観劇日:7月23日(水)昼の部/アリーナ Jブロック 劇場 :日本武道館 『Miki In Budokan』 今回の劇評も、またまた金子亜矢さんからです。 「Tokyo劇場」主催者の私、まったくなっていません。 全然駄目です。 しかも、真矢みきの武道館ライブの貴重な劇評(?)だ。 金子さん、ありがとうございました。 『Miki In Budokan』 98年7月23日 昼の部 日本武道館 アリーナ Jブロック 観終わって、一週間になるのに、 あの興奮は私のなかではさめやらない。 「あの時間はなんだったのだろう」 と考えてもなかなか答えが出せないでいた。 私は、真矢みきファンであるが、 この「宝塚のステージ」は真矢みきの思い出と共に、 一生忘れないだろうと確信している。 そう思わせてくれた理由はなにか。 それを考えるのに一週間かかってしまったわけだ。 私の考えでは 「宝塚の真矢みきとしての個性」+ 「宝塚の男役」+ 「真矢みきをプロデュースする」 というコンセプト、という3つの要素が、ファンの求めるもの、 また真矢自身の求めるもの、と一致したことが 今回の成功の結果だと思う。 内容はあとで触れることにして、 先にこの3つの要素と成功についてをもう少し詳しく考えたい。 この3つの要素のうちで一番重要なものはなんだったか。 それは「宝塚の真矢みきとしての個性」である。 これが成功の要素の50%は占めていたのではないだろうか。 やはり、人をひきつける力は 伊達に長年ステージをやっていたことではないことを示している。 曲が変わるごとに、一瞬にして、世界が変わる。 これは、普通のアーティストだと、 ただ歌っているだけで出来ないことだろうと推察する。 この「底力」こそが、真矢みきが「ビック」といわれる所以なのだろう。 つまりは、真矢の「努力」+「感性」が「総合力」となり、 大きな「個性」となって今の真矢みきがいるのだ。 その「個性」が、すべての人をひきつけたのだ。 あれだけ盛り上がったことが、 その「個性」にひきつけられたことを証明していたのではないか。 そして、つぎの成功の要素の大きなものは 「真矢みきをプロデュースする」ということであろう。 これが、30%を占めると考える。 これについては、「真矢みきのやりたいこと」を見抜き、 このコンセプトを考え出した、つんく氏の慧眼である。 ファンの心理をよく知っておられる。 失礼を承知だが、石田先生は『スナイパー』をどうしてこうしてくれなかったか大変悔やまれる。 最後に、「宝塚の男役」が20%を占める。 これは、「食虫花」のシーンなどで、はっきり表現された。 男でもない、女でもない妖しさ。 これは、「宝塚の男役」という形の上に成り立ったものである。 以上のように、私はこのコンサートの成功を分析する。 さて、少し固い話はやめて、印象に残ったことを書こう。 初めの、シースルーの衣装の辺りは、邦楽のカバーが多いせいか、 少し歌いこみが「持ち歌」より足りなかったが、 センセーショナルな衣装で十分楽しめた。 その中でも、「いいわけ」は、よく知られている曲のせいか、 ぐっと客席が乗ることが出来た。 私は、この曲を一番はじめに持ってきて欲しかった。 それと「宇宙から来た」という設定は、 ビデオクリップだけでは、少し理解できなかった。 その後のスーツに着替えたところから、「宝塚の男役」の世界である。 そこで、TCAで二回も歌った「疵」が一番印象に残った。 あの曲は、当分岡田先生といえども、再演して欲しくない。 マタドールのような衣装のところでは、トークが一番興味深かった。 「私、シャイなんですけどね」といいつつ、 「それは違う!」という話をする。 繊細さと裏返しの、真の「舞台人」を感じ取れた。 そのあとの「食虫花」については上に書いた通りである。 あまりに妖しくて、私はクラクラしてしまった。 コンサートで失神する、というのはこういう気持ちなんだろうな、 と後で思った。 そして「すみれの花咲く頃」で、盛り上げる。 これぞ、「宝塚」である。 ファンは絶対知っている曲がいい、と分かってはいるも、 ああもアレンジできたことは、本当に画期的だと思う。 普段の公演でも、ファンおなじみの曲のアレンジは、 これに習ってもっと頑張っていただきたい。 「アキラ」はもう、言うまでもなく、 「お楽しみ」をさせてくれ、フィナーレへ。 私は、ここからの構成は選曲も含めて、心から満足させてもらった。 特に、東京公演の『ハイペリオン』では、 歌われなかった「GIFT OF LOVE」を歌ったところに 感心した。 TCAのトリで歌って欲しかった曲だったので、 あそこで歌われると、もうファンの心理をちゃんと読んだ、 真矢+つんくの企画にのせられるばかりだった。 でも、なんといっても印象に残ったのは、 つんく氏作曲のラストの曲「ありがとう」である。 “ことばなどいらない/目を見て”という歌詞は、 彼女以外のだれにもつけられない最高のものだった。 作詞は、少し正塚先生の手が加わっているような気がする。 「宝塚の真矢みき」を演じられるのは、あとは東京公演だけである。 ここで、もし石田先生がファンの心理を汲んでくださるならば、 『SNIPER』の最後の大階段に座って歌い出す曲は、 このつんく氏作曲の「ありがとう」に変えていただけないだろか。 私の、いや私たち「宝塚の真矢みき」を愛する者の 最後のお願いを書いて、この感想を終ることにする。 |