アーネスト・ヘミングウェイ

 1899年〜1961年。アメリカはイリノイ州オーク・パーク生まれ。'18年、第一次世界大戦に赤十字
要員として従軍して負傷。

 '21年から'28年までパリに住み、『われらの時代』、『日はまた昇る』、『男だけの世界』などを
刊行。その後、『武器よさらば』を発表。

 スペイン内戦、第二次世界大戦にも従軍記者として参加。'52年に発表した『老人と海』でピュー
リッツァ賞を受賞。'54年にノーベル文学賞を受賞。'61年に猟銃で自殺。

 第一次世界大戦後、戦争の体験によって、宗教、道徳、人間的精神も押しつぶされ、希望を失い、
絶望と虚無に陥った戦後派作家、いわゆる「ロスト・ジェネレーション」の代表的作家です。


タイトル日はまた昇る
出版社新潮文庫
コードISBN4-10-210005-9
定 価476円
コメント  第一次世界大戦に従軍した際の負傷が元で性的不能者になってしまった主人公ジェ
イクが、男友達や、淫蕩な女友達ブレット達と過ごす日常や、彼らと共にスペインの
祭礼週間での闘牛見物に行く様を描いたフィクション小説です。スパイやギャングな
どは、まったく登場せず、争いも仲間内の殴り合いのケンカ程度。主人公は、特殊部
隊上がりでも、情報部上がりでも無い、ごく平凡な人物です。これまで軍事スリラー
やスパイ小説ばかり読んで来た私にとっては、なんと言うか、ほんのりとしたストー
リーの「平和な」小説に感じられました。私は、トルストイ、シェイクスピア、オス
カー・ワイルド、ドストエフスキーと言った「重い」作品群を読んだ後で本作を読ん
だのですが、本作は著名な文学作品に挙げられてはいるものの、文面をざっと見ただ
けでは、ごく普通の非ハードボイルド作品に見え、実にサラリと読めてしまいまし
た。私は、こういったドンパチや諜報戦の無い作品は余り読んだ事が無いため、それ
ら「非軍事/スパイ」小説の中で本作が面白いかどうかを評価する事は出来ません
が、「主人公が性的不能者である」と言うところが、基本的に色恋沙汰を描いている
本作に、他の作品には無い、著名な文学作品ならではの一種独特の雰囲気を醸し出し
ていると言えるでしょう。個人的には、面白く感じた作品でした。ともかく、飲食シ
ーンがやたらと多かったのが印象的でした。