サブ・タイトル "彼らはベトナムへ行った"。アメリカ陸軍士官学校(ウェスト・ポイント)卒
業クラスの中で、ベトナム戦争で最も死傷者が多数出た1966年卒業クラス生たちの入学から卒業
までのエピソードを中心にウェスト・ポイントの歴史、ウェスト・ポイント卒業生から見たベト
ナム戦争を描いたノン・フィクション作品。
【コメント】
序盤はウェスト・ポイントにおける士官候補生たちの生活風景で、厳しい訓練生活の中に私が
好んでいる軍隊特有の大仰な言い回しがふんだんに登場し、楽しませてくれました。中盤はベ
トナム戦争であり、ウェスト・ポイントを卒業して任官し、北ベトナム軍とまともに当たる最
前線に配属された66年クラス卒業生たちの戦いぶりで、序盤で馴染みとなった人物たちが次々
と戦死して行く様には、戦争の現実を思い知らされました。終盤は復員後の66年クラス卒業生
たちの生活風景で、アメリカの世論とウェスト・ポインターとしての尊厳の間で苦悩する彼ら
の姿は非常に悲しく感じられました。ベトナム戦争を描いた作品は何作か読みましたが、戦闘
シーンの描写より思想面に重きを置いた本作では、祖国のためと信じて戦った軍人たちが、そ
の祖国の国民たちによって逆に虐げられてしまう様が他の作品より強く感じられ、やりきれな
い思いでした。