U-kiの読書日記(00/8/9～00/8/21)

U-kiの読書日記(00/8/9～00/8/21)

『出版クラッシュ！』（編書房）永江朗、小田光雄、安藤哲也、読了。 - 00/08/22 00:00:00
本日の調子: さぁ、みんなで歌おう！

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＃８月２１日

耳を澄ませば聞こえてくる～。ほら、書店が、版元が、大ピンチ！
出版界が大ピンチ！軋んで悲鳴をあげているぞ～！
永江さんはクライング・フリーマン。ららん。
安藤さんは熱血書店員。ド根性。
小田さんは頑固な反体制派。ゲバゲバ～。
クラッシュ！クラッシュ！クラッシュ！出版クラッシュ！

という感じでしょうか。適当に節を付けて歌ってみてください。（嘘）

ノンフィクションは読んで時間が空いちゃうとなかなか感想というかここに書くべきことが書けなくなっちゃうのよね。
この前に読んだ『不良のための読書術』と合わせて後日、思うトコロを書き直します。（ホントか？あまり期待しないように）

『ブライトライツ・ホーリーランド』（電撃文庫）古橋秀之、読了。 - 00/08/20 00:00:00
本日の調子: 天使が踊ってるよ～。俺の脳内で…

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＃８月１９日
さすがに充電期間をおいて、満を持しての最終巻だけあって、文章・構成とも光りまくり、話も飛ばしまくっております。
＜ケイオス・ヘキサ＞を襲う未曾有の危機とそのキーとなる不思議な人造人間の少女と最凶の魔人。なんだか無意味に痛いけど楽しそうなＶ１３。女坊主と隠遁した最強爺ィ坊主との関係。またしても名前と姿を変えて出てくるロンとその周辺の人間関係。そしててんやわんやの＜ケイオス・ヘキサ＞からの大脱走劇。破壊と再生。地獄と天使のイメージ。
これらが渾然一体となって突き進む様は見事としか云いようがないですな。
爺ィ坊主、死ぬほど強いし。ヤコ、仏教体現してるし、ロンの正体が明かされるシーンはビビッとくるし、『ヨコ出し』のアルファさんとは似てもにつかないアンドロイド少女の動きは奇天烈だし。だけどちょっとグログロしてるというか、痛いシーンが多いので俺は生理的にダメな部分が多かったなぁ。パーツパーツはいいんだけどお話全体としてはなんとなく意味不明で納得行かないところもあったりして、やっぱ文章はやや稚拙な部分があっても一番最初の『ブラックロッド』の衝撃と構成のわかりやすさとかを評価してしまう俺であった。よっての作品も作者には悪いけど１作目よりは評価低いです。イラストは３冊中最も良いんじゃないでしょうか。最初からこの人だったらよかったのにね。
このシリーズは３冊有るけど充分単体で読めるのは＜ゲヘナ＞と一緒。だけど、うーん、ゲヘナはキャラ小説なので３冊＋１冊まとめて読んだ方がいいね。ブラックロッドは語り部のロング・ファングだの基本設定だのが一緒なだけなんだけど……やっぱまとめて読まないと重みが出てこない気もするな。この３作、だんだん気が狂った展開になってくるけど、俺は１作目が一番良いような気がするんで、個人的には１作目でやめておいても良い気がするなぁ。でもまぁ、３冊まとめて見つけたら、サクサクッとまとめて読んじゃえばいいかもね。
以上。

『ブラッドジャケット』（電撃文庫）古橋秀之、読了。 - 00/08/19 00:00:00
本日の調子: 片腕ないならライダーマンなみだろ？

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＃８月１８日
最初に作者は『ナイトウォーカー』というタイトルにしたかったそうなのだが、このタイトルに決定されてしまって、確かに「ああ、前回ブラッドなんとかって同じ作者の読んだよな」とか云って見捨てられそうな感じではある（苦笑）。このシリーズ３冊ともイラストレーターが違うというある意味不遇な作品で今回のこのイラスト、ちょっとかわいすぎて似合わないかもなぁ、とか思ったり。「イラスト付き小説」はかなりイラストが命ですからねぇ。
さて、３冊通しで読んで分かったけど、この３冊に通しで出てくる語り部、というか狂言回しの吸血鬼ロング・ファングでナイトウォーカーのロンさんのメインの話なんですが、うーむ、とにかくあんま俺的には燃えなかったですな。映画『ＪＭ』に出てきたドルフ・ラングレン演じるキチガイ・サイボーグ神父とはちょっち違うけど『ヘルシング』のアンデルセン神父とも違うけど、超最高な神父が大活躍です。でも神父だけで総合点にプラスをやるわけにはいかんなぁ。
文章は格段に上手くなってるけど片腕吸血ブラザーズのちょっぴりオセンチめの話じゃ俺は燃えませんな。基本的に吸血鬼ってそんなに好きじゃないしね。
でもね、途中に挿入されている＜マグロ＞のエピソードには泣けた。ゾクフー魔王としてこの変形美人局（つつもたせ）な話は涙なしには読めなかった。良かったな、ロンくん。これで君のエクスペリエンスも１ランク上がったぞい。
とにかく＜ケイオス・ヘキサ＞の世界描写のショックという禊ぎは受けてしまったのでなんとなく平凡な続編に思えてしまって評価はそんなに高くないです。はい。

『ブラックロッド』（電撃文庫）古橋秀之、読了。 - 00/08/18 00:00:00
本日の調子: 対学生運動担当の機動隊隊長なみ。

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＃８月１７日
こりゃー度肝を抜かれましたな。
まさに名前のない男の物語。主役なし、語りべ有り。って感じかな。
「ブラックロッド」というのは役職というか、そういう部隊の隊員の呼称であって番号すらなくすべて同一の威厳と威力とを持ち、都市中の者の畏怖と嫌悪の対象になっている。
今回はある一人の「古傷」を持ったブラックロッドの一種復讐譚のような話で、「バービーはなぜ殺される」のコミューンのように個性のないのが＜ブラックロッド＞なのだが、彼は「痕」という個性を持ってしまい、それが物語のキーになるのだ。支援用戦闘妖精（一部嘘）のＶ４とのオセンチな関係とかも個人的には感情移入できて良かった。いい、非常にヴァージニア４はイイ。その後に出てきたヴァージニア７なんて全然ダメ！死ね！って感じ。
うーむ、しかし「ブラックロッドは笑わない」という第一章を見た瞬間笑いが（笑）。
＜クラークの法則＞的に高度に発達した科学が魔法のように見えるんではなくて、オカルトの技術をあたかも科学のように扱って発展させた世界ってのは面白いんだけどね、なかなか舶来のＳＦでは見ない表現かも。日本人にはウケルと思うんだけどね。
俺が今まで高く評価してきたオカルトというか呪術・魔法を科学の用に発展させた改変世界は『混淆世界ボルドー』（あれは地球の影なんだけど）があるけど、積層都市「ケイオス・ヘキサ」の重厚さ、魔法・魔術・オカルトの使い方、描写は完全にそれを越えてますな。士郎正宗『仙術超攻殻ＯＲＩＯＮ』にも近いかな。（俺はあまり好きになれなかったんで手元にない）主人公（？）ブラックロッドの掌にある可変魔法陣＜ヴァリアブル・タリズマン＞による攻撃とかも燃え燃えですわ。
無論、１０年前、学生でサイバーパンクかぶれの頃にやろうとしてたことを１００倍くらい上手くやられたって感じでもう敬服するしかないです。サンスクリット語とドイツ語と英語と日本語のごっちゃに成った凄まじい造語の嵐とその造語の通りの形容で作られる人造の六道の世界。鉄の煉獄。これはもう圧倒されるしかありませんや。この世界観の構築に成功してるってだけで１００点満点をあげたいくらいですわ。
新人のデビュー作で名前の無い男の、主役の無い話、という意味ではこーゆーオチでスッキリしてると思うし、文章の稚拙さとかイマイチ雨宮慶太の絵が合ってねぇ、というのはしょうがないところ。うむ、初回のブギーよりはやや劣るものの非常に高い点を上げたいと思います。
超合格～。

『ＦＦ８アルティマニア』（デジキューブ）、読む。 - 00/08/17 00:00:00
本日の調子: 昔のゲームを慈しむ平野耕太センセなみ。

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＃８月１６日
しまった。等身の縮んだキャラ以外に俺がＲＰＧをやらない理由に思い当たってしまった。
そうだ、こんな面倒臭いゲームシステムに我慢がならない男になっていたのだよ、俺は！
「魔法をドローする」っていう表現にも違和感を感じるな。ＦＦではあたりまえの表現なのか？なんかハイ・ファンタジーの世界で職業を変えたりとかスキルを身につけたりとかいうのとは大分違うというのはわかるけど、ＧＦ（ガーディアン・フォース）とかも燃える設定ではあるがなんかそーゆーゲームをやったことがないので違和感ありまくりですな。こいつらは味方にできる？召還するというよりはアイテムの様に身につけるの？ってゆうかＪＯＪＯ第６部ですでにやりとり可能なアイテムと化してしまったスタンド能力のようなもの？とか勝手な解釈をするとやりたい度が増してしまうのだが（笑）。
しっかし、軽くシナリオとかクリエーター・インタビューを読むと学園モノで純愛でラブラブなのよ、っていうのは良くわかったので「うう、ＬＯＶＥ？ポリゴンでＬＯＶＥ？」とか思うとなんか金握ってゲーム屋に飛び込んで行きたくなるような衝動がわき起こるんだけどね、実際この鬼のような約束事の中でちまちまマップ進んで戦闘して、それでようやくムービー見られんのかよ！と思うと勘弁してくれっ！って感じになっちゃうよなぁ、やっぱ。
（でもこんだけ書かれると「エンディング」がどんなのか見てみたくなるなぁ、やっぱ））

『絶版』（音楽専科社）岡田斗司夫、田中公平、山本弘、読了。 - 00/08/16 00:00:00
本日の調子: ナンパ相手の顔が岡×××夫にクリソツだった後藤くんなみ。

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＃８月１５日
「ギャルゲー徹底大研究」というので買ってみたのだが……。ちっとも研究してないやんか！という感じ。いや、山本弘の体験談はリアルなんだけどね、他の二人はやってないし、もうそれだけやん！って感じですな。田中公平は「サクラ大戦」の現場見てるだけだし、岡田斗司夫は「プリンセスメーカー」で止まってるし。
魔女ッ子アニメ徹底大研究も山本弘が「ようこそようこ」で炸裂して、あとは「セーラームーン」の功罪とアニメの「お約束」について語ってるだけだし。
アニソン・特ソン徹底大研究とか云ってるわりには田中公平の最近のそれらしい曲のヒットは「ゲキテイ」（サクラ大戦の主題歌『激！帝国華撃団』）だ、とかね。塩沢兼人が死んだよね、とかとにかく世間話ばっかで特にテーマについて深く語ってはいない！
一応３つの柱になるテーマがあるんだが、それらについて深く考察したり、じっくり裏事情が語られているわけでもなく、話はとりとめもなく横道にソレまくり字数と時間の関係で無理矢理着地させられている。へたくそな座談企画の典型みたいなものだ。
ただのオヤジの飲み会での下品な話を記録して本にしただけ、とも云えなくはない。話のネタは生ものなのでリアリティたっぷりだが、質に関して云えば世間話の域を出ていない。それこそＳＦ大会やセミナーで彼らが酒を飲んで歓談しているのをワキから聞いている、というレベルのものだろう。
附録座談会であかほりや庵野をゲシゲシに云ってるのもそこそこ楽しいけど、知ってる人は知ってる話だし、ねぇ？商品（声優）に手を出す出さないとかもなかなかリアルでイイトコついているけど、まぁ、知ってることだし（苦笑）。ゲーム声優が当てレコもろくに出来ないとか、奥さん声優だったら夫婦生活燃えまくりとか、ホント、下品な話題だけ一生懸命しゃべってるよな、って感じ。岡田については最近のアニメもゲームもやってないんで８０年代で時が止まった人って感じなのでオタクの偉い人というよりは「偉かった人」という過去形で表現するのがよかろう、と思ってしまった。同じ妻子持ちでも現在進行形な山本の方が数段偉い気がするなぁ。
うーん、今回思ったのはテレビ東京の安っぽさを岡田斗司夫がそれっぽく、おもしろおかしく誇張して残りの二人に語って聞かせているんだけれども、これって「正しくない」よなぁ、ということ。俺は経験主義者なところがある。何も知らないゼロの状態よりは１でも経験して居る方が偉いという感じで、なぜなら事実である１を演繹して１０を想像することはゼロをどれだけこねくりまわすよりも実があるからだ、というわけだが、今回の彼の発言とかを見ると「なまじ事実の１を知っているからこそ間違うと恐ろしい」ということがわかってゼロよりは１の方が偉い、というのもあまりただしくないんだなぁ、と思ってしまった。未経験の事象でも正しい情報源を元にしているのなら、下手に端っこをカジってそれが１０のウチのあたかも中心部分をカジったように思っているよりはよほどマシなのかも、と思い直してしまった。まぁ、俺はテレ東の回し者でも関係者でもないので必死に抗議する気はないんだけど、彼があたかもテレ東本局のように語っているのは単なる収録スタジオ棟である。ＴＢＳだって放送設備がある本局は赤坂にあって、ニューススタジオや一部の録画番組用のスタジオもそこにあるけれど、緑山に収録スタジオがある。同じようにテレビ東京も神谷町に本局があって、そこは下手するとＴＢＳなんかよりも遙かに厳重な入館規制があるし、放送設備を監視・コントロールするＴＶマスターなんかは旧式だけどいかにも頑丈そうな横スライド式の鉄扉でロックされていて新しいＴＢＳの局舎の磁気カード式のロックだけの扉なんかよりもはるかに厳重だ。「テロリストに侵入されたときのためにわかりずらいように複雑な構造をしている」というのも一昔前の話で、実際はＴＢＳの旧局舎なんかは旧陸軍＝自衛隊の本営地を払い下げでもらったためにそのような構造をしてただけで今は左右対称で位置感覚が狂うような感じではあるけれども、普通のビルの構造をしている。これはテレビ朝日も一緒。六本木の旧局舎は今は物置同然で、アークヒルズに移ってからは普通の四角い区画になっている。なんか昔話と東京タワー横のスタジオでの実体験とテレビ東京＝他の在京キー局よりしょぼいという先入観が融合してあーゆーそれっぽい話になっているわけで、実際を知らないと信じちゃう雰囲気になっているところが怖い。テレビ局の構造について間違った知識を得てしまうことが怖いんじゃなくて、人づてに聞いた話がどこまで真実かがわからないっていう怖さを知った、ということを云いたいんである。まぁ、風俗であるとかパソコンであるとか、いろいろなレポートを見て「ちゃんと取材している」とかしてないとか俺も偉そうなことを云ってたりするけど、記事を書いたライターには彼の体験した１の事実があって、俺の体験した１とはまた別の部分において真実なのかもしれない、とか思うと何を信じて良いのやら、という気になってくる。今回の本がキチンとした研究本の体裁をとっていない、なんだかオタクの偉い人の飲み屋での会話を立ち聞きしてしまったような内容の本だとしても、本として出版されれば何千人という人の頭に入るわけであって、うーむ、なんだかやるせねぇなぁ、という気がするのだった。
というわけで、声優やってる知人がいたり、ゲームのクリエイターやってる知人がいたりする俺にはあまり新鮮味のない話題ばかりでちっとも値段に見合う情報は得られなくてソンしたなぁ、という感じ。出来次第では残りの巻も買おうかと思ったんだけどこれを読んだらいかに「特撮の話」と書いてあっても前巻を読む気にはならんですな。まぁ、知人から聞かされる業界の話も眉に唾を付けて聞くことにしよう、とか思う俺であった。

『中継ステーション』（ハヤカワ文庫）クリフォード・Ｄ・シマック、再読。 - 00/08/15 00:00:00
本日の調子: 配達人がケビン・コスナーだったらイヤだなぁ。

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＃８月１４日
自分で他人をたきつけておきながら、やっぱりもう一度読みたくなったのでささっと斜め読みで読み返してしまった。

＜俺的なあらすじ＞
ある男が朝起きて、郵便配達のおじさんから雑誌と牛乳受け取りにいってログハウスに戻ってくると、部屋には新しい宇宙人の旅行客がいるんですな。それはそれはいろんなタイプの宇宙人が毎日のようにやってきて、主人公イノックは事前に宇宙ＦＡＸでどんな宇宙人がやってくるかを聞いていて、その宇宙人が快適に一晩過ごせるように準備をする。無論、必要と有れば全宇宙語辞典で挨拶を覚えたりもする。
「おっ、今日の宇宙人は水にぷかぷか浮かぶ丸い人みたいだぞ。水槽に新鮮な水を入れなければ」
そうして郵便配達のおじさんから色々受け取って小屋へ戻ると、小屋の地下は秘密の宇宙人旅行用の中継ステーション。そして事前に準備した水槽には丸くてプカプカした宇宙人が既にやってきてくつろいでいます。
カツカツカツ。おや、何か宇宙語で話しかけているぞ？
「ヤア！新鮮ナ水ヲアリガトウ！キミニコレヲアゲヨウ！！オミヤゲデス」
「やあ、これはすばらしいですね。ありがとうございます」それは変な木片みたいなものだった。
「地球人類ッテコレデヨロコンデクレルノカ、シンパイデシタ。ヨカッタデス」
そしてイノックは部屋中に並べられた今まで宇宙人からもらった贈り物にそれを加え、それらを眺めて満足するのだった。
ところが、地球人の心ない人（大統領の部下）のおかげで地球の中継ステーションが大ピンチになってしまう。さらには宇宙規模の大ピンチが主人公の耳にも入ってくる。
ああ、平和で楽しかった宇宙の峠の茶屋は閉鎖になってしまうのか？おい、イノック！そんな聾唖のロリータ少女にかまってないでさっさと事態を収拾させるようにせんかい！！と思っていたら、あら偶然。宇宙の大ピンチ防止マシンはイノックの枕元にうっかり転がっており、少女は不思議っ子でそれが使える人だったのだ。
「なんでぇ。人生悩んだってしょうがねぇ。なるようにしかならねぇってもんさ」
そうつぶやきながら、死んだ妻の面影にすがることをやめてみよう、っとちょっぴり決意するイノックであった。
そして、地球は宇宙の峠の茶屋としてこれからも宇宙のお客を迎え入れていくのであった。

細部の補完完了！おお、そうか、そうだったけねぇ。
聾唖の少女とおセンチな関係になるってよりは、死んじゃった奥さんとの追憶の部分とかがおセンチだったわけだよねぇ。ふむふむ。
で、丸くてぷかぷかした宇宙人についての記憶は正確だった（笑）。ここがイイんスよ、ハートウォーミング炸裂なんすよ～ッ！！
ＨＥＲ、ＨＥＲ、……
彼が住んでるところは山間の人里離れたログハウスにポツンと住んでいて、周辺住民には「そういうもんだ」と自然現象の一つ見たいに見られて居るからいいんだけど、配達してもらってる定期購読している科学雑誌が同じ名義で１００年間連続購読！とかだとそりゃ出してる方もなんかあげたくなっちゃうだろうし、役所だって色んな手続き上怪しんでくる。郵便配達のおじさんも「不思議だなぁ」と思いつつも新聞・雑誌と牛乳と生活用品を「仕事なんで」配達してくれます。しまいにゃ、『ＭＩＢ』（メン・イン・ブラック。映画でメジャーになったけど、ムー民の間では絶対に居ると信じられていた対宇宙人関係の特殊工作員。昔は矢追純一ネタだった）だって登場しちゃいます。でもこれ、映画でメジャーになったからかえって今読んでもイケルねたにななってますな！（笑）
イノック本人も監視とか周囲の奇異の目に気が付いているのだが、「あー、俺って浮いてるよな。でも宇宙人のお友達がいるからいいや。変に思う奴にはそう思わせとけ、へへんだ」とかいってちっとも堪えてないのであった（苦笑）。もう少し、地球規模の大秘密に関わってんだから思慮深くなれよ！とかツッコミたくなりますが、シマック作品全体に横たわるのほほん雰囲気の前にはなんか許せてしまうのである。スゲェ。
シマックの作品はアメリカの田舎ののどかな風景の中にとても心の安まる描写で満載なのだ。今の生活に疲れてる皆さん、是非探しだして一読することをオススメすしますわ。

『おちゃらか駅前劇場』（電撃文庫）阿智太郎、読了。 - 00/08/11 00:00:00
本日の調子: 女装した生徒が半数以上の男子校に入学しちまった野郎なみ。

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＃８月１０日
収録作品の５つのうち３つは電撃ｈｐのか、うーむ、と思いつつも電撃ｈｐはいずれ手放すだろうと思うとやはり単行本を買っておくのは義務だろうな、というわけで購入。
阿智太郎の小説の主人公は、それの読者との親近感が異様に高いのでこんなに読まれているのだと俺は思う。「なんとなくこまっちゃったなー」（お金が足りないとかでも、単位が足りないとかでも、クリスマスなのに彼女がいないとかでもいい）「でも死ぬほど困ってるとか苦しいわけではなく、「とほほ」と思いながらも生きているのが苦しいわけではない」そんな感じの主人公が少年漫画誌の新人賞佳作入選作品のような物語の中でどたばたする。最後は最高に幸せってわけではないけど、「にへへ」と笑って済ませられるような、そんななんとなく「のほほんとした雰囲気」で終わる話が多いのだ。これは漫画代わりに電撃文庫を読んでるような連中にはウケる！間違いなく読まれる！俺とかみたいにＹＡ作品にＳＦ色の強い完成度の高い作品が埋もれているのを発掘しようと躍起になっている「大人」には阿智太郎はウケないだろう。（まぁ、俺ってまだ少年の心があるからその辺はＯＫなんだけどさっ！）
うん、とにかく作品のノリは椎名高志の『（有）椎名百貨店』シリーズに近いんである。あれが好きな人は漫画代わりに読んでみるのも良かろう、と思うが値段は漫画よりも高いのでちょっと考えちゃうかな。

「１２月のアルバイト」…ふっ、彼女の居ないクリスマスイヴ。飲み屋に通っていなかったころは『稲中卓球部』なみに＜サンタ狩り＞をしていたものさ。今回の主人公もかなり捨て鉢なところに美人のモノホンサンタがバイト募集に来て気分はワクワクだが、実は彼女はかなりずぼらでイケイケお姉さんだったので一人さみしくプレゼント配りをするはめに。あげくにプレゼントを落としたりしてしまっていつものごとくとほほ三昧。でも、最後の最後、阿智太郎らしくホンワカしたハッピーエンドに落ち着くのであった。
「俺は石川！！」…書き下ろし。そのタイトル通り、石川五右衛門の子孫で天才的な盗みの才能がありながらも普通の高校生として生きるため、その才能を隠して生きる主人公。しかし！夏休みをエンジョイするためにはどうしても期末試験で赤点を取るわけにはイカン！っつーことで校長宅の金庫に保管されている模範解答を盗みに行ったところ、なんと同級生の校長の娘の誘拐事件に巻き込まれてしまった！ルパン三世のようにさっそうとそのテクニックを駆使して彼女を救い出そうとするも、所詮は彼も阿智太郎キャラ。すんなりとは行きません。
「僕は血生臭い殺し屋」…「血」の部分に×マークが付いているのはオチを読めば分かります。しかし彼、若いのによっぽど必殺シリーズが好きなんだね。中村一家は代々、家族全員が晴らせぬ恨みを晴らす「裏家業」の一家。生まれたときに「子連れ狼」の大吾郎よろしく目の前に並べた武器のどれを手に取るかによって必殺の獲物を決めるという風習があるそうな。で、彼の口に出すのも恥ずかしい「獲物」は……。というお話。ラブコメ調にもなっていてこの中でも一番の出来でゴザイマス。
「サングラスの奥で」…書き下ろし。「僕は血生臭い殺し屋」と同じ世界のお話でナイフ使いの鉄面皮のお兄さんの１エピソードである。ギャグに生きる男、阿智太郎がめずらしくシリアスでほろりお涙ちょうだい路線に走ろうとした、ような感じの作品。文章も長めで力が入っているのはわかるけど、やっぱもっと脳天気な話を書いて欲しいかなぁ。
「七夕にお願い」…これぞまさに阿智太郎節全開！このアホさが納豆のように糸を引いているくらいの作品がやめられないのだっ！！短冊に書いたお願が叶うって普通ロマンチックだよな。ところがそれがはちゃめちゃなことに。でも、オチではちゃんとほのぼのとしたハッピー感が感じられて良いです。

ってことですな。このページ読んでる人で阿智太郎、何人読んでるか知らんけど、わりとオススメな一冊です。

『冥王と獣のダンス』（電撃文庫）上遠野浩平、読了。 - 00/08/10 00:00:00
本日の調子: ヘノモチンを飲みすぎた太宰なみ。

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＃８月９日
さて、『殺竜事件』は未読なので初めて読む＜ブギー＞以外の上遠野浩平の長編、ということで読んでみる。一揆読み。さすがである。あいかわらずリーダビリティは高いよね。
今回は現代を基本舞台にしたＳＦ仕立ての話ではなく思いっきり異世界モノに近い感じである。謎の強大な存在である＜虚空牙＞なる存在によって宇宙進出をはばまれた人類が地球に閉じこめられ、長い期間を経て文明が疲弊し、退行してゆき、奇形した中世のような世界で生き続けることになった、という設定である。人類共通の敵が居るにもかかわらず、それにかなわず、地球という名の箱庭に閉じこめられた人類は、独裁者の下で過去の機械文明の生き残ったテクノロジーに頼った＜枢機軍＞と、突如生まれた戦略兵器なみの超能力を操るごく少数の「奇跡使い」の力に頼る宗教教団のような＜奇蹟軍＞との二大勢力に別れて、いつ終わるともしれない戦いを繰り返していた。そう、とっても愚かしくて虚しい諍いと浪費の世界に青春まっただ中の主人公達、思春期の若者は放り込まれていたのである。
ネット上で聞く『殺竜事件』の評価がイマイチだったのでそっちを読まずにコレを待ったのだが、うーん、客観的に評価しようとすると似た感じを受ける人も多いのではないか、とか思ってしまうなぁ。基本的に上遠野浩平は現代に足がついていないファンタジックな世界の描写に合わないんじゃないかなぁ、なんて思ってみたりする。
いや、これも相当よかったんだけど、正直、期待外れではあった。『ブギーポップは笑わない』の初撃と『パンドラ』のツボつきまくり度を超えるのはなかなかに難しいようだ。
冒頭でタイトルの意味と同時に物語の世界観が語られたところでうむむ！やるじゃん！と唸ったんでそこはイイんだけどね。言葉の響きは完全にコードウェイナー・スミスのソレだったし（苦笑）。
「恋に勝る奇跡なし」「惚れたが悪いか！」とか、主人公の若き枢機軍兵士・トモルと美しくも心を閉ざした、恐るべきウニ型の鉄球のような破壊兵器を繰り出す奇跡軍の超Ａ級奇跡使い・夢幻の偶然の邂逅から生まれた初恋の感情を軸に物語は展開していくんだけど、なんかラヴラヴっぽい話に見せかけておいて実はあんまり恋に重きを置いていないのが俺としてはかなり不満。しかもトモル、夢幻以外のオンナノコすべてにモテモテだというのもなんか許せんし（単なる嫉妬？）。まぁ、『ボトムズ』のキリコとフィアナみたいに生まれたときから何時始まって何時終わるともしれない戦争の中で生きてきて恋だの愛だののなんたるかもわかってない若い二人の「一目惚れ」なんてこんなもんかもしれないケドね。その感情の唐突さに読者が付いてこれるかは疑問だよなぁ。なんか恋に恋してる人の文章っつーかなぁ、そんなうわっついた文章にも見るところも気になるし。
トモルと夢幻の二人が、お互いその感情を「恋」と知らずに出会いを求め合っていくところが話の推進力になっているんだけど、もう一つ、枢機軍にも「奇跡使い」が発生しつつあった＝それがトモルだった、というミュータントものにはありがちな設定が話を引っ張っていくのだ。一昔前、人類が進化して「新人類」になるとテレパシーとか超能力が使えるようになるはず、なーんて設定のＳＦは多かったのだ。しだいに明らかにかつ顕著になってゆくトモルの「スタンド能力」の秘密も結構見物である。
それにしても、「奇跡使い」ども！『ブギーポップ　エンブリオ炎生』のあとがきで「私の最も好きな漫画家である荒木飛呂彦」と告白したせいだろうか、どう考えても「奇跡使い」を「スタンド使い」という文字に置換可能な戦いぶりを展開してるんですケド……。特に「最強」を謳うだけあって「天」と「地」のリスキィ兄妹は＜赤い牙＞シリーズ越えてるんですけど……。夢幻のスタンドは敵が完全に沈黙するまで攻撃する「根こそぎ型」の自動追尾型スタンドだし、無差別に広範囲に「恐怖」を植え付けるウイルスをまき散らすチョコラータの「カビ」のスタンドのようなタイプや触れた物体や自身の姿を消すだけの能力しかない奇跡使いも出てくる。そういった能力的に「薄い」奇跡使いと「濃い」タイプの奇跡使いが工夫しあって同等に戦う姿はまさにＪＯＪＯのスタンド合戦だと思うんスけどねぇ。まぁ、あとがきで上遠野さんも「スタンド合戦って燃えるじゃないですか。思いっきりやってみたかったんですよ」（俺的解釈）と云ってることだしま、いいんじゃないでしょうか。いや、好きな人はイイのよ、好きな人は。でもそうでない人には、ちょっとどうかねぇ。なーんかつまんない部分に見えちゃうんじゃないかねぇ。
テーマ自体はこれまで作者が「ブギーポップ」シリーズで展開していたものと大きな違いはない。平凡な社会の中にひそむ閉塞感の変わりに戦争という非日常的の中で抵抗しようのない巨大な「敵」と対峙しようとしている。思春期の若者はいつだって、社会とか世界とかそういった巨大な「敵」対して無力だ。何を持ってしても抵抗するどころか「変化」を起こすことすらできない。おのれの無力を思い知るだけだ。だからトモルは夢幻が強大な「奇跡の力」で枢機軍の古く凝り固まった部分の象徴である城塞の一つをいとも簡単に破壊する様を見て絶叫する。このトモルの絶叫と彼の流す涙が上遠野読者の最も共感する部分であり彼の作品の最も良い持ち味の部分なんだからそこをもっと上手く描いて欲しいと思うのだ。
あと些細なことだけど、表紙はともかく「カラー挿し絵と内容に偽り有り」なのと、せっかくの自動ロボット兵器部隊の活躍があまりにもあまりにもしょぼいのはなんとかして欲しかったところである。これはホント、個人的な文句である。
とりあえず今回訪れた大災害の危機はトモルとその仲間によって防がれた。だが、果たしてトモルに目覚めた「奇跡」とその仲間によって、この腐れた世界は変わることができるのだろうか？それが描かれる続編が出てくるのかの判定が微妙な幕引きが俺にはとってもイヤンだったんだけどね。いや、俺は別に続き出なくてもイイと思うんだけど、ね。
一種、遠い未来の地球でのミュータントものＳＦとしても読めるのでそっち方面でイケル！と思う人は読んでみてね。

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