レフ・ニコライヴィッチ・トルストイ

 1828年〜1910年。言わずと知れたロシア文学の巨匠です。処女作は、自伝的作品と言われる『幼年
時代』。

 その他、代表作として、『アンナ・カレーニナ』、『戦争と平和』、『人生論』、『復活』などを
執筆。


タイトル人生論
出版社新潮文庫
コードISBN4-10-206017-0
定 価400円
コメント トルストイが1886年暮れから1887年8月までかけて執筆した論文です。タイトルは
『人生論』となっていますが、読んでみた感想では、『生命と愛』と言ったタイトル
の方が、しっくり来るような気がします。本作の中でトルストイは、まず「人間の生
命」について語り始め、最後には、「人間の真の愛」で結んでいます。こう書くと、
そんじょそこらのエッセイ的な書物と大差ない内容に思えてしまうかも知れません
が、そこはトルストイです。本文では、人間が持つ本能の事を「動物的個我」、人間
の生命の事を「幸福への志向のため、動物的個我を理性的な意識に従属させる事」と
言った具合に表記されており、難解な事、この上ありません。本書を一度読んだ段階
では、トルストイの言わんとする事のガイドラインはおぼろげながら把握できたので
すが、さらに内容を理解するには部分的に読み直さなければなりませんでしたし、そ
うした今でも、内容を完璧に消化する事は出来ていません。本書でトルストイが語っ
ている事を私なりに解釈すると、「人の生命とは、人が持つ動物的本能を理性でコン
トロールしながら幸福を追い求める事である」、それに「真の愛とは、自愛ではな
く、全体愛の事である」のふたつです。本書を読んだ限りでは、トルストイは、イエ
ス・キリストの教義に真の人生論を見い出しているかのように思えました。