時代はベトナム戦争。米海軍大尉ジェイク・グラフトンは、A−6『イントルーダー』を駆って
連日、爆撃任務に出撃していた。政治的配慮から決定される無意味な目標の爆撃、ハノイの爆撃
禁止などのジレンマに陥っていたジェイクは、ある日の出撃で相棒の爆撃手を失い、続く出撃で
同僚のA−6が撃墜された事をきっかけに北ベトナムへの個人的な復讐を画策し始める。
【コメント】
ベトナムに行ったほとんどの米軍将兵は政治的配慮から多くの無意味な戦いを強いられていた。
この作品は、艦載攻撃機パイロットの視点からベトナム戦争を描いたもので、連日、地対空ミ
サイルと対空機関砲の防御砲火の恐怖にさらさせながら無価値の目標を爆撃させられるパイロ
ット達の苦悩がよく感じられました。
アメリカ海軍のジェイク・グラフトン大佐は、先の地中海における任務で負った重傷から来る精
神的ショックから立ち直れず、自宅で惚けたような生活を送っていた。そんな折り、アメリカ海
軍の次期艦載攻撃機選定プロジェクトのプログラム・マネージャーを務めていた大佐が何者かに
よって殺害された。国防総省は、後任として政府や議会において英雄として名を知られているジ
ェイクを指名した。新たな任務を得て再び軍務に戻る決意をしたジェイクだったが、先任の大佐
が死んだ原因に疑問を抱き、それを調べている内に "ミノタウロス" と言うコード・ネームの謎
の人物がソ連の諜報員に軍事機密情報をリークしている事を突き止めた。
【コメント】
ジェイク・グラフトン・シリーズの第3作(ちなみに、第2作の『ファイナル・フライト』は
日本未発売)。『デビル500応答せず』が戦争アクション小説だったので、本作もその路線
を行くのかと思いきや、こちらはトム・クランシーばりのスパイ小説でした。個人的な感想と
しては、クランシーのジャック・ライアン・シリーズにおいて最高作と思っている『愛国者の
ゲーム』に匹敵する、すばらしい出来栄えの作品でした。
コロンビアの麻薬組織メデジン・カルテルのボスが逮捕され、裁判のためアメリカへと送致され
る事になった。カルテルの復讐によるテロを恐れ、アメリカの各都市は地元で裁判を行う事に難
色を示したが、大統領はアメリカが裁判を拒否するのはカルテルに対する敗北を認める事になる
とし、国内での裁判を決意した。これに対し、カルテルはひとりのヒット・マンを雇った。依頼
内容は、合衆国大統領を含む5人の政府要人の暗殺と言った途方もないものだったが、最高のハ
ンティングを望んでいたヒット・マンはこの依頼を受諾。かつてのオズワルドを遥かに越える暗
殺が始まろうとしていた。
【コメント】
ジェイク・グラフトン・シリーズの第4作。近年、警備が強化されたせいもあってアメリカ大
統領暗殺はかなり困難となっていますが、本作品のやり方ならば、あながち不可能ではないと
思いました。
アメリカ国防情報局副長官に就任していたジェイク・グラフトン少将の元に、かつて作戦を共
にしたモサドの諜報員からCIAがイギリス在住のユダヤ人出版王を暗殺したとの怪情報がも
たらされた。情報を伝えた諜報員の真意を計りかねつつ、ジェイクは、緊急の問題となってい
る崩壊したソ連が保有していた核弾頭が闇市場で取引されているとの情報を調査するため、ロ
シアの核兵器廃棄作業を視察する西側代表団のひとりとしてロシアへ乗り込んだ。そこでは、
ロシアの覇権を狙う高官たちとCIAが暗躍し、ジェイクの身にも危険が迫って来た。
【コメント】
ジェイク・グラフトン・シリーズの第5作。通常、この手の作品は、善玉と悪玉の両方の行動
について描写するものですが、本作では悪玉側の行動は秘匿されており、読者にも先が読みに
くい作風となっていました。なんと言っても、本作におけるジェイクの最大の敵が身内である
CIAと言うところが見ものです。
ベトナム戦争が終結し、かの地から帰還したジェイクは、アメリカ本国の補充部隊第128攻撃飛
行隊で飛行教官を務めていたが、休暇中に立ち寄ったバーでベトナム帰還兵を中傷した民間人
を殴ってしまい、懲罰の代わりとして空母『コロンビア』搭載の海兵隊航空部隊に教導パイロ
ットとして送り込まれるはめになった。空母の発着艦経験の無い海兵航空隊の面々相手に、ジ
ェイクは8ヶ月の訓練航海へと出発した。
【コメント】
ジェイク・グラフトン・シリーズの第6作・・・、ですが、時系列で言うと、第1作『デビル
500』と第2作『ファイナル・フライト』(邦訳版未発売)の間に当たる物語となっていま
した。本作では、第1作のような戦闘シーンは無いものの、空母における攻撃機パイロットた
ちの危険と隣り合わせの訓練の様子が実によく描写されていました。その辺は、実際にA−6
のパイロットとしてベトナム従軍経験のあるクーンツならでは臨場感と言えるでしょう。また
本作では、ジェイクと妻のキャリーとのなれそめも描かれていました。