緊張高まる東西ドイツ国境で、バノン大尉率いる米陸軍のチーム・ヤンキー(チーム=必要に応
じて編成される中隊規模の混成部隊。チーム・ヤンキーは戦車主体)は、二次防御線部隊として
最前線の後方で待機していた。チームの誰しもが戦争など起こりはしないと信じつつ日課をこな
していたが、突如、沸き起こった数千門の重砲の轟がその願いを粉々に打ち砕いた。ソ連の戦車
軍団は国境を突破し、バノンの前面に展開する米機甲師団の前線に殺到した。機甲師団は善戦し、
ソ連軍の先鋒軍団を粉砕したが、次から次へと波のように押し寄せるソ連機械化部隊の物量の前
に圧倒され、ついに撤退を始めた。バノンのチームが布陣する丘陵の前を撤退して行く米軍車両
が途切れた時、いよいよバノン達自身の戦いが始まった。
【コメント】
近代の陸上戦を戦車中隊長の視点から描いた作品であり、理不尽な命令と戦闘の恐怖の間で苦
悩する中隊長の姿が実によく表現されていました。特に戦闘シーンの描写は、現代における実
際の戦闘はこのようなものだろうと言う雰囲気がよく伝わって来ました。私が読んだ中でも最
高の小説のひとつです。
ソ連軍がイランに侵攻した。当初、ソ連軍はイラン北部の峻険な地形とイラン軍の巧みな防御に
より進撃を遅滞させられたものの、平野部に出て来たソ連軍機動軍団を阻むだけの戦力はイラン
軍には無かった。アメリカは直ちにこれに反応し、緊急展開軍のイラン派遣を決定したが、外交
関係の悪化していたイラン政府から協力を拒否されたばかりか、一歩でもイランに足を踏み入れ
た場合は敵対行動と見なすとの通告を受けた。だが、今や戦況はイランにとって絶望的となりつ
つあり、ソ連軍の勝利は目前に迫っていた。アメリカ政府は、やむを得ずイランへの侵攻を決意
し、イラン軍守備隊を排除して海岸地帯に拠点を確保した。その頃、ソ連軍は進路に立ち塞がる
イラン軍をほぼ掃討し、海岸地帯へと迫りつつあった。ほどなく、米ソ両軍の直接戦闘が始まろ
うとしていた。
【コメント】
米ソの通常兵力のパワー・バランスが崩れていたら、あながちあり得そうなストーリーでした。
私が本作品で最も好きなのはアメリカ緊急展開軍が長駆イランに展開していく課程であり、バ
タバタする様がよく描かれていました。コイルの十八番である戦闘の描写については折り紙付
きです。
エジプト、アメリカ両大統領の拝謁の元、米緊急展開軍の即応展開能力のテストを兼ねた、エジ
プト、アメリカ軍の合同演習である "ブライト・スター" 作戦が開始された。これに対抗し、ア
フリカに駐屯するソ連軍とキューバ軍も部隊をリビアへ集結させたが、米ソ両軍とも特に面倒が
起こるとは考えていなかった。だが、エジプト、アメリカ大統領が一同に会するのを好機と見た
リビアNo2の実力者であるナフィシ大佐は、密かに演習会場に大統領暗殺チームを送り込んだ。
暗殺は寸でのところで失敗に終わったが、エジプトは報復攻撃を決意し、リビアに侵攻した。破
竹の勢いで進撃するエジプト軍に対し、リビア軍はソ連軍がやったように見せかけて神経ガスを
使用し、エジプト軍先鋒部隊を壊滅させた。ついに米ソ両軍は戦闘に引き込まれてしまい、戦い
は拡大を始めた。
【コメント】
『武力対決』の後年を書いたもので、イランでの戦闘後、米ソ両国は未だに緊張状態にあり、
前作に続いて登場する人物もいます。米ソ両国軍も登場しますが、本作での戦闘の主役はエジ
プト軍とリビア軍です。私にとってリビア軍はベールに包まれた軍隊だったのですが、本作品
でその一端をかいま見る事が出来ました。