U-kiの読書日記(99/4/18～99/4/24)

U-kiの読書日記(99/4/18～99/4/24)

読んだ本、買った本について思ったことを徒然と書いていきます。
（そろそろ本以外のネタも書くけどな！）

『スプートニクの恋人』（講談社）村上春樹、読了。 - 99/04/25 00:00:00
本日の調子: 宇宙行き一番のりだけどお腹がぺこぺこなライカ犬なみ。

コメント:
＃４月２４日
あーあ、また吉祥寺、神田といった俺の中央線生活ラインだよ。最近読んだのは『秘密』がそうだったっけか？端は津田沼から国立まで。前のめりになるねぇ。上野、大宮、宇都宮ラインとかが舞台の話があればそっちでもいいんだけどね。話が逸れた。
脳が小説でできているオンナノコ・すみれを見つめる＜ぼく＞の視線で物語は語られてゆく。ハタチを過ぎて自立した女性をオンナノコと呼ぶ俺はセクハラで訴えられたりするのだろうか？ま、いい。彼女が休日に井の頭公園で腐るほどタバコをふかしながら本を読んですごしたりする、というのを読んで俺もちょっと昔を思い出す。俺もココに引っ越してきたばかりの頃は周辺の古本屋をしらみつぶしにあたること以外に、井の頭公園で春の晴れた休みの日に本を読んだりしたものだ。なんでわざわざそんなことをしたのかというと、誰に見られるわけでもないのにオシャレをしたときと同じように、そーゆーキザったらしい行為を伴うと孤独というのも少量の強い酒のようにそれほど酷いもんじゃなく、むしろおいしいモノになるからなのだ、とだけ云っておこう。俺も＜孤独＞との付き合いも相当長いのでそういうこともわかってくる。話が逸れた。
語り手＜ぼく＞とすみれの夫婦漫才は健在。相変わらず読んでいて楽しい。二人とも小説好きのちょっと変わり者、という設定のためか、ギャグのセンスがその他の作品よりもしっくりくる感じ。いや、単に俺が久しぶりに味わうからそう思うのか。夫婦漫才──そうか、俺はこの言葉好きだけど、本当は『夫婦善哉』の語感から来てるのかもしれない、なんてことを真剣に夜中に話したりできる女性がいると俺もシアワセなんだけどな。この二人はそんな話をしたりしそうである。そもそもタイトルの「スプートニク」だって「ビートニク」との勘違いから生れている。誤りは人生にとって娯楽だ。もし世の中のすべてのひとが「誤り」を産まなかったらこの世は機械的で殺風景でさぞかしつまらないだろう。二つの冗長度の低い言葉というのは駄洒落やくだらない誤用を犯して人生に笑いを生むものだ。そして俺の頭の中はそんなものばっかでうずまっている。冗談で使う時もあれば本気で間違う時もある。８回の故意に混じった２回の不意は同じように他人を笑わせてくれるが後者の２回はとても俺にとって有意義なものになる。支払う恥や照れは前の８回が帳消しにしてくれるのでまったく便利だ。話が逸れた。
これがどんなお話なのかちょこっと書くことにしよう。

小説が好きで、頭の中で文章を書くことで思考する女。やぼったいコートを着て、左右違う靴下を履いていることもしばしばで、死ぬほどタバコを吸う女。それがすみれ。小説を書くために大学を辞めて部屋にこもりっきりの彼女は当然のごとく友達がいない。大学を卒業してなんとなく小学校の教師をしている＜ぼく＞も、小説が好きで何事からも一歩退いて俯瞰してるようなところがあって、そんなわけで当然のごとく友達はいない。そんな二人は偶然知り合ってお互いにすごく大切な友達だと思っているけれど、すみれは性欲だとか恋愛感情だとかがこれっぽっちもなし状態なのでいくら親しくなろうとも＜ぼく＞とは男と女の関係になるはずもなく、そして肉体的にも精神的にも健全な＜ぼく＞は代替手段を見つけてはなんとなく虚しい思いで処理をしてすませている。
そんなすみれがある日、性欲とか恋愛だとかを感じる相手に出会ったといってきた。但し十五才も年上の女性にだ、という。＜ぼく＞は複雑な思いですみれにその恋の行方をじっくり吟味するようにアドバイスする。ミュウと呼ばれるその女性と付き合いはじめてからすみれは早起きして勤めに出てタバコもやめ、キチンとした身なりをし、あまつさえ左右違った靴下を履くこともなくなった。恋が自分を違ったものに変えてしまったのかとすみれは悩みはじめる。
そして、すみれはある夏の終わりの日、ギリシャの孤島で忽然と姿を消してしまう。

といった具合である。
やれやれ。村上春樹の小説はまるで大林宣彦の映像作品のようだ。何をやってもまるで同じに見えるがちっとも嫌じゃない。
そして結論からいえば、この作品についていえば、どうも『ねじまき鳥クロニクル』の軽量・廉価版という気がしないでもない。丁度ねじまき鳥を読み返したかったところだったので渡りに舟とも思ったが――こういうの読んでこういう気分になりたかったのは確かだが――かえって読み比べたくなってしまったので結局二度手間になった。
俺の人生を変えた、というと大袈裟すぎるので、俺の女性に対する価値観を徹底的に変えたのは何を隠そう、現実の女性ではなく『ノルウェイの森』のみどりちゃんだったので、彼女型村上春樹登場人物に出会えるのはなんとも嬉しい限り。
＜ぼく＞型の登場人物に自分を重ね、みどりちゃん型の女性がいたら楽しいだろうな、と思いを馳せ、そしてそこに描かれる恋愛模様を読み取って、「恋をすると人はさみしくなるね、だからワタシはさみしんぼ」とかゆー宣ちゃん映画を見たときのような切なさと孤独感を煽ってみる。なんだか知らないけれど漂っている喪失感とか寂寥感とそれをさらっと埋めてくれる癒しの文章に酔ってみる。うーん、物語の本筋はどうでもよくて、そのように彼の文章で感情を色々と操作されるのが村上春樹の小説の楽しみかたなんだと思っている。なんだかストーリーはつまんなかったりわけわかんなかったりするのに、＜絵＞が凄く印象的だったり、登場人物の何気ない一言が忘れられなくなってしまう、そんな映画に似たテイストだと思う。絵じゃなくて文字でやってるんだからたいしたもんである。（絵が連続すると映画になって文字が連続すると小説になるんですよ）
それにしても村上春樹も難しい話を書く。２３ｐと最終ページを５往復くらいして物語を咀嚼する。
つまりは我々の冷たい頭蓋骨の中身をホンモノにするためには我々の苦しみや悲しみや寂しさという生きる上で必要な生け贄の血が必要だということなのか。ぼくとすみれの物語はゆっくりと始動しはじめたのだ。ぼくの手はこちらとあちらをつなぐ門として機能する。物語を完成させるにはこちら側とあちら側を結び付けるための生暖かい血＝このつまらない肉体をひきずって生きるということが必要なのだ、ということだろうか。「にんじんと鍵」のエピソードは手の感触＝生活の象徴だ。誰だって手に生活の重みと汚れの感触を伴って生きているのだ。
「ねじまき鳥」も奥さん帰ってこない。が、あの、読後の満足感というか癒しはなんだ？と思うとやっぱし「井戸から水があふれてくるシーン」なんだなぁ。今回はそれがない、とてもつらいと思っていると最後の４ページがあるわけでうむむ、やっぱ同じ味じゃん、と思った次第。ダイナミズムで表現してたのをシンボリズムで代替したって感じですか。俺は前者の方が好きだけど、人によっては後者の方が好みかも、なんてわかったふうなこと云うのはそこそこにしておきましょ。頭良くないのばれちゃうから（笑）。
というわけで、軽くおさらいできる村上春樹文学という意味で好きな人には文句なくオススメ。
『ねじまき鳥』の解説本を求めちゃうような、わかりやすいのが好きな人は『太陽の南、国境の西』のほうが良いかもしれませんな。俺はこれで充分満足ッス。

『銀河の壷直し』（サンリオＳＦ文庫）フィリップ・Ｋ・ディック、読了。 - 99/04/24 00:00:00
本日の調子: 新しいＷｉｎＣＥの「テリオス」って名前は卑怯だと思う。

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＃４月２３日
ギャラクティック・ポット・ヒーラーですぜ。
車田マンガの見開き必殺技炸裂シーンで無意味に叫んでも様になりそうだ。
というわけで、タイトルの異様さに惹かれながら長年探しまくったが、法外な値段のモノしか見たことがなかったので長らく「幻の作品」扱いだったのだが今回ようやく後輩から借りて読むことができた。
その後輩から「ケツから二番目くらいのディック」だといわれて実はちょっと期待していたのだ。だって俺が楽しめるのって世間一般で評価の低いいわば「Ｂ級」の作品だからね。
結果、大当たり。わかりやすくていいじゃん。
巻末の巽孝之さんの解説はあいかわらず難しい話をこねくりまわしていて俺にはさっぱりだったけど、ゼラズニイもディック・ベスト３に入れて肯定的に受け止めているらしい。うん、いいぞ。
――父の代から壷類修復職人（ポット・ヒーラー）だった。
いいね。出だしの一文がこれですぜ。イカス。うーんでも俺だったら、
――オヤジの代から＜壷治し＞だった。
にするけどね。だいたい壷（ポット）って治す（ヒール）じゃないだろ？「直す」と「治す」も微妙なところだけど。あんまし英語の知識がないので突っ込まんでおく。

２０４６年。陶器の修理職人ジョー・ファーンライトは７年間職にありつけず、妻のケイトに逃げられ、日々を仲間との＜ゲーム＞に費やして退役軍人手当てを頼りにしているという「生きる屍」状態であった。
そんなジョーのもとに一通の郵便がやってくる。７年ぶりの仕事の依頼。それはシリウス５の超生命グリマングからの依頼。プラウマンズ・プラネットの海底に沈む大聖堂ヘルズコーラを引き上げ、そこにある無数の陶器を修復する作業にあたること。報酬は3500クラムブル。ジョーに選択の余地はなかった。
管理されまくった地球をグリマングの手を借りて脱出する。彼と同じ目的で呼び出された特殊技能者は大勢いたのだ。しかも皆、心に傷を持ち疲れきった人々だ。
集まったのは地球人だけではない。宇宙全域から大小硬軟様々な宇宙人たちが集められていた。ヒューマノイドの異星の女性マリ・ヨヘスとジョーは親しくなる。
大聖堂にはかつて神が祭られていた。プラウマンズ・プラネットに伝わるアマリタとボレルの神話があった。そして古代種族カレンドの記した書があった。カレンドの書には過去と未来と現在がすべて記されている。ジョーたちは――神のごとき超生命グリマングでさえ――カレンドの書に振り回される。その星に居る限り、いかな生命もカレンドの書に記される運命から逃れられないのだ。だが、予言とは常に暗示的で謎めいており、いかようにも解釈できるもの。
ジョーは自分の不幸な運命を記したカレンドの書に振り回されながらも自らの生きる道を求めてその星に留まる。予言はグリマングの死と大聖堂の引き上げの失敗と作業参加者の破滅を詠う。果たしてジョーの運命やいかに？

という感じである。いや、好きなんだわ。こーゆー人語を操る珍妙宇宙人大行進みたいな話。ディック作品の中でも読まなくて良いとされる『アルファ星系の氏族たち』とかもあまりのお馬鹿な設定プラス「優しい粘菌宇宙人」とかが出てきた時点で超合格！な俺である。なんと作品の中盤過ぎまで「大聖堂」のある場所にすら行きついていないのだが非常に楽しく読み進めた。
例えば、3500クラムブルはドルに換算するといくらか？
答え。200,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000.00ドル。
簡単な日本語で弐百兆億万ドルって感じデスカ？お前は平野耕太か？！未来少年コナンか？！
凄いんだか凄くないんだかわからないグリマングにも大笑い。神のようではあるが、実体を持った時点でそれは有限の存在になるわけで、自重で床を踏みぬくことで不完全さを表現しようとしていておかしい。
宗教かぶれのロボット・ウィリス――コマンディングの際には必ず名前を呼びかけないと命令を聞いてくれない――も宇宙人軍団にまけない珍妙アイテムでここらへんはサンリオのゼラズニィ作品に似た雰囲気かもしれない。
冒頭の翻訳機の誤訳を使ったゲームも楽しい。これ、俺もインターネット黎明期に翻訳ソフト買ってきて遊んだもの。例えば「正直な圧縮道」＝「アーネスト・ヘミングウェイ」とかゆーやつだ。JAVAのページを見にいったらお茶がカプセルに入ってどうしたこうしたとか云われて大変だったものだ。これを何十年も前にやられたんじゃたまらんぜよ。やっぱディックって天才じゃん、とか思う。
そして、神のごとき能力を持つグリマングに対抗して現れる影の存在、ブラック・グリマングとは一体？！
ディックはこれを超真剣にマジメにやっているのだ。笑わせようと、つまり、ギャグでこういったものを配置しているわけではないのだ。そーゆー真剣なお間抜けさこそ俺が推奨するバカＳＦ必須の要素であり、これは充分笑えるし俺的に超合格というわけである。
俺はこの作品をどう読んだかというと、ＳＦの形式をとった寓話だと断言する。
落ち込んだディックがディック自身のためにかいた慰めの、破滅的な精神のどん底から自分自身を生きろと鼓舞し、再生させるための、そんな癒しの物語だ。単純にそうとらえるのは安直すぎるだろうか？
我々は罪だとか業だとか苦しみだとか悲しみだとかを詰め込むための壷なんである。壷が壊れてしまっていてはそんなつまらないものさえも詰めることもできない、無意味で無価値な存在になってしまう。ポット・ヒーラーという一見つまらない職業に疲れた人間が生きていくために必要な一時的な＜癒し＞の意味を感じた。ポット・ヒーラーの熱針（これを麻薬の注射針と見るのはかんぐりすぎだろうか？）がいかにすばらしい技巧をもって壷を治そうとも所詮は一時凌ぎでしかない。最後＜壷直し＞は＜壷作り＞へと転身する。刹那的なごまかしの生き方から脱出して終わるわけだ。それがたとえ神様の手助けによろうとも、運命があらかじめ決まっているものだとしても、最後には自分の意志で今の不幸な自分とは違った生き方ができるのだ、ということを暗示しようとしているのではなかろうか。
とてもこういうお話は好きである。
本の紹介文には「ディック文学の試金石となる一冊」とある。ふむ、試金石か。俺的か否かの試金石にはなるだろうけどねぇ。

『少女の器』（新潮文庫）灰谷健次朗、読了。 - 99/04/22 00:00:00
本日の調子: 無垢な少女を描かせたら吉野純雄で決まりッ！

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＃４月２１日
少女陵辱マニア？というヒラノさんの感想に元・陵辱マニアの俺が黙っているはずもなし。一も二もなく即買ってきて読む。……日本語は難しいネ。陵辱って確かにそーゆー意味だね。純情少女汚物まみれ。はらはら(;_;)。
正直な第一印象は、久々に読んだ年寄り臭い文体だなぁ、ということ。どう考えても話の舞台は現代だし、口語がメインなのだが、そーれでこの文体かい？こぉーんな言葉使ってる人類っているんかいな？（笑）というか、それだけ若い作家の本しか読んでいないってことなんだろうな。井上ひさしとか今読んだら悶絶だろうか。それとも「古典文学」だと思って読んじゃうので違和感ないのだろうか。
うーん、確かにここに描かれる少女・絣（かすり）の姿は宇宙仔猫ドルバッキーに
「やぁ、それは理想であってホントじゃないニャー。人間もっと色々、ドロドロ、あるんじゃないのかニャー」
と思いっきし突っ込んで欲しいところである。こぉーんな女子高校性が実在したら糸井悠丹か海堂剛の小説で陵辱されまくってる少女も実在だって！ってゆうか三段論法で彼らの陵辱小説も実在になっちゃうってば！「あまりにも完璧に出来すぎた少女だったので無論犯してやりましたよ。ええ」とか登場人物に云われちゃうよ！って感じですな。
こぉーんな地球人類（少なくともジャップ）は現在棲息していないよ。ヤマトナデシコってゆう種族は全滅。（いや、絣がそうだとはいわないけどさ）理想で酔える人が多いのもまた事実。こーゆーの読んで「美しい」とか「素敵だ」って思える人も多いんではないかな。そうね、誰にもわからないだろうけど、なめぞう先生（エロ漫画家）の「現実少女アッコちゃん」（イヤー、パパとママがあんなことしてるなんて～。フケツッ！もうあんな家には帰らないワ！ってゆーお話death.）を読んだあの日から現実主義者になったオイラには向かなかった話と云えましょう。
しかーし、こーゆー真面目で誠実な人間描写ばかりの小説を読んでいると恥ずかしながら読み終わって少し今の自分のあり方を恥じてしまいました。うう、俺だって理想しか見えてなくて清く正しかった時期もあったんだい。それをいまさら「汚れちまつた悲しみに」なんて詠おうとは思ってないけどさ。ううう(ToT)、理想は理想で高く持っていたって良かったんだよね。ここにでてくる絣パパのようなおっさんに俺はなってみたいデスヨ。上野くんの様にまっすぐバンカラに生きてみたかったデスヨ。絣チャンのような娘とつきあったりしたかったし、そーゆー娘に恵まれてみたいと思ったりもしますヨ。
今じゃ娘が生まれても茶髪にしたあげくにエンジョ交際したりしねーかとか、オトコノコは酒鬼薔薇２号になったりスクールウォーズのイソップ（トルエン大好き）になったりするんじゃないかと不安でたまりませんからねぇ。
１章から５章まで４年に渡ってかかれているが、うーむ、１章、２章と４章、５章じゃちょっとおもしろさが違うとは思うんだが。どうなんだろ？正直に云うと、１章のなんだかトンデモないハズした話をのぞけば、神経症の女の子の話やドカタの上野くんに飲み屋に連れていってもらう話なんてすごく面白かったんだけどね。あの「汚物まみれ」はうーん、意味があったんだかないんだか、なにがいいたかったんだか、って話ですな。
シッコしたけりゃ、オヤジと恋人がナニしてようと、便所いきゃいいやんか！
というのが最大のナゾ。うーん、これがなければ普通なのになぁ。
上野くんはイカス＆モテルのもわかるのになぁ。
こーゆーのをＮＨＫとかはドラマ化して多くのお茶の間をはらはらさせているんだと思うと俺はちょっと寂しくなるな。いや、俺みたいな露悪趣味野郎でぎっしりの日本、ってゆうのも想像するとかなりイヤだけどね。
おっさんの書く本はもう読まんでしょう。

『プロジェクト・リムーバー』（電撃文庫）篠崎砂美、読了。 - 99/04/21 00:00:00
本日の調子: レッド・ヂャックの神崎です！アグリ・涼って何人？

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＃４月２０日
Ｅ．Ｇ．に反して表紙が思いっきしメカメカしいので（たぶん駄目そうな内容ではあろうと思ったが）「じゃあ、今はこーゆーメカメカしいライトノヴェルはどんなモンが出回ってるんじゃ？と思って買ってみたのがコイツ。いや、探検するのに１冊６００円以上というのは学生だったら絶対やってないだろうな。
学生時代、ロボットだのサイボーグが出てくる話を求めて三千里状態だったのだが、海外ＳＦには非人間型のロボですらなかなか出てこない状態。国産でもいわゆる「正統派」なＳＦには宇宙用サイボーグやアジモフロボットなんかはでてきても戦闘マシーンとしてのロボは出てこず、いわゆる「ガンダム小説」みたいなのにしか出てこないのだった。それは『ベルゼルガ』のようにアニメのサイドストーリーっぽいのであったり、『ブラスティ』のようにパソコンゲームのノベライズみたいなのであったり、『サムライン』のようにあからさまにパロディであったりしたのだ。むしろ元気だったのは少年漫画においてであった。少年漫画のようなストーリー・設定で描かれた小説、というものすら発見できず（９０年より前のことだ）、俺はライトノヴェルに見切りをつけたわけだ。谷甲州の航空宇宙軍シリーズや神林の雪風よりかっちょ良い戦闘シーンが描かれてないのなら金払って読む価値なし、と判断したんである。
で、今元気満載の電撃文庫でロボロボしているこの作品、読んでみた感想は、うーむ、ようやくこのレベルの作品が現れたか、といったところ。学生時代に俺が書きたくてしょうがなかったのはこの程度のお話なんである。実際、ＳＦ研の副会誌で連載したお話は質的にもこぉーんなお話である。少年漫画の王道的、といえばいいんだろうか。
あらすじ、というかこの巻は作品設定に費やしてる感じがあるので、さらさらっと書いてしまおう。

未来の日本。とあるロボットメーカーの大企業。革新的な技術を以って人間サイズのロボットの開発が進められている。一部の腹黒い幹部はそれを軍事利用しようとたくらむが、開発責任者は無論それを拒む。結果、開発者は殺されてしまうわけだが、それによって開発が遅延することは企業にとって結構なダメージがある。従って最終開発段階である人工知能回路の替わりに人間の脳を使ったデモ用のプロトタイプが作り上げられる。で、お約束なのだが、なぜかその＜部品＞は殺された開発者のものなのだった。
で、内部の裏切り者の手によって、プロトタイプは脱走。（ここはライダー以来の王道ですな）熱血漢の開発者の弟は企業の陰謀と兄の死の真相を知って企業に立ち向かってゆく。兄とは知らず、その脱走してきたロボットと共に。

で、この巻では脱走してきたロボットの名前はまだムーバーのままで「リムーバー」になっていない。主人公とも会ったばかりというところ。まぁ、このまま王道の中の王道を進んでいくと同型のロボットにコテンパンにのされて、企業に謀反を起こした開発者の元同僚の手によって修理＋パワーアップ（ここで名前も変わると思われる）、さらに戦闘がエスカレートして合体パーツ登場。敵本陣へ突っ込む。という感じであろうか。（これは昔俺が書いた話のプロットだけどね）
というわけでもう先が見えちゃったので続き買う気ないッス。こーゆーのはもう卒業しちゃったッス。今はゼラズニィの珍妙ロボット戦士とかを超える奇抜なアイディアとかないともう駄目って感じです。あとジャンパーソンみたくぶっ飛んだ野郎にするとか。脳が人間な時点でロボコップ＝ライダーマン・レベル止まりって感じです。あとはどれだけ戦闘シーンやメカ設定を燃え萌えにできるかっつーところですな。今回読んだところではなかなか良い感じで充分合格点である。
と思って作者プロフィール見たら、ええっ！この人「マッチメーカー」（略称ＭＭ）の作者さんなの？ＭＭのノヴェライズもしたいって？うーむ、知る人ぞ知る、ＤＯＳのテキスト表現によるロボットコンストラクト＆対戦＆育成ゲーム、それがマッチメーカーだ。大学出たばっかりの頃はまだコイツをカスタマイズして、勝手なレギュレーション作って、ＳＦ研内でトーナメントとかを組んだりしたものだ。というわけでＭＭは俺の青春の１ページだったりするのだ。うーむ、感慨深い。
続き買うのやめよう、と思ったら本屋で３巻まで出てるのを発見。一応完結しとるやんけ(ToT)。もうそれほどでもないって見切りつけたわりにはなんか気になるどー。心変わりしたらきっと衝動的に読むでしょう。
Ｅ．Ｇ．の時にも気になったんだが、これも「原案＆イラスト─木村明広」となっているなぁ。どーゆーシステムなんだろ？誰か教えてちょ。

『Ｅ．Ｇ．コンバット２ｎｄ』（電撃文庫）秋山瑞人、読了。 - 99/04/20 00:00:00
本日の調子: 俺のかぁちゃんテロリスト、のジョン・コナーなみ。

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＃４月１９日
ひぐぅ、ＧＡＲＰが！お前はＴ２のシュワルツェネッガーか？！
というわけで、Ｅ．Ｇ．があの表紙からは思いも付かないロボジョックス養成軍隊小説だったことにえらく感心した俺は速攻で２を購入。ありゃ、そのまんま続いているのね、ということを買ってから知る。
１読んだ感想で俺が書いた「～という展開がよかったのに」をそのままやってくれていたのでなーんだ、やっぱ皆考えることは同じか、とか思うと同時に「何巻かまとまって完結」って作品の感覚を思い出してきた。ソノラマとかブギーとか一応シリーズモノも１冊で完結して楽しめるやつばかり読んでいたし、＜星界の紋章＞とかも３冊まとめて買ってまとめて読んでるのでこーゆー「生きたライト系続きモノ」は久々なんだよね。「現在継続中」の感覚をすっかり忘れてた。
物語的にはあの１冊で本当に最後の方しか盛り上がってねぇ、と思ったらそうか全３巻の同入部にすぎなかったわけね。うーむ、世界観の描き方だけで満足してた俺って一体…。
で、この巻はいよいよ話中盤。新人教官ルノアと落ちこぼれ女子５人組みは意気投合して訓練に磨きをかける日々。で今回は彼女にあこがれる優等生カデナがルノアに自分たちの部隊の教官になってくれるよう頼み込むところがメインになってくる。ルノアを月に送り込んだ軍上層部にコネのある嫌みなお嬢様の差し金で、初めての実地偵察訓練でルノア隊はかつて誰も訓練として派遣されたことのない危険地域に割り当てられる。ルノアは苦悩した末、自分の部隊に対する愛情と基地内で最優秀であるカデナ隊に任務遂行能力アリとの判断からカデナ隊の監督責任者に移籍する。当然、誤解が生じルノアは充分苦しむこととなる。で、偵察訓練開始となるが、月面基地にはかつてない危機がせまっていたのだった。というお話。
中盤以降、訓練時の様子をルノア隊の面々への尋問するという形式でカットバックが入る。ここの描き方が絶妙である。いったい月面基地史上初にして最悪の事態とはどんなもので、ルノア隊の面々はいかにして生き残ったのか？いやがうえにも盛り上がる。
挙げ句の果てに、「月と宇宙怪獣のなぞ」をはらみつつ、彼女らが生き残ることができたのは、隊の６人目のメンバー、唯一の男性にして人工知能ＡＩである機械知性ＧＡＲＰのおかげだったというおまけ付き。なにがどうなっちゃうのかは読んでいただこう。しかしね、これ、マルチの話なみに泣けるよ。人間よりも人工知能のアレな話のほうが悲しいよ。けなげで美しいよ！メカフェチども号泣必至！読め！
例によってすごい表紙なので、ふつーの人は手にとらないでしょう。ちょびっとでもいいから表紙にロボット兵器の描写を入れることを要求するッ！確かにパイロット全員女の子だけど単なるギャル・キャピキャピ小説ではないので安心して読んでいただきたい。（いや、ギャル・キャピキャピしてるけどさ、ちゃんと人間してるからＯＫ）
で、月の反対側まで穴あける、って話が出てくるんですがホントのところ、できるんですかね？ひみつシリーズ「できる・できないのひみつ」で地球の反対側に穴をあけることはデキッコナイッス！というのを読んだのを思い出してしまった。穴に落ちた人達は必死なんだろうけど、緊張感のないシチュエーションだ、とか思ってしまった。
３で一応終わるんでしょうか。早く終わらせて欲しいです。楽しみです。

『タブー』（角川ルビー文庫）須和雪里、思うところあって再読。 - 99/04/19 00:00:00
本日の調子: シズカちゃんにふられた出来杉なみ。

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＃４月１８日
以前、コミケで後輩が買ってきたジャイスネ本……ジャイアンとスネ夫のやおい本にショックを受けて「これからはやおいだ！」とパロディの方向性を誤った時期がある。
やおい本、といえばＵＦＯ本だと思っていた俺だ。ジャイスネ本に加えてガチャピン・ムックの本を読んでしまった日にゃ、「ちくしょう、俺だって！」と思い付く限りのアホなやおいネタを考えてしまったものだ。
いや、やおいに走る女性や同性愛に走る男性がそれぞれ真剣でどうしようもないことだ、というのは今では理解しているけど、当時の俺は「こんなにおもしろいことこいつらだけにやらせておくものか！」とか思ってしまったんですな。「サムソン」や「さぶ」まで買って性のエクスプローラーと化していた俺の青春の１ページである。
で、手を出した角川ルビー文庫。『終わりのないラヴソング』で「大番長」とかが出てきた日にゃ、くらくらしたものだ。この『タブー』を買ったのは後輩に薦められたからか、それとも自分でシリーズものでないルビー文庫を漁ってきたのか今では覚えていない。が、あたりを引いたとは思っている。だから捨てずに取っておいたのだ。
「タブー」、「テリトリー」、「いつか地球が海になる日」、「俺たちの崩壊」、と４つの短編からなるが、俺のお気に入りはなんといっても「いつか地球が海になる日」である。
七宮孝は自覚ある正しい筋金入りの変態だ。自覚があるだけなお狂おしい。彼は男が苦痛に悲鳴を上げたり、泣いたりしている姿にこの上ない興奮を感じるのだ。（女が悲鳴を上げたり泣いたりするのは当たり前なので女では駄目だそうだ）七宮の相手役になるちょっと脚の悪い少年、仁科辰巳は一見受けにみせかけて実は攻めっていうところがよかったな。って俺、ホモはイヤァじゃなかったのか？まぁ、イヤよ、イヤよも好きのうちだしな。うむ。脇を固める武藤真弓は姉御肌のいい女だ。七宮の変態性愛の相談にのってくれる。彼女のかかえている淫乱症のトコも思い出深い。七宮の「男を泣かせたい」という思いは実は悲壮な過去のトラウマに起因するのだった。
これは泣ける。男として泣きたくなった時はいつもこのタイトルが思い浮かぶ。たとえ野郎といえども、人間、つらい時は涙を流すべきなのだ。
「タブー」はジャイスネ系正当派。肉親から受けた性的虐待の癒しの話である。スネ夫は小学５年生のあの日から、実の父親の性の玩具だった。大好きなママを悲しませたくない一心で一人心を痛めてきたが苦痛に耐え兼ねてすがったママに、あっさり裏切られてしまう。そんな心の傷を隠すため、いつも超能天気にふるまっている。タケシはそんなスネ夫を抱きしめて云う。「これからは俺がお前を守ってやる」と。…ホント、受け側を女性にしたらミもフタもないただの小説ですな。
「テリトリー」はうーん、ちょっとチープなホラーモノ。「学校の怪談」のホモ版。先生に掘られて自殺した少年の霊が大暴れ。窮地に陥った凸凹コンビは互いの愛を確認しあう。…ってこれも男女だったらコバルトでもＯＫの内容ですな。りぼんでマンガ化も許可。
「俺たちの崩壊」はジャイアン、スネ夫にのヴぃ太を加えた男の友情からのホモ。シズカちゃんにふられて気落ちするのヴぃ太を支えてくれたのは子供のころからいつも一緒だった二人の男友達だった…って全然さわやかじゃねぇよ。なんで女にふられて落ち込んでるところを野郎に股間なでさすられて慰められなきゃいけねぇんだよ！
んー、なんだか知らない人にはさっぱり説明になっていないが俺調の説明としてはこんなもんだろう。
やおいとかって読んだことない、という貴方の初体験にオススメの一冊。でも一冊読んだくらいでわかったようなこといっちゃ駄目なんだろうけど、一冊も読んでない奴よりは大きなこといってもいいと思うんだけどな。

過去の日記(99/4/3～99/4/17)を見る

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