■■徒然散歩記2003■■■


じゃらんじゃらん


     1月 1日[2003]
     2月18日[言葉]
     3月20日[戦争である。]
     4月24日[CHICAGO]
     6月 9日[欲望という名の電車]
     7月22日[「蜜の味」+「二等辺三角形」]
     7月23日[バズ・ラーマン]
     9月 5日[ラ・ジョコンダ]
    11月17日[フタリ+フタツ=芝居]
    12月 1日[不思議の国のアリス]
    12月16日[ソープオペラ]
    12月29日[金継ぎ]



1月1日(水)

[2003]

あけましておめでとうございます

「高慢で、夢みたいなことばかり言っている、クールなロマンチスト」

己が己に失望したり退屈などしている暇などない
今年を過ごせる人間でありますように。

そうして、お互い様に、
楽しく真剣で愉快な本年でありますように。




2月18日(火)

[言葉]

BS2で『「言葉」〜アイヒマンを捕らえた男』を放映している。
俳優座劇場で昨年公演された舞台だ。

深夜3時近くにテレビをつけると、その舞台が放映されていた。
つけた時、ちょうど舞台を観ていてとても印象的な場面がながれていた。

私はこの舞台を俳優座劇場で観ている。

「正義は言葉(説明)を必要とするが、悪は必要としない。
 そうだとしたら、結局勝つのは「悪」じゃないのか」

アイヒマンを捕らえた秘密工作員の若者が、若者だからこその
純粋な、純粋な正論を言っている場面だ。

勝ち負けとは なんだろう。
「勝ち組」「負け組」という区分けがある。
その言葉が使われはじめた初期、「負け組」になるのはアウトだった。
今は、どうやらそうでもないらしい。

評価を自分自身に求めることが出来る人たちが増えてきた
ということになるのだろうか。

放映が終った。
イカン今日も夜更かしだ。
宵っ張りはよくない。

「アイヒマン」が誰なのか何なのか。
自分で検索しましょう調べましょう。

イカン。
面倒くさがりになっている。




3月20日(木)

[戦争である。]

戦争である。

空爆やっている時間、私は劇場の暗闇に立っている。

世界で何があろうと、
魚屋さんは魚を売り、
営業マンは得意先を回り、
デパートの従業員はお客にモノをすすめる。

私がやっている舞台業界も、それらひとつの仕事にすぎなくて、
すぎなくて とはわかっていながらも、
「人生」やら「死ぬとは何か」やら「愛とは」なんていう、
日常でマジに展開するには恥ずかしいことやらを
日々考え尽くしている現場において、
その自負を持っている者として、
戦争がはじまったこの今を、粛々と受け止めるしかない。

数字に惑わされず、人を一人個人として
その生命に思いを重ねることが出来れば、
「大量無差別」殺人などはおきるはずもない。

その「想像力」を養う仕事を 只今はしているのだ などと、
そう言い訳がましくつぶやきながら、
私は劇場の暗闇から、砂漠に煌めく閃光を思う。




4月24日(木)

[CHICAGO]

映画『CHICAGO』に行った。

最高だ。
というわけで、もう一回観た。
(入れ替え制でなかったのだ)

映画、連続で観るのって、何年ぶりだろう。
ブラヴォー、ロブ・マーシャル!=監督(ブラヴォーってのはヘンか)

もちろん、舞台も行くさ。
(観てるんだけどね前に/何年も前だが)
もうすぐ日本にくるさ、ブロードウェイが。

ミュージカル好きで、ジャズも好きで、
ボブ・フォッシー大好きな私が、行かないわけがなかろう!

たくましい。
なんて、たくましい奴らだ!!=『CHICAGO』世界の人達のことね。

終幕近く、リチャード・ギア(役名=ビリー・フリン)が、
客席に座り、舞台上で唄い踊る主役二人の女を、
「かなわんこいつらには」みたいな顔して観てて、
うれしそーに拍手を贈っているシーンがある。

演出家として(私は演出家、なので)
もう、ホントにこんなふうに、自分の演出した舞台で、
そこに出演している役者に、
(『CHICAGO』くらい、お互いにやりあった後でね。)
「かなわんこいつらには」と思いながら、
まいったなーって顔して笑いながら、拍手を贈れたら、
こんな幸せなことはない。

この『CHICAGO』は、このあいだのアカデミー賞で6部門受賞。
最優秀作品賞。
最優秀助演女優賞:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ。
最優秀美術賞。
最優秀衣装デザイン賞。
最優秀音響賞。
最優秀編集賞。

編集最高。
映画は編集が命だなやっぱ。

このアカデミー賞、
最優秀ドキュメンタリー賞は、
Bowling for Columbine
「ボウリング・フォー・コロンバイン」
マイケル・ムーア監督作品。

アカデミー授賞式のスピーチで、ムーアは言い放った。
We are against this war, Mr. Bush.
Shame on you, Mr. Bush.
俺たちはこの戦争に反対だ、ミスター・ブッシュ。
恥を知れ、ミスター・ブッシュ。

命はってる。

「Bowling for Columbine」
戦争がはじまる前に、映画館に行った。
勇気とユーモア。
グレイト!! マイケル・ムーア。

個人と、その表現と、
もうホントすばらしいもの持ってて、
評価もしてて、
で、
何なの、
あの国は。

あの国、限定でなく、
この国も、どの国も。
人ってのはなあ、
まったくなあ。

そう言う自分もだ。




6月9日(月)

[欲望という名の電車]

さて、
只今私はオペラの現場にいます。
演出助手で参加中。
オペラ「欲望という名の電車」
日本初演。
英語原語上演。
新国立劇場にて、6月9〜12日公演。

本日初日。

名作と名曲。
心のひだを、音と声と演技と ひかりと闇が造型します。

深い暗闇から、幻想のように現れる、
ニューオリンズの家屋。

狂気 嫉妬 疑惑 追憶 混迷 悲哀。
痛み。

孤独。

愛。

人は 人の心は どうして、
いつまでもいつまでも 繰り返すことしか出来ないのか。

「欲望という名の電車」
演劇とオペラの融合。
キャストとスタッフの融合。

その反応(融合作用)していく様を
ずっと感じ続けた稽古場。

その最後の溶け合う様を 体感しに来ませんか?

限定4作用。
新国立劇場 中劇場にて。




7月22日(火)

[「蜜の味」+「二等辺三角形」]

まだまだ先の話ですが、
11月に舞台を演出します。
その案内HPが開設してます。
いってみてください。

■「蜜の味」+「二等辺三角形」■




7月23日(水)

[バズ・ラーマン]

それにしても、バズ・ラーマン。
何故ここでバズ・ラーマン。

先日、読者投稿劇評に自分のコメント書いていて、
「ブロードウェイ、オペラといえば、なんといってもっっっ!!」
ということで、連想してしまった『バズ・ラーマン』

バズ・ラーマンというのは、演出家です。
映画、舞台の演出家。
彼の作った映画に、

「ロミオ+ジュリエット」1996年作品
ロミオ…レオナルド・ディカプリオ
ジュリエット…クレア・デーンズ

「ムーラン・ルージュ」2001年作品
ニコール・キッドマン
ユアン・マクレガー

が、あります。
どちらも素晴らしい!

そして、彼はブロードウェイ・オペラ「ラ・ボエーム」を演出した。
イタリア語、原語上演。
行きたかったー…。
っていうか(「っていうか」って使うところではないが)
映画「ロミオ+ジュリエット」いいよ。
もうね、いいから、観てない人は観て。
「演出家の仕事ってこういうことなのよ」
と、熱く語れるから。(熱くってことでもないか)
「演出家」ってね、何する仕事なのか説明しにくい仕事なわけだ。

凄いぜ、ラーマン。
台詞を変えることなく、あそこまで世界を創造するとは!
その独創性と芸術性。
舞台で培った演出力が、映画の画面から溢れている。

しかし、ラーマンの「ロミオ+ジュリエット」
悔しかったー。
拳銃使われたのは悔しかった。

「ロミオとジュリエット」
いいなあ、演出したいなあ。

あ、「ロミオとジュリエット」もオペラになってる。
バレエにもなってる。
ミュージカルにもなってます。
「ロミオとジュリエット」現代版=それが「ウェストサイド物語」。

骨太の物語は、様々な舞台に創作されていくのだ。

「ウェストサイド物語」
この夏、ミラノ・スカラ座バージョンがやってくる。
その舞台を御覧になってない方は、ぜひ。

それにも行きたいが、宝塚「アイーダ」にも行きたいよう。
金子さん(投稿劇評メールの常連さん。常連っていうか、メイン)
その金子さん、3回も行ってるし…うらやましい。
私、1回でいいから。

さて、このHP「Tokyo劇場」。
頻繁に会えない友への、
よい「手紙」代わりとなってくれているようです。
頻繁に会えている友への「手紙」にもなってくれているかもしれない。
いつ出すとも分からない、勝手な「手紙」だけれど。

それにしても、7月だ。
またひとつ歳を重ねた。
お互い様に、我が友よ。

また一緒に舞台行こう。
また一緒に映画観よう。
また一緒に存分呑もう。




9月5日(金)

[ラ・ジョコンダ]

去年の夏フランスオペラだった。
今年の夏はイタリアオペラである。

そんなわけで、
また、この夏も北海道ツーリングは叶わなかった…。

でもね、横浜までは小ツーリングしている。
稽古場が横浜なのです。

そんなわけで、稽古後に、中華街で飲み! 食い!
の、夜も過ごす。
高校時代の友人達と。
卒業してから…15年以上になりますか。
なかなか愉快な人生だな。お互い様に。

この稽古場、指揮者と演出家が二人とも雨男。
迷惑。
稽古開始界隈は雨ばかり。
「バイクに乗れないじゃないのさ!」
演出助手の私はボヤクしかなかった稽古前半でした。
後半の今は、やっと晴れてきました。

日本全国「困ったもんだ」現象 の この冷夏。
おかげで野菜は高い(値段)ようです。

オペラ「ラ・ジョコンダ」
只今の私の現場。
救いようがないっちゃあ、ない物語り。

A組、B組、各々にたった一回の本番。
音楽稽古から入れて、三ヶ月やってきて、本番は一回。
贅沢というか、寂しいというか。

そのオペラの公演が来週あります。
9月13、14日。
お時間ある方はぜひ。

人を大事にするってことは、いったいどういうことなんだろうね。

そんなことを、思う、物語りなのだろうと。
そして、
人というものの、知恵が付き過ぎたあまりの、不器用さの物語り。
でもある。

「思い遣る」ということの、
悲しさを、
存分に、
美しすぎるアリアと共に、
味わって、
ください。




11月17日(月)

[フタリ+フタツ=芝居]


■「蜜の味」「二等辺三角形」■

秋もすっかり深まり、
バイクで駆ける風に冬の音を聞く頃。

芝居をふたつ演出します。
「ふたり芝居」「ふたつ上演」

フタリ+フタツ=芝居

売り文句は、みんなチラシの裏に書いてしまいました。
チラシ表はココから。

今は筏に帆をはって、
波の流れと風の行く先を読んでいる最中。
な、稽古場です。
ゆうき波と わかまつ風は、
ときにやっかいで、ときに心地よく、
筏と共に海を渡っていっております。

お時間ございましたら、
いらしてくださるとうれしいです。

劇場でお待ちしております。

─────────────

ってな上記御案内にての舞台は、11/9に千秋楽。
でした。

お客様と、関係者全てに感謝を。

開場してから開演までの30分間を、
劇場前の駐車場で、
演出家(私)、舞台監督、照明家、音響家で、
忙しく働く受付の制作さんを眺めながら、
みんなで和んでいたのが、
たまらなく愉快でした。

みんなで見上げていた空を、きっとずっと忘れないと思います。

ありがとうございました。




12月1日(月)

[不思議の国のアリス]

オペラ「不思議の国のアリス」

モーツァルト劇場20周年記念
2003年11月29日(土)30日(日)
午後3時開演 会場:東京芸術劇場(中劇場)

台本・総監督:高橋 英郎
台本・作 曲:木下 牧子

指 揮:大井 剛史
演 出:鵜山 仁

美 術:倉本 政典
照 明:井口 眞
衣 裳:伊藤早苗
振付け:西 祐子
メイク:清水雅智子
舞台監督:北村雅則

オーケストラ:アンサンブル of トウキョウ
合    唱:モーツァルト劇場合唱団

副指揮:三ツ橋敬子、富平恭平、鈴木優人
コレペティトゥーズ:西上和子、巻島佐絵子、藤井美紀

演出助手:森さゆ里
舞台監督助手:伊東龍彦、堀内立誉、
山本哲也、二葉泰夫、大滝寿子、井村

<キャスト>−−−−−−−−−−

アリス       (ソプラノ) 鵜木 絵里   赤星 啓子
姉・ユリの花    (ソプラノ) 柏原 奈穂   平井 香織 
白 兎       (ソプラノ) 品田 昭子   加藤 千春
笑い猫         (バリトン) 松井 康司   星野 淳
ドードー鳥     (バ  ス) 今尾 滋    藤岡 弦太
公爵夫人        (ソプラノ) 高橋 照美   岩井 理花
帽子屋         (テノ−ル) 吉田 伸昭   君島 宏昭
ジャック        (テノ−ル) 小貫 岩夫   布施 雅也
女 王   (メッツォソプラノ) 小畑 朱実   小畑 朱実
国 王     (バスバリトン) 黒木 純    村林 徹也
ケシの花―氈@   (ソプラノ) 松本 和子   飯尾 玲子
ケシの花―(メッツォソプラノ) 菅原 章代   中村 しのぶ
鳥―氈Eスペード5 (テノ−ル) 初谷 敬史   初谷 敬史
鳥―・スペード7 (バリトン) 須山 智文   須山 智文

ダイア9 ほか (ソプラノ) 柏原 美緒
ダイア1  〃 (ソプラノ) 斉藤 理都
ダイア3  〃 (ソプラノ) 元村 亜美
クラブ4  〃 (ア ル ト)  小阪 亜矢子
料理女   〃 (ア ル ト)  柴田 真由美
ダイア6  〃 (ア ル ト)  田中 樹里
クラブ8  〃 (テノ−ル) 武吉 史雄
スペ−ド2 〃 (テノ−ル) 藤丸 崇浩
コック   〃 (テノ−ル) 宮本 史利
クラブ10 〃 (バ  ス) 金沢 平
客人・兵士 〃 (バ  ス) 大畑 理博
客人・兵士 〃 (バ  ス) 山田 大智


演出助手で参加したオペラ公演が昨日終了した。
上記は、そのキャスト、スタッフたち。

名前をあげた上記の方以外にも、
池袋芸術劇場のスタッフ、照明スタッフ、音響スタッフ。
大道具、小道具、靴、衣裳、職人の方々、貸出しの方々。
オケの方々。
あと100人は軽く超える。

そんなたくさんの人達が、たった2回の公演の為に、
A、B組で考えれば、各々たった1回の公演の為に、
集結して、
作品をひとつ生み出して、
散っていきました。

巨大な打上げ花火のようだなと、今回もまた思いました。

その巨大な打上げ花火を客席で仰ぎ見て、
そのカーテンコールに拍手を贈る。
キャストと、劇場のそこかしこにいるスタッフに、
スタンディングで拍手を贈ります。

そして、
お互い、
お互い、次の現場に散っていく。

また共に酒を飲もう。
朝の4時まで5時までも。

また会おう。
いいモノを作り出していこう。

それにしても「ムーラン・ルージュ」は最高だな。

「ドニー・ダーコ」は観ますとも。
あとひとつ何だっけ? 3作目まで出来ていてまだ続きって作品。

「バーバー」観てね。
きっとたぶん好きだと思う。

しかし、私が今いちばん観たいのは「マトリックス」




12月16日(火)

[ソープオペラ]

冬の夜空に
オリオンの光が、凛と響く頃となりました。

12月20日〜23日。
「ソープオペラ」という作品を演出します。

11月はじめに「フタリ+フタツ=芝居」とタイトル掲げた
二人芝居二本立て 演出。

11月終わりに オペラ「不思議の国のアリス」演出助手。

そして、12月終わり。
この「ソープオペラ」。

私的「怒濤の2003年秋から年末シーズン」が
終わろうとしています。
重なる時は重なるものです。
それは幸せなことでもあるのです。
お客様、関係者、お世話になった全ての皆様、
ありがとうございました。

さて、この公演「ソープオペラ」。
旗上げ公演です。
私が旗揚げするわけではありません。
この公演に 演出家として呼んで頂いております。
幸せなことであります。

若い声優さんたちが主体の劇団。
その旗上げ公演。
身体使っての本格的演技は初めての方がほとんどです。

その「最初の一歩」。

3時間近いこの長尺作品を(休憩1回あります)、
キャストとスタッフたちの、
パワーと誠意あふれる稽古場から
劇場へと届けます。

お時間ございましたら、
いらしてくださるとうれしいです。
劇場でお待ちしております。

詳細は演劇集団 Pal's Sharerの公式HPへ。




12月29日(月)

[金継ぎ]

さて、年の暮れです。
今年も色々ありました。
来年も色々あるでしょう。
リベンジは出来るんでしょうか。
っていうか「リベンジ」って言ってもなあ。

「こわれたものは こわれたものさ。
 それをつなぎ合わせるよりも
 むしろ新しかったときのことを追憶していたいのだ。
 そして一生 そのこわれた所をながめていたいんだ。」


上記は、とある登場人物の台詞です。
ヅカ版 Gone With the Wind
深くて、それはそれで大きい愛がある台詞だ。
いい台詞だ。

さてさて、「金継ぎ」。
「金継ぎ」とは。
陶磁器の欠け、割れを修復する技法のことです。
それは、欠けた箇所や割れた箇所を完璧に修復するより、
(完璧に修復 = 欠け割れはなかったかのように、新品同様にしてしまうこと)
その箇所をよりわかるように
(もうひとつの美しい景色として)修復するという技術です。
完璧に美術作品を修復しようとする西洋の考え方と
全く違う日本人の美意識がわかります。

さて、「金継ぎ」。
日本人の美意識。

こわれた箇所を よりわかるように、
(もうひとつの美しい景色として)
修復するという技術。

そんな技術を修得し磨きをかけて、
年月を重ねていきたいものです。




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