トム・クランシー&スティーブ・ピチェニック


◆『ノドン強奪』(新潮社・781円)

 個人的ハマリ度:A(AA、A、B、Cの4ランク評価)

  "オプ・センター"・シリーズ第一弾。韓国のソウルで開かれていた南北統一主義者たちの集会で
爆弾テロが発生し、北朝鮮が関与したと見られる痕跡が発見された。オプ・センター長官のフッドは、
この爆弾テロを北朝鮮の仕業に見せかけた何者かの謀略ではないかと疑ったが、その直後、アメリカ
の偵察衛星が北朝鮮軍の大規模な部隊が非武装地帯へ向けて移動しているのを捉え、韓国、アメリカ
両政府は軍の警戒態勢レベル引き揚げを決定した。そのさ中、アメリカ軍の偵察機が北朝鮮軍戦闘機
によって撃墜される事件が発生してしまった。

【コメント】
  トム・クランシーとスティーブ・ピチェニックの共著による "オプ・センター"・シリーズの第
 一弾で、ジャック・ライアン・シリーズの世界とはまったく無関係の作品です。オプ・センターと
 は、アメリカ政府内に秘密裏に開設された情報機関(ただし実在しません)であり、CIAやNS
 A(国家安全保障局)、NRO(国家偵察局)などからの情報収集や分析、秘密保全、各国情報機
 関との調整などを行う一種の危機管理センター的存在の少数精鋭組織です。作品としては、政治的
 駆け引きの部分では、得意の "クランシー節" が見受けられず、やや稚拙さが見られたところから
 して、クランシーは軍事的部分を担当したのではないかと思われます。ともあれ、作中のオプ・セ
 ンターのスタッフの面々は、単に上司からの指示と言うだけでは素直に聞き入れないタフガイ揃い
 のプロ集団であり、今後の作品が楽しみです。