が今、オトナになってこのゲームを作ってくれたわけで、オトコのロマンここにありって感じである。かつてそーゆー夢をもったことのある人は是非やるべきである。

で、ＳＦ研の部室でアニメ東鳩のマルチの話と最終２話ようやく見ました。
マルチ話はゲームそのまんまのシナリオでしたが、アニメになるとこんなにつまんねーのかっつーくらい不出来な話だったように思う。またアニメ版のマルチの顔がちっともかわいくねーんだ、これが。耳飾りなんてみょーにやぼったくなっちゃってるしさ。長瀬主任は全然味なくなっちゃってるしさ、「長瀬のテーマ」かからねぇし。やっぱアニメでかわいくなってたのって志保とあかりだけじゃん、って感じですな。
で、ラストの志保話をそのまま見るが…
くぅぅうっ、せつなさ炸裂！！！
こ、これだよ、俺が望んでいたオセンチさはっ！！俺を狂わせたオセンチさがようやく最後に炸裂するとは……やっぱ、志保、お前が最高だぜ。
って、本当の最終回になっちゃうとあっさりとヒロインあかりに道を譲ってしまう志保。おい！そんなに友情の方が大切なのか！ってゲームもそんなシナリオだったことを思い出して怒れなくなってしまう。うううう、なんか、最後に来てさわやか青春ストーリーから映画マクロスの「未沙ＶＳミンメイ」話になってしまった感じであのラストの電話シーンは納得いかんですばい！あの映画のラストのカウントダウン直前の無言の女の戦い──
未沙：「悪いわね。オトコとオンナはやったもん勝ちなのよ」ニコリ。
ミンメイ：「ふん、あんなオトコ、あんたにくれてやるわ」ニコリ。──カウントダウン。
そのまんまやんか！！！俺は、もっと志保にはみっともないくらいあがいて欲しかったっす(T_T)/恋って奇麗事じゃないだろ、って、このアニメはキレイな東鳩キャラがみたいファンのためのサーヴィスだから、しかたないのか。やっぱアニメの限界を感じたよな。
というわけで俺はＬＤとかＤＶＤは買わないであろう。ゲームの方がましだから。なんでもかんでもグッズをそろえるのが真のファンってわけでもあるまい。
それにしても、ＬＤやＤＶＤにはそれにしか入っていない映像得点があるそうで、これまたマニア心をくすぐるうまい商売というべきか、守銭奴になりさがったと嘆くべきか、微妙なところではある。
というわけで全然方向性の違う二つのロボであるが、ニンゲンに似て非なるもの、にどうしてこんなに心惹かれるのかと不思議に思う俺であった。

『佐藤君と柴田君』（新潮文庫）佐藤良明・柴田元幸、読了。 - 99/07/24 00:00:00
本日の調子: 次は鈴木君と高橋君とかがイイな。

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＃７月２３日
うーん、カワカミさんのところのレビューで存在を知ったのだけど、柴田先生と佐藤先生についてはほとんど知識がなかったりする。んが、気になる存在ではあったのでどんな人物なのかひととなりを知りたくて購入した１冊。柴田先生は森さんがファンだといっていた翻訳者で残念ながら記憶に残っている訳本はない。白水社ｕブックスに訳書が多数あることは知っている。一方、佐藤先生については『ヴァインランド』の訳が『重力の虹』にくらべて死ぬほど読みやすかった（のわりには読了してないんだけどね。サイズのせいとかもあってハードカヴァは積みあがってるのよ）ことしか覚えておらず、他の訳書についてもまったく知らない、といった感じであった。
読後、正直、カワカミさんの様に「心に残る強烈な一文」があったわけでもなく、早起き出張の際に暇つぶしで携帯して頭が働かなかったせいか、イマイチピン！とくるというか強烈に心に残る部分がなかったので凡庸な印象なんである。
うーん、「エッセイなら一、二度ククッと笑ってくれればそれで十分である」と柴田氏は云っているわけで、それなら何度となく笑った箇所はあるので書き手の意図通りにはなっているのかな、という感じだ。
いや、待てよ。印象薄いとかいっていながら上の文句はすぐ引用できた、ってことはやっぱそれなりに印象付けられてるんじゃねぇか。（最近はページ内容「覚える」能力、衰えてるからなぁ）
とにかく、世代の差というものを感じた。彼等のロックな７０年代の青春はあきらかに俺の青春時代である８０年代より反抗的でエネルギッシュであったということを感じさせる。何もかもがこなれて、一息ついて、次の段階が見えなくてあえいでいる８０年代と違って「古いものは何もかもぶっ壊せ！」な７０年代というのが両者のエッセイを通して見えてくるから不思議なもんである。
今、丁度自分と同世代が元気である。世に出よう出ようとしているのを感じることができる。そういう人たちの仕事──たとえばカプコンのジョジョの第三部のゲーム化や、ガンダムのリバイバルあるいはオマージュ的な各プロダクツなど──やフィクション・ノンフィクションにかかわらず各種出版物の記事は俺と同世代の文章が元気よく、良い悪いや出来不出来を論じる前に「なつかしい」という同世代共通事項の連帯感とか過去への郷愁が先に立ってしまうことが多いのだけれど、丁度その感覚が俺に与えてくれる心地よさをこの文章は俺よりもひとまわり上の世代に与えることができる文章なんだなぁ、と思った次第。
残念ながら音楽通でないのでロック関係の文章よりは翻訳や英語や文章に関するパートの方がずっと楽しめた。まぁ、ほんと、息抜きに読むエッセイの与えてくれる笑いの種類としては上質な部類に入るんじゃないかな、と思った。
あ、あとこの本って最初に出版されたのって４年前で書かれた原稿はさらに古いのね。パソコンがＮＥＣ９８だったりとかワープロが「松」だったりとかがみょーに懐かしくっていい味出してたけど、衛星放送のとこなんかはちっとも古びて見えないところが凄いかな、なんて思ったり。
池澤夏樹氏の解説がなかなかＧＯＯＤである。とても同感な部分が多かった。
それと島袋里美さんのイラストと装丁がポップでＧＯＯＤ！だ。

『特選！くらいまっくす９９』（マガジンハウス）文：永田守弘、写真：荒木経惟、読む。 - 99/07/23 00:00:00
本日の調子: もう柊センセの作品ってば毎号くらいまっくす！

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＃７月２２日
夏は恋の季節！「愛と性の企画」第２段！
まぁ、この本が出たのを知ったのは＜ダカーポ＞No.426号を読んだからなんだけどね。
最近は興味のある記事が載っているし、外回りをするときにキオスクでついつい買ってしまったりするんだよね。
今回も若者に大ブーム!!「古本狩り」の楽しみ方や'99年上半期「本」の収穫といった特集記事に興味があったので買ってしまった。とかいいつつ、実は密かな楽しみは漫画「サイボーグサラリーマン　メカ★アフロくん」だったりするのだが。
嘘。
本当は相対フォント＋５くらいの大きさでしかも黄色地に赤での「結婚しない・できない人」という特集に目がいったから買ったんＤＥＡＴＨ。ごめんなさい。
という正直な告白をしたところで正直ついでにこの本をネタに俺とエロ小説についてちょっと語ることにしよう。
で、旬の本スペシャルでとりあげられていたのがこの本。あの「くらいまっくす」が１冊の本になる、なんてーのはゆーなれば「マイ・ドリーム」的企画ジャン！んで、本日発売、というのを見てさっそく出張先の駅前本屋にて発見し購入。
で、ダカーポの「くらいまっくす」のコーナーである。知らない人のために解説しておくと、いわゆる「官能小説」の最新刊の中から「これは」と思うシーンをずばり抜き出して紹介するコーナーである。
勝目梓の本や＜欲望課長シリーズ＞なんかもたまに登場しているようだが、河出文庫の＜性の秘本シリーズ＞や一般的な＜情痴小説＞の紹介なんかは見たことがないのであくまでもフランス書院文庫、グリーンドア文庫などの＜エロ小説文庫＞が中心の紹介のようである。うーん、勝目梓の光文文庫もあるからやっぱ、＜キオスクで買えるエロ小説＞というのが一番正しい表現か？
で、その紹介文に「お題」がかかげてあって、お題に促した内容のシーンが抜粋されている。そして最後の一文はその内容にひっかけた格言や流行語をもじったダジャレで締めている、という構成になっている。

（例）
老人

　（老人と若い娘の性交シーンの描写を紹介）

　お年寄りをワイセツにしましょう。

あんまピンとこないかもしれないが、終始こんな感じだ。知らない人は実物をご覧になることをオススメする。
このダジャレっぽい標語が好きなのだが、すでにそーゆーのを好んでる次点でオヤジ嗜好はいってるかもしれねぇ、とか週間ＡＳＣＩＩの青木光恵の連載とかを読んでヒシ、と感じる俺であった。
で、本書は１８年間に毎号３冊づつ、計１３００冊紹介された本の中から選りすぐった９９冊の紹介を一冊にまとめ、天才アラーキーの写真をつけて世に送り出したという、俺のような長年のファンには感涙もの本だ。
１８年、１３００冊という数字に驚いたが、「くらいまっくす」担当者の永田守弘氏がその期間に読んだ本は６５００冊にもなるそうでさらにめまいを感じる。「官能小説なら俺にまかせろ！」というのはこの人にしか云えないセリフではなかろうか？
俺はといえば、フランス書院文庫やグリーンドア文庫を初めて読んだのが高校生の後半で、大学生になってからは電車での旅行の際には情け容赦なく旅のお供にしていたんである。で、ダ・カーポのクライマックスも大学生の後半に知った。まぁ、けっこう長いお付き合いだよな。
また、下の方の話になってここを訪れる女子が減りそうな気はするんだが、まぁ、こーゆーやつもいるってサンプルにでもしていただこうか。
俺はどうしても女性のヌード写真とかにあんまし（まったく、ってことはないと思うが）反応しない男であった。どうして皆、あんなに興奮するのかさっぱりわからなかったまま思春期を終えることになる。
でも、映画とか土曜ワイド劇場とかでちらっとでてくる濡れ場なんかには凄く興奮したのだ。すなわち、性行為にはなんつーか、背徳っつーか、イケナイコトの匂いがあってそれに反応していたんじゃないかと思う。中学生の頃すでに家にビデオデッキはあったけど、高校生くらいになってもまだそれほどレンタル屋さんも繁盛していなかったころだし、動画メディアのエロに出会うのは大学生になってからのことで、田舎町のポルノ映画館を責めに行くなんて勇気もなかったわけで。（その頃は他にやっつける問題がいっぱいあったのだ）というか、馬路で性愛について興味がなかった。そーゆーのに一生懸命になってる連中を「バッカじゃねぇの」なんて云っていたのだ。恋愛は重大な問題だったんだけどね、恋と愛と性がきっかり分離していたのがこの頃。
当然男子向けのそーゆー雑誌なぞアホらしくて買ったこともない。特に写真の中の女性はそれが有名なアイドルや女優でもまるで駄目ーって感じであった。ところが、これが男女がからんでる絵になると、ぐぐっとくるものがあるのをある日俺は発見する。それとエロ漫画ね。一緒に夏休みの校内でサバイバルゲームをしていた地学部の友人が「戦略会議」をする地学部のテントの中で見せてくれた森山塔の漫画のエロさに俺は痺れた。今も最高のエロ漫画家は森山塔であり、塔山森でも山本直樹でもないと思っている。さて、そこでもう一つであったのが、フランス書院文庫である。確か日本人作家ではない、珍しい翻訳物だった記憶がある。「おい、プッシーとプッシー・キャットはどう違うんだ？」とか騒いだ記憶があるからなぁ。（若かったよ、うん）
とにかく、生物的に男女の肉体構造が違うのはあたりまえ、ＳＥＸとかもどうしても医学的な見方に陥ってしまい他の連中のように性的な刺激を受けられなかった俺であるが、どうも「具体的に男女がからんでるシーン」に反応することがわかった。いまじゃあんまり感じなくなってきたけど、江戸時代の遊郭の屏風に描かれている「春画」とかでも興奮してた気がするなぁ。
というわけで、エロ漫画の方は嗅覚が働かなくてそれきりだったが（栃木の田舎じゃなかなか売っていなかったのかな？）フランス書院文庫はそれ以来良く読むようになったのだ。しかも男子高校生が恥ずかしくなく買えるお店も発見した。古本屋である（爆）
文庫のそろえのいいちょっと大き目の古本屋が通学路とは全然関係ないところに出来たのをいいことにその店でじっくり吟味した挙げ句、フランス書院文庫を買うことができたのである。店番は絶対におっさんだったのも勝利の鍵であったし、立ち読みしても知り合いに声をかけられる心配なんてなかったのも良かった。ただ、いくら文庫が多いとはいえ、弾が少なかったのがたまに傷だったけれども、俺の方もそんなになかったのも事実だ。
で、大学生になってからはキオスクに置いてあるを知って、電車の供になったと（笑）
部屋においておくのが恥ずかしくてそのまま旅先に放置してしまうことが多かった。この頃読んだ本で嗅覚を身に付けたといえる。
まぁ、もてない俺のおかず遍歴はここまで（苦笑）。
エロ小説は滑稽である、とアラーキーは云った。まったくそのとおり。エロ漫画も一緒。性欲でぎらぎらしてたころならともかく、今はただ滑稽にしか見えない。そして、たまにそうでない作品と出会うのが面白かったりするのだ。
無論、最初の頃は「おかず」的要素が強かったが、そのうち吉野純雄先生のような「驚くべき作家」なんかの発見もあり、全然ロリータ趣味もないのにその辺を責めてみたりとか、趣味の一環として官能小説を読むようになっていったので、この本の幅広いジャンルセレクトを見ても別に選り好みをしたりひるんだりすることなく読むことができた。滑稽である、というのはこの驚くべき交合のヴァリエーションはすべて人間の「快楽追求」のために行われたことであり、しかも官能小説という虚構である、という点だ。ヴィデオだって虚構の部分があるわけだけど、役者は実演してるわけで、想像の中だけの世界とは違っているわけで、例えばＳＭ作家が縄師である必要はなく、ほとんどすべてが作者の「想像」で書かれていると思うとそのヌルさはイコール滑稽となり、また度を過ぎた滑稽は「スゲェ」作品に化けるのである。
先にも述べたが、俺はいわゆる「おヌード写真」で興奮はしない。んが、やっぱアラーキーとかテンメイの写真は「ごっついやらしい」と感じます。一部の写真は俺でもむらむらしてくるのでやっぱスゲーとか思います。というわけでそんな官能写真もついたこの本は非常に滑稽で非常に淫靡な本に仕上がっているといえましょう。「官能小説のガイド」なんてーのもお目にかかったことはないので奇書としても価値があるかもしれない。「研究」って名目で一度読んでみることをオススメする。あなたの知らなかった世界がそこにある。

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