ティモシー・リッツ


◆『炎の鷲』(二見文庫、上・下巻各790円)

  個人的ハマリ度:A(AA、A、B、Cの4ランク評価)

 北朝鮮において権力の座を狙っていた参謀総長ミョン・チンは、軍の大部分の支持を受けているハ
ン・シンチョン大将が己が野望の妨げになると考え、策謀を巡らせてハンを退役へと追い込もうとし
ていた。イランと秘密協定を結び北朝鮮の核武装を狙うミョン・チンの台頭は国家に後退をもたらす
と判断したハンはクーデターを決意し、韓国およびアメリカに対しクーデターに干渉しないよう要請
すべく中国を介して秘密裏に接触した。中国の仲介により、ハンは韓国、アメリカの代表と中国領ラ
ンガウ島で会合する事になったが、この不穏な動きを察知したミョン・チンは、子飼いの特殊部隊を
動員してハンを両国代表もろとも抹殺しようとしていた。

 【コメント】
  政治的駆け引きや情報戦に関する描写がなかなか良く描けていたと思います。軍事面では、空戦
  場面の描写、特に空対空ミサイル戦の場面の書き方が独特でした。私もこれまでに空戦シーンが
  登場する小説を数多く読んできましたが、本作のようにあっさりとした、それでいてリアリティ
  を感じさせるミサイル戦の書き方は見た事がありませんでした。本作では大規模な戦闘シーンは
  なかったものの、このカテゴリーの小説としては良く出来た作品だと思いました。