音楽稽古は8月頭から始まっている。
立ち稽古の段取りを組まなければいけない。
T歌劇場の制作のSさんが、
キャスト一人一人の自己申告予定表を郵送してくれた。
これが・・・。
40人の人間が(キャスト40人)、
己の好きなように予定を申告すると
こうなるのかっていう・・・
もう想像通りですよ。
「これをどう調整しろというんじゃ、えーっっ?」
それも演出助手の仕事です。
総合芸術と呼ばれるオペラです。
本当に素敵に、各々の芸術パートが統合出来るようにするのが
私の仕事です。
でも、「調整出来んもんは出来んっっ!」
明日は演出家と打ち合わせです。
美術家の制作した装置の模型を持って、
新国立劇場の中劇場の楽屋にて打ち合わせ。
現在中劇場で公演中の舞台の
舞台監督さんが、今回の監督。
で、13:30〜の本番前に
打ち合わせをしたのだ。
T「オペラは初めてなんだよね」
T&S「・・・・・・・」
S「大丈夫ですよ、歌っているだけで、舞台は舞台なんだし」
T「ははは・・・・」
そうして打ち合わせが終わる。
楽屋口を出ようとすると、
T歌劇場の制作Sさんに会う。
「オーケストラは44人」
との新たな情報を得る。
しかし、これは多い。
美術家の作った装置のオケピットに
44人って入るのだろうか?
不安は楽しみでもあるってことで、前に進もう。
でも明日からは「ヴェニス」はおいといて、
文学座の公演に参加。
初日が今月の27日なので、緊急要員ってことやね。
ま、どっちも同じ演出家なので、
しばらく行動が一緒になるということだ。
文学座公演の初日終演後に、
新宿オペラシティのリハーサル室にて。
「とりあえず、いつもの音楽稽古をみせてください」
ってことでキャストの皆さんと初対面いたしたわけだ。
やはり原語(英語なんで)を覚えるというのは大変なようだ。
休憩中にキャストの皆さんが訴えていた。
ってことで、音楽稽古のほうも、遅れ気味のようである。
しかし、生声のパワーってのは凄いね。
圧倒されて、楽しかった。
よし、これからだ。
振付の方と文学座公演の本番前に
その方のバレエスタジオを、
青山まで訪ねての打ち合わせをする。
お互いのイメージの確認。
主役のアッシェンバッハ
(=美少年に心奪われて苦しむ主人公)の言語指導
(=原語の英語で演るので、
歌唱指導と同時に言語指導も行うのだ)
を先生の自宅の駒込でおこなった。
厳しい発音のチェック。
正確なイギリス英語で発音して歌って暗譜する
(=このアッシェンバッハは舞台に出っぱなし)
なんてこんな大変なことをしてるんです、
オペラのキャストの皆さんは。
ちゃんと十分な稽古の時間を確保したいと思う。
だけれど、物理的に時間は限られているのです。
「演出家はいいかもしれない、
でも舞台に立たなければいけないのは僕達なんだ」
との言葉に、
そして、実際に総ての力で役にぶつかる彼等を前に、
万全の稽古体制を取れない私は、
己の力不足を反省するしかない。
反省して、前に進むしかないのです。
厳しい。
北新宿にある「新宿村スタジオ」にて稽古。
動きまくる演出家。
岸辺の女の子役達に
「セクハラおやじが来たぞって感じで逃げてみて」
等の具体的かつ
「オペラにそういうこと言う」
的発言でキャストをなごませるのは
(なごませるってよりも、
自分が楽しんでいるのかもしれないが)
さすがである。
しかし、やっぱり、時間がないよこれじゃあなあ・・・。
なんとかつくろうよ、ってことで、、
再度制作とチャレンジするのだ。
昨日と同じく、北新宿にある「新宿村スタジオ」にて稽古。
22スタジオ。
演出助手はいないキャストの代わりに動くという仕事もするのです。
なので、タジオは私が演りました。
って言っても演出家の指示通り動いただけだけどね。
指示がない時は勝手に動くけどねー。
「森さん、美少女演ってみようか」
心づかいに苦笑いうかべつつ、
演出助手はいないキャストの代わりに動くという仕事もするのです。
(カンベンしてくれ・・・と本心は思っているが)
稽古時間の補充は、
制作のSさんが22:00までOKな稽古場を探してきてくれました。
何日かはそこで延長して稽古が出来そうだ。
「新宿村スタジオ」22スタジオにて稽古後、
舞台美術家宅にて打ち合わせ。
「44人のオーケストラは、
このプランではオケピットに入り切らない」
との指揮者からの言葉より、
張りだし舞台をもう一段階奥に下げ、吊ものの位置、
疎の他装置の位置の直しを行い、
アシスタントの方が、製図を打ち合わせしながら
描き上げていった。
シンプルな装置の稼働と、
盆を動かすことにより成り立つ舞台が出来上がった。
美術家とは初対面なので、
部屋の壁に所狭しと飾られる銃器が
気になって仕方なかったのだが
(好きなんですよ、そういった類のものが)
次回の訪問まで我慢しようと思った。
だってもう夜遅いし。
外部で仕事をするというのは、
様々な新しい出会いがあるということだ。
それはとても楽しいことです。
今日は稽古前にオーケストラの練習
(新国立劇場リハーサル室)もあったので、
盛りだくさんの日であった。
で、美術家宅を後にしたのは
夜も遅い12時も近くなってのことでした。
「新宿村スタジオ」14スタジオにて稽古。
タジオ役含め、ダンサーの方達との初稽古だ。
振付はHさんと、そのお姉さん。
ダンサーの皆さんは、皆クラシックバレエの方達だ。
ダンスだけでなくて、
登場するホテルの宿泊客の子供の役もする。
だから、今日は各々の国の親子の初対面の日でした。
タジオはポーランドの一家の息子です。
で、妹が二人いる。
今日欠席のキャストの方もいらしたので、
片親だけのご対面ていう一家もあったのだが、
ポーランドの一家は、お母さん、息子のタジオ、妹二人、
家庭教師と全員揃いました。
この一家には父親は登場しない。
登場しないので、演出家はお母さんに
「亭主はどこで何やってるんだか」
っていう感じにちょっと不幸って感じで、と言っていたが、
お母さんは「そうなの?」って感じで笑っていた。
「新宿村スタジオ」14スタジオにて稽古。
昨日、振付家とダンサーの方々
(っても、22歳のタジオが最年長の
下は中学生からのちびっこ達だ)
に、先ずは自分達が踊ることになるシーンを見てもらっての、
今日の振付稽古である。
跳ぶは回るは曲がるはで
「クラシックのバレエだぜ」って感じで感動した。
でも、いわゆる「眠りの森の美女」的な踊りではないのさ、
この振付は。
現代オペラ(バレエアンサンブル)だからね。
タジオの妹を演る中学生の女の子二人は
「最近、こういうの踊ってないよね」と
「クラシック」なクラシックバレエの踊りをして遊んでいた。
需要が少ないらしいね、クラシックは。
しかし、振付の必要なシーンの半分ほどしか出来なかった。
そりゃあそうだよ。
振りを考えて、8人のダンサーに教えて、
それをダンサーが覚える。
大変なことだ。
「覚えられるかなあ」とちびっこ達は不安そうだ。
ごめんね、稽古時間を十分に取れなくて。
「新宿村スタジオ」22スタジオにて稽古。
昨日、振付したところを交えて、
オペラの歌い手さんといっしょに立ち稽古をした。
歌い手さん達は「かっこいいー」
と思わず言葉がもれちまう状態でした。
問題は、残りの振付の時間をいつ確保出来るかということだ。
稽古場も。
なんせ平日昼間は学校行っているからね、
ちびっこダンサー達は。
この稽古の前の昼間は、舞台監督と
美術家宅で打ち合わせでした。
前回気になっていた、壁に飾られた銃器類に
「あれは・・・」と振ってみると
B「何? 好きなの?」ときたので
S「前は、一応初めて伺ったので、遠慮してたんですけど。
好きなんです」
で、説明が始まる
「あれはね、『OK牧場の決闘』で
ワイアットアープが使ったののレプリカ」とか。
本物もある。
もちろんクラシックなタイプね。
で、私がガンベルト付の銃を発見すると、
持ち主はそれを自分の腰にまいて、
早撃ちと銃をクルクルって回すワザを見せてくれた。
で、私にもやってみろというのでやってみたが、
持ち主にはかなわない。
B「抜くときに、腰も落とすんだよ」
S「あー、なるほどー」
ごめんなさい、舞台監督。
こう書いていると、
森さゆ里は遊んでばかりいるんじゃないか、
とか、演出助手ってのはそんなんでもいいのか、
とか言われるので、言い訳をします。
そんなことありませんよ、
もっとちゃんと真面目にやってます。
でも、そんなこと書いたって面白くありませんものね。
楽しいことを抜粋して書いているってことよ。
なんてねー。
「新宿村スタジオ」22スタジオにて稽古。
稽古場までバイクで行っているが、
その途中に白バイに捕まった。
信号で止まっていたら
「青になったら、脇に寄ってね」と背後から攻められた。
『進路変更禁止違反』ってやつ。
バイクで車と車の間を走ると、
黄色い線なんて越えてしまっているわけよ、
甲州街道(20号)で。
まあ、スピード違反して、
白バイに追いかけられながら
「前のバイク止まりなさーい」
とやられた時よりもインパクトはすくなかったが、
ひさしぶりに捕まったので少し驚いた。5、6年振りだもの。
普通、そういうことがあって、稽古場行ったら
「聞いて、聞いて」
って感じになるんだけど、実際のところ、この稽古場は、
というか稽古場での私の仕事ってのが
「そんなこと言ってるヒマなんてあるかい」状態なので
(そうなんですよ、この「演出助手始末記」だけ読むと、
のほほんとして仕事しているようにみえるでしょうが)
結局誰にも言っていない。
っていうか、稽古場ではそんなこと思い出しもしなかった。
今日はちょっとだけ
「けっこうせっぱつまっているわけよ」
な『演出助手始末記』でした。
そうでもないか。
「新宿村スタジオ」22スタジオにて稽古。
マエストロが、
稽古が終わって、まだ残っていた数人を前に、
いきなり「はい」って感じで手を上げて
「ちょっと雑談でーす」ときた。
「映画のヴィスコンティの「ヴェニスに死す」で、
冒頭の煙かかったヴェニスの風景が、
ターナーの絵にあんまり風情が似ているので、
どうしてかなと思っていたら、
偶然イギリスで「ヴェニス画集」っていう
ターナーの画集を見つけてね、
僕は思わず買ってしまいました。
ヴィスコンティはこのことを知っていたんだね、
それで、ターナーの風情の画を撮ったんだよ。
そういうふうに、ひとつの作品に
様々な他のアーティストのものを織り込むというのも
素敵なことだね」
「ほー」と我々。
だって「ほー」としか言えない。
マエストロのほのぼのとした風情もあって、
なんかみょうに可笑しな時間だった。
[キャサリン・ヘップバーン]
「新宿村スタジオ」5スタジオにて稽古後、
演出家と小道具の打ち合わせ。
U「くちなしの花をコロス(合唱隊)に持たせる。
で、投げる」
S「わかりました」
U「なんでくちなしかと言うと、キャサリン・ヘップバーンの
「哀愁」っていう映画はヴェニスが舞台なんだけど、
そのラストシーンで汽車からくちなしの花を投げるんだ」
S「あー・・・ターナーに対抗するわけですね」
U「だって、あんなこと言われちゃあねえ・・・。
多分くちなしだったハズだ」
演出ってのはこうやって出来ていくもんなんだね。
いや、こういうことばっかりじゃないよ、
ちゃんとやってる=フォローでない。
キャストをリラックスさせて、
のびのび演技出来るようにする
(自分の意図にも沿わせて)
いいスタイルだ。
「新宿村スタジオ」1スタジオにて稽古。
稽古終了時に明日の予定やらをアナウンスするのも
私の仕事です。
(予定を組むというのが前提仕事としてあってね
=これが大変=初期の頃の「演出助手始末記」を読むべし)
15日には通してやろうと思っている。
(通し稽古=1場からラストまで本番通り続けてやること)
で、アナウスンスを
「15日は通し稽古となっていますが、どちらかというと
「1場から順番にやれるとこまでやってみよう」稽古です」
と言ったらウケた。
ウケ狙いでなかっただけに、うれしかったが、
笑っている場合じゃないのよ本当は。
キャストの出欠の組み合わせで、
実のところ、半分以上の場が(17場ある)
その場に必要なキャストが全員揃っての稽古が
出来てないのだ。
で、出欠の関係で場を順序よく稽古出来るわけではなく、
バラバラの稽古なので、場と場のつながり具合が
まともに稽古出来ていない。
で、「ここまできたら、もう、通しちゃいましょう。
順番にやっちゃいましょう」
という強行な手段に出たわけです。
通常の舞台の稽古日程なら、
特に「強行」ということはないのだけれど。
でも、大変なのは、舞台にあがるキャスト達だ。
稽古が十分にしたいとキャストが一番思っているよ。
スケジュールが合わないのは、各々にプロの歌い手だから、
他の舞台の本番や稽古、そして教師としての授業も持っているからだ。
日本に本当の国立劇場が出来るのは、いつなんだろう。
この「ヴェニスに死す」は新国立劇場で公演する。
その、新国立劇場は抱えのキャストを持たない。
ひとつの舞台を時間をかけて、手間をかけて、
完成出来るのはいつのことだろうか。
特にオペラという、
オーケストラも合わせれば100人近い出演者と、
各々の舞台を造るプランナー達という、
巨大なコラボレーションが、日本では、まだ機能出来ない。
黛アートサロンにて稽古。
今日から数日22:00まで稽古出来るスタジオです。
初めて、3人以上が出演するシーンで、
そこに必要なキャストが全員いての稽古が出来ました。
少しだけど。
いやあ、やっぱりいいもんですね。
こんなあたりまえのことに感動した今日だった。
でも、やっぱり揃わない場もあるわけだ。
ちびっこダンサー達は「新宿村」のスタジオで、
振付の稽古を同じ時間にしているので
(昼間は学校に行っているから夜しか稽古出来ない)
子供達はいないのです。
で、今日はアッシェンバッハ
(中年も終わりの小説家って役柄)
が恋してしまう美少年のタジオを、
Wキャストの片方のアッシェンバッハが演ったのです。
これが面白かった。
二人で視線が合ってしまうとことか、
その後でアッシェンバッハが
「How does such beauty come
about?」
って言うとこなんて、もう、笑わずにはいられない。
ノリノリでタジオを演ったKOさんは素敵な方だ。
しかし、そんなタジオを相手に、
ちゃんと歌うKUさんのキャラも捨て難いものがある。
そんな、楽しい時間もある稽古場だが、
「どう、調整しろっていうんじゃ」
という嘆きは今日も終わらない。
ところで、以前に、
キャサリン・ヘップバーンの「哀愁」と書いたけど、
あれは間違い。
「くちなしの花を投げるのは「旅情」っていう映画で・・・」
と、説明していた。
でも、たしかに小道具の打ち合わせの時は
「哀愁」って言ってた・・・。
家帰って見直すと話していらしたので、
それでわかったのか。
なお、この間違いは
メールでM氏にも指摘されてしまった。
黛アートサロンにて稽古。
衣装合わせの日。
だけれど、時間も場所もないので、
稽古場を半分に分けあって、稽古をしながらの同時進行。
プランナーは、大奮闘です。
アシスタントの方も休む間なしです。
40名あまりのキャストが、各々3役以上を演る。
衣装は150点以上。
これを一人々に合わせ、直しを記録していく。
各々のプランナー、スタッフ達は、
通常の舞台より規模の大きいこの舞台を、
通常の半分の時間と人員で奮闘しています。
舞台監督は、
本来の予定よりも遅くにしか
劇場入り出来ないスケジュールと、
舞台機構の調整に、図面とにらめっこです。
だけれども、ちゃんと初日をむかえようという、
プロの責任や意気込みで、
前に進んでいる彼等、彼女等がいてくれるから、
舞台は出来上がる。
そういう裏の事情は、キャストにも、もちろん、
観に来て下さる観客の皆さんにも、関係はない。
出来上がったものが全て。それが評価の全てです。
いい初日を一緒に向かえたいと、願う。
黛アートサロンにて稽古。
舞台は虚構の世界だけれど、
その世界で生きている我々には現実の世界だ。
映画に行きたい。
まいったなぁ・・・。
なんて言っている暇はないはずだぜ、森さゆ里。
黛アートサロンにて稽古。
「1場から順番にやれるとこまでやってみよう」稽古、
の日です。
で、通ったのだよ最後まで。4時間で。
うれしいっっっっ!
よかったあ。
いろいろよくないことも、
まいったなあ、ってなこともあるけど、
とにかく今日はよかった。
この時期にようやくの通しをやったくらいで
喜んでいる場合か、
ってなことを言う方も居ましょうが、いいじゃん。
とにかくうれしかった。
「まいったなぁ」と思ってしまう時もあるけれど
(それは自分の仕事に対してだよ)、
それ以上の楽しさがあるから、ここに私はいるのさ。
でも「ペリアン展」は観たいなあ。
それと「ミーム資生堂展」も。
ってことが、言える「余裕」ってのが
あるような気がした今日であった。
黛アートサロンにて小道具移動。
今日は稽古は休みだ。
でも、明日から稽古場がまた新宿村に移動なので、
小道具を出さなければいけない。
小道具は舞台監督のとこのスタッフさんが、
数日前からやってくれてます。
新宿村、スタジオ29にて稽古。
今日の稽古場は広い。
広いけど、実際演る舞台の実寸はやっぱりとれない。
とれないながらもバミリ
(ビニールテープを床に貼って、
柱の位置やら扉の位置やらをとること)
をしての稽古です。
でも、これまでよりも実寸に近づいた。
新宿村、スタジオ13にて稽古。
稽古後、代々木で照明の打ち合わせ。
盆や、バトンの稼働箇所をチェックしながら、
シーンの変わりどころをおさえての照明の打ち合わせです。
物理的に時間がないのは仕方ない。
せっぱつまっていても、あせらずに、
笑って稽古場にいたいものだと思う。
いつも笑っていたいものだ。
新宿村、スタジオ13にて稽古。
今日が新国立劇場入り前、最後の立ち稽古です。
昨日、稽古をしている間に、
振付家が自分のスタジオで
振付稽古をしてくださったのを交えての完全版です。
ラストぎりぎり間にあわせてくれました。
さすが。
素敵なダンスだよ。
さてこの舞台、盆が回る回る。
で、今はもちろん回らないので、
回ってるつもりでイス持って回る。
主に私が回っている。
出のきっかけと、回る方向を覚えたアッシェンバッハは、
自分でイスをひきずりながら登場してくれた。
K・アッシェンバッハ、ナイス。
役柄は大きく二つに分けると、
ホテルのお客たちとヴェニスのモノ売り連中って具合になる。
「ヴェニスに死す」の10場。
ディナーを終えての余興のとき。
流しの楽士を見世物に、客たちは楽しんでいる。
そこには入れないまちの人々は、遠くから覗いている。
そんな場面があります。
今日の稽古で、その遠くのまちの人々が、
今までになく自己の存在をアピールする演技をしていた。
しかも、ホテル客の輪のギリギリまで前に出てきて
「おまえ、あんなかはいっていけよ」
みたいなことを、自分の商売道具
(レースやら、グラスやら)を持ちながらやってる。
演出家からは何のコメントもなし。
「なし」ってことは「やってよし」ってことよ。
みんな、どんどんやってね。私は面白かったのよ。
B組のタジオをするN君は中学2年生なんだけれど、
自分のことを「わたくし」という。
不思議だ。
でも、大人を相手に話しているときだけだけどね。
A組のタジオをするT君は、
今日はB組の通し稽古の日だったので、
もうひとつの役の「ドイツ人の息子」をした。
この息子は自閉症って設定だ。
なんで自閉症なの?
明日はオーケストラ合わせです。
立ち稽古は22日までありません。
で、22日は劇場入りしての「段取り稽古」ってのがある。
それが14:00〜だ。
ちびっこダンサー達に
「木曜日だから学校だね」と言ったら
「さぼる、さぼる」ときた。
まあ、さぼるのはよくないが、
こっち(オペラ)のほうが楽しいからということなのだから、
私としては喜ぶべきだろう。
演出助手として、まだ未熟なことはあるが、
楽しい稽古場であった。
さあ、劇場だ。舞台監督、照明さん、スタッフの
大忙しの数日が始まる。
よし、いってみよう。
新宿オペラシティ大リハーサル室にてオーケストラ合わせ。
東京フィルハーモニーと歌い手さんの合同稽古だ。
マエストロがタクトを振って、初めて楽器と声が一体となった。
これまでは、ピアノのみの稽古だ。
稽古ピアニストの方々、
急な稽古スケジュール変更の多々あった中、
本当にありがとうございました。
マエストロは魔法使いのようだったよ。
彼の手が舞う度に音色は様々に変容する。
(ところで「音色」って素敵な言葉だと思わないか?)
歌い手のDさんは、遅れてまだ来ていない仲間のパートを、
自分の本役のところと同じシーンで歌ったので、
「なんだかずっとDさん」状態でおかしかった。
イギリス旅行社の若者を演るOさんの歌い初め
「One moment, if you please.」これを4回繰り返すのだが、
何回目かの「One・・」で、マエストロが止めた。
いいタイミングだ。
「One・・・ワン わんわん」ときて
周りの誰かが「にゃん」ときて
「にゃんもーめんっと」ときて、笑いはケリがついたのさ。
一幕終わった。歌い手さんからの拍手。
二幕終わりもしかり。
オケ合わせだからではなく、初めて通し稽古をしたときから、
幕終わりを拍手でむかえる。
初めての通し稽古のときは
「やっぱり『いけるとこまで行こう稽古』だけに、
皆うれしかったのだろうな、と思ったけれど、毎回そうだ。
実に自然に拍手がうまれる。
ここで拍手がくるとは思ってもいなかったけれど、
それは決しておかしなことではない。
例えば、映画館で観終えた後に拍手が起こるような、
それに近い感覚だと私は思った。
とても幸せな気持ちになる。
私もいっしょに拍手をする。
明日は朝から搬入と仕込みです。
そして、盆や吊ものの稼働チェックです。
そんな準備でもう3:30AMだ。
(まあね、それだけではないけどね、散歩もしたし。)
2:00AMくらいに、舞台監督から
明日のことで電話があった。
「起きてますよ」に
「まだ起きているだろうと思って、仕事してたでしょ」
という監督は、このところ仕込みの操作表作りで
寝不足続きです。
さあ、みんなに拍手を届けられる舞台を仕込むために、
はりきっていきましょう。
新国立劇 中劇場にて搬入、仕込み。
新宿オペラシティ リサイタルホールにてオケ合わせ。
新宿オペラシティ 大リハーサル室にて振付稽古。
稽古後は小道具も作るぜ。
ちょっと、疲れた。
体力的にだから、寝れば大丈夫。
マエストロが、オケ合わせ後、
キャストを前にこう言った。
「先ず第一に「人の和」を大切に、
次に素晴しい曲に「敬意」を持って、
本番までの時をキリキリせずにいきましょう」
マエストロのタクトが織り成すのは、
音色だけではなく、このカンパニーそのものだ。
演出家は、中劇場、リサイタルホール、
リハーサル室を駆け回る。
舞台監督は、明日からの皆の生きる場所(=舞台)
を誕生させています。
さてと私もリーダーについて、最後まで走り抜きましょう。
10/22〜25の「演出助手始末記」へと
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