■■■SUNの舞台評■■■



エリザベート〜宝塚雪組公演

観劇日:1997年3月15日(土) 17:30〜
劇場 :東宝宝塚劇場

    脚本・歌詞:ミヒャイル・クインツ
       音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション:ウィーン劇場協会

        潤色・演出:小池修一郎

          トート/麻路さき
       エリザベート/白城あやか
    フランツ・ヨーゼフ/稔幸
     ルイジ・ルキーニ/紫吹淳
         ルドルフ/絵麻緒ゆう
   ルドルフ(少年時代)/月影瞳
       マックス公爵/一樹千尋
         ゾフィー/出雲綾

[あらすじ]

舞台は19世紀末のオーストリア・ハンガリー帝国。
その皇妃エリザベートを殺害したルイジ・ルキーニの尋問から幕は開く。

ルキーニは死(=トート)と恋仲だったエリザベート自身が死を望んでいたと主張する。
そして、それを証明するために霊廟の人々を呼び起こす。

時代は1853年。
少女のエリザベートは遊んでいて大怪我をし意識不明の重体になる。
冥界に迷いこんだエリザベートにトートは魅せられ、生命を返す。
そして、その愛を得ようとする決意をする。

ウィーン宮廷では、若き皇帝フランツ・ヨーゼフが
母親の皇太后ゾフィーのもと国を治めている。
フランツは、自由奔放なエリザベートを見初める。
幸せにみえた結婚。
しかしすぐに、前皇后ゾフィーの干渉や、動乱の時代の中で崩れる。
彼女は夫フランツと共に生きていくのではなく、
自分の美貌を武器に生き抜こうとする。
その時々の隙にトートはエリザベートを誘惑する。

フランツはエリザベートに「ゾフィーか自分か」の選択を迫られ、
その傷心に女を買う。
そのことに、またエリザベートも傷つき、彼女の旅の人生が始まる。
その中で息子ルドルフは孤独となり、トートの誘惑にのめり込みむ。
そして、ついに、トートは人生に絶望したルドルフの命を奪う。

放浪の旅を続けるエリザベートをフランツが訪ねる。
しかし、もはや二人の心は相容れることはなかった。

1898年、ジュネーブ。
トートからナイフを渡されたルキーニはエリザベートに襲いかかる。
トートの存在に気付いたエリザベートは、そのナイフを受け入れる。
そして二人は天空へと昇っていくのだった。


@@@[感想]@@@

とにかく、観れてよかった「エリザベート」そして、あやかのラスト。

やっぱり「あれほどの雪組とくらべてどうなるのか・・・」
と思って観てしまうのが人情ってやつでして。
っていっても、私はいっちゃん
(一路真輝=NHK大河では、「雪の方」をしておいでじゃ)
のはビデオでしか観てないけれど
(Mさん、ありがとうございました。感謝感激)
それは素晴しかったですから。
あれを、まりこさん(=麻路さき)がどうするのか・・・ 
とみんな思ったに違いないのだ! 
あやか(=白城あやか)については何の心配もない。
ないどころか、早く「あやちゃんのエリザベートが観たいんだ」
とみんな待ってたに違いない。
まりこさんファンには悪いけど。

で、トート閣下(まりこさん)。
がんばってたね、歌。
そりゃ、いっちゃんに比べたらあれだけど。
まりこさんのスケールのでかい存在とダンスで許せる範囲としておこう。
特に、エリザベートを包み込む包容力は素敵でした。
あやちゃんとのデュエットも美しいです。

御披露目の「国境のない地図」を観たときなんて、
あの歌に『悩殺』されて、
「これは、冒頭のピアノの素晴しさでもまかりならんっっっ」
と怒っていたら、
お芝居後のあやかとのデュエットの美しさに
「これでいい、このシーンだけを観に来たことにしよう」
とまで思ったほど、新星組トップのデュエットは素晴しく美しかった。

まりこさんは、黙って目や背中で語らせるか、
踊ってるかしてればいいんです。
(ここで、まりこさんファン全てを敵にまわした気がする)
でも、それが出来るスター性ってのは、
それは本当にスターにしか成しえないことなんですから。
ですから、そういう「男役」という存在の「トート」という意味では、
歌唱力こそ一路さんにかなわないものの、
十分に劣らぬ魅力を放っていた、
と言っておこう。

歌でつづるミュージカルといっても、歌だけがよければいいのではない。
一路真輝というひとが、傑出した唄歌いであるがために、
「唄」をことさらに比較されてしまっている面もあるのではないか、
なんてことも思ったりしたわけです。

あやかエリザベート。
「やめないで、お願い」って感じです。
(彼女はこの公演で卒業)
その、あやエリザベートを観て思う。
花總はよくやった(雪組でエリザベート役)。
大変な役です。

それにしても、あやかのスカーレットが観たかった。
(パロディでやったけどね(=映像で観た)でもそれですら、
 あんなに美しいというのは凄い)
とにかく私は「白城あやか」という女優に惚れ込んでいます。

「若き日の唄は忘れじ」のおふく様。
あのラストシーンの彼女の目にまいりました。
あんな目でみつめられたら「馬ひけい!」
なんて言ってる場合じゃありやせんぜ。

とにかく、彼女の役の作り方。
その年齢、立場による 「声色」「所作」の変化。
素晴しい。
そしてなにより品がある。
プロの舞台人だね。
娘役には難しい低音からのミュージカルナンバーを、
さすがの歌唱力で情感を込めて歌い上げてくれました。
エリザベートのテーマナンバー
(「ロスト・エンジェル」(映像で観たのみ)で、
  麻乃佳世がオーディションのシーンで唄ってたナンバー)
だんぜんあやかのほうがいい。
でもこれを比べるのは間違いかな。
だってエリザベートのナンバーは物語の流れの中でのものですから、心の込め方が違います。
(=決して麻乃佳世が心を込めてない、というのとは違う意味)
素晴しかったです。

フランツ・ヨーゼフ=のるさん(=稔幸)。
「なんか今回パッと目だってこないな」
なんて思って最初は観ていたんだけど、
考えてみれば「パッと目立つ」キャラクターではないんですよね、
このフランツという人物は。
その真面目な性格から、
皇帝という立場を常に厳粛に受け止めてきた人物。
その、ひかえめな、そして誠実な
(=母に対しても、皇帝としての職務に対してもそうであったことが、
 エリザベートとの決別を生むことになってしまったのだが。)
人柄を抑えた演技で好演してました。

しかし、晩年、エリザベートと二人、
湖畔で「戻っておいで」と語るシーン。
雪組の高嶺ふぶき(=ゆきちゃん)のを最初に観てしまったせいか、
と思ったりもしたのだけど、ゆきちゃんののほうが泣けてきましたね。
このシーンのナンバーは、二人が出会ったときのナンバーでもあって、
それがまたいいのだけど、
出会って「これから二人でやっていこう」
と唄いかけるエリザベートへの愛情も、ゆきちゃんのほうに、より感じてしまった。
のるさんの抑えすぎた演技のせいなんだろうか。
決して問題があったとは思わなかったんだけど。

エリザベートの息子、少年ルドルフ。
ぐんちゃん(月影瞳)。
いやあ、よかった。
この配役はきっと、次のトップコンビ(=まりこさん&ぐんちゃん)のからむシーンをみせたい、ってのもあったんでしょうね。

青年ルドルフ、ぶんちゃん(=絵麻緒ゆう)。
たーたんのが断然いいね(=雪組の香寿たつき)。
あれではルドルフの苦悩はわかんなかった。
翻弄されてただけでした、トートに。
ダンスだけじゃなくて、演技にもっと深みがほしいところです。

それにしても、小池修一郎氏はやってくれます。
素晴しい。
「アニーよ銃をとれ」をするのもいいけど、
今度はストレート・プレイをやってみましょうよ。
彼はきっと、日本が世界に誇る演出者だと私は思うのです。
たのむぜ、東宝。
それと、宝塚で、ドラマだけでなく、ショーも演出してほしいですね。
小池2本だて(ドラマ&ショー)なんて公演があってもいいじゃないか。
あ、正塚さんも好きですけど。岡田さんも好きです。

最後に。
あやかのシングルでの唄&ダンスがあってもいいんじゃない?小池さん。
って思ったのは私だけじゃないはずだ。
せめてトップのデュエットがもうひとナンバーほしかったよ。

ということで、今度はいつ宝塚公演に行けるのだろうか。
チケットあったらご案内ください。と、お願いしたりしてみる。

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