ハート

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   では、スタート!

 野比のヴぃ太、16才。
 この春、オレにはどんな出会いが待っているんだろう・・・


 俺、野比のヴぃ太、16才。高校2年生だ。いま、両親は仕事の都合でちょっとはなれたところで暮らしている。従って、俺は今この世田谷の一戸建てに一人暮らし、に近いような生活を送っている。ちょっと贅沢といえば贅沢だけど、洗濯やら掃除やら家事全般のことを考えるといいことばかりでもないってのが本当のところだ。
 ああ、来栖川製のメイドロボットでもほしいぜ。
 で、朝は苦手なので布団のなかでいまだもぞもぞしている・・・
「のヴぃ太さ〜ん!」
 ・・・無視。
「のヴぃ太さぁぁぁああああん!遅刻しちゃうよぉ〜〜!」
 うっせー!わかってるよ!
 がばっ、と俺は布団から飛び起きて速攻で学生服に着替えた。
 一階に降りてみると、玄関に幼なじみのしづかが立っていた。
「恥ずかしいから、あんまり大きな声で呼ぶなって」
「ゴメン。だって、のヴぃ太さんがいつまでも起きてこないのがいけないんだよ」
 じとっと上目使い。しづか得意のポーズだ。犬か、おまえは!
「ちょっと顔洗ってくるから、もう少し待て」
 俺は顔を洗って、焼いていない食パンをかじると、かばんを持って外へ出た。
 しづかは小学校の時からこうして俺を起こしに朝家によってくれる。いつからそうなったのか、というと、それはきっとあの時からなのだ。

・・・
「のヴぃ太くん、下がって!」
「やめろ、ドゥラえもん!君が死んじゃうよ!」
「いいや、みんなが助かるにはそれしかないんだ。・・・それに、ボクが死んでも替わりはいるから・・・」
 ドゥラはタイムマシンのモードを『D』に入れ、自爆スイッチを押した。
 カッ!!
 閃光が東京を包む。
「ど、ドゥラえも〜〜〜ン!!!!」
・・・・

 タイムパトロールが誇る25世紀汎用人型決戦兵器ドゥラえもんと歴史改変組織セワシとの戦いに巻き込まれた小学校4年生の夏。それまでいじめられっこだった俺は替わった。「僕」だった自分の呼び方も自然と「俺」に変わっていった。
「ジャンバール分岐点(ポイント)で大規模な歴史改変をさせなければ、それはその後の時代に影響しないんだ」ドゥラえもんは言った。
 歴史とは線路のようなもので、もう軌道は決まってしまっている。だが「ジャンバール・ポイント」という線路の切替えポイントのような「時点」があって、そこで歴史改変者たちは歴史を変えるための事件を起こす。彼らは未来の破滅思想の狂信者だ。
 俺が小学校4年の時の東京。それがその「ジャンバールポイント」だったのだ。
 たぶん、そこで歴史は変わったんだと思う。俺たちが皆、死んでしまうという最悪の歴史改変を防ぐことはできたけど、歴史の流れの小さな歪みは起こってしまったのだ。
 ドゥラえもんは俺に大切なモノを護るということ、そして『漢(おとこ)』の戦いとは、これすなわち「生きること」であることを教えてくれた。奴はこの時代にはいなくなってしまったが、俺の心の中には今も生きているのだ。

 そうだ、小学校4年の時。それまでしづかにはてんで頭があがらない、といった関係だったのだが、いつのまにかやつの方が「のヴぃ太さん、のヴぃ太さん」と犬のようにあとを追いかけてくるような関係になったんだ。実際、ドゥラえもんと別れたあと、こいつのおかげでずいぶん救われた部分があると思う。それまで仲のとよかったスネ夫やジャイアンとは中学校に入ってからはなんとなく疎遠になり、出来杉、しづか、ジャイ子(ジャイアンの妹で一つ年下だ)、と自然とつるむようになっていた。
 で、俺の寝坊癖は改変されなかったようで、中学時代はずいぶん寝坊して怒られた。というわけで、しづかは俺が遅刻の常習犯にならないように、毎朝家によってくれているわけだ。実は中学の頃、女がうっとおしく思えてしづかを無視してずいぶん傷つけたこともあったけど、今は考え方もずいぶんかわって、しづかとの関係は小学校高学年時代のように修復されている。そう、こいつは性別を越えた俺の「大切なモノ」なのだ。

「よし、しづか!公園までダッシュするぞ!」
「えぇ、ま、まってよのヴぃ太さぁん!」
 俺達は公園までダッシュした。ここの公園からショートカットすれば、俺達の通う私立東鳩学園はもう10分くらいのところだ。
「の、のヴぃ太さん、、、はぁ、はぁ、わたしもう、走れない・・・」
 しづかは俺についてきてもうヘロヘロだ。俺は時計を見る。
 8時12分。ま、間に合うか。
「よし、だいぶ時間がかせげたから、ここからは歩くか」
 俺達は歩調をゆっくりモードに戻した。
「あのな、しづか。頼むから朝っからでかいこえで『のヴぃ太さ〜ん』はやめろ。ご近所中に響いて恥ずかしいだろ」
 すると、しづかは少しムッとした顔で、
「だいたい、のヴぃ太さんがいつも寝坊するからいけないんだよ」
 と反論してきた。すこしほっぺが膨らんでいる。いつも牛乳風呂に入っているだけあって、ほっぺたはつるつるでぴっかぴかだ。そしてうっすらとピンク色に上気している。長い付き合いの俺からみてもしづかはいい女だ。でも、いまんとこ特定の男とつきあってる気配はない。俺になんかつきまとわなければけっこうもてそうなのに。
「わかった。寝坊は俺が悪い。だけど、もう『のヴぃ太さん』はやめようぜ。下の名前は。こう、「野比君」とか、別の呼び方があるだろ?」
「うっ、、で、でもぉ、小学校のときからずっと『のヴぃ太さん』だったしぃ・・・」
「ったく、しょーがねーなぁー」
 そんなことを話しながら学校前の坂道までやってきた。
「ジャイちゃんニュ〜ス!!」

 おっ、うるさいのがやってきたぜ。
「今日も二人仲良く一緒に登校ですかぁ?」
 冷やかす口調。だが、こいつの口調はいつもこんなもんだ。
やかましい!うっとおしいぞ、ジャイ子。おめぇも高校生になったんだからちったぁ静かにしろ!」
 一つ年下のジャイ子はどうにか受験をがんばって俺たちと同じ東鳩学園に先日入学してきた。誤解の内容に行っておくが、俺たちの通う私立東鳩学園は東京の私立じゃレベルけっこう高い方だ。だけどばりばりの進学校でもない。子供が減って大学受験が厳しくなくなってきた傾向にけっこう早くから対応していたところだ。ただ、人気もあるので、入るのはここらじゃ2番目くらいには難しい。出来杉ももっと上の学校を狙えたんだろうが校風に惹かれてここを選んだのだ。奴の頭が悪くなったわけじゃない。俺も中学校でそれなりに勉強をしたら受かってしまった。しづかが一緒に勉強を見てくれたのが大きいかもしれない。で、俺としづかになついているこいつも一緒の高校に行きたいなんて言い出したが、兄同様、勉強は得意じゃなかったジャイ子は3年生の時に猛勉強したようだった。
 だからこうしていまこいつがここにいるという事実を俺は素直に誉めてやりたいと思う。ま、中身はまだまだずっと幼い気がするんだが。

 中略

「はい。HMCX−12。皆さんは私のこと『ドラミ』って呼んでます」
「ふーん、それって製品名になるのか?」
「はい、たぶんそうなるだろうって、開発室の、皆さんがおっしゃってました」

「私のお友達の『ドラヨ』さんです」
「HMCX−13、ドラヨです。よろしく」
 なんだ、ドラミに比べるとえらいメカメカしいっつうか、機械的な奴だな。って、そうか奴等機械なんだった。

 中略

 校門前で倒れているその男は、振り絞るように言った。
「こ・・・この学園に・・・・『野比のヴぃ太』は・・居るか・・・?
「俺が野比だ」
「そ、そうか。よかった。・・・・こ、これを預かってきた・・・」
 絶命する男。俺は男の手から「D]の文字を3つ組み合わせたようなポケベルを受け取った。無論、俺のものではない。見ればボイスメッセージが1件、入っている。再生ボタンを押す。

・・・のヴぃ太君、・・・・・・タイムマシンに乗りなさい・・・

 ズギュギュギュゥゥウウウウン!!
「ど、ドゥラえもん?!」
 俺の全身を衝撃が走った。

以下、執筆中。