アーサー・ショーペンハウエル

 1788年〜1860年。ドイツはダンチヒ生まれの哲学者です。私は、この人物を厭世哲学の大御所と聞
いていました。

 当初は、プラトンとカントを研究し、ゲーテとも交わりがあったそうです。その後、インド哲学を
学び、ヨーロッパのペシミズムの源流となった『意志と表象としての世界』で、ワーグナー、ニーチ
ェ、トーマス・マンらに影響を与えたそうです。

 人生は最悪の世界だとして、そこからの解脱は芸術的静観と仏教的涅槃によるべきだと考え、19世
紀の厭世的世相に大いに迎えられたそうです。


タイトル幸福について−人生論ー
出版社新潮文庫
コードISBN4-10-203301-7
定 価438円
コメント 私は、シューペンハウエルなる人物は、その名前すら知らなかったのですが、トルス
トイの『人生論』を読んだ際、その作中の注釈で「トルストイの論敵」としてその名
が挙げられていたのを見て、「こりゃひとつ読んでみるべぇ」と言う気になりまし
た。そして、まず最初に選んだのが、トルストイの『人生論』と同テーマ「らしい」
本作でした。これを読めば、両者の考え方の違いが分かると思ったからです。読んで
みた感想だと、確かにトルストイとは正反対の見解でした。「人の幸福」の定義につ
いて、トルストイが「個人的なものではなく全体的な幸せの事である」とするのに対
し、ショーペンハウエルは「個人の内面的なもの」と言った具合です。トルストイが
言わんとする事は、まさに究極の理想論であり、この世が彼の言う通りの世界になれ
ば、「争い」と言う言葉は過去のものとなるでしょう。一方、ショーペンハウエルが
本作で述べている事は、この世の現実を直視した上で世俗的な見方をしており、個人
的には「分かり易い」と感じました。私の乏しい文学知識から見ると、世ではトルス
トイの方が遥かに著名であるように見えているのですが、個人的にはショーペンハウ
エルの作品の方が身近に感じられ、共感を覚える部分が多々ありました。本作を読ん
で、ちと気になったのは、「少々、タカビーな書き方やな」と言うところです。