ラリー・ボンド


◆『侵攻作戦レッド・フェニックス』(文春文庫・上、下巻各660円)

  個人的ハマリ度:A(AA、A、B、Cの4ランク評価)

  朝鮮半島、38度線にある非武装地帯で北朝鮮が掘ったと思われる大トンネルが発見された。ト
  ンネルの中には、おびだだしい数の戦車やトラックが隠されており、韓国軍は北朝鮮軍の攻勢が
  始まる前触れだと警報を発したが、クリスマス未明、北朝鮮軍は作戦 "レッド・フェニックス"
  を発動し、大部隊が国境を越えた。破竹の進撃を続ける北朝鮮軍の前に米韓連合軍は守勢に立た
  され、今やソウルは包囲の危機に陥っていた。

  【コメント】
   すでに本が行方不明になった上に読んだのも遠い昔の事なので、詳しいストーリーは忘れてし
   まったんですが、のっけの北朝鮮のトンネル発見のシチュエーションに驚かされたのは今でも
   よく憶えている作品です。


◆『核弾頭ヴォーテックス』(文春文庫・上、下巻各750円)

  個人的ハマリ度:A(AA、A、B、Cの4ランク評価)

  南アフリカ共和国において、平等な選挙権をめぐり白人と黒人の対立が爆発寸前となっていた時、
  南ア政府の敵対勢力であるアフリカ民族会議(ANC)の "敗れた盟約" 作戦が発動され、南ア
  政府に打撃を与えた。激怒した時の南ア大統領であるフォルステルは、ANCの出動拠点を提供
  していた隣国のナミビアに懲罰を与えるべく、軍事侵攻を開始した。これを見たキューバは、南
  アの暴挙に対し軍事介入を決定し、南アフリカへの攻撃を開始した。

  【コメント】
   舞台となる国もしかり、悪玉にされる国もしかり、戦術核弾頭の登場もしかりと、意外には不
   自由しない作品でした。この手の作品の大部分がそうですが、アメリカ軍が実にカッコ良かっ
   たです。


◆『テロリストの半月刀』(文春文庫・上、下巻各550円)

  個人的ハマリ度:A(AA、A、B、Cの4ランク評価)

  アメリカと対立関係にあったイランが支援しているテロリスト組織ヒズボラが、サンフランシス
  コのゴールデンゲート・ブリッジ上でタンクローリーを爆発させるテロを実行し多数の死傷者が
  出た。アメリカ政府はこれをイランの差し金と断定し、潜水艦発射のトマホーク・ミサイルでイ
  ランに報復攻撃を加えた。この攻撃により、イラン政府の反アメリカ主義幹部の多くが倒れた機
  会を利用し、イラン軍参謀総長アミール・ターレはイランの実権をほぼ掌握し、親アメリカ主義
  を唱え、その証しとして配下の特殊部隊を使い、国内にあったテロリストの訓練キャンプを壊滅
  させた。アメリカ政府はターレを信用し、イランとの国交回復を進めるが、その頃、アメリカ国
  内では、何者かによる大規模なテロ攻撃が始まりつつあった。

  【コメント】
   本格的戦争ものを得意とするラリー・ボンドが、始めてテロリズムを扱った作品でした。物語
   の導入部における政治的駆け引きでは少々拙速さが見られ、クランシーの『愛国者のゲーム』
   のような奥深さはありませんでしたが、その代わりボンドが得意とする軍事的味付けがなされ
   ており、全体的な出来栄えはなかなかのものでした。