プレイステーション

OVER DRIVIN III/HOT PURSUIT


 アメリカ、エレクトロニック・アーツ社製のゲームで、ひと言で言うと、スーパー・カーが登場す
る公道レース・ゲームです。


■登場車種

 ゲームには、いわゆる "スーパー・カー" 6車種とレーシング・カー2車種が登場しますが、ゲー
ム開始当初から全車種に乗れる分けではなく、レーシング・カー2車種には、「プレイ・モード」の
項で述べるトーナメント・モードで優勝しなければ乗る事が出来ません。

 マシンのCGは、『グラン・ツーリスモ』並みとまではいきませんが、それに準じたレベルにはあ
るように見えました。

◆シボレー'98年型コルベットC5
 (車重:1472kg・エンジン:5.7リッターV8・馬力:345ps・トルク:49kg)

 ゲームに登場する他の7マシンは、すべて14万ドル以上もする欧州の超高級車揃いと言う中で価格
3万8000ドルと実に庶民的なコルベット君です。さすがにゲーム・デザイナーがカナダ人とアメリカ
人と言う事もあり、とりあえず入れて見たと言うところでしょうか・・・。ゲームに登場する他の7
マシンと比べてパワー不足は否めませんが、軽い車体とテクを駆使すれば何とか食らいついて行ける
かも・・・。

◆フェラーリ355F1
 (車重:1350kg・エンジン:3.5リッターV8・馬力:375ps・トルク:37kg)

 かつてのスーパー・カー・ブームの折りに私が慣れ親しんだ512BBのフォルムを受け継いでい
るマシンです。フェラーリ伝統のV8エンジンをミッド・シップに搭載しており、スーパー・カーと
呼ぶに十分なスペックを備えたマシンですが、ゲームに登場する他のV12エンジン搭載のモンスター
・マシン群と比べると、いかんせんパワー不足は否めないところです。

◆フェラーリ550マラネロ
 (車重:1690kg・エンジン:5.5リッターV12・馬力:485ps・トルク:58kg)

 かつての456GTやデイトナの流れを汲むフロント・エンジン方式を採用したマシンです。かつ
てのデイトナをどことなく彷彿させるフォルムをしています。車重はゲーム登場マシン中で最も重い
ものの、トップ・スピード320kmはディアブロに次ぐ速さを誇ります。

◆ランボルギーニ・カウンタック25th
 (車重:1675kg・エンジン:5.2リッターV12・馬力:449ps・トルク:51kg)

 ご存知、往年の名車カウンタックです。ゲームに登場するのはスーパー・カー・ブームで慣れ親し
んだLP400ではなく、'88年にランボルギーニの25周年記念として発売された限定モデルだそうですが、
'74年のデビュー当時のフォルムと外観はほとんど変わっていません。

◆ランボルギーニ・ディアブロSV
 (車重:1625kg・エンジン:5.7リッターV12・馬力:529ps・トルク:61kg)

 カウンタックの上級車種にあたるマシンです。全体的なフォルムはカウンタックを踏襲しています
が、エア・インテークなど車体表面の突起物が少ないため、こちらの方がデザイン的にはあっさりし
て見えます。車重は1625kgと重いものの、529psと言うエンジン・パワーにモノを言わせ、ゲームに
おいては、何とレース・カーであるCLK−GTRやXJR−15を凌ぐゲーム最速のトップ・スピ
ードとナツカC2に次ぐ時速0-100km加速タイムを誇ります。

◆イタルデザイン・ナスカC2
 (車重:1040kg・エンジン:5.6リッターV12・馬力:380ps・トルク:56kg)

 かつてロータス・エスプリやBMW−M1、デロリアンDMC12などのボディ・デザインを手が
けたイタルデザイン社のデザイナーであるジルジアーロがボディ・デザインを担当し、エンジンはド
イツのBMW製の5.6リッターV12を搭載すると言う、自動車業界では夢のようなイタリア−ドイツ
のタッグによって生み出されたスーパー・カーです。エンジン・パワーは380psと控え目ながら、カ
ーボン・ファイバーを多用したボディはレース・カー並みの軽量を実現しており、時速0-100km加速で
はゲーム登場8マシン中で最速を誇ります。

◆ジャガーXJR−15
 (車重:1050kg・エンジン:6リッターV12・馬力:470ps・トルク:62kg)

 '91年のインター・コンチネンタル・チャレンジのジャガー・ワン・メイク・レースのために50台
だけ生産されたコンペティション用マシンだそうです。優れた戦闘力を持ちながら、まるでコンセプ
ト・カーのような美しいデザインのマシンです。ゲームでは、「ビギナー」レベルのトーナメント・
モードで優勝すると乗れるようになります。

◆メルセデスCLK−GTR
 (車重:1000kg・エンジン:6リッターV12・馬力:600ps・トルク:?)

 メルセデスCLKクーペをベースとしてAMGが開発したFIA仕様のレース用マシン。開発着手
から完成までわずか128日と言う、レース用マシンとしては信じられないほど短期間で仕上げられた
そうです。ゲームでは、「エキスパート」レベルのトーナメント・モードで優勝すると乗れるように
なります。


■コース

 「すばらしい!」のひと言に尽きます。『グラン・ツーリスモ』のサーキットの景観もなかなかの
ものでしたが、全部で8つある本ゲームの公道コースは、田舎街、海岸都市、渓谷、ロッキー越えな
ど、思わずスピードを落としてドライブして見たくなるような外国の雰囲気たっぷりの美しい風景を
楽しむ事が出来ました。

 公道であるだけにサーキットと異なり、場所によっては分岐があったり、走行可能ルートの真ん中
に岩がそびえ立っていたりします。

 また、コース毎に昼/夜、晴天/雷雨 or 雪のコンディションも設定出来るようになっているほか、
ミラー(景観左右反転)、リバース(逆周回)、それにプレイ・モードによっては一般車両の有無な
ども選べるようになっており、ノーマル・コースに飽きたらコンディションを変えて楽しむ事が出来
るようになっています。

 全コースは、ビギナー・コースとエキスパート・コースに分類されており、ゲーム開始時点で走る
事が出来るのは4つのビギナー・コースのみです。

 「トーナメント」モードで、ビギナー・コースを使った第1戦から第4戦までを勝ち抜くと、第5
戦からはエキスパート・コースを走る事になり、以後、勝ち進んだエキスパート・コースが、「プラ
クティス」や「パトカー・チェイス」モードでも順次走れるようになります。

 ちなみに、本ゲームの4つのエキスパート・コースは、『グラン・ツーリスモ』を含めて、私がプ
レイしたレース・ゲームのいずれのサーキットよりも距離が長いように感じられました。

 下記に、登場する各コースを簡単に紹介しておきます。

◆ホーム・タウン(ビギナー・コース)

 アメリカの田舎風景の中を走るコースです。田舎街や牧場があり、道路には落ち葉なんかが落ちて
いて季節は秋を現しているようです。コーナーの少ない高速コースであり、トップ・スピードを要求
されます。

◆レッド・バレー(ビギナー・コース)

 グランド・キャニオンみたいな赤茶けた岩山だらけの峡谷を走るコースです。キツいコーナーは少
なく全体的に高速コースになっていますが、ところどころ道路が砂で覆われて見えなくなっている場
所があるため、走り慣れていない内は道路を見失って戸惑う事もしばしばです。

◆アトランティア(ビギナー・コース)

 ホテルらしき雰囲気のビルが多く建つリゾート風の近代的な都市の中を走るコースです。ルートの
一部はヨット・ハーバーや埠頭などの海沿いに面しています。高速コースですが分岐が多く、分岐点
を見落とすと分離帯に激突する事になります。

◆ロッキー・パス(ビギナー・コース)

 読んで字の如し。ロッキー山脈の山肌を走るコースなのでしょう。前半はキツい登り、後半は急な
下りで、山道のご多分に漏れず、全体的にコーナーの連続です。

◆カントリー・ウッズ(エキスパート・コース)

 『ホーム・タウン』の延長コースです。90度ヘアピンが連続する区間を含め、Rのキツいコーナー
が格段に増えています。季節は冬で雪が積もっており、シミュレーション・モードで走るとスリップ
しまくります。

◆ロスト・キャニオン(エキスパート・コース)

 『レッド・バレー』の延長コースです。コースの中程に神秘に満ちた地下宮殿や、峡谷の壁を穿っ
て造られた遺跡の間を走る広大な幅の場所などがあります。登り降りの連続タイト・コーナーがあり、
走行ラインを考えて飛ばさないと、たちまち車体で壁をケズるハメになります。

◆アクアティカ(エキスパート・コース)

 『アトランティア』の延長コースです。コース途中には夕日が美しく見える断崖絶壁や、水中トン
ネルなどがあり、景観は変化に富んでいます。高速コーナーが多く、スピードのサジ加減を考えて飛
ばさなければなりません。

◆ザ・サミット(エキスパート・コース)

 『ロッキー・パス』の延長コースです。季節は冬で、『ロッキー・パス』よりさらに高々度の地点
まで登ります。積雪が数メートルはある下りのワインディング・ロードを蛇行しながら抜ける様は、
まるでスキーをやっているような気分です。スッ飛ばしているとキツいコーナーが現れるので、コー
スを覚えていなければなかなか手こずらされます。


■ドライビング・モード

◆アーケード

 車体のバランス取りを自動でやってくれる設定になっていて、コーナーでもしっかりとグリップが
効くので、思い切り攻める事が出来ます。コーナーでブレーキを当てると、適度にリアが流れて容易
にドリフトに入れるので、キツいヘアピンを除けば比較的簡単にコーナーをクリアする事が出来ます。

◆シミュレーション

 読んで字の如し、走りに関してリアリティを追求したモードであり、パワーをかけ過ぎたり、オー
バー・スピードでコーナーに進入すると、たちまちコントロールを失ってしまいます。「アーケード」
モードと比べると、マシン・コントロールは遙かに難しいと言えます。

 本モードでは、下記に関するセッティングがいじれるようになります。

 ◇エンジン(パワー・バンド)
 ◇ブレーキ・バランス
 ◇ハンドリング
 ◇ギア・レシオ
 ◇サスペンション
 ◇エアロダイナミクス
 ◇タイヤ


■プレイ・モード

◆パトカー・チェイス

 パトカーとバトルを演じるモードであり、逮捕される事なく設定周回数を走り切ればクリアとなり
ます。

 いまいましい事に、本ゲームにおけるパトカーは、見るからに遅そうなジープ・タイプに至るまで
がモンスター・マシン群と同等以上のスピードで走れるように設定されているため、例え200Km以上で
飛ばしていようとプレイヤーのマシンを抜いて前に出て来ます。

 前に出たパトカーは、プレイヤーの進路を塞いで速度を落とし、プレイヤーを止めようとして来ま
す。止められてしまうとキツい言葉で警告を受けるハメになり、何度も警告を受けると最後には逮捕
されてゲーム・オーバーになってしまいます。

 また、追いかけられている最中に障害物や一般車と衝突して動けなくなっても、あっと言う間にパ
トカーに囲まれて捕まってしまいます。(走り過ぎたパトカーがちゃんと引き返して来ます)

 さらに恐ろしい事に、本ゲームにおける警察は、単に追いかけて来るだけでなく、複数のパトカー
を横向きに止めて道路を塞いでいたり、何とタイヤをパンクさせる凶悪な装置までもを道路に設置し
ていたりします。

 このパトカーによるバリケードやタイヤ・パンク装置は、コーナーの出口など視界の効かない所に
不意に現れるため、咄嗟によけられないとやられてしまいます。

 本ゲームのパトカー・チェイス・モードでは、そのコースが所在するであろう地方の雰囲気に合わ
せたパトカーが登場します。

 ◇田舎街=いかにも保安官が乗っていそうな角ばったセダン型パトカー。
 ◇都市=いかにも都会の警察っぽい、少し丸みのあるボディの最新セダン型パトカー。
 ◇レッド・バレー=ジープ型パトカー。
 ◇ロッキー越え=RV型パトカー。

 これら "地元の" パトカーに加え、追跡専用としてシボレー・コルベット改造型パトカーや、何と
ディアブロ改造型のパトカーまでもが登場します。

 これらのパトカーは、追いかけながらスピーカーを使い「警察だ!車を止めろ!」などと様々な声
色でわめき散らしてくれます。(もちろん英語)

◆トーナメント

 全8コースを使用して8台のマシン(正確には、プレイヤーとCOMドライバー7人の計8人)で
争われるシリーズ・レースです。

 1位8点〜8位1点と言ったポイント制になっていて、各レース終了時の累積ポイント・ランキン
グで3位以内に入っていなければ次のレースには出場できず、ゲーム・オーバーとなってしまいます。

 全レース終了時にポイント・ランキングで1位であれば優勝となります。

◆ノック・アウト

 プレイヤーを含む8台のマシンでレースを始め、レース毎に最下位のマシンが失格となっていきま
す。最終的に残った2台で決勝を行います。

◆シングル・レース

 プレイヤーとCOMマシンの2台で争うコース単位のマッチ・レースです。

◆プラクティス

 読んで字の如し、プレイヤー1台のみで走る練習モードです。


■一般車

 さすがに公道レースだけあって、プレイ・モードによってはレース前の設定により一般車両を登場
させる事が出来ます。登場する一般車は、乗用車、乗用車型トラック、2トン程度のパネル・トラッ
クから何と大型バスに至るまでが出てきます。

 これら一般車の中では特にバスが厄介で、ハイ・スピードで走っているところで突然出てこられる
と避けるのが難しいのに、まともに衝突すると、まず間違いなくこちらが動けなくなってしまいます。

 また、いまいましい事に、一般車が路上で立ち往生している時があり、避け切れずに衝突してしま
う事もしばしばです。


■マシン解説/メーカーの歴史/コース紹介

 各マシンの解説やメーカーの歴史、コースなどを紹介するコーナーがあり、解説には、なんと声優
の古谷徹さんがアフレコを行っています。

 特にマシンの解説などは、もうほとんどTV番組の『カー・グラフィックTV』状 態です。


■個人的なゲームの感想

 かつての "スーパー・カー・ブーム" にしっかりとハマッた経験を持つ私は、「スーパー・カー8
車種に乗れる」と言うパッケージの宣伝文句を見て、思わず本ゲームを買ってしまいました。

 プレイしてみた印象では、ドライブ・フィーリングに関しては、さすがに『グラン・ツーリスモ』
並みとはいかず、各マシンの特性はいちおうゲーム中に反映されているものの、スーパー・カーに乗
っていると言う実感はそれほど感じられませんでした。

 しかし、コースの美しさは秀逸で、スピード感も十分にあり、市販車レース・ゲームとしては水準
レベルにあると思われました。

 本ゲームで私が好きになったのはパトカー・チェイス・モードでのパトカーとのバトル。それに細
部までこだわって創られているコースの景観やコース脇の建物、動くオブジェクトなどが気に入って
しまいました。

 このように、レースそのものとは余り関係がないところまでこだわっているところは、いかにも欧
米のゲームを感じさせてくれました。