U-kiの読書日記(99/6/24～99/7/4)

U-kiの読書日記(99/6/24～99/7/4)

『隣の家の少女』（扶桑社ミステリー文庫）ジャック・ケッチャム、読了。 - 99/07/05 00:00:00
本日の調子: 鬼畜系はエロゲーだけで充分な感じdeath。

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＃７月４日
痛い、苦しい、後味悪いの三拍子が満載。読んでいて窒息しそうだったし、読んだ後も息苦しい。
今までに読んだ本の中で最低の読後感、という意味では凄い本だった。前にbook-MLで「後味が悪かった本」というスレッドが出来ていた時、「好きで読んでるんだから、んな本ないよ」と思っていたのだが…。そう、この本は読んでいて凄く嫌な気分にさせられたのだが、かといって読むのを止めることも出来なかった。そういう本だったのだ。
お話はこうだ。
１９５８年の夏。主人公デイヴィッドの隣のルース・チャンドラー家に事故で両親を失った美しい姉妹メグとスーザンが引き取られる。心ときめかすデイヴィッドだったが、メグがルースに激しく折檻されている場面に出会いショックを受ける。やがてメグは地下室に監禁され、ルースとその息子たちの虐待は留まることなくエスカレートしてゆく。そしてデイヴィッドはそれを傍観していることしかできないのだった──。
これってばジャンルは「ホラー」になるわけ？こ、怖いよ。『黒い家』も怖かったし、『クリムゾンの迷宮』も怖かったけど、あれはエンターテイメント性があった。これはなし。本当に怖いだけ。痛いだけ。苦しいだけ。やっぱ世界で一番恐ろしい生き物は人間だよ。自分が理解できない他人。それってＳＦに出てくる悪玉宇宙人より恐ろしいとは思わない？ボディ・スナッチャーよりも、もっと精巧な人間ソックリなもの、という恐怖がある。そして奴等は法律やら人権やら、本来我々を守ってくれるものを使って身を守り、攻撃しようにもできないのだ。これならはしかでやっつけられる火星人の方がかわいいってもんだぜ。
メグの当初の思惑通り、いくらなんでも「行きつく先」があるだろう、とたかをくくっているととんでもないことになる。人間の姿をした人間でないものというのを相手にしていたと気付いた時にはもう遅いのだ。
主人公デイヴィッドの軟弱さ加減に憤りを覚えるが、それも最終章の前までかな。結局彼はルースの息子たちのようにはならなかったのだ。そこがなんともイラつく。彼を憎みきれないのはとても消化不良だ。
ルースの考えというか、虐待に至る理論というかがまぁ、なんとなく書かれてはいるんだけれど、理解できない。そこも不気味で胸くそが悪い。心理が読めない不透明さがイライラをつのらせる。不安にさせる。そして最初は戸惑いを見せていたルースの息子たちが次第にルースのやりかたに同化していくのもやはり納得できない。いや、わかりたくないだけなのかもしれないが。
結局、美少女メグは死に至るまで虐待を受けるわけだが、読んでも読んでも虐待はエスカレートするばかりで、息つく暇が無いのだ。彼女が死んでしまうとわかってはいたが、こんな死に方だとは予想もしていなかったので正直呆気にとられてしまった。そうなのだ、やっと終わった、って感じなんですよ。主人公のデイヴィッドと同じ気持ちなんだろうか、とようやく今、気がついた。そう、この最低野郎がっ！と思っていたデイヴィッドと読者である俺は同じだったのだ。目の前で起きているこれ以上ないくらい酷いことに対して何もできない。これは、そうか、これを狙っていたのなら、これは酷い。
メグが死んでからの本当の結末はさらに呆気にとられる展開で「これで終わりなのか、」と思うともう怒る気力さえなく、ただ脱力。そうか、自分の無力を知るというのはこーゆーことか、という感じ。この立ち止まることもふりかえることも許さない物語の構造はひょっとしたらうまいのかもしれない。否応無し。そうか、それがこの物語のパワーなのかもしれない。文章が、どこまで残酷になれるか、という挑戦であれば、これは間違いなく成功している。
世の中「誰かが助けに来てくれる」なんて思ってて助けが入ることなんて、そう滅多にあるもんじゃないし、ということだ。
もっと詳しく書こうと思えば書けるけど、まぁ、書きたくない気分なのでこれで終わり。

『海がきこえる２─アイがあるから─』（徳間文庫）氷室冴子、読了。 - 99/07/04 00:00:00
本日の調子: いつまでもつまんないこと覚えてるのねっていわれてどうせその通りですよ、とかね。

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＃７月３日
『海がきこえる』、再読。
って、再読するな！＞俺。
ガマンしなさい！＞俺。
だってだってー、村山由佳がまた海がなんたらとかゆー新作出してるしさ、オイラ、オイラ、思わずオセンチになって三省堂１Ｆのスターウォーズフェアのところでトランペットを見つめる黒人少年モードに入ってずーっとダース・モール卿のナギナタさばきにみとれちまうような有り様だったのさ。
いやね、ここんとこ（たぶんＫａｎｏｎの影響かな？）似たようなオセンチ路線の本ばかり読んでしまってなんだか精神的にタコツボ入りな状態なのヨ。自分でもいいかげんにしろ、とか思うんだけどね、カッコイイロボットとかとの出会いも無いしさ、「鉄鋼弾」よりは「思い出の写真」のほうがココロに届くんだもんな。しょうがない。
ダサコン２会議の後にカラオケに行って、ちょっとした気まぐれから谷村の「２２歳」を歌ったらミンナに「どーしたんですか？」とかいわれちゃったけど、ちょっと前までの俺はこんな歌しか聴かなかったし、歌わなかったんだヨ！（苦笑）
人生には「季節」がある。今は春夏秋冬のようにはっきりとした「季節」ではなく、なんとなく曖昧な「季節の変わり目」にいるような気もする。俺は春も秋も嫌いだ。夏や冬のようにわかりやすいハッキリした季節を求めている。そうだ、そうなんだよなぁ。
というわけで、『海が聞こえる２』である。実は既に１と一緒に読んでいるんだけどね、あえて１の感想とは分けてみた。１と２では実は思い入れに月とスッポンくらいの違いがあるからね。この「２」が出た時、相当俺は怒っていたと思う。売れるものはなんでも利用しよう、という商売根性が見えて嫌だったんだと思う。あまつさえ武田真治のドラマは２の方もやるっつーし。守銭奴めがっ！と怒らずにはいられなかったのだ。
が、今続けて読んでみると、すんなりと続いていて、そして杜崎と里伽子はラヴラヴしてるわけでもなく、淡々とお互いの生活をしているし、紆余曲折を経てラストのクリスマスにようやく手をつないで冬を迎えるシーンに至っては、なーんだ、２冊合わせて１作品っつてもいいじゃん、というくらい違和感がないので驚いてたりする。これぐらい密着度のある続編なら下手に間を空けて読まない方がいいんだろう、というのが俺の意見である。
いや、２読んで思ったのは武藤里伽子も津村知沙も本当に首を絞めてやりたいってこと。
マジです。
おまえら、性格悪すぎるぞ。ってゆうか、わがまますぎるっつーか、これだから美人はイヤだって感じ。
もー、どーでもいい津村知沙のパートが結構多くて、それを里伽子と並べることで若者に「何かを悟らせよう」という作為が見え見えで多少鼻につくものの、こーゆー面倒臭い女が世の中にはわんさかいるということをちったぁ勉強した俺には首を絞めてやりたい、とスラリと書くだけですませているのでオトナになったなぁとか自分で感心したりして。（以前ならじたんだ踏んで本を投げるくらいはやっていたハズ）
大学時代、「バーゲン品を買いに行く友人」がいたことをブランド物のバーゲン品を買いに行く話とかを読んで思い出してしまった。このころは服に金をかける奴はバカだ、とか真剣に思っていたのでまだまだ人生修行の足りないただのオタクだったよな、と思う。
赤坂も六本木もこの本が出た頃最初に行ったのだ。ずいぶんと思っていたのと違うのでビックリした思い出がある。飯屋のオヤジにいわせれば「昔の赤坂といやー、おまえさんみたいな若いサラリーマンがうろうろできるような雰囲気じゃなかったんだ。あれは、紳士淑女の町だった。今はどこへいっても同じような雰囲気の町ばかりで緊張感がない」と嘆いていたから、きっと「赤坂のホテルロビーで待ち合わせ」とか「赤プリで飲んだ」という言葉に全然ロマンのかけらも感じないのは俺のせいじゃなく、時代のせいなんだ、と思ってしまった。確かに大学生がデートする場所じゃないかもな。でも、５年前に比べて今の赤坂は目に見えて品がなくなっている。高級料亭はつぶれてパチンコ屋とゲームセンターと韓国エステになっちまってるし、夜は道端で客をひくチャイネシア人お姉さんでいっぱいだ。（本当に「ここは大久保か？」って思うくらいガイジンばかり）終電まぎわに見附の方へ歩いていくと「もう一件いかがですか？」と声をかけられとてもムカつく。だがしかし、自分の周りは気品とは縁もゆかりもない酔っ払ったおっさんばかり、というのも事実なので、飯屋のオヤジの云っていることは本当なんだなぁ、と思う。これなら銀座のほうがずっと良い。
「人が戦争をする理由」と「アイがあるから」については俺もちょっと思うところがあるので書いてみたい気もしたが、軽く触れる程度でやめておく。
「アイ」についてはちょっと前の日記でもふれて、そこで云ってるレベルとあまり変わりがないと思うし、「人が戦争をする理由」も前にネットで戦争したときにちょっとはわかってきたからだ。相手のことがわからないから人は戦争するんだ、と思う。そして男と女は別の生き物だからお互いを完全に分かり合うことなんてできないのだ。わからないところを理解しようと努力し、嫌だと思うところを許して、好きなところをたくさんみつける、というのがアイの力であり、アイは心の仕事なのだ。
いや、しかし、氷室さんは高知の出身なのかと思ってしまう文章なんだけど、これってすべて取材に基づく虚構なんだよね。やっぱプロってスゴイや、と思う他ない。俺にできることといったらせいぜい自分の経験を拡張することくらいしかできないもんね。
というわけでそろそろ、また「自分のための物語」でもいいから小説でも書きたいなぁ、なんて思う俺であった。

『この文庫がすごい！９９年版』（宝島社）、読む。 - 99/07/03 00:00:00
本日の調子: ノストラダムスねたも怖い童話ねたも飽き飽きの俺は既に死に体？

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＃７月２日
うーん、９７年と９８年の奴が非常におもしろかっただけに、９９年版も買ったのだけど、なんかパワー不足。やっぱ、担当が変わるとカラーも変わるんでしょうか。それともたまたまこんなモンだったのかな？
これ読んで、探しにあるいは買いに走る本ってのが少なからずあったもんだし、既に知ってる、読んでる本についての評判を読んでもうんうんうなずくパターンが多かったんだけどもね。そもそも興味を引かれる本の出番が少なすぎるっつー感じ。
中村うさぎと原田宗典の対談で、意外と中村うさぎがＳＦ読みなのに感心したくらいか。やっぱＹＡ文庫系の作家はＳＦ読んで育っている人が多いのかしらん、と勝手に想像を膨らましたりしてたんだけれども。
高村薫ももっと読まねばいかんなー、と思ってしまった。『神の火』は彼女にしては「それほどでもない」小説なんだろうか。あの凄いディティールの文章はなるほどこの人だからって納得してしまうインタビューだった。奥が深い。
「あの人が薦める文庫本３冊」も宮大真司のバラードと桜井亜美ってとりあわせが強烈だったのと山本直樹の筆頭が『時は準宝石の螺旋のように』ってところが良かっただけか。そうだとも、もっとこの場で読めなくなってしまった本のことを惜しんでくれ。
「元気の出る文庫王決定戦」は大森さんの選書が卑怯すぎるのでウケる。やっぱ＜欲望課長＞はオトコのロマンだよな。（あんなにシリーズ化されるとは思わんかったけド）
「決定！第１回日本官能文庫大賞」は睦月影郎が一位、というあまりにベタな結果に閉口。館淳一が一位でも怒っただろうけど、ちょっとこの１５冊の分母じゃしょうがないかもな。しかし、睦月影郎、彼も俺が目を付けていた作家なのでちょっとうれしいかな。藍川京ってまだ書いてんのかよ！ちょっとまた読んでみたいよな。たしかにロリータものが一冊も入っていなかったのが残念。吉野純雄先生の登場する余地がないじゃん。母子もので高竜也はいれてるくせにさ。バランスがわりーよ。読み手に尖った性癖がないのであれば、各ジャンル性の高い本は避けて、単なるＨ度の高さで候補を選んで欲しかったよな。ＳＭに理解の無い人にその筋の無作為でぽいっとだしても奇異に見られるだけだもんね。でなければ、そのジャンルにうるさい人にジャンル内の一位を選ばせたりとかしてほしい。
その内幕を漫画化した「ザ・セクハラ座談会の内幕」もかなりイケました。
いや、こういっちゃなんだけど、エロ小説とかの意見を俺は女性から聞いてみたい。ってゆうかあからさまにセクハラかもしれんけど、こーゆー話を女性から聞くのは非常に楽しい。
「レイプものって、絶対嘘じゃない。最後のほうで女の人がよがったりしちゃってさ、あんな状況で女性が感じるとオトコの人は思ってるわけ？」
「そんなふうには思ってないけどさー、虚構なんだよ、ファンタジーなんだよ。そこをリアルにさ、痛がってる描写だけとか寡黙に犯しちゃったりしてたら読んでる方だって楽しくないよ。そこの嘘を楽しんでるんだからさ」
とかいう話をした時は楽しかったなー。あれは今ではセクハラとかいわれてしまうのか？世知辛い世の中だ。味もそっけもロマンもない世の中だ。お前らもう少し、他人に優しくなれよ。ってゆうかもっと産めよ増やせよ。（意味不明）
でもな、最近の娘は小説よりも過激だったりするので、シャレにならんです。アナルファックは「とりあえずやってみた」とかだもんな。勘弁してほしい。
とりあえず、クラタマさん、僕と付き合ってください。
全国有名店の書店員に聞く！「売れ筋ベスト１０」の書泉ブックマートのコメントがウケました。なにが「当店は単なるオタク族ではないクリエーター的な読者の受け皿になってます」だよ。単にやってくるオタクの数が多いから必然的にその上澄みであるクリエーターの数も多いだけでしょうが。もっと素直にオタクに優しくなれよ。
っつーわけで軽く流してしまったッス。記述してない部分については本当に印象に残ってないっつーか、歯牙にもかけてません。たぶん、この本はあんま再読しないでしょうな。来年に期待。

『クロノス・ジョウンターの伝説』（ソノラマ文庫ＮＥＸＴ）梶尾真治、読了。 - 99/07/01 00:00:00
本日の調子: ＯＮＥに似てるといいつつＫａｎｏｎの威力に酔い知れている俺。

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＃６月３０日
クロノス・ジョウンターという機械があります。砲台のようなカタチをしていて、物体を時間圧縮理論によって未来へ飛ばします。で、使ってみてわかったのは、過去へ射出した物体は目的ポイントにある程度停滞したところで、ばねが伸びきった位置からびよよんと戻るように未来方向へ飛ばされてしまうという結果だった。１０分前に送ったものは１時間後、５年前に飛んだ物は３０年後、というように等比級数的に未来へ戻るのだ。
過去に飛ぶ者たちは皆、期限付きで過去に戻り、何か目的を成そうとする。そして、それを成せようが失敗しようが、容赦無くはるか未来に飛ばされ、浦島太郎状態になってしまうのだ。このロジックを思い付いた時点でカジシンの勝ちである。それに恋愛がからんだ日にゃぁ…せつなさ炸裂必至！！
期限付きの恋愛っつーか、離別の時が迫ってる時のあの感触が「ＯＮＥ」してます。ひぐはぐぅです。
第１話吹原和彦の話はまだクロノス・ジョウンターが実験中のお話である。したがって過去に停滞できる時間はわずか数分。しかもはじき飛ばされる未来も半端じゃない。しかし、それでも彼は過去へ飛ぶ。しかも、恋人でもなんでもない、通勤途中の花屋の娘。ただ愛するその人の死を救うために。早くも炸裂ぎみのせつなさが俺を襲うが、博物館の館長の手記という体裁もあってテイスト的には「美亜へ送る真珠」そのまんまじゃん、と思ってしまった。で、正直この程度か、と思い続きを読むのが少し遅れたわけ。
で、数日おいて第２話布川輝良の話を読む。クロノス・ジョウンターは第１話より実験を重ねている。そして、飛んだ先での停滞時間を延ばす装置も開発され、その実験が行われようとしている。あれ、これってラヴな話じゃないわけ？と思っていると…。う、うぐぅ。冬の、ホワイト・クリスマスの数日間の思い出。
ラヴだよ！間違いなく愛だよ！
オチを読んで呆気。ひ、ひぐはぐぅ！うまい、うますぎるよカジシン！と叫んでむさぼるように次へ。
第３話鈴谷樹里の話。い、いきなり「たんぽぽ娘」の引用（モロ）かよぉ！あまつさえ自分の『地球はプレイン・ヨーグルト』（「美亜へ送る真珠」収録）とか出してるしよぅ！とか思ってどうなるんじゃ、と思っていると……
超許す。許可。承認。了承。たんぽぽ娘超えてるよぉ～。す、スマン！俺が住んでるアパートが＜ハイツ樹里＞なのがこれほどスマンと思ったことはない！っつーぐらいオセンチ極まってしまった。みさお～、駄目なお兄ちゃんを支えておくれ～。
というわけで掲示板で騒がせていただきました。
うーん、よぉーく考えると一番やるせねぇにゃ～というのは最初のお話だ。だけど、やるせなさすぎ。俺はぬるい男なので救いのある２話３話でいいやって感じかな。
いやー、「クロノス・ジョウンター」って名前からしてもう精神的に敗北してますな。ジョウントですよ、ジョウント。俺もテレポートをジョウントと呼称すること推奨委員会委員長ですからね。あ、ちなみに超能力心霊現象をスタンドと呼称する会会長もやってます。それにしてもこの「クロノス・ジョウンター」という装置、外観や機能からいってなぜかコセイドンのコセイダー射出機『ファイタス・ボンバー』を思い出してしまう。行け、ファイタスボンバー・ジャーンプ！知らない人にはわかってもらえないだろうなぁ、この興奮は。ファイタスボンバーも時間ごと飛ばす機械だったらよかったのにな。あと時間停滞機「ＢＯＧ」も好きですよ。ネーミングのセンスと描写は好みにぴったりマッチ！ですな。
もともとオマージュっつーか、引用っつーか、パロディっつーか、入ってますけどね、なんでもいいんです、俺。ＳＦ好きなんです。好きなもんが出てくればシアワセなんです。
で、それをやるのがなぜカジシンなのか。もっと若い、そうだな、俺みたいなのがやったっていいじゃないか、と思う。ソノラマもＹＡの領域なんだろうけどね、出してるトコロじゃなくて、出してる作家がもっと若い次世代の人でないとイカンと思うのよ。
二番煎じまで古い人にやられてちゃ、ホント救いがない気がする。お茶だって二番目に入れた奴の方がおいしいってもんだ。悪いとはいわないよ。うまくやってくれりゃいいんだからさ。
林さんも書いてたけど、一本書き下ろしてこの厚さの文庫だということは、単行本はすげーコストパフォーマンス悪かったんだ、と思ってしまった。３本とも平等に俺は良いと思ったので文庫版で正解でしょう。
全世界のオセンチ好き必読！、ってゆうか、読め！

＜ヤングキング・アワーズ８月号＞、読む。 - 99/06/30 00:00:00
本日の調子: お腹ぺこぺこのメンチなみ（悲しくって少しバカ）。

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＃６月２９日
エクセル・サーガ、俺の心にさわやかな思い出を残して消えていった六本松さん。
そして彼女が復活するのかぁ？と期待を大にして読み進んだ結果、出てきたのは、世のロボ子ブームをあざわらうような、マルチもビックリ、マヤもムギュウ、といった感じの猫耳ニーソックスロボ子として再生とは…。悲しくって涙も出ない。
「まつりの景色」が丁度、『海が聞こえる』のダーク版みたくてちょっと気になる。やっぱ里伽子もこれくらい落ちぶれていたのならば、「痛々しい」気もするんだけどなぁ。
田波くんは相変わらずシアワセそうなので放っておく。
そーいや、今月は米村孝一郎氏の超ビッグポスター付きですな。漫画は描いてくれないんだろうか？

『海がきこえる』（徳間文庫）氷室冴子、読了。 - 99/06/29 00:00:00
本日の調子: あんたなんか最低よォ！って云われて興奮してる俺はホント最低野郎です。

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＃６月２８日
り、里伽子ォ～ッ！
と、今更、下腹に妙な力みを入れた地の底から響くような声で呼びかけたりはしない。
んが、確かに５年くらい前、この小説に激しく俺は入れあげていた記憶がある。
ここに告白するが、９４年初頭の頃、まだＨＤＤが５４０ＭＢで８万円くらいして、Ｍａｃが漢字トーク7.1でハードディスクに勝手な名前を付けられた頃、俺は比較的お大尽状態だったので、外付けＨＤＤをＣＤＲＯＭ焼き屋に持っていて良くバックアップを焼いてもらっていた。そして勝手にシステムドライブに女性の名前を付けて呼んでいた。（ただの変態じゃないか…）
そう。確かにその頃俺のＭａｃは里伽子という名前だったのだ。（は、恥ずかしい奴…）
これも結構息が長い作品で、アニメージュ連載からアニメ化、続編発表という時間の中で俺自身も色々と環境含めて変わっていった。先輩の卒業、自分の卒業、就職、今の仕事…。そんな中で作品に対する気持ちも変わっていったのを覚えている。「僕が好きな人へ」とかゆーポエム付きイラスト集みたいのを本屋で手にした時は本屋で拳を震わせて無意味に怒っていた気もするな。いったい何がそんなに気に障ったんだろう？武田真治主演でドラマ化の時はホントにヤツを刺殺したいと思ったほどだった。鶴太郎の桑田判事が予想に反してオオハマリ、大地康雄の「おとうさん」がオオハマリだった矢先である。武田くんには何の罪もないのに、「これは奴を殺して俺も死ぬしかない」ってくらい駄目だったのだ。（当時の俺の怒りが噴出したＮＩＦＴＹログとか探せばどっかにあると思うが）原作だけで相当神経を逆なでする作りなのに、スタジオ・ジブリのアニメを見た日にゃ、そりゃもう俺は荒れまくりでしたよ、ええ。たぶん、それを機に、それまであんまり悪く言ってなかったジブリに対して俺はジブリ・ハンターになったような気もする。
とにかく、あの頃の俺は色々なことに敏感で、色々なことに憤っていて、それでかつ、ナチュラルにオセンチだった。そんな俺の心にに『海がきこえる』は小説もアニメも強烈に響いていたのだった。そう、杜崎の里伽子に対する気持ちのように、自分でも好きなのか嫌いなのか、どうしたらいいのかわからないけど気になってしようがない、そんな作品だったのだ。そう思うとなんだかホロリとしてきた。
だから、今回文庫版が出るといろんなところで聞いても知らんぷりをし、本屋でべたべたと広告が張られていてもしらんぷりをし、実際に平積みにしてあるのを目にしても避けて通っていたのだが…。ちょっとへこたれていて手にとってしまう。
帯にも抜き出されている解説の言葉が俺を煽る。
「氷室さんの小説の魅力は、私たちが不自由だったからこそ自由だった時代を、そう海が聞こえた時代を思い出させてくれるところにあります」
シンジ君！君ってヤツは？！
「武藤里伽子や津村知沙みたいな人に振りまわされた経験なんてほとんどの男性にあるはずないと思う。少なくとも私にはそんな経験はない。でも、まるで自分にあったかのように懐かしい気持ちにさせられる」
岡田さん、いってくれるじゃん。
まぁ、良くも悪くも、故郷でのいざこざから逃げ出すように東京の大学（っつても俺は　習志野校舎だったけどさ）に出てきた俺は全然かぶるところもなかったけど、杜崎や里伽子の「感覚」にジンジン痺れていたわけで、今思うと「若かったんだな、なんにせよ」と思う。この世代特有の戸惑いや焦燥や閉塞感やなにげない毎日の過ごし方みたいなものに同一性を感じていたんだと思う。そうだ、息のつきかたが同じだったというのが一番近いたとえかもしれない。好きだとか嫌いだとかそういうパートも、そういうことにまったく縁がないパートにしろ、この小説のには共感する部分があった。過去形になってしまうのは、俺がもちろん自ら望んで俺を変えたからからであり、確信をもって云うのはそれでもなおさっぱり変わっていない部分というのが残っているからに他ならない。
人間は時間と共に否応無く変わって行く「表層」のような５０％と、何があろうと決して変わることのない「深層」のような５０％で成り立ったシンセティックな存在だ。表の５０％も変わったとしたらそれは誰が見ても「変わった」といえるが、そのくせ間違いなく同一のものだといえる芯があってこそ変化もできるのだということだ。今の俺が過去の俺の積層であるというのは間違いの無い事実で、過去の俺があってこそ今の俺がいるわけで、まったく変わってしまったとしても間違いなく俺は俺なのだ。（うーん、なんかわけわかんないところで堂々巡りしてるな）
そんなわけで、他の方向へ逃避しそうな気配があったので、それよりはまし、と買ってしまった。んで、読んでみる。
やはり色々印象が違う。文章も一部、違うような気がする。はて、小説は読んだが、アニメージュ連載版ではなかったはず（といってもあのころは部室に行けば読めるような状態だったけれども）。細かい単語レベルのことだけど、今風（もう５年以上経ってるのだ。昔話だよ）になってるところもある気がするのでやっぱ直しが入っているのだと思う。アニメ版の記憶もおぼろげだ。色々忘れてるよ。
そして思ったのが……保科智子のシナリオそっくし！（苦笑）
そ、そうか。
と、智子ォ～ッ！　と　り、里伽子ォ～ッ！　は根底でつながるものがあったというわけか。「子門真人のスターウォーズ」の記憶力からして俺の脳内シリコン説を唱えようとしていたんだが、忘れるところは忘れてるわけですな。
で、俺なりに色々思ったことをまとめようと思ったんだけど、宮大真司の解説を読んだらまったくその通り、といったことが書いてあったので書く意欲が失せてしまった。そうなんだよな。整理のつかないもやもやっとしたものをそのまま書くのは得意だけど、それを理路整然と順序立てて筋を通して人に説明する、ということが前から得意じゃなかったけど最近はとみにできなくなってきた。もどかしい、はがゆい、それでキレたりする。なんともはやなさけない。理屈詰めで生きてきたのでここ最近は感情の生き物になろうと努力した結果がこれだもんな。もういい歳した大人なんだし、もう少し自分を締めてみるべぇか、と思う。
確かにアニメ版は宮大の指摘するように野郎にとっての「救済」なパートが盛り込まれていてヌルい。津村知沙のイヤなパートも無かった気がする。でも、当時の俺は中央線のオレンジの電車が過ぎ去ったあとにたたずむ里伽子とかの姿がすげー心に染みた記憶がある。世の中つまんないことで救われてる寂しい人間もいるってことだ。
まったく、男と女は騙し騙されである。できれば「騙すな、騙されるな」であるけれど、正直な男女関係って俺は築けなかったぞ。そーゆーの経験してなかったから５年前はきっちり杜崎にシンクロしまくって一緒に悩み、もだえ苦しんだ挙げ句に「いったい俺だったら何をしてやれるだろう」とか云っていたはずなのだ。
今の俺だったら武藤里伽子や津村知沙みたいな女が目の前にいたら首を絞めてやるところだ。
これを読んだ当時は、とにかくこの小説風に云えば「そう、僕はまだ子供だったのだ。良くも悪くも純粋だったのだ」ということだろうか。
純粋さに美徳はある。はかなさ、もろさ、そういったところにも美しさはある。でも、時間は容赦無く過ぎていくわけで、自然と世間でオトナとされる年齢になってしまうわけで、そんな中で誰だっていつまでも弱さを支えてもらえるとは限らないのだ。タフでずるくて汚くなって、そうやって一人で生きていかざるを得ないのだ。
俺は既に若い頃の自分の脆さや弱さやある種の剛直さを遠くから目を細めて見られるような位置に来てしまったのだ。もう自分のことだったとは思えない域にきてしまったのだ。だから、「海がきこえる」も今はあの頃の気持ちでは読めないのだった。
うん、でもほんとにしょうがねぇなぁ、という人生の先輩的な位置から杜崎を見てしまうのはそれはそれなりに気持ちいいけどね。そのくせギャルゲーで切なくなったりしてるんだから確実に退行してる部分もあるよなぁ（苦笑）。
この小説には＜ゲーム＞にはない真摯さというか、真剣さというか、切実さがあるから当初思っていたよりちゃかせないので自分でもビックリしている。
この作品が書かれた９０年から９３年は俺にとってもとても大切な人生の「季節」だった。それを思い出させるからかもしれない。津田沼とお茶の水と八王子でじたばたしてた自分のそんな姿がすっと思い浮かぶからかもしれない。傷ついて故郷から逃げてきた自分を大学の先輩連中は優しく受け止めてくれたし、卒業間際にはとどめのような事件が連発したけれども、俺は卒業と就職に失敗しなかった。社会人一年目には新しい環境に慣れようとそれなりに必死だったわけで、いくつかのみっともないことはやったと思う。その当時の様々な不安を俺は全部オンナノコにすがって逃れようとしていた。とてもみっともないことだといまでは思うけど、そのときはどうしようもなかったのだ。だからそんな時期にアニメ付きでやられちまったこの作品に俺がのめらないはずも無く……。
そういったわけでハードディスクは里伽子だったのだ。あ、でも漢字は違ったかも。姫野カオルコの最高傑作、『空に住む飛行機』の主人公も理加子だったからな。リカコは特別な名前だったわけだね。
この時期、現実のオンナノコにも色々教わったし、色々悲しいことも味わったけど、虚構の世界でもリカコやカオルコやミドリちゃんといった素敵な娘達にであったわけで、とても修行になったよな。そうして仕事が激化する関係でシロウトさんとは９３年に縁が切れて、いよいよ知る人ぞ知る＜ジャスミン＞篇に突入するわけだけど、今はまだ話すわけにはいかんなぁ。もう５年たったらすっぱり公開してるだろうけど。
あーあ、俺は「何に対しても責任をとれる男」にはまだなっていないというのに、すっかり歳だけは大人になってまった、というわけか。
というわけで色々とココロ乱させてもらったよ、リカコくん。

『ヒカルの碁１』（少年ジャンプコミックス）原作：ほったゆみ・漫画：小畑健、読む。 - 99/06/28 00:00:00
本日の調子: ヒカル～！（声：飯島真理＜意味なし）

コメント:
＃６月２７日
で、出てる。まちがいなく出っ放しだよ、スタンド。
佐為が、か、かわいい。スタンドのくせに泣いたり笑ったりしてるよ。自動販売機見てはしゃいじゃってるよ。た、たまんなくラヴリーだよ！
はっ、何を血迷ったことを！俺はノーマルだ、ホモじゃないぞ？！
しかし、いいなぁ。こーゆースタンドがいたら楽しいだろうなぁ。
現代語ペラペラしゃべっちゃうのはまぁ、宇宙人が言葉ペラペラなのと一緒で考えちゃいけないよね。漫画だし。
あかりもかわいくてよいね。
はっ、俺はロリーじゃないぞ！俺はオトナの女性が好きなんだ、何を血迷ったことを？！
しかし、幼なじみが「あかり」で先週のジャンプでお弁当イベントを発生させていた日にゃ読まんといかんと思っちゃうよね。
しかもとどめ喰らえ！
塔矢アキラ！君は俺の知ってる男に良く似ている。
君にはスタンドがあるはずだ！さぁ、出せ！
君のスティッキー・フィンガース！
ジッパーの中から碁石出したりしてくれ～！
ヒカルの服、オシャレなんだけど良く見ると、５だの五だのがちりばめられているんだよ…卑怯だよ！これは「ヒカルの碁」という漫画であって「五郎くん」が主役なわけでもないのに数字を使いすぎだ！虹村兄弟のガクラン並みだ！
小畑さんの絵は線の整理されたヒジョーにキレイな絵でデッサンもしっかりしていて大変好感が持てる。最近の漫画書きの人はとてもキレイな線で整った絵を描くけど、漫画の場合はそれだとインパクトがなくて売れなかったりするんでデザイナーとかトレーサーとかになっちゃうんだけどね。北条司やきたがわ翔なんかはよくやってる方だと思う。今回のコマ割の妙はほったさんの技量だと思うけど、つやつやした小学生と平安の麗人を描くのには小畑さんピッタリだといえよう。
いや、囲碁はアメフトと同じくらいルール知らんのよね。でも対局シーンは『ふたりっこ』（ドラマの方で入れ込んでたんだけどね、漫画版も好きだったナ）のときと同様、なんだかわからないけど「魅せる」能力があるので超合格だよ、この漫画。能条漫画はもうちょっと別の次元の惹きがあるんだけど、ま、あんまここでは突っ込まんでおこう。『ふたりっこ』の時も対局の時に無用な力を相当入れちゃってたりしたんで実はこーゆーノリが好きなのかもしれない。特に香子が森山にとどめを刺す「神の一手」が漫画だと＜６六歩＞なんだもんね。あれは今思い出しても燃えたゼ。
とりあえず突然青春篇になって、身長１９８ｃｍになったヒカルとアキラがラグビーの試合で戯れてるシーンとかに突入したり、ヒゲで顔にへんなスジのあるおじさんと「魂を賭けよう」「ＧＯＯＤ！」とか云いながら碁をさしたりしないことを望む。いや、ホントは望んでいるんだけど。（それは『遊戯王』がいるからもういいよね）
というわけでなぜ今だに２巻が出ないんじゃ～。はよ読ませろ～！（俺は日本で二番目くらいにガマンができない男）

『ミッシング・ゲイト全３巻』（ノアール出版）米村孝一郎、読む。 - 99/06/26 00:00:00
本日の調子: 僕のパパはキャプテン・ダンのタクマ君なみ。

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＃６月２５日
自律駆動系とは──遺伝子を持った重力場といえるものが船体をつつんでいること──
む、難しすぎる。君らホントに皆これを理解しているのか？！
「重力場遺伝子」というのが登場する怪しい漫画の噂はずいぶん前に先輩から聞いていたが、掲示板で話題になるまでは探してみる気もなかった。偉大だぞ、スキャナー掲示板。ノアール出版って聞いたことなくて探すのに苦労したが神田に行ったら結構置いてある店はあったのだった。
遺伝子を持った重力場。それを支える重力遺伝子。
既存の重力場に侵入し、その整然とした列を歪ませ自らの場を確保する。その歪みから動力を得て自らを維持する駆動遺伝子。それから構成される自律駆動系というシステム。
銀河自体の重力をその動力とするゲイトウェイが完成され、人類は銀河外周をその文明圏としていた。
しかし、「九月崩壊」と呼ばれるゲイトウェイの崩壊がこの文明圏を破壊してしまった。
そういう世界のお話である。
うむむ。やたらと免疫系がどうしたとか抗体だとか、会話がミクロの決死圏っぽいというか。とにかく、俺にピンとこない部分が多すぎる。文章で説明されるとそれはそれで腹が立つが、米村氏の絵柄には癖があり、その絵から情報を引き出すのに俺がちょっと手間取っているというわけである。（しかも宇宙モノは俺の範疇外だよ）
キャラも立っていて好感がもてる。両親の愛を受けながら、それを永遠に失ったアタランタ。死んだ男への憧れを胸に、星を追い続ける男ワトソン。そして、「死ねない男」ラックマン（彼が一番好きだな！）。そしてとどめ食らえ！な感じの猫目の海賊のお姉さん。しかも名前がアルテミス。くぅっ、オンナノコがみんなつり目で乳でかめなのは犯罪だと思うゾ。運命の巫女さん達も５人なんだか７人なんだか６人なんだかよーわかってません（苦笑）。
１巻のどたばたはアップルシードや甲殻機動隊に似た匂いがある。特にラストのアタランタとゲートの戦いはもろサイバーパンクのノリですな。ＪＭとかヴィーナスシティのラストを思い起こさせる。好きなんだよ、こーゆーの。俺もネットワークの勉強してて「ゲートウェイにはデーモンがいる」というのを聞いた時、このラストシーンみたいな電脳空間バトルができんかなぁ、という妄想に浸った思い出がある。
２巻のいつのまにやら地球が地球が大ピンチ、のお話も好き。
３巻の外伝寄せ集めて一気に物語を収束に向けてしまうやりかたも強引ではあるけれどそれはそれで良い気がする。完結していない物語ほどやるせねぇものはないからだ。フォアウインズのお話も荒巻義雄＆佐藤道明の要塞イラストストーリーズな雰囲気が良し。
過去と未来が交錯し、造語のテクニカルタームが飛び交い、そして宇宙とＳＦがある。うーんそこはかとなくファイブスターだ。
ＪＢと子供時代のワトソンのエピソードは宮崎某の飛行機系の話を彷彿とさせ、かっこ良くて切ない。未来少年某とかラピュ○っぽいよなぁ。くやしいがやはり好きだゾこーゆーの。
「似てる」を乱発いているのは失礼この上ないけれども、俺にとって未知で理解不能なものを必至でとり込む作業をやっている上で必要なことなので許されたい。
まぁ、アップルシードもファイブスターも作品世界を理解して楽しめるまでには時間がかかったものだ。今では申し分なく両作品を楽しんでいるので、ようするに慣れというか、理解に時間が必要なんだと思う。基本的な理解力というのは学生時代から増えても減ってもいないと思うから、再読を何度かするうちに自然にか、誰かの話を聞いてポンと抜けるか、だ。
ラストの「僕もだ、ＪＢ」にジーンときてしまうのは何故だろう？
そうだよ。俺だってかつては空にあこがれていたからだよ。
野田元帥に捧げられているのは伊達じゃない。空と宇宙に憧れを抱いてる諸君には必須の書だ。

『ノエル』（ニュータイプノベルズ）神山修一、読了。 - 99/06/25 00:00:00
本日の調子: かつて、ランチャー・ソフトに操られていた俺。

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＃６月２４日
とても良く出来ている。読んでみて正直、こんなにおもしろいものを見逃していたのかっ！って感じに襲われた。出所が他のエロゲー／ギャルゲーのノヴェライズと違っているところからしてもっと早くに予想して然るべきだったが、今まではＯＮＥのノヴェライズに魂を抜かれたりしてたもんだからついつい後回しにになってしまっていた。
清水代歩、岡野由香、佐野倉恵壬がノエル３人娘である。桜井智が声をあてる代歩は「代歩ランチャー」など単発のソフトにもなったりしており、俺も一時期使ったりしていた。まぁ、今でこそ「ルームメイト・井上涼子」なんかもあるけど、当時はしゃべるオンナノコを相手にするだけのゲームなんてーのもめずらしかったのだ。
書かれたのが９６年９月。微妙な時だ。ネットワークの関係の描写はこの次期とても微妙な位置にいる。パソコン通信はかなりメジャーになっていたが、まだマニアのｼ趣味の領域を出ていなかった。９４年、モザイクの発表を発端にインターネットブームが始まったものの、大学や企業の開発室などの専用回線のない人たちにはちょっと縁がないものだった。９５年ようやっと一般向けのダイアルアップ接続サービスを行うＩＰが出現しはじめ、雑誌にＣＤＲＯＭの添付がＯＫになり、インターネットスターターキットみたいのがつきはじめる。で、１１月末にＷｉｎ９５が出てようやく９６年、物好きな人たちやＭＳＮに騙されて契約してしまったおじさん達がインターネットだと騒ぎ出した。で、いまは渋谷系コギャルもエンコでｉＭａｃ買ってもらってカードでショッピングしまくり、という状態なんだけれども……というわけで９６年９月にでたこのノベライズもその少し前に出たノエルというゲームもやはりインターネットではなくパソコン通信の延長みたいな感覚で作られている。シーユーシーミーみたいな技術も実現していたはずだけどね。テレビとパソコンが一体化した端末で映話する、という設定はなかなか微妙な説得力があるのだ。
一応お話ではそーゆーヴィジフォンが普及してる２１世紀の近い未来で、ノエル３人娘は計画して作られた人工の臨海都市のお嬢様学校の生徒、ってことになってる。夏のバカンスで「僕」のいる河口の海辺の町にバカンスに来た彼女たちと知り合いになった「僕」は高校３年生。遠距離恋愛と受験に悩んでいるという設定だ。無論３人娘も同じ歳。まぁ、距離が離れてるから心が許せる、電子メールのような感覚で映像付きの留守電が使える、というわけでインターネット使った遠距離恋愛のようにも見える。むろんリアルタイムでの映話はチャットなんかよりもエキサイティングだ。カメラの位置によっては相手が足を組みかえるだけでドキッとするようなショットもある。向うの三人はお互い現実世界で会ってるわけだから一人につっぱしったりするのはなかなか難しかったり、また会話してる女の子以外の娘との会話をネタに使うこともできるわけで、なかなか「かけひき」は難しかったりする。まぁ、ノエルってそんな世界だ。
というシチュエーションを頭に叩きこんで読むと、とても主人公が普通すぎるところに共感してしまう。俺は死ぬほど電話が苦手なオトコなので、美人の映像付きの電話にとまどう主人公に思わずシンクロしまくりである。
主人公の性格設定はエロゲー／ギャルゲーにありがちな、ちょっとタルい系のカッコ良さげなオトコノコ。しかし、あくまでもプレイヤーの影になっているので東鳩の浩之ほど全面に出てこない。そのわりにはうまーく描けているな、という感じだ。
平坦で平熱で、それでも時折、閉塞感にあえいで、微熱にうかされたように妄想に走って、そうだ、地方都市の高校生に美人の女の子３人と連絡をとれるツテをあたえちゃったらこうなるよ、という見事なシミュレーション。実録といっても通じるかもしれない。
代歩の普通さに窒息し、
由香の非凡さに嫉妬し、
恵壬のそっけなさに求めることに夢中になる。
そんなもんだろ、実際。しかし、ゲームの中でそれをやられてもつらい。幸せになりたいじゃん、ゲームの中でくらい。でもリアルさを売りにしたいんだったらこれくらいのディティールは必要かもしれない。「ノエル」は２が出るに当たって１の制作者の心意気というものを聞かされていたのでその完成度にはなるほど納得だったりしたんだが。（見事それをうらづけるように２は売れなかったし、今も１の３人娘のファンは多い）
チャプターに「リゾ・ラバ」なんて使っちゃってるところが既に「過去」だと思い知らされて悲しいが、テクノロジー的にも言葉的にも若者感覚的にもまだまだイケてる文章である。しかもゲーム作成者の趣味もあるだろうが、ゲームの会話用のネタとはいえ、ソニック・ユース、ＲＥＭ、キング・クリムゾン、グレイトフル・デッドなんてのが飛び出してくるのでソレ系の人にもオススメである。乗ってるバイクはＸＪだったりするしね。
その他、ゲームの「会話ネタ」用に小津安二郎、、稲中卓球部、吉田戦車、堤中納言物語や鼻行類、果てはスパラグマなんて用語も飛び出したりする。みんなノエル３人娘の知性に対抗するための武器だ。つまりそれは作者のセンスの良さであり、それをイイと思える俺のセンスの良さだ。（つったらちょっとナルシス　入りまくってるかな？）まぁ、ナゾベームはちょっとした重要キーワードになっていて、そういうハンドル名の人物がＢＢＳに現れたりして、ストーリー中で鼻行類の説明をされちゃったりするわけで、鼻行類マニアにはその点でも要チェックアイテムといるだろう。今回棚上げしてたの読んだのも実はこれがきっかけだったりする。
とにかく、この３人の女の子のキャラを本当にうまく平等に描いた挙げ句にストーリーが破綻するどころかゲームよりもうまくまとめているのには舌を巻く。ほんとに見事なので是非読んで欲しいんである。『痕』のノヴェライズの人に見習って欲しいところだ。
実は俺はこのゲーム、途中で挫折して誰ともハッピーエンドにはなっていないが、そのおもわず前のめりになる（前かがみでないところが残念だが）会話シーンなどは充分にプレイしている。ゲームでハッピーエンドを迎えていない俺はこの小説でようやくノエルが終息した、そんな気がしている。
このページを見てる人でノエル・プレイヤーはあんまりいないと思うが、今ならプレイステーション・ザ・ベストで３０００円くらいで買えるはずだ。実際にプレイするもよし、この本を探してみるもよし、是非この３人娘とのリアリティあふれるコミュニケーションを体験して欲しいと思う。
（小説版たぶん、メッセサンオーとか、あーゆー系の店にはまだ売ってると思うし、古本屋にもギャルゲーのノヴェライズは結構出回ってるからね）

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