■■■SUNの観劇記■■■


シーエイティ プロデュース

偶然の男
L'homme du hasard

スフィアメックス



2004年 7月15日(木)〜 8月15日(日) スフィアメックス(東京)
主催:アートスフィア

2004年 8月26日(木)長泉町文化センターベルフォーレ(静岡)
主催:テレビ静岡 長泉町文化センターベルフォーレ

2004年 8月28日(土)ABCホール(大阪)
主催:朝日放送 シアター・ドラマシティ


観劇日:2004年8月13日 19:00 スフィアメックス(東京)


    作:Yasmina REZA

   共訳:小田島恒志/大磯仁志

   演出:鈴木勝秀

   美術:中村公一
   照明:大石真一郎
   音響:井上正弘
   衣裳:小園秀穂/三本木寿美
ヘアメイク:Michou.
 舞台監督:小澤久明/二瓶剛雄

舞台製作:クリエイティブ・アート・スィンク/加賀谷吉之輔
企画製作:シーエイティプロデュース
  製作:江口剛史

<出演者>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 長塚京三 :ポール・パルスキー

 キムラ緑子:マルタ

<筋書き>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

舞台は列車のコンパートメント。
偶然に乗り合わせ、向かい合わせに座った男女。
男性は人気作家で、 女性は作家のファン。
彼女は たまたま彼の著書「偶然の男」を
道中に 読もうと考えていた・・・。

最初の1時間は、
互いの存在を気にしながら 声をかけられずにいる
ふたりの心の会話のみで展開される。

娘が51歳の男と結婚を希望したり、
自分の作品を友人がけなしたり
自分の生き方に喪失感を抱いていた作家。

しかし彼が書いてきた作品によって
常に励まされてきた彼のファンの女は
作家に温かいエールを贈るべく、
ついに男の本を鞄から取り出す・・・。

ラスト10分で、初めて二人は会話を交わす。

<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

200席のスフィアメックス。
そこで一ヶ月の公演。
このくらいの小劇場規模での一ヶ月の公演。
上質な舞台。
理想的な公演形態だ。

いい舞台でした。
スタッフ、キャスト、総てにありがとう。

一年ぶりですね、自身の観劇感想の更新は。

単にさぼっているだけで、
書かないことにしても書くことにしても、
どちらにしても意味合い等はないのですが。

書かないことも、書くことも、
自意識を持ってすることは、
価値は等価なのです。

話がそれまして、芝居の感想に戻ります。

ああいうラストがつくりたいっっ!!!
と、常々思っているラスト。

困ったような微笑みが浮かんで、ちょっと涙目にさせられる みたいな。
そんなふうにさせられる、そんな、ラストでした。

上質な舞台を観たあとの、幸せな気持ちになりながら、
「くやしくって 涙が出るさ」は、演出家としては仕方ないところ。

いい舞台をつくりたい!!

くやしくさせてくれるのは、いい舞台です。
くやしくって、幸せになる。

この芝居の登場人物のポール・パルスキー(長塚京三)のように、
私が、これから、もっと歳を重ねて、演出をやり続けていられて、
(ポール・パルスキーは作家だけれど)
列車で一緒になったご婦人(紳士)が、
目の前で、私が演出した舞台のパンフレットをひろげていてくれて、
マルタ(キムラ緑子)のように語りかけてくれたら、
こんな幸せなことはない。

その一言で、その一瞬で、
この先、続けられる力を、
受けていることが、あります。
投げていることも、あります。

そのシーンは、
ずっと大事に、
自分の胸にしまっておいてしまうものなのかもしれません。
うれしすぎて色んな人に話して廻っているかもしれません。

色々です。

旅。

列車のコンパートメント。

欧州の各々の土地が思い起こされます。
欧州の各々の国境を越えたことが思い起こされます。
欧州の各々の列車のコンパートメントの思い出が思い起こされます。

統べて創造者は、己のマルタに出会う為に、
励んでいかねばならんのです。

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