■■日本語教室日記2000&2001■■■




日本語教師ジェシー(自称)から、
気が向いた時に送られてくる
メールによる「日本語教室日記」

さてさて、どんな「教室」になるんだろうか。


    2000年08月31日[はじめまして]
    2000年10月29日[わからないってことをわかろう]

    2001年10月15日[日本語って難しいの?1]


8月31日(木)

[はじめまして]

はじめまして。

ジェシー です。

よろしく おねがいします。

冒頭の文は、日本語クラスの第一回目に登場します。
学校で習う英語が最初に会ったときのあいさつの仕方であるように、
日本語でもやっぱりそう。

さて、私の職業は日本語教師。
仕事は文字通り日本語を教えることなんだけど、
具体的にはどういうことをしてるかって言うと・・・


A「はい、これ誕生日のプレゼント。」
 「わぁ、どうも ありがとうございます。」

B「どうも ありがとうございました。
  重かったのに、ここまで運んでいただいて。」
 「いいんですよ。ついでだったんで。」

Aは ありがとうございます
Bは ありがとうございました

どうして?

英語で どちらも Thank you
中国語ではどちらも 謝謝、
スペイン語でも どちらも Gracias。

日本語には感謝の言葉に過去形があるの?


これは普通 日本語初級前半の学習内容です。
もう一つ。


きれいです の過去形は きれいでした。
でも
楽しいです の過去形は 楽しかったです。

どうして?同じ形容詞なのに 「楽しいでした」 じゃだめ?


これも初級前半の学習項目です。
と、こんなことを授業中にやってるわけです。

ここでは日本語だけじゃなく、
ほかの言語も交えた言葉のおもしろさってものを
伝えることができたらなぁと思ってます。


10月29日(日)

[わからないってことをわかろう]

こんにちは。
ジェシーです。
第1回目から随分日にちがたってしまいました。
お待たせしました。2回目です。

今日は日本語教師に大切だと思っていることをお話します。
それは、生徒が何が『わからないのか』を『わかる』ってことです。

普段私たちが意識せずに話している日本語も
生徒たちにとってはわからないことだらけです。
いったい生徒は何につまずいているんだろう。
それを理解する必要があります。
なんでわかってくれないんだろう
じゃあ教師は務まりません。
それには何が大切なのか。


1.日本語を 勉強します。
2.日本語を 勉強しません。

上の2文はとても簡単な文ですが、これが生徒の頭を悩ませます。
いったいどこが?
「ます」に対して「ません」が否定形です。
どうして、否定( 英語ならnot )に相当する言葉が
文の終わりに来るのか、生徒は最初理解できません。
文法説明を聞いてもピンと来ません。
しかも動詞が語尾変化して否定形を作っています。
否定形を作るのに日本語は動詞を活用させないとだめなんです。
(こういうことって考えたことありますか?)
学習者にとっての否定形は「ません勉強します」のほうがいいわけです。

つまり、日本語教師に必要なのは
自分の話している言語を客観視する能力です。
母国語を外側から見るいい方法があります。
それは外国語を学ぶことです。
いろんな言語と比較することによって日本語の特徴もわかってくる。
でもね、外国語が話せるからといって
いい語学教師になれるとはかぎらないんだなぁ。
なんでもかんでも訳しちゃえば(しかも直訳)いいって思ってる
日本語教師もいますし。

#あなたはどんな映画が好きですか。

これ、学生が教師に向かって言う質問にしてはおかしい。
学生同士の会話にしても変。
でも多くの日本語学校でこんなふうに教えられているんです。

Youはあなた、
Usted(スペイン語)はあなた、
ni(中国の漢字がみつからなかった)はあなた。
辞書にもそう書いてある。でも、

#先生はどんな映画が好きですか。
#リーさんはどんな映画が好きですか。

このほうがずっと自然だよね。
言葉をしっかりと観察する姿勢が大事ってこと。


10月15日(月)

[日本語って難しいの?1]

こんにちは。ごぶさたしてました。
ジェシーです。
久々の日本語教室日記!!でも、まだ3回目。


「日本語って難しいの?1」

なぜか日本人までもが言う「日本語って難しいよね。」
果たして本当に日本語は難しいんだろうか。
今回は実際の日本語の授業を通してそこんところを考えて見たい。
まったく何も日本語について知らない生徒に
日本語教師がどうやて教えて行くか
興味がある方も多いのではないかと思うので、
初級の授業から見てみようと思います。

まっさらな生徒相手の授業!
生徒は一言だって日本語を知らない状態。
学習者にとって日本語の何が難しいんだろう。


<最初の日本語>

何から教えるかって言うと、以前も書いたけどあいさつから。

「はじめまして」
「おはようございます」
「ありがとうございます」

などなど。
あいさつは言葉により様々だから、
文法的に難しいとか簡単とかあまり関係ありません。
(発音のことはまた後で書くとする)

<最初の文法>

名前に「さん」を付けることと、
職業や国に関係したいくつかの言葉を学習した後、
最初に覚える文法は名詞文。
たいていの教科書や日本語学校がこれから教えている。
なんでかっていうと簡単だから。
名詞文っていうのは文末が名詞で終わる文。

例文:リーさんは中国人です。
   ホセさんは医者です。

  「〜〜は 〜〜 です」のパターン。

実に簡単で、言葉さえ覚えればなんの問題もなくスイスイ行けます。
すぐに生徒は

「先生は日本人です。」
「わたしは学生です。」
「マドンナは歌手です。」

と作ります。
もう少し長い文にチャレンジ!助詞「の」を使って作ってみよう。

「トヨタは日本の会社です。」
「メグさんは英語の先生です。」
「中田はサッカーの選手です。」

少ない単語数で結構なバリエーションができる。

英語と比べて見よう。

I am ----------- なのに、
You are----------- なのに、
He is--------------- !!!

スペイン語、フランス語はさらにとんでもないことになる。
日本語はすべて「〜〜は 〜〜です。」の構文でOK。
(中国語と比べると、簡単とはいえないんだけど…。)

<数字>

次に教えるのは数字。
これも簡単。
日本の数字システムはとても明快。
99まであっというまに覚えてしまう。
数字をひらがなで表記してみる。

いち に さん よん ご ろく なな はち きゅう じゅう
        (し)     (しち)    (く)

10は「じゅう」だから、
20は「に」と「じゅう」で「にじゅう」
30は「さん」の部分と「じゅう」の部分で「さんじゅう」。
うーん、これのどこがどう簡単なんだわからん、
という人のために英語と比べて見よう。

one two three four five six seven eight nine ten

日本語の数のルールに従うと
10はten だから
11はten one
12はten two
20はtwo ten
35はthree ten five
11と12に関してはさておき、
日本語では20(にじゅう)と言うとき、
今までに出てきた数字2と10から作ればいいのに対し、
英語の20はtwentyという新しい単語が必要。
30、40も同じ。
日本語は十の位を言うのに新たに別の言葉を必要としないんである。
99まで言うのに1から10までの言葉の組み合わせで済んでしまう。

<ひらがな>

大変なのは文字。
「ひらがな」は物珍しさもあって乗り越えられる。
でも次に「かたかな」が出てくる。

ひらがなが終わった時点で、
「次はかたかなだよ。」
と言うと生徒たちはいっせいに嫌そうな顔をする。
でもその次に「漢字」が控えているわけで、文字習得の道は長い。
でも、中国等の漢字圏の人たちにとってはもちろん漢字は苦にならない。

今回は初級のクラスのごくごく始めの授業だけを簡単に見ただけで、
次回はもう少し進むとどうなるかを紹介したい。

そうそう、ちょっとおまけの話。
中国人はご存知の通り、ものを書くとき漢字しか使いません。
あの線の多い文字のこと中国人だって日本人同様、
漢字を忘れることがあります。
日本人の場合は「ひらがな」で代用できるけど、中国人は?
忘れたとき、彼らは同じ音の漢字を変わりに使うんだって。





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