■■■AYAの舞台評■■■



宝塚花組 バウホール

冬物語

=バウ・シェークスピア江戸狂言=

観劇日:1999年3月12日(金)
      14:30〜/18:00〜

劇場 :宝塚バウホール

           原作:W・シェイクスピア
           監修:酒井澄夫
        脚本・演出:児玉明子
   スーパーアドバイザー:小田島雄志




=グラフ3月号より=

花組若手男役ホープの筆頭である春野寿美礼のバウホール初主演作品。

シェークスピア後期の作品「冬物語」の設定を、
江戸時代後半、日本の歌舞伎の世界に置き換え、
東西の歌舞伎の名門、中村富五郎と藤川伊左衛門
(いずれも架空の人物)を主人公に、
原作にある王家の世界を
歌舞伎の世界独特の血の繋がりや襲名という制度に見立てて、
物語を展開していく。
また、劇中に名作歌舞伎のワンシーンを登場させ、
華やかな舞台でお送りする。




=筋書=

舞台は江戸時代後半、中村座。
「仮名手本忠臣蔵」の上演中。

歌舞伎界の東の名門、中村富五郎(春野寿美礼)と、
西の名門、藤川伊左衛門(瀬奈じゅん)は、
幼少より互いに芸道に精進した竹馬の友であった。
しかし、ひょんなことから富五郎は、
自分の妻おさん(沢樹くるみ)と、妻を失くしたばかりで今は独り身の伊左衛門の仲を疑い始めてしまう。

富五郎と伊左衛門には、おさんを取り合った過去があったのである。
「仮名手本忠臣蔵」の舞台は、さらに富五郎の嫉妬心に拍車をかけ、
ついに塩冶半官に扮する富五郎は、高師直に扮する伊左衛門を共演中に殺す計画を立てるのであったが・・・。





亜矢さんからの感想文だ。

更新がとっても遅いのは、
私が3/8〜4/13まで文学座本公演「女の一生」の
旅公演に参加していてずっと東京にいなかったからです。
許してね。
でも5/8〜6/12も、後半の旅公演でいなくなるけど。
そういうことで、更新遅れてすまんっっっっ。

今年のバウの企画は面白いよ。
全部シエイクスピアでいこうってんでしょう。
で、その演目が
「これを宝塚でやんの? 
 どの役を主軸にどうやって脚本、演出でやるつもりなんだ?」
ってのがけっこうあるでしょ。
のひとつが、この「冬物語」。
ああ観たかった。
でもバウだから観れないのよ東京の私は。
それに旅公演中だったし。

この「冬物語」。
よくぞ、こううまく歌舞伎の世界に置き換えたものよ。
児玉氏。あんたすごいよ。
舞台は観られていないけれど、筋書読んだだけで感動した。
歌舞伎の形式を借りた演出ってのはよくあるけれど、
児玉氏は、歌舞伎の血筋、襲名ってのを、王家の世界に見立てた。
これは御見事。
やられた。凄い。
シェイクスピア&歌舞伎の好きな私にはたまらない一品です。
観たかった。

塩冶半官に扮する富五郎が、
高師直に扮する伊左衛門を共演中に殺す計画を立てる。
ってのも「で、どうやったんだろう舞台では、観たいっっっ」
何か凄いいい。
ビデオ買っちゃうか。
でもあれかなあ、こういう楽しみかたって少数派なのかしらね。

ってことで、亜矢さんの観劇文をどうぞ。





[亜矢の観劇評]

 花組バウホール公演
「冬物語」 観劇日・3月12日(金)14:30/18:00

 シェイクスピアの原作をまだ読んでいないのだが、
みごたえのあるバウだった。
観る前は「題名からいうと暗そうだな」とか
「日本物だし歌舞伎の場面、ついていけるかな」
などと思っていたが、その予感はふっとんだ。

 まず思ったことは、
失礼ながら主演の春野の華と実力を見直したことである。
正直、花組は今までは上級生が豊富で、
新人公演も観てなかったので彼女をしっかりみた記憶がない。
しかし、プログラムを読んだ限りでは
「大丈夫かな」
と思った十六夜役が、可愛くて、声も高い声がでていたので、
違和感がなくこれが成功の一因だと思った。
こういう2役をさせた児玉先生も慧眼である。
一方、富五郎のほうは判官のところは若若しく、
すっきりとした二枚目であった。
2幕では、役代わりが大変そうだが、
そこがまたファンとしては面白かった。
今後目が離せなくなりそうである。

 話を内容のほうに移すと、
シェイクスピアを江戸時代の歌舞伎の世界に持ってきた設定は凄いと思った。
また、劇中劇の選択も
「仮名手本忠臣蔵」
というよく知られたものであったので、
観客もすっとついていけて良かったと思う。
ただ、少しつじつまが合わないのは、
登場人物がだれも歳を取らないこと(特におさん)、
と2幕の「道行旅路花婿」の場面は劇中劇なのか
(つまり、十六夜は富五郎がやっているという設定なのか)、
たんに秀之助と十六夜の逃げる状況を歌舞伎化してあるだけなのか分からなかった。

そんなこんなのアラもあるのだが、
すべては最後の「すべては現実をはなれた舞台のこと」
といった内容の台詞で片がついてしまうのが、
まさに「芝居だな」と苦笑してしまった。

 また出演者の方に話を戻したい。
伊左衛門の瀬奈。
春野ともども出て来たときにはもう父親の設定なのだが、
それは少し無理があったが、あとは友達思いのやさしい感じで良かった。
台詞は「鮒じゃ、鮒じゃ」というところなど、
きちんと声が出ていて随分台詞が春野ともどもしっかりしているな、と思った。
歌はもう少し、というところだろうか。

 おさんの沢樹。
まだ下級生なのに、出て来た途端しっとりとした奥方にみえた。
「歌劇」などで演技派とよく言われているだけはある。
また、最後の16年後の再会の時は、あんなにひどい目にあわされた夫を許して、涙をながしている演技にはびっくりした。もう少し、ヒロイン役を観て見たい人である。

 秀之助の彩吹。
瀬奈の息子、というのはちょっときついが、
さわやかな感じの二枚目で、なによりも声の通りが良い。
2幕しか役はないのだが、十六夜を
「ばくちで儲けてでも身請けしたい」
というところに若い直情的な情熱があって、息子らしかった。
目がきく人なので雪組から花組に移ってまた、
新風をまきおこしてほしい。

 あと印象に残ったメンバーをあげたい。
お袖の貴柳はしっかりとした台詞で要所を締めていた。
吉次の麻園は、しらない間にしっかりした芝居ができるようになった。
台詞の声がしっかりしていた。
また、富五郎、伊左門、秀之助の3人を支える心遣いがよく表現されていたと思った。

 あと、皐月屋の2人。
皐月の翔はいかにも本当は旦那よりも店をとりしきっている女将、という感じがよく出ていた。
そして、最後におでんの幸美。
足で障子を開けるところから客席の笑いをかって面白かった。
そして、「道行旅路花婿」のところは歌が上手い人だけに声もよく聞えて、また一段と面白かった。
脇役のエキスパートという感じになりそうである。

 全体的に、全員の台詞がハッキリ聞こえて、
花組の未来は明るいと思った。
日本物は色々大変だろうが、こういうしっかりした芝居の日本物も宝塚の財産の1つであるので、これからもどんどん若手に挑戦してもらって、ファンとして楽しみたいものである。


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