プレイステーション

爆走デコトラ伝説


 要するにデコレーションされたトラックによる公道(高速道路)マッチレースを扱ったゲームです。

 私はかつて、菅原文太さんが主演していた映画『トラック野郎一番星』シリーズにハマっていた頃
がありましたが、本ゲームは、まさに一番星の世界をゲーム化したものと言えるでしょう。


■基本ルール

 ゲームの全モードを通じての基本的な勝利条件は下記の通りです。

 1.競争相手のトラックより先に目的地に着かなければ負け。

 2.制限時間内に目的地に着かなければゲーム・オーバー。

 3.五分割されている荷物がすべて破損するとゲーム・オーバー。

 プレーヤーは、まず "素" のトラックを手に入れ、荷物を運びながら全国の名だたるトラッカー達
と次々と勝負し、それで得たバトル・ポイント(BP)を元手にショップへ行き、自分のトラックを
飾るためのパーツ類を購入します。

 これらのパーツはあくまで "飾り" であり、トラックをチューンアップする役割は果たさないので、
いくら飾り立てようともトラックの基本性能は変わりません。(逆に、見た目はいかに空力が悪そう
な飾りを付けてもトラックの走行性能が落ちる事はありません)

 ただし、ゲーム途中において、ショップのおやじの "好意" により、3回のチューンアップを "無
償で" 受ける事が出来ますが、これはプレイヤーの意志で受けられるものではなく、各トラッカーと
戦って行く中で適当な時期にショップのおやじからチューンアップを申し出て来ます。

 このチューンアップはエンジン・パワーに関する事のみで、詳しくは「トラック」の項を参照して
下さい。

 トラックのハンドリングは、コントローラーのアナログ・スティックを使用する、従来のレース・
ゲームと同様の自由なコース取りが出来るフリー・ハンドル(ゲーム中ではカスタム・ハンドルと呼
ぶ)と、十字キーの左右ボタンのみを使用して走行車線を選ぶだけのユニークなシングル・ハンドル
の2種類が用意されています。

 いちばんプレイし易いチェイス・ビューで見ると本ゲームのコースは狭く感じられ、フリー・ハン
ドルでのコントロールはなかなか難しかったので、個人的には主にシングル・ハンドルでプレイしま
した。

 勝負の舞台となるのは全国各地にある高速道路/自動車道であり、もちろん多くの一般車両(乗用
車)が走っていますが、何と、この一般車両にいくらぶつけようとお咎めは一切なしで、しかもプレ
イヤーが乗っているトラックが損傷する事もありません。

 ただし、一般車両と衝突(特に追突)すると走行速度が落ちてしまうので、やたらぶつけまくって
いると制限時間をオーバーするハメになりますし、荷物を損傷させる原因にもなります。

 凶悪な戦術として、わざと一般車両にぶつけてふらつかせ、後ろから追いかけてくる相手のトラッ
クに衝突させる手なんかもあります。

 一般車両は可能な限り避けて走るのがベストですが、時には一般車両が両車線を塞いでいたりする
場合があります。

 これに対処する方法には下記のふたつがあります。

 1.クラクションを鳴らしまくる。
   →100%ではありませんが、驚いた一般車両が慌てて速度を上げます。

 2.スピーカーで怒鳴りつける。
   →「じゃまだじゃまだ!」、「どかんかいボケ!」など、16種類の怒鳴りつけ文句が用意され
    ており、怒鳴ると一般車両が車線を譲る事があります。

 勝負は、相手のトラックを追い抜き、抜き返そうとする相手のトラックをひたすらブロックしなが
ら先にゴール・インするといった戦いになります。

 「ふつう」レベルの中盤以降になると、ほとんどの敵トラックの方が速度で優っているため、プレ
イヤーが追い抜けるチャンスは少なくなるため、いったん前に出たら必死でブロックしまくらなけれ
ばならなくなります。


■トラック

 「全国制覇」および「日本縦断物語」モードでは、プレイヤーは自分でデコレートしたトラックに
乗る事になります。

 プレイヤーが最初に手に入れられる "素" のトラックは下記の5車種が用意されています。

車 種クラス低速域中速域高速域
ファイト4トン××
ソルジャー4トン××
タイソン4トン××
コンドル4トン××
フォーク4トン××
 
 各トラックには、「低速域」、「中速域」、「高速域」のエンジン・パワー特性域が設定されてお
り、140kmまで表示のあるスピード・メーターからして0〜140kmまでを三分割してそれぞれの速度帯
域でのエンジン・パワーを表しているようです。

 ショップでエンジンのチューンアップ(ただし任意には行えない)を受ける際は、どの速度域を強
化するかと言った選択をする事になります。

 私がプレイした感触では、それぞれの速度域の使用頻度は下記の通りです。

 低速域=ゲームでは、スタートもフライング・スタート方式を採用しているためレース中にはほと
     んど停止する事がないので、あまり強化する必要はないように思われました。

 中速域=全国制覇も終盤になると敵トラックとのエンジン・パワーの差は顕著なものとなり、いっ
     たん振り切られてしまうと運良く敵トラックが一般車にでも引っかからない限り追いつく
     事は難しくなってしまいます。そこで、終盤に入るとスタートと同時に敵トラックのスリ
     ップ・ストリームに飛び込んでひたすらついていく事になるのですが、中速域を強化して
     おかないと、スタート時にスリップ・ストリームに入る前に置いてけぼりを食うハメにな
     ります。また、レース途中に敵トラックとぶつけ合いのバトルを演じている際に一般車と
     絡んだりして速度が落ちてしまうと、中速域を強化していなければ再加速の際に敵トラッ
     クに置いて行かれる事になります。中速域は、ゲーム中盤以降は強化しておきたいところ
     です。

 高速域=読んで字の如し、トップ・スピード近辺のエンジン・パワーを意味します。トップ・スピ
     ード近辺で走っている時に軽い接触で速度が若干落ちても、高速域を強化していれば直ち
     にトップ・スピードへと戻る事が出来ます。終盤の敵トラックと戦うには二段階の強化が
     必要不可欠な速度域ですが、のっけからこればかりを強化すると、敵トラックが速度面で
     プレイヤーのトラックより同等以下である序盤から中盤にかけては先行逃げ切りが可能と
     なりますが、中盤以降はスタート時の加速でスピードが乗る前に置いてけぼりを食うハメ
     になってしまいます。


■荷 物

種 別品 名
重量物木材、大理石、鉄板
生もの魚、カニ、いも、トマト、とうきび
割れ物ビール
その他家具、書物、廃材
 
 荷物の種類は、走行毎にランダムに決められるようです。荷物による走行への影響としては、重量
物だと慣性のためコーナーでアウト側に振られてしまいますし、割れ物だとぶつけ合いをするとすぐ
に壊れてしまうと言った具合です。

 家具や書物、廃材などは比較的衝撃に強く、荷物に余り気を使う事なくぶつけ合いを出来ますが、
それでもいちおう破損する事があります。

 走行画面では、荷物の状態は、5等分されて画面右下にインディケータの形で表示されます。激し
いぶつけ合をすると荷物は破損し、このインディケータの表示がひとつずつ減っていきます。

 目的地へ到着する前にすべての荷物が破損すると、そのプレイはゲーム・オーバーになってしまい
ます。


■ショップ

 アート・トラックの世界ではペイント師として有名な実在の人物である関口操氏が店主として登場
するデコレーション・パーツ・ショップです。

 プレイヤーは勝負で得たバトル・ポイント(BP)を払って下記のリストにあるパーツ類を購入し
ます。

 デコレーション・パーツを装備すると「注目度」が上がります。パーツは価格によってピンからキ
リまで種類があり、この「注目度」は、パーツの価格に応じて高くなっていきます。

パーツ種類パーツ種類
フロント・デッキ17アルミ・ホイール
フロント・バイザー13電飾右8色
フロント・バンパー20電飾左8色
リア・バンパー12電飾上8色
サイド・バンパー10ミラー・ステージ
ペイント右20ハシゴ
ペイント左20マフラー
ペイント上30ホーン
ペイント後29ハンドル
ロケットボイス16
 
 上記のパーツは、あくまで "飾り" であり、マフラーやアルミ・ホイールも含めてトラックの性能
をアップさせるような品物はありません。

 また、上記の内、ハンドル・タイプとボイス(運転中にスピーカーでわめく "メッセージ")の変更
だけは自由になっておりBPは不要です。

 ちなみに、ボイスには下記の種類があります。

男の声女の声
どきやがれ!どきやがれ!
じゃまだじゃまだ!じゃまだじゃまだ!
どかんかいボケ!どかんかボケ!
なにやってんだタコ!なにやってんだタコ!
じゃまなんだよ!じゃまなんだよ!
どこ走ってんだ!どこ走ってんだ!
殺されたいんか!殺されたいんか!
どいてぇ〜ん
どいてってば!
 
 ショップでは、トラックのエンジン・チューンアップも受ける事が出来るのですが、「基本ルール」
の項で述べた通り、これはプレイヤーの任意で受けられるものではありません。

 "素" のトラックで「全国制覇」モードを始め、次々と勝負して行くと、相手とするトラックは、
徐々に性能が高い車が登場して来ます。

 そして当然の成り行きとして "素" のトラックでは性能的に太刀打ち出来なくなる時が来てしまい、
やがてはスタートの時点でいきなり振り切られ、いかにテクニックを駆使しようとも、そのままゴー
ルまで相手のトラックを視界にすら収められなくなるなどと言った事態がやって来ます。

 そんな時にショップを訪れると、"ショップのおやじ" こと関口店長が、「どうした? 浮かねぇ顔
をして」と尋ねてきてくれます。

 そこでプレイヤーが自分のトラックに限界を感じる旨を打ち明けると、関口店長が整備工場とチュ
ーンアップの段取りをつけてくれると言った具合です。

 この時、プレイヤーは、「低速域」、「中速域」、「高速域」のいずれを強化するかの選択が出来
るようになっています。

 このチューンアップは、ゲーム中に3回まで受けられるようになっていますが、都合、2回目以降
のチューンも、その "時期" が来るまでは受ける事は出来ません。

 詳しくは確認出来ていないのですが、この "時期" とは、一定数のトラッカーを破った時に訪れる
ようであり、単に勝てないと言うだけではチューンは受けられず、この一定数のトラッカーを破ると
ころまでは自力でガンバるしかないようです。


■プレイ・モード

◆全国制覇

 本ゲームのメインと言えるモードです。プレイヤーは、まず5車種ある "素" のトラックの中から
1車種を選んで購入します。この時、プレイヤーの名前と、自分のトラックに付ける名前も入力する
事が出来ます。

 そして荷物を積み込むと、8つの主要高速道路/自動車道の描かれている全国地図から走行ルート
と、そのルートをフランチャイズとしており、マッチレース勝負の相手となるトラッカーを選びます。

 この時、全てのトラッカーを選べる分けではなく、中には「俺とやりたきゃもっと腕を磨きな」と
か「いま忙しいんだ!」とか言って勝負を断るトラッカーもいるので、否応なしに勝負してくれるト
ラッカーとそのトラッカーがフランチャイズとするルートを選んで走る事になります。

 相手とルートが決まると勝負が始まります。基本ルールの条件をすべて満足すれば勝ちとなり、B
Pを得る事が出来ます。

 ただし、運んでいる荷物が損傷を受けて減ったりすると、その賠償のために減った荷物の量に応じ
てBPが減額される事になりますが、たとえ5分の1でも無事な荷物が残っていれば勝負は有効と認
められます。

 全国制覇では、九州自動車道、中国自動車道、名神高速、東名高速、中央自動車道、関越自動車道、
東北自動車道をそれぞれフランチャイズとする合計21人のトラッカー達と戦い、全員に勝てば最後に
北海道の道央自動車道をフランチャイズとする、ゲーム中における現役日本一トラッカーである "二
代目一番星" こと文次郎との勝負となり、これに勝利すれば、晴れて "日本一トラッカー" の称号を
得て「日本縦断物語」モードのプレイが可能になります。

 ちなみに、ライバルとなるトラッカーは下記の通りです。

クラス名 前性別トラック名トラック車種低速域中速域高速域フランチャイズ
先鋒田 中田中工業4トン平ボディ×九州自動車道
宏次郎美青年4トン×中国自動車道
鈴 木華美姫4トン・ダンプ名神高速
疾風丸10トン・ダンプ×中央自動車道
東海号4トン××東名高速
石 井石井建設4トン×関越自動車道
上 野飛翔丸2トン×東北自動車道
中堅弁慶号4トン×九州自動車道
力 也鬼神山4トン平ボディ×中国自動車道
岩 下花吹雪4トン名神高速
山 城荒武者10トン・ダンプ×中央自動車道
萩 原駿河丸4トン東名高速
佳 子夢見嬢4トン関越自動車道
静 香月の娘4トン東北自動車道
大将新太郎歌舞伎丸4トン九州自動車道
夜叉丸4トン平ボディ中国自動車道
辰 夫苦尚丸4トン名神高速
松 方猛虎丸10トン・ダンプ中央自動車道
小 林石松丸4トン×東名高速
大 倉雷神丸11トン×関越自動車道
美奈丸4トン東北自動車道
日本一文次郎一番星11トン道央自動車道
 
◆男の華道/北国夢追街道

 「全国制覇」モードでは、ゲーム中における現役日本一トラッカーである "二代目一番星" として
登場する文次郎の恋物語で、ここではプレイヤーは文次郎を演じる事になります。

 食事のため、とあるパーキングに立ち寄った文次郎は、そこに居合わせた女性に一目惚れしてしま
い、彼女を追いかけて北海道の旭川までトラックを走らせる事になります。

 このモードでは、プレイヤーは行きがかり上、多数のパトカーとバトルを演じる場面があったりし
ます。

◆男の華道/燃えよ炎の舞

 「全国制覇」モードでは、プレイヤーの敵トラッカーとして登場した大倉が主人公の小ストーリー
で、ここではプレイヤーは大倉を演じる事になります。

 休憩のため、とあるパーキングに立ち寄った大倉は、麻薬の密売人を追跡中の婦人警官に協力を求
められ、トラックで麻薬密売人を追いかける事になります。

 しかし、婦人警官の逮捕に協力した事により、大倉は犯罪組織の報復のターゲットにされてしまい
ます。

 このモードでは、プレイヤーは犯罪組織のトラックや乗用車とバトルを演じる事になります。

◆男の華道/日本縦断物語

 「全国制覇」モードで日本一となったらプレイできるようになるモードです。日本一の称号を得た
プレイヤーとそのトラックは、大手運送会社である金丸運送に臨時に雇われる事になります。

 このモードでは、プレイヤーには、かつて旅に出る前に日本一になったら結婚すると約束をしてい
たフィアンセが北海道にいる事になっており、金丸運送の仕事(と、ライバル・トラッカーたちとの
バトル)をこなしつつ、北海道へと向かいます。

 その過程で出会う魅力的な女性達と、未だに自分を待ってくれているのか分からないフィアンセの
どちらを選ぶかをプレイヤーが決める、一種のRPGになっています。

◆頂上戦争

 要するにタイム・トライアルです。コースは従来の8高速/自動車道路で、コースを選んでタイム
・アタックを行います。

 このモードでは、自分のトラック以外にも全国制覇で負かしたトラッカーたちのトラックにも乗る
事が出来ます。


■オリジナル・ペイント

 Windows95の『ペイント』並みとはいきませんが、ドット単位で描ける描画ツールが付属しており、
トラックの側面を飾るペイントのオリジナル・デザインを創る事が出来ます。

 デザインした絵は、ショップで自分のトラックに描くことが出来ます。


■BGM

 全曲、いかにもトラックの走りを盛り上げる趣のバリバリの演歌です。高速/自動車道路毎にテー
マとなる曲がかかります。やっぱトラックには演歌がよく似合います。

 何と6人もの歌手が歌う9曲の演歌が挿入曲として入っています。ちょっとしたアルバム並みと言
えるでしょう。

歌 手挿 入 曲
北岡ひろし男一匹夢街道、人生博徒、かささぎ橋
安藤ひろ子お七、夢桜
坂田真由美別れ道、未練酒
泉敦子&山口孝美心変わり
秋山さゆり花恋歌


■個人的なゲームの感想

 今日まで私がこなしたゲームの数は決して多いとは言えませんが、それでもアーケードの『スペー
ス・インベーダー』から始まり、ブロック崩しやホッケー、左右にかわすだけのレースなどの単調な
ゲームが内蔵された、いわゆる初期のTVゲーム機、ボードSLG、旧ファミコン、パソコン、"スー
・ファミ"、そしてプレイステーションに至るまで、そこそこ "薄く広く" ゲームをプレイして来ま
した。

 中には興奮するゲームもけっこうありましたが、ひとりでプレイしていて声を出して笑ってしまっ
たのは、たぶんデコトラが初めてだと思います。

 トップ・スピードにおいて優る競争相手のトラックを何とかかわして前に出て、雨あられと迫り来
る一般車の間をすり抜けていると、後方で相手のトラックが車線を塞ぐ一般車と衝突して後退しなが
らわめき散らしているのが聞こえて来ます。

 相手のトラックがいったん後方に見えなくなっても、しばらくすると凄まじいスピードで追い上げ
て来るのですが、画面の下の方に入って来た途端に、またしても一般車と衝突してしまい、ホーンを
鳴らし、わめき散らしながら再びズルズルと後退して行く様を見た時には、おもわず声を出して笑っ
てしまいました。(^^;

 本ゲームは、単に相手のトラックを追い抜いて、あとはひたすらブロックしまくると言った単調な
内容ですが、荷物をぜんぶ壊してしまわないようにぶつけるサジ加減を考えなければならないのと、
トップ・スピードにおいて同等以上の速さを持つ競争相手をいかにオーバー・テイクするかにテクニ
ックと頭脳を要求される独特のゲームと言えます。

 個人的には非常に楽しめたのですが、周囲の人間に聞いてみると、「ハマった」と言う者と、「面
白くない」と言う者が半々と言うところでした。

 好き嫌いが極端に分かれているところからも、特異なゲームと言えるのかも知れませんね・・・。