U-kiの読書日記(99/4/3～99/4/17)

U-kiの読書日記(99/4/3～99/4/17)

春の新作アニメレビュー大会。 - 99/04/18 00:00:00
本日の調子: 「あー、いいヒゲ書いた」って感じのマサルさんなみ。

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＃４月１７日
大学が始まってＳＦ研の部室に２２時までいられるようになったので死ぬほど春の新作アニメレビューを行う。やっぱ一人でじっくり楽しめる作品は少ないのでみんなでぎゃーぎゃー騒ぎながら見たほうが楽しかったりするね。
で、注目の作品はヒゲガンダム。あうー、昨日もビデオ撮らなかったよ。で、ストーリーや作品世界などについて前情報なしのまっさらな状態で見たんだけど、感想を一言。
世界名作劇場。
うう、いいねぇ。作りも丁寧だし。
そうか、色が黒いから下男、って話じゃなかったのか…。もしくは大富豪の御曹司がインド人のお母さんと駆け落ちしてとか、ペリーヌとかやってた頃を冨野監督が懐かしんでいるような設定を期待してたんだが…。
アニメ雑誌でちらっと見たときなぁーんでロボットの絵の横にあるのが複葉機やラスカルのハーマンさんの自動車みたいなやつなんだ？という疑問があったがそれはなるほど、こーゆー世界だったからか！
地球人類の文明が後退してしまったのには何かわけがあるんだろうな。勝手に「パヴァーヌ」とか「天使墜落」だとか騒いでいた。そして謎の儀式「パーマー・エルドリッチ６つの聖痕」とは？（嘘）いや「シド・ミード＝マサルさん」ってのが一番多い意見だったか。うむ、こーゆーネタを全開にできるところがＳＦ研の良いトコロやね。俺は遺跡の中からヒゲガンダムというのでキカイダー０１の金剛力士像とかガリアンの一話だとか伝説巨人ヒゲオンだとか好き放題いってたけどね、敵が攻めてきて遺跡の中のロボットが動いて主人公が偶然乗ってしまう、なんていかにもガンダムでいいけどね。俺の中学生くらいに思い描いてた作品プロットの導入部なんてこんなんばっかだったもん。あるいは「こーゆー事態に備えて」博士が作っていた奴に偶然乗っちゃうとか。
アオシマだのイマイだのニットーだのが出していた＜ガルダン＞とかの偽ガンダム系プラモデルのさらにザコっぽいメカがガシンガシン動いたのには感動すら覚えた。ありがとうシド・ミード。さらに世界の他の遺跡には６体のガンダムが埋まってたりするとうれしいぞ。おそらく番組後半、パワーアップしたガンダムは髭が頭部に移動。牙つきのくちびるが出てきて火を吐くとか、ザンボット・ムーン・アタックが使えるようになるとかで我々を楽しませてくれることでしょう。
と、まぁふざけたことを書きまくったが他のアニメの雑さがめだってしまうくらい丁寧な作りだったと思うぞ。ヒゲもこーゆー使い方ならあのデザインで結構説得力あるし。なによりも「次が見たい」と思わせる作品だった。ガンダムだって思ってたら見なかったところだ。ありがとう、シド・ミード（笑）早速再放送してるらしいのでチェックすることにする。
シケた話だったと噂のブレンパワードも見たくなってしまった。（どうせあれも父よ、母よ、姉さんよって話なんだろうけどさ）しかし、いのまたキャラを剥くことで快感を覚えてしまったヒヒジジィ化した富野監督。脱がせまくってるなぁ（笑）。あ、俺はもう卒業したからね、喜んでませんよ、特に。
しかし、小林亜星＆ガンダムという著作権イチャモンコンビがガッチリ手を組んだわけか。嫌がらせしてみてぇなぁ。エンディングが谷村ってのも強烈だ。
で、念願のアニメ東鳩を見たが…
これは小津監督作品なのか？
と思わせられるほど時間の流れがゆったりしたアニメであった。ほ、ほんとに３０分枠なの？とＣＭチャンスのたびに時計を確認。
まったり、というのはこの作品のためにあるような言葉でござんすな。
確かにゲーム知らねぇ人にはなんの意味もないアニメですな。しかし、知ってる人にはかなり感動があるアニメだと思った。ＰＳ版より前の方が…いや、どっちが先でも同じか。同期を取って公開、で正解でしょう。キャラボイスはアニメの方がしっくりくるし、セルのキャラもゲームＣＧよりカワイイのも確か。レミィの弓道シーンは本邦屈指の正しい弓道描写で感動したデスヨ。カッチョイイからってポスターなんかで弓引いてる奴とかありますけど大抵正しくないッスからねぇ。志保の脚の「太さ」なんかもちゃんと描けていていいと思うんだけどね。最近の娘は脚細いけどさ、アニメの描き方って違和感あるからね。そーゆーのはサリーちゃんから進化してねぇんだよな。胸とか尻とかには気が付くくせにさ（笑）
ダルさが３０％増しになってる主人公・浩之もモノローグでの誠実さが見えないだけで実際いまどきのオトコノコってこんなもんのような気がするし。先輩は「あかりのアップばっかだしー」と云っていたがまさにその通り。ゲームの４月分からをそっくり９月に移しただけのようだ。桜の花びら描くのがメンドウだったのかな？
「神岸あかりの高校生日記」のようなモンだとすると、マルチとか琴音ちゃんとかどうなっちゃうんだろうな、という気もする。綺麗な絵だし、後で気に入った話だけＬＤ買って環境ビデオにすればいいっか。追いかけて見なくてもよい、という印象を持った。
で、他に気になったアニメ。
ぱられルンルン物語（正式には「デュアル！」って呼べばいいのか？）もなかなか見ごたえあり。ふざけたタイトルでふざけた内容なのだが、恥ずかげもなくこーゆー話を展開できるところが衛星アニメの良いところかも。（無料とはいえ、地上波放送に比べたら特殊な枠であると思う）まるっきりエヴァじゃエヴァじゃ、と騒ぎたてるこっちも意地が悪いかもしれんけど、見る価値もなし、って話よりはいいんじゃないかな？笑えたし。
十兵衛ちゃん─ラブリー眼帯の秘密─これもタイトルがスゲー、と思ったが中身もスゲー（笑）。なんかマサルさんとこどものオモチャ混ぜたみてーだよな、とかいったら監督が同じなんですとのこと。なーんだ、同じなのか。そこらへんすっかりウトくなってるからな。でもいいや、面白いから。
キャラデ、むっちりむうにいなの。わ、わからんかった。
あとその他。
エンジェルリンクス…乳がでかい。丸い。お前は平野耕太キャラか！？
Ｄ４プリンセス…漫画もなんだかよくわからん、と思っていたがアニメも同じ。媚びてるよな、オタクに（笑）あのエンディングはある意味スゲーが。
コレクター・ユイやベターマンは俺が行くのが遅かったので見られなかった。残念。ま、機会があったらということで。

『Ｅ．Ｇ．コンバット』（電撃文庫）秋山瑞人、読了。 - 99/04/17 00:00:00
本日の調子: デュボア先生の手紙を受け取ったジョニーなみ。

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＃４月１６日
基本ができておる！
あああぁぁぁ…。基本がぁ、基本が正しいんですよぉ。正しすぎる！
いやぁ、最近ここまで基本ができてる小説って読んだことないんでてっきり絶滅しちゃったのかと思ってたけど、そうか、電撃文庫で生きのびておったか。
こぉーんな表紙じゃわかんねーだろーけど、コレ、
ロボジョックス養成軍隊モノなんだよ！
ぜってー読まなきゃわからんって。某ＳＦ文庫のように表紙にいつわりありって感じでいいから表紙のどこかに双脚砲台のイラスト描いてくれ！もしくはレギオンのように先頭の方にクレイプの図解とかバシッと入れちまってくれぇい！
というわけで基本だなんだと騒ぎまくったけど、要するに用語（ターム）が俺的にヒジョーにこのうえなくマッチしたわけです。（他の人はどうだかしらないよぉん）
電磁レールガンを「スピア」と呼んだり、ロボット砲台の搭乗員を「ジョッキー」と呼ぶってー感じで、ここらへんの造語の語感を「基本」って呼んでいるわけです。俺はディティールしか見ない男だが、究極のディティールとは単語のセンスなわけでいや、ホント、こーゆーのが並んでる文章を見ると宝の山を目の前にしてるようにキラキラ輝いて見えちゃうんだよねぇ。ああ、こーゆー作品が存在すると猛烈に創作意欲をかきたてられるぜ！！！
なーんとなく読み始めたんだが、こーゆー用語で固められたこの小説の世界感が語られるともう読まずにはいられなくなってしまった。たとえ本体が女の子がキャーキャーいってるだけの小説であろうともそれはそれで許せてしまうのだった。
２０２９年、地球人類は突如飛来した謎の宇宙生命体により一瞬にして絶滅の危機に陥る。プラネリアムと呼ばれるそれは地球文明を崩壊させ、次に「女」を狙って襲いかかってきた。全地球人類の半数が４日で滅んだ。
火星移民の準備基地として月は既にそれなりの状況下にあり、そこで編成された救世軍（サルベージョン・アーミー）の手によってようやく反撃体制が整った地球は女性を月に強制疎開（ジュリエット作戦）させ、今の地球には男、月には女、という世界ができあがったのであった。そんな地球上の救世軍に勤務する１３７人の女性兵士の中でも彼女は半ば伝説であった。「北米総司令部最年少大尉。生成晶撃破数歴代７位。反応速度の女神」ルノア・キササゲ、２１歳。彼女はライバルの奸計によって月の訓練学校の教官として更迭されてしまう。それがこの物語だ。
物語自体は伝説の戦闘神にまつりあげられてしまった若い女戦士が新任教官として悩みと惑いながらも前に進んで行くパートと、基地の中でも「最低」といわれる５人の駄目少女たちの成長の物語であり、はっきり云ってしまえばなんかヌルい。が、その物語を支える用語や雰囲気のディティールがあまりにも濃い！
あーあ、ルノアちゃん、落ち込んじゃって、もっと自分に正直なって訓練生と親しくなればいいのにさ、とか思いながらかるーく読んでしまう。落ち零れ５人組みももっと一人一人が特殊技能を持っていてその長所を発掘されて結集！というお決まりのパターンではなくほんとに駄目なのに頑張ってしまったねぇ、という感じで「エンターテイメントなお約束」がないぶんちょっと期待外れ。でもさー、それが「流体脊髄素子」＝人工知能ＡＩとのコンビネーションだとか＜手動起動演習＞とか、全滅作戦シミュレーションだとかでびっしり埋められながら進んでいくのだ。そういった要素を排除してみた「お話」部分はおとなしめながらも一定のレベルであり「期待以上」でないだけだ。そしたらデコレーションの部分で俺が必要以上に盛り上がってしまうのもしかたがないではないか。
結局ロボットが戦闘するシーンは人工知能ＡＩのＧＡＲＰ君がハッカーと闘う場面を除くと本当にラスト付近の「緊急出撃訓練」のパートしかないんだけどさ、リニアガンの熱化学砲撃の免責宣言をしながら敵に全開射撃をくらわすシーンなんて泣いちゃったぜ、俺。なにが「ケミカルウォーヘッド・ロード！」（ルビ部分のみ抜粋）だよ！！！（悶絶）
ホントいうと安全だと思われていた訓練でホンモノが出てきちゃったのを撃破！とかいうオチの方が盛り上がった気もするがリアリティから云えばこの手法でＯＫなのかもしれない。なーんだ地球降下強襲作戦実行、とはならないのね、ってところが不完全燃焼ぎみなんだけど。許す！
とにかくルノア大尉の戦歴とかだけでも鼻血ブー！だってだってー、メックウォーリアとかアースシージの最大級困難ミッションとかの実践なんだもん。ミカドから菊の御紋の入った小刀もらって左肩に漢字のマーキングして強襲偵察だヨ、話聞いてるだけで燃えちゃうヨ！話の前後に炸裂する漢（オトコ）の軍隊調も感涙モノ。読むっきゃないでしょう、ソレ系の人！
原作・イラスト─よしみる、となっているが、この人ってどーゆー人なんでしょうか？実際の設定はこの人がやってるとか。それだったら俺は秋山さんを誉めてるんじゃなくてこの人を誉めてることになっちゃうんだけどな。
とりあえず続編をさがしマス。是非、軌道猟兵や強襲偵察隊の話が載っていることを、何より実戦が描かれていることを期待して…。

「ゼムリャー」（ＳＦＭ９７年１０月号収録）スティーヴン・バクスター、再読。 - 99/04/15 00:00:00
本日の調子: ウルトラ水流などという技を俺は認めんぞ！

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＃４月１４日
ジャミラ！
誰がなんといおうとジャミラだよ、コレ！（笑）あー、笑った笑った。ええ話や。しかも金星が××世界だなんてな。うれしすぎ。未読の人、読め。
─以上─

『電脳文章作法』（小学館文庫）菅谷充、読了。 - 99/04/14 00:00:00
本日の調子: 「こんにちは！マイコン」の中のあらしなみ。

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＃４月１３日
小田島の本と並んで本書が置いてあった。タイトルを見て気になったものの、一瞬購入を躊躇する。中身をパラパラめくりＮＩＦＴＹについての記述があったことから最近のインターネットブームに躍らされた本ではなく古くからパソコンを利用してる人の本だと思い、最近小説以外読んでないな、ということもあって購入した。
で、家に帰って驚いたのが著者をよく見ればあの『ゲームセンターあらし』のすがやみつる氏が著者ではないか！そうか、それですべて納得だ、というわけである。というか、「やべ、買って損したぜ」という思いが一瞬脳裏をよぎった。いや、菅谷氏の著書が読むに値しない、という意味ではなくてどんなことをしてきた人か知っている故、ちょっと割にあわんかな、と思っただけだ。９１年からＮＩＦＴＹをやってる身としては会誌に掲載されていた菅谷氏の連載なども読んでいるわけで、小説家としていかにしてデビューしたかも知ってるわけである。ま、逆にネームバリューのある人なのでいったいどんなこと書いているのか読んでやろう、という気になったのは確かだが。
結論から云って、タイトルから想像していた内容とあまりに違っていたので正直ぐったりしてる、というのが本当のところである。俺も相当な量の文章を電脳世界に垂れ流してる身である、ということを自覚しているから少しでも改良すべきトコロや得るべきモノがあれば吸収したい、というささやかな向上心から購入したんだけれども、うむ、どうやら本当にささやかな部分でしかその意図には沿えなかったのである。
本書はなんというか、もっと初心者──うーん、電子機器で筆記することに慣れていない人に向けて書かれた本だったのだ。菅谷氏曰く、パソコンやワープロの登場が作家／ライター志願の人々の数を増やしているそうで、そういった人たちにパソコン／ワープロ／ネットといったものを活用してもらうために書かれた本が本書なのだ。なーんか俺ってターゲットからハズレちゃってますよねぇ。でも彼等作家／ライター志望者たちのキーワードを「自己実現」だと菅谷氏は云う。なるほど、それなら俺がこうして駄文を書き連ねている理由もその一言に含まれてしまうかもしれない。
よし、それならばと、仮にも「すがやみつる」ファンである俺は彼の物書きとしての仕事の仕方を知る絶好の機会とばかりに読んで見た。
結局、こーゆーのって「俺はこうやってる」以上のものってなかなか書けないんだよね。しかも勢いに乗ってる書き手側はやるきまんまんで書いてるしね。恥ずかしながら、俺も創作やってる頃に「正しくない小説の書き方」なんてーのを書いたことがある。今読むとたしかに「正しくない」ってつけたタイトルは正解だったようだ。こーゆーのってこの人のいってる通りにすればいいのか、って云うと違うと思う。「はぁ、なるほどこの人はこうやってるんだ」ということにしかならない。あくまで参考ですな。売れっ子作家が自分の仕事のノウハウを公開して、それにあやかりたい人がそれを読んだからといってその作家のような作品が書けるわけじゃなし、あまつさえその人以上のものが書けるわけでもないしね。
というわけで本書は、
１．何を書くのか決める（企画）
２．必要な原材料を収拾する（購買）
３．プロットを構築する（設計）
４．原稿を書く（製造）
５．原稿を推敲する（検査）
６．完成した文章を出版社に渡す（納品）
というなにやら工業製品の工程みたいに文章作成のプロセスを捕らえて企画から納品までの全行程において「パソコンという道具をいかにして利用していくか」が丹念に著者の経験に基づいて書かれている。こういうスタイルの本っていままでにないのでは？と思う。
俺が最初にワープロを購入したのはやはり自分の悪筆に辟易していたからである。中学生の頃から同人誌用に文字の原稿を書いてきたけど、人に見せるのをためらわれるようなモノを生産することに耐えられなかったのが導入の動機である。ワープロ専用機はそれ自身にプリンタが付いており、レイアウトを含めて最終的な同人誌の原稿を作成する道具になった。が、そういう使い方をしていた俺にとってそれがパソコン＋ワープロになったところで対して「使い方」に変化があるわけではなかった。できることが広がっているにもかかわらず同じ使い方しかしてこなかったわけである。それを本書は気づかせてくれた。
なかにはあったりまえじゃん、というようなこともあるけれど、以前話題になった…（３点リーダ）の使用法なんかも意外と知らないことは知らないもんで、このように「１から１０まで」を丁寧に書いてくれる本というのは少ないかもしれないと思うと結構貴重である。最近のやっつけ仕事的なマニュアル本が多い中で菅谷氏はキチンと丁寧な仕事してるなぁ、という感触がする。
今、こうして書いてる文章はすべてテキストエディタ、オンリーである。昔はワープロ専用機で組んでいた縦書き２段ルビ付きの原稿フォーマットを再現しようと躍起になって安いワープロソフト漁って印刷レイアウトをこねくり回していた時期もあるが、今は仕事以外でワープロソフトは使っていない。それは今の俺が最後の＜納品＞工程で以前は同人誌という形態をとっていたのがネット上にアップ、という形態に変わったことに起因する。見るひとが様々なブラウザで様々なフォントで見る、ということを意識すると怖くて全角・半角スペースを使えなかったりする。自分が固定ピッチで見ている文章をプロポーショナルで見ているかもしれない。ブラウザの幅によっては意図した改行位置で改行されなかったり相対プラスして強調した部分がすごく見づらい位置にくるかもしれない。そんなことを今は意識しながら俺は駄文を撃っている。「電脳文章作法」というからにはインターネット上に文章をアップするうえでのノウハウやＴＩＰＳ（豆知識）が書いてあるのかなぁ、と思っていたんである。でも本書のように「投稿用の原稿」というものを作成する手段としてのパソコン利用法、というのも「電脳」には違いない。本書の内容をよく確かめもせずに買ってガッカリしてるのは俺が悪いんである。
作家・菅谷充の仕事の秘密、というものを見ることができてなかなか面白かった。
音声読み上げ／認識ソフトを使ってるんだ、というところにも感心したし、エディタの使い方、ネットや電子辞書の活用、アウトライン・プロセッサの活用なんかも参考になった。俺もＭａｃの時はずいぶんアウトラインプロセッサにお世話になったがワープロ専用機の時にはメモフロッピーというのを作っていた。ファイル一覧とそのファイルの関係、メモから作品本体への組み込み利用などを考えるとワープロ専用機でも似たような利用法はできる、と云ってみたくなるが今はこーゆー時代である。無理せずパソコン買えばいいじゃん、ということか。なんにせよ他人のやり方を知る、というのはそれだけで面白い。やっぱり「わかるやつにだけわかれ」という遊びを─細心の注意を払って─つっこんでしまうんだ、とかもわかって嬉しかったし。
というわけで最後の解説にあった言葉をちょろっと引用して終わろうと思う。
誰かに何かを伝えようとする行為。おそらくは遺伝子に組み込まれた人間の自然な欲求から生れてくるものだ。
なるほど、そういってもらえると助かるよ。
本書はサイバーエイジに大量発生しているであろう自己実現欲求不満者達のバイブルになってくれるかもしれない。そう、あの８ビットパソコンブームのときの名著『こんにちは！マイコン』のように。

『パソコンは猿仕事』（小学館文庫）小田嶋隆、読了。 - 99/04/13 00:00:00
本日の調子: 日光江戸村でお殿様をやっているキリヤマ隊長なみ。

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＃４月１２日
よく俺の文章は（というか存在自体？）「毒がある」といわれる。いうなればフォースの暗黒面みたいなものだろうか？きっと俺の自覚している「毒性」と読んでいる人の感じている「毒」の部分というのは違っていると思うのだが。（この話はどこか別のトコロで）
で、この小田嶋隆というライターの文章も「毒のある文章」として名高い。パソコンが８ビットから１６ビットへ移り、ＮＥＣの国内１社独占が始まり独自のＰＣ９８文化が爛熟を見せていた頃、俺はパソコンから離れていた。よって小田嶋の名著『我が心はＩＣにあらず』を読んだのは大学４年の時、後輩の部屋でであった。無論始めて目にしたわけじゃないけどパソコン雑誌の特定のライターを意識したというのは彼が最初だったのではないだろうか。いろんな雑誌の「名物男」ってのはいたわけだけど、雑誌を離れて単行本を著者で選んで買ったというのがこれが初めてだったかもしれない。小田嶋とは俺にとってそーゆーライターである。
本書はそんな小田嶋氏の（多分）久々の単行本にして書き下ろしである。いやがおうにも期待が高まる。
最初の方を読んでいて「間違いなくオダジマの文章だが、全然勢いなくなっちゃってるなぁ」と思って思わず『我が心は…』を引っ張り出して読み比べてやろうかとも思ったのだが、中盤にさしかかったあたりで思わず電車の中で爆笑してしまったりしたのでうむ、やはり杞憂であったか、「オダジマ節健在ナリ」と思った。
「ユー・ガット・メール」の章がオダジマ節がもっとも炸裂しているいい例だ。思わず吹き出す。映画の「ユー・ガット・メール」という邦題、本来の英語では「You've got mail」という現在完了形なわけで、どうしてこんな中途半端なニセ英語のカタカナ表記になったのか、ということが数ページに渡って展開されている。こーいった、「云いたいこと」本編とは無関係に見えるどーでもいい例題の暴走が楽しい。そして暴走した挙げ句に最後に決める「～なのだ。」「～いる。」とかで締める断定し、断言し、言い切る美しさに俺は痺れる。まさに「小田嶋の美学」と云っていいのではなかろうか？
まとまった小田嶋氏の文章を読むのが久々なので今まで気が付かなかったが、俺の文章は彼のスタイルに非常に影響を受けているような気がしてきた。（最近はスタパ調、かなりはいってるけどね）ま、いつもマネしよう、って思って似てしまうわけじゃないから本当のところはわからんけどね。
正直、やはり『我が心は…』の頃に比べて結婚して年取って「凶悪な暴走野郎」という印象だった小田嶋も「元気なオッサン」くらいの勢いになってしまった気はする。最後の章「電話の国から」なんて冗長すぎると思う。キレが悪い。今でもあの名セリフ、「男子校生の右手なんてーのは金属バットでもジョイスティックでもなくもっとくだらないモノを握っているもんだ」に勝る文章を見ていないしね。
それにしてもこの本で描かれるパソコンを初めとする「電脳事情」にまつわる話を読んでいると、１０年前の自分がこーゆーコンピュータ最前線の仕事に就いてしかも趣味までパソコン野郎になっているとは大学時代予想できただろうか？と思う。予想はしていたかもしれないが実感が伴っているというのは大違いなのだ、ということだ。２０００年問題や職場でのサイバーくんの扱いなどを肌で知ってしまうと小田嶋の文書の威力というのを違った方向から感じることができる。まさか、と思う部分が実体となっている、というのは恐ろしいモンである。オダジマの文章はその恐ろしさを伝える威力を含んだ数少ない文章だと俺は思う。是非読んでいただきたい。

『もてない男』（ちくま新書）小谷野敦、読了。 - 99/04/12 00:00:00
本日の調子: アスカに罵倒されまくりだけどアスカじゃなきゃダメなシンちゃんなみ。

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＃４月１１日
著者の方はネットワーカーらしい。最近、「ネット上で王様の耳はロバの耳！」と叫ぶと王様がそれを聞いていて直々にお出ましになるということがままあるらしいので迂闊なことは云えないなぁ、などと思っているのだが、
畜生、かまうか！どうせ知らねぇ作者と読者の間柄だ！好き放題言わせてもらおう。ってゆうか、理性的に書いていたんではもう寝覚めが悪くて明日の仕事にさしつかえそうなので簡単に叫ばせてもらうぜ。
もう前半は１行読むたびにその５倍の文章が思い浮かんでしまう有り様だったので全部それを書いていたら結果として本書の６倍の文章になってしまう（引用があるから）わけで、それをやるのはヤメ。（ってゆうか、俺の赤裸々な下半身ライフをここで公開するほど度胸がないので、クローズドな場所で全開にしたいという思いはある。いつかどこかでこれを肴にした秘密オフとかやろうぜ～）
まぁ、俺の全体的な感想は「はふぅ～ん、こーゆー人も最近は多いみたいよねぇ」って感じ。はっきりいって俺は自分と同世代とか年下の連中の正直な恋愛感については超真剣に自分丸出しで話をしてみてぇが、基本的に自分より年上の人については見習うところがあれば見習いそうでない人は相手にしない、ってゆうか年上なんだし自分の考えとか経験でそうしてるんだから何も言えません、って感じなんですな。というわけでこの作者の方、俺よりも７つ年上でしかも東大卒じゃありませんか！もうなにも云えませんよ、ええ。

……とかいって、俺が黙ってるわけないじゃん！
というわけでメラメラと燃え上がる俺のルサンチマンはここへ！
＜＜＜「これが俺の愛し方だぁ！」ヘル＆ヘブン！＞＞＞
（あまりにも長いので別ファイルにしたぜ！）

『ノスタルギガンテス』（パロル舎）寮美千子、読了。 - 99/04/11 00:00:00
本日の調子: 芸術を爆発させてしまった横尾忠則なみ。

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＃４月１０日
「俺にまとまった自由時間をくれ！」家に居るとＰＳ東鳩をやるかネットサーフィンしてしまいずっと手付かずだったのでファミレスへ強制収容。今はこれを読むのだ、それがお前の仕事だ、働け！働け！って感じで一揆読み。
ううぅ、最後の一文を読んで襲いかかってきた震えに、「ああ、この本はこーゆー読み方をしちゃいけなかったんだな」と思うも、そーゆー風に読んでしまったので仕方がない。

この作品には以下のような人々が登場する。
石膏像、鏡、人形のような女、水風船、Ｋ、Ｕ、Ａ。全ての人物が記号化されている。
そして泣きながら、悲しみ、怒り、全てを捨てるママ。俺も自分の大切な全てを燃やされてしまう危機にさらされて育った子供だ。主人公・カイのように。
メカザウルス、火星探検車、メガテリウム、サーベルタイガー、みな懐かしい俺のお気に入りだ。櫂も大きくなったらこぉーんな風になちゃうんだろうか？（嘘）
主人公・草薙櫂、彼の遊び仲間の少年たちの名前はＫ、Ｕ、Ａ。『アキラ』のケイもそうだったけど、巻来功士の『メタル・Ｋ』も思い出す。あるいは『エース００１』の英一を。そしてそのルールにそぐわぬ名前の４人目の少年、カイか。（偶然にも『プラネットハザード』で「オールは舟を漕ぐ道具よ」という名前の娘がでてきたばかりで、こーゆー俺内部の言葉遊びは非常に楽しい）草薙とイザナギ、ナギ。こういう「名前にまつわる遊び」もよくしたものだ。イニシャルでＮがつく奴はこういう配置、Ｔがつく奴は…なんていう遊びを。ゲド戦記が大モトなんだろうけど、本当の名前の話も好きだ。ライオンはライオンと名付けられて始めて恐ろしい未知の怪物からただの野生動物になる、うん、それだけで書かれた作品もあったな。
それにしても「ノスタルギガンテス」、なんとも不思議な名前だ。ヒラノさんところで紹介を読んでも「いったいなんのことやら、なんの話やら」と思っていたのだ。そう、得体のしれないものには手を出さないものだ。したがって、この名前が作中で「生み出された」ときは震えがきた。なるほど納得。名前を付けるということの威力を作中で実践するとはやるようだな！って感じである。
いよいよその正体を顕わしたノスタルギガンテスは成長・変容を遂げて行き、それを生み出したカイはそれに対峙して果てしない苦悶のなかに落ちて行く。
人はみすぼらしいオモイデの品のなかに美しいオモイデを封じ込めようとする。時は物も人の心もゆっくり侵食し変質させてしまう。だから人は思い出の品にすがろうとする。思い出の品が時を経てみすぼらしくなる毎にそこに宿る思い出は、記憶は、美しく変質してゆく。ウイスキーの琥珀のように。セピア色のまったく別な、それでいて人の心を癒すモノへと変質してゆく。誰もデジタルビデオの画像のように、劣化しないものを望んではいないのだ。
森の神殿の木に寄せられるのはそういった品々。思い出だか記憶だかしらないが、人間の、捨て難いモノを浜辺の漂着物に置換して、あまつさえそれを森の一本の老木に「現象」として出現させるというアイディアは見事。ディックより奇異でバラードよりスタイリッシュ。そしてそれを、ジュラシック・パークの映画の予告編で見た琥珀の中の蚊のように封じ込める、時を止める、というアイディア。ちょっと凄すぎって感じですな。まさに結晶世界がハイライズしてるわけです！（ああぁ、俺ってばまた…）
めくるめく創造・変容・崩壊のイメージの螺旋が本作品である。
ただ、この物語はあまりにも救いがない。バラードの救いの無さに匹敵。児童書であるならばもう少しカタルシスのあるムーヴメントを最後に用意してもよかったのではないか？
カイも写真の男も我々も、ただこの世界──既に滅びているかもしれず、または滅びているそのことを忘れることもできない世界に生きている、っていうのが真実だとしてもそれを突きつけて終わるのはあまりにも悲しい。俺はカイには未来を与えて欲しかったのだが。
大人もかつてメカザウルスあったアイツもそれを与えることはできなかったというのはあまりにも悲しすぎる。
中盤、カイの母親が「櫂、あなたあそこへもう何か持っていった？」という展開が少し嬉しかったんだが、母親はまた別の方向へ暴走していってしまう。うまくここをカイと母親の関係のカタルシスに結び付けられなかっただろうか？
あまり児童文学、というものを読まない俺だが、こーゆー大人向けの「生きていることに対する寂寥感」（俺的には『青猫の街』がついに最高峰になってしまったのだが）を描き切ってしまっていいのだろうか、というのがある。宮沢賢治ってあまり読み込んでいないのだが、彼の作品とかを思えばそれはそれでいいのかもしれん、とも思う。つまり、子供向けのものを「子供向け」という名目で生ぬるいものにする必要はないのかもしれないということか。ここは得意な方面ではないので深く考えまい。本が誰のために書かれたか、どのように書かれるべきか、などというのは考える必要がないのかもしれない。それはそこにもう存在しているのだから。

P.S.しかし装丁がカッコ良すぎ。ちょと最近の某出版社は見習ってほしいでゲスよ。創元がスゲーカッコ良く（俺好み）になってるのに対して、なんとも悲しい。『百億の昼と千億の夜』も旧版のほうが良かった。ってなんの話じゃい。

『進め！！聖学電脳研究部』（新声社ゲーメストコミックス）平野耕太、読む。 - 99/04/10 00:00:00
本日の調子: ゲーセンでチーマーとリアルファイトしちゃった後輩（大人）なみ。

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＃４月９日
ゲーメストコミックスって初めて知ったが、ストリートファイターとかあるもんね。なぜアスキーからでなかったんだろう？これでファミ通ＰＳのバックナンバー捨てられる！と喜んだけど、連載時に編集者が付けてくれたクソゲーに関するナイスな註釈がごっそり抜け落ちている。出版社が変わった故の不幸である。まぁ、「東京ビンゴ団」がそれを払拭するくらいの破壊力を含んでいるから、ま、いいっか。
とにかく寺門部長、俺にクリソツすぎ！！
ってゆうか、ＳＦ研部員は周知であろうが、この寺門部長の行動といい発言といい、＜生タイプu-ki１００％含有＞って感じですな。（自分で云うかな、普通）
ゲームの超得意な転校生、西新井くんはゲーセンでメガネ美少女ゲーマー綾瀬と運命的な出会いをし、彼女の所属する怪しさ満載の「電脳研究部」に入部することになる。
そこにいるのは超巨乳の先輩二人組と両手にバーチャガンを持ってマジで地面を転がりながら「３７５６４（みなごろし）だぜっ！！」とか必要以上に年中リキんだ部長さんなどがたむろする怪しい空間だったあげくに実は綾瀬はＫＯＦの超やおい同人誌を作成したり、コスプレ衣装を学校に持ち込んだりしているどっかで聞いたような超ゲーム的おたく娘だったのだ！果して西新井くんの学園生活はいかに？！
ってゆーか、平野耕太が初めて商業誌でゲームネタ・ラブコメをどう展開するのか？興味津々だったので連載時はいちおーＰＳでやりたいゲームも色々あったのでファミ通ＰＳを買ってしまっていたのだった。
前半は「快楽天」読み切り漫画のように暴走＆ギャフンになりそうなところをすんでのところで止めていて「成長を感じるぞ！」とか云ってたんですが、こうして一冊の本になってみるとやっぱ「俺にはラブコメなんてかけっこねーじゃんプー」って感じに見事に大暴走してますな（笑）。いくら「ファミ通」とはいえ、でてくるゲームはＰＳのゲームなんてほとんどなく、ファミコンやらアーケードやら８ビットパソコンの化石的クソゲーばかり。はっきりいって商業誌で同人誌よりひでーノリを連載で展開しちゃったわけですな。しかもコミケ前はきっちり原稿落としてるし、アスキーの忘年会に呼ばれなかったって同人誌に恨み言書いてるし、なんかうまくいってなかったようですな。これじゃアスキーがコミックス出してくれなくてもしかたないかもしれませんな。
とにかく最近『ＨＥＬＬＳＩＮＧ』や『大同人物語』などで気力限界でマジメな仕事を続けている平野先生のもう入手不可能な『拝(Hi)テンション』に継ぐお馬鹿全開系コミックスです。懐かしいクソゲーやバイオハザードやゲームセンター・あらしや高橋名人が好きだという方には特にオススメ。
ぶちのめされるリーゼントのつっぱりくんや悪魔そのもののような先生が大活躍する話が読みたい君も大歓迎。
「おれも超ときめきてー」とかいうセリフが炸裂したラブコメパートも見逃すな！
あ、云っておくけど、やっぱ最後は寺門部長が主役みたいになってます(^^;

『星ぼしの荒野から』（ハヤカワＳＦ文庫）ジェイムズ・ティプトリー・Ｊｒ、読了。 - 99/04/09 00:00:00
本日の調子: ティプトリー・ショックを受けた鳥居定夫なみ。

コメント:
＃４月８日
ティプトリーという作家は興味あるんだけど、単行本としては『愛はさだめ、さだめは死』くらいしか読んでいない。あとはアンソロジー収録作品だけなんであまり語れない。
女性であることを隠して、ある時正体をばらして世界中をティプトリーショックが襲ったということを水鏡子の本で読んでいるくらいである。知ってる作品のうちいくつかは「いかにも女性っぽい」と思ったが冷静に考えれば男でも女でもどっちでもいいな、くらいの印象で「あーティプトリーショックを生で味わっていたらもっと好きになったのかなぁ？」という感じだった。「接続された女」はそれはそれは好きな話で、「ヒューストン…」も「そして目覚めると…」も比較的好きな話だがなぜかティプトリーを追いかけて読む、ということはしなかった。知ってる作家でわりと面白い方、という感じか。ヒューゴー・ネビュラをとってるからといっても性に合わない作家というのはいるもんで、ル・グインなんかはやはり追いかけない作家だった。ティプトリーが男であれ女であれ、それは作品の評価に関係なかったし、しかも、「実は女だ」と知ってしまっているのだからジェームズが向うで云う「太郎」みたいなもんだとしてもあまり気にしなかったと思う。ティプトリーはオトコのふりした女なのだ。そういうもんなのだという先入観はこの先消えないのだ。
で、今回は川原由美子ではないけど、例によってオンナノコの表紙でうん、ひとつオセンチな味わいでも味わってみるか、というつもりで新刊の山から引っこ抜いてきた。
で、まずネビュラ賞を受賞したという「ラセンウジバエ解決法」を読んだのだが…
うおっ、さすが田宮二郎式自殺を試みた女は違うぜ！
というのが正直な感想だった。男に狩られる女、という構図を思い切りデフォルメしてみごとなオチの一編を書き上げているんである。こ、この作品を男が書いたと当時の人は思っていたんならそれはそれでかなりショックなんじゃないか？今俺はティプトリーが女だって知ってるからいいけどさぁ、みたいな「逆ティプトリー・ショック」を味わってしまったのだ。さらに頭から通しで読んでいくと全編を包むなんだかいかにも女性作家な雰囲気に「なんだかなぁ、ティプトリーってここまで女性っぽさを感じさせる作風だったか？」と自分の先入観の入り過ぎを深刻に考えていたんだが解説を読めばなんのことはない、先頭から「ラセンウジバエ解決法」まではラクーナ・シェルドンという女性名義（？）で発表された作品で、後半の６編もいわゆるティプトリー・ショック後の女性だとばればれの時期に発表されたものだという。作家としてのティプトリーの背景を詳しく知らなかったので焦ったけども、なるほど、それなら合点が行く。じゃぁ、８０年前後、ＳＦファンは男性名義の女性っぽいティプトリーの作風をどのように受けとめていたんだろうか？「別に男性でも女性でも書ける話じゃん」と冷静に受け止めていたんだろうか。「星ぼしの荒野から」はうーん、まぁ、いいとして「たおやかなる狂える手に」「スローミュージック」は女性名義で書いたんじゃないの？と俺は思ってしまった。「おお、わが姉妹…」はこれが女性名義じゃなければウソだ！という感じだが「天国の門」「ビーバーの涙」は別に女性っぽいとは感じなかったので彼女のペンネームの使い分けには少し疑問を感じる。
ともあれ、伊藤典夫氏曰く、「男性ジェームズ・ティプトリー・ジュニアと女性ラクーナ・シェルドンが歩み寄った記念すべき一冊」が本書だそうだ。なるほど。
今回は「ラセンウジバエ解決法」と「スローミュージック」が記憶の殿堂入り確実なくらい気に入ったお話であった。この厚さでこの内容が２作品読めれば満足、合格である。
いままでなんとなく難解で、読みづらいと思っていたティプトリーだが、この作品集はなんとも読みやすかった。うーん、やっぱりこれも気のせいだろうか。
以下、収録作品について簡単にコメントしておく。全体にオセンチで、地球人類なんて大っ嫌いよ、宇宙人に燃やされなさい！あたしは宇宙船でどっかいくから！みたいな雰囲気である。（俺の解釈ではそうなる）
「天国の門」…正直者が馬鹿を見るのよねぇ。
「ビーバーの涙」…地球人類がやってきたことをしっぺ返し！毛皮着てる連中は生皮はぐわよ。
「おお、わが姉妹よ、光満るその顔よ！」…幻のフェミニズムの帝国。
「ラセンウジバエ解決法」…男に狩りたてられる女。だって、僕我慢できなかったんだもン！でもオチは○○○オチ！ＧＯＯＤ！
「時分割の天使」…ウクライナの最多出産記録記事が出た頃の話？Time-Sharingってホストコンピュータ用語だと思うんだけどな。
「われら＜夢＞を盗みし者」…偉くなると人間って変わるよなぁ。(;_;)
「スローミュージック」…あれとあれとあれを足したような話なんだけど、救いがねぇ(;_;)基本的に好きなんだよ、こーゆー話。
「汚れなき戯れ」…きれいな短編ですね。(^-^)
「星ぼしの荒野から」…だってだって、お父さんが教えてくれたのよ。ってプリンセスメーカーでこーゆーバットエンドがあると楽しいのに。最後のあーあ、な感じこそがティプトリー味なのか？
「たおやかなる狂える手に」…すげー長いんだけどなんだか最初と最後でえらいイメージ違う作品。最後は映画「ダーククリスタル」を思い浮かべてたりして。

映画で覚える英会話『アポロ１３』（アルク・シネマ・シナリオシリーズ）、購入。 - 99/04/05 00:00:00
本日の調子: これで君もジャック・スワイガートと導尿管仲間。

コメント:
＃４月４日
三省堂１Ｆでやってるフェアに簡単にひっかかってしまう俺。
全然なんのフェアだか見ないで手に取った本書だが、すごい充実度！
このシリーズの他の本読んでいないのだけど、本としての作りが非常に丁寧で好感が持てる。
いきなり円グラフがあって、映画の中で使われている英単語の中学・高校で学習するやつの割合が表示されている。当然専門用語が満載なのでこの作品については難易度「やや難」それでも７５％は中学生で習う単語なのだな、と感心する。
リスニングの難易度。暗いシーンで男女がぼそぼそやってる映画じゃなく、地上管制塔と宇宙船がお互いの状況や指令を明確に無線でやりとりしてるのでここは「ふつう」。
スラングの量。生死にかかわる状況下なので「やや小」（笑）。でも「畜生！」「なんてこったい！」の類は炸裂しているので、間に挟まってるコラムで詳しく解説されている。たまらん。
シナリオ本体はテクニカルタームや略語などの解説・註釈が非常に丁寧かつ親切かつ目のつけどころが良く記載されており、超大満足。
戸田奈津子、少しはこれ読んでテクニカル・タームの翻訳うまくなってくれ！！
俺の見る映画、軍隊もの、宇宙もの、ロボットもの、はテクニカルタームや専門用語、軍隊スラングなどの羅列を楽しみにしているところもあるが、なかには繰り返しつかわれるのに聞き取りにくかったり、逆に意味不明だったり、略さない正式な綴りが不明だったりする。Ｔ２の「アスタ・ラビスタ・ベイベ！」とかブルーサンダーの「キャッチ・ア・レイター」もなんだか正体不明でムズムズしていた期間が長かったものだ。
パイオニアのＬＤなんかだとシナリオ付きで、デコーダーがあればそれが見られてスッキリするんだろうが、なかなか好きな作品全部にそれが通じるわけでもないのでヒアリングの能力というかセンスを磨くしかないのだと思う。
英語のセンスのある先輩のおかげで俺の洋画ライフも幅が広がってよかったわけで、ロボジョックスのマスタースレイヴユニットの反応チェックを「Waldo check!」（ハインラインのあの「ウォルドゥ」だ）と呼称してるのを教えてもらった時の感動は忘れない。
アポロ１３だけでなく、他の俺好みの映画もこのシリーズにならないかな？と密かに期待。原書が読めたり、字幕に頼らず洋画が見られる、という技能に実は予想以上に憧れてるのかもしれない、と思う。昔から海外ＳＦを読んでる時に「ここは原書でどうなってる？」とか「きっとこういってる」なんてのを想像して読むことも多いからね。
ちなみに原書で読んだことがるのは「スキャナーに生きがいはない」と『宇宙の戦士』と『ファイアフォックス』。
「骨の髄までスキャナーである彼は」とか「人工筋肉（シュード・マッスル）」とか「思考制御兵器システム」はふふん、なるほど、な　記述でありました。あー、好きな作品はやっぱ原書買うしかないんかいな？（Ｚの人の文章なんか、面白そうだが難しそう）

『プラネットハザード』（ハヤカワＳＦ文庫）ジェイムズ・アラン・ガードナー、読了。 - 99/04/04 00:00:00
本日の調子: アラン、といえば宇宙刑事アラン！とかいってるのは俺だけか。

コメント:
＃４月３日
ＰＳ版東鳩をさんざんやりまくって寝不足＆やっぱまだ本読みモードになっていない俺。
この本もあちこちで既に評価がされていて、しかもそれがほぼ一様なので興味はあったもののほかしておいたのだが、先週の土曜日に先輩とＳＦの話をしている時、『オルガニスト』の感想で『歌う船』を連想したってのが多いんですよ、という話をしていてこの作品の話になり「アレの惑星探査要員って××者ばっかなんだよなぁ」と云われて即買いに走る。（駄目じゃん、俺）
で、読んでみるとなるほど、文章は俺好みのチャプター寸断型。「読みやすい」という評価はここから来てるのだろうか？しかも一人称の報告書タイプというのもあろう。基本は一人称だよね。
そしてやっぱ、チー提督最高！
あんたひょっとしてチャイネシアの偉い人？とか思ってしまった。
あと酔っ払いのミサイル持ってきてくれる教官。うーん、キャラは立ってるよな。
しかもＥＣＭ（イクスペンダブル・クルー・メンバー）という響きがなんともかっこいいではないか。カッコイイ呼称が与えられて読み手は感情が移入できるようになるのだ。
さらに加えて
「それがいわゆる消耗品扱いの意味するところ」
「まったく、もう」
こういった独自の言い回しの反復も物語への没入を促す。うーんでもそれって所詮小手先のテクニックだよなぁ。多くの人が示唆するとおりこれも若い読者を意識して書かれているんだろう。大森さん曰く、これもリンダ・ナガタとかも「ジュブナイル」だそうだ。『垂直世界の戦士』はそんな気がしたけど。ま、俺はあんまりそのへん気にしないで読んでるのでいいけど。
物語のテンポとか全体のプロットはまぁ、いいんだけどなんといっても最大の欠点は「こんなおしとやかな惑星」が舞台なので起きる事件や危機などはたかが知れているし、他のいわゆる「ハード系」作家が生み出す異世界にくらべてなんともあたりまえで平和なところが物語り自体も平和で平坦なものにしてしまっていることが残念だ。ＥＣＭ非情のミッション、みたいな悲壮感というかクールさが欲しかったところだ。タイトスーツのイジェクションなんてカッチョイイんだから最後までとっておけばいいのに、いきなり爆裂させちゃうんだもんな。ガラスマンは（偶然にもスタープレックスにも登場しているので今流行ってるのかとも思ったが）アイディアとビジュアルイメージとしては面白いがその具体的な仕組みや存在意義の裏付けの甘さが目立ってしまった気もする。
個人的には主人公フェスティナのコレクションが彼女に生きて帰る気力を与え、そして彼女の帰還を感動的なものにしているのはうまい、と思った。人間、何が頑張りの素になるかわからんよねぇ、ということだ。
あと気になったのはなんだかもー「精子」って単語が多すぎること。わかったよ、白いんだろ、別に練乳とかでもよかったじゃん。ま、そんだけ。
ハンデを背負いつつも「特別な存在」のＥＣＭである主人公が自分自身の内にある負の要因を克服し、成功する、という筋立ては「いかにも」なのだが俺だってたまには「いかにも」な物語を読みたいと思っていたのでま、いいんじゃないでしょうか。
大森さんも云っていたがタイトルの「ＥＸＰＥＮＤＡＢＬＥ」はリチャード・エイヴァリーの＜コンラッド消耗部隊＞に由来してるふしがあるのだが、どこにも言及されていない。実は俺はまだ＜コンラッド消耗部隊＞を読んでいないので今度読んでみたいと思う。
今回の表紙は相変わらずヘンだけど、内容に結構マッチしてる。やるじゃん、ハヤカワ・デザイン（笑）。俺もＳＦセミナーに銀色のポット持って行ってこの表紙のポーズとって「バンブラー」とか云ってようっと。

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