■■■AYAの宝塚歌劇 観劇記■■■


月 組

王朝ロマン
飛鳥夕映え
−蘇我入鹿−


ラテン・ファンタジー
タカラヅカ絢爛
−灼熱のカリビアン・ナイト−




2004年6月25日(金)〜 8月 9日(月) 宝塚大劇場公演

2004年9月 3日(金)〜10月10日(日) 東京宝塚劇場公演



観劇日:金子亜矢さん=観劇

7月 1日 1階14列51
7月15日 1階 1列24 NHKビデオ収録日

劇場:
宝塚大劇場



HP主人 森(=SUN)筆。

今回も、金子さん メール投稿劇評 ありがとうございます。

『暑い暑いと文句言えるシアワセよ。』

西武百貨店の名コピーです。

いやあ、まったくだ。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。




王朝ロマン
飛鳥夕映え

−蘇我入鹿−



作:柴田侑宏
演出:大野拓史


<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 7世紀初頭、飛鳥時代の大和。
日本の覇権を争う大和朝廷と豪族の中で、
俊栄の誉れ高い蘇我氏の嫡流である入鹿の激しい青春とその死までを描いた物語。

 宮廷を背負って立つ一人として注目され、豪族の中でも大きな存在となった入鹿。
中臣鎌足は、入鹿が勢力を伸ばすことを恐れ、中大兄皇子と手を組み、
入鹿を追い落とすべく謀を巡らすが・・・・。

(ちらしより)



<メインキャスト>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

宝塚歌劇団 月組

蘇我鞍作<入鹿>(蘇我氏本宗家の嫡子・後に大臣)
:彩輝直

瑪瑙(安倍氏の娘)
:映美くらら

中臣鎌足(神祇官の長)
:瀬奈じゅん(7/1)・貴城けい(7/15)

軽皇子(皇極帝の弟)
:貴城けい(7/1)・瀬奈じゅん(7/15)

蘇我石川麻呂(蘇我の分家の長子)
:大空祐飛

蘇我蝦夷(大臣・鞍作の父)
:箙かおる

皇極帝(宝皇女・現天皇)
:夏河ゆら


<役替わり公演日程>
●6月25日(金)〜7月2日(金)
 中臣鎌足:瀬奈じゅん、軽皇子:貴城けい、蘇我石川麻呂:大空祐飛
●7月3日(土)〜7月19日(月・祝)
 中臣鎌足:貴城けい、軽皇子:瀬奈じゅん、蘇我石川麻呂:大空祐飛
●7月20日(火)〜7月30日(金)
 中臣鎌足:大空祐飛、軽皇子:瀬奈じゅん、蘇我石川麻呂:貴城けい
●7月31日(土)〜8月9日(月)
 中臣鎌足:瀬奈じゅん、軽皇子:貴城けい、蘇我石川麻呂:大空祐飛


特別出演:瀬奈じゅん(花組)、貴城けい(雪組)
  専科:箙かおる

月組生


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「プログラムを読破しないとついていけない・・・」

 1時間35分の上演時間のはずなのに2回とも2時間ぐらい観ていた感じがした。
その理由の1つは主人公(蘇我入鹿)が
筋を動かすのではなく受動的であるということだろう。
やはり主人公にかき回されて周りが動くというのが主役を立てる限りあるべき姿だと思う。

 よって、筋は中臣鎌足の計画通りに進み、
最後は大化の改新で暗殺されるところまでいくのだから、
鎌足が話を動かしているといっていい。

だから、入鹿と鎌足の2人主役の感じがした。
また、策略が進む話だから起承転結が感じられないので長く感じたのだろう。
瑪瑙との場面で緩急をつけているのだろうがとにかく女の存在を入れ込んだ、
という強引さも感じる。

 また、いわゆる「日本史上の有名人」があまり出てこないので、
観ているうちに頭の中で系譜のおさらいをしたくなった。
終演後も「えー、あの人はいとこ?兄弟?まあなんでもいいわ」という会話が出ており、
プログラムなしではつらいだろう。
この点でもえらく難しい戯曲の感じがした。
柴田作品もこのごろは『白昼の稲妻』につづき、
1度みたら「なんか難しい」作品が多いような感じがするので、
『琥珀色の雨にぬれて』のような
すっきりした人物関係の作品を発表していただきたいものだ。

 最後に、入鹿のことを劇中では「鞍作(くらつくり)」で通しているが、
確かに「入鹿」は後につけられた名ではあるそうだが、
現在の歴史では「蘇我入鹿」と教えられるのだから、
「入鹿」で通したほうがすっきりするのではないかと思った。(以下は「入鹿」でとおす)


 彩輝直
蘇我入鹿というとわれわれのイメージでは当時の政治を私服し、
暗殺される悪人というイメージが強い。
しかし、今回の芝居では、政治手腕のある若き首相
(大臣、と呼ばれているが今なら首相の位置だろう)、となっている。
それだから優秀で、その上眉目秀麗で爽やかな青年という設定だ。
まあ、宝塚の基本の2枚目を基本的に持てる力でやればいい役だから、
新主演男役、無難なところからスタートしたな、という感じである。

しかし、ここまで完璧な人物だと人間的魅力をあまり感じず共感しがたい。
「魅力的な人間」というのは大体の場合、長所も短所もあって、
長所が短所を上回るだけのものを持っている、ということではないだろうか。
あまり完璧な2枚目像もどうか、と思ってしまった。
それとここからは先に、ファンの方ごめんなさい、といっておくが、
彩輝には芝居においては声の安定をお願いしたい。
2回とも3時公演であったが、声帯が弱いのか
台詞・歌詞で声がかすれてしまうのは勘弁願いたい。
これは主演者としてできるべき基本中の基本なのでどうにかしてほしい。
やはり、2番手をほとんど経験していないと
2回公演での力の配分など身につかないのかなと思えた。


 映美くらら
まず「瑪瑙」とはすごい役名だな、と思った。
今で言うなら「ダイヤモンドさん」というところでしょう。

そんなことはともかく、
入鹿の恋人であり妻であるこの役は、政治話題がほとんどのこの芝居においての緩衝材、
入鹿にとっての心休まるところという役目を負っている。
映美は本当にここのところ良くなってきたので、
最後入鹿が暗殺されたと知って彼を思うとこ ろなどは泣いており、女性らしさを前面に押し出していて良かった。
サヨナラ公演なのだから、もう少し出番があってもいいかとも思うのだが、
恋する女の瑞々しさ、妻の夫を思う優しさ、など瑪瑙の存在は暖かさを感じた。
舞台人として伸び盛りであるので、宝塚での経験を次のステップにしてほしい。


 瀬奈じゅん(あさこ)。
1日の鎌足は、自信満々の表情をしながら、言葉は丁寧で、粛々と自分の策を進めていく、
「慇懃無礼」という言葉がぴったりの策士だ。
鎌足の人物像・考え、を表わしている台詞を強く言うことで、出し入れをしていたと思う。
一方15日の軽皇子は、自分は政治の中枢にかかわれないのだから、
妻のことも鎌足の思惑通りに動く羽目になってしまうことも、
「諦念」があるので寛大にうけとめる、「人のよさ」を感じだ。
これは彼女のもつ「感じのいいお嬢さん」というのと重なるので、
15日のキャストのほうがいいか、と2回みて思った。
NHKも正解か、と。


 貴城けい(かしげ)。
1日の軽皇女は、妻に不倫をされても、鎌足の術中にかかろうとも、
順々として受け止める皇族、という印象がした。
皇族としての上品さや、変に反乱したりしないところは
この人の端正な容姿とあいまって納得して観られた。
一方15日の鎌足は「冷静沈着」というイメージを強く受けた。
自分の策を確実・着実に1つずつ打っていく、その過程において感情を表情に表さない。
野望の感情が表れるのは銀橋のソロぐらいのものだ。
観ていて感じたのだが、彼女は日本物の多い雪組の所属であるからか、
化粧の仕方、所作、など日本物になれている感じを受けた。
1回しか観ない人は、この15日のキャストのバージョンをお勧めする。


 大空祐飛
石川麻呂は長男といっても所詮分家であるところの気軽さと、
重要なことをあまりしないので、人物的にも軽くなっていて、だから裏表ない人物で、
最後には入鹿暗殺の予兆を示してしまう、という人物だと思う。
大空は学生のころは今で言うなら次男坊ののびのびとしたところと、
成長してからは入鹿に勝てるわけがないと下手な野心を持たないところ、
そしていつもかばってくれる入鹿を
最後まで裏切れないところときちんと押さえていたと思う。
バウホール主演も決まり、この学年にしての飛躍だが、CSでインタビューを聞いていると
自分のことが良くわかっている人だと思うので
「月のような魅力」が今後どう出るか見守りたい。
お金があれば彼女の鎌足も観てみたかった。


 入鹿の父の箙かおるさん。
さすが重みがあり、台詞回しもすばらしかった。
やはりこういう「締める」役は専科のかたにやっていただくと舞台が良くなる。


 夏河ゆら組長。
入鹿を溺愛し、最後には瑪瑙への嫉妬心から彼の暗殺に力を貸してしまう女帝だが、
帝としても威厳はいいのだが、
女としての艶みたいなものがもう少しあればいいかな、と思った。
でも、この頭のいい組長のことだから東京の千秋楽までには完璧になるのだろうな、
と観ていた。


 全体を観ていて思ったことは、
瑪瑙の「まあ、きれい。覚えていますわ」
などといった言葉遣いが柴田脚本はきれいだな、ということだ。
今、こういう文章を書いていてPCに校正されているのだが、
「きれいな日本語」というものの価値を考えさせられてしまった。 

 最後に、芸能団の長で入鹿を裏切る忍びの嘉月絵里
しっかりとした存在感を書いておきたい。





ラテン・ファンタジー
タカラヅカ絢爛

−灼熱のカリビアン・ナイト−



作・演出:草野旦


<出演者>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

宝塚歌劇団 月組
特別出演:瀬奈じゅん(花組)、貴城けい(雪組)
  専科:箙かおる


<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 太陽と音楽、そして、情熱の島−キューバ。
カリブ海に浮かぶキューバを舞台に、満月の夜、
一年に一度、海の中から甦る愉快な妖精たちのストーリーを織り込んで展開する、
明るくエネルギッシュでトロピカルなショー。

キューバの高名な振付家、サンティアゴ・アルフォンソ氏を招聘して、
灼熱のラテンワールドを繰り広げる。

(ちらしより)


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「『絢爛』も2回目となると慣れたなあ」

 星組の続演のショーだが、星組のときはあまりにキューバの要素が多くて、
遠い日本人にとってついていけないところがあったのだが、
今回は構成も練れて、ストーリーと場面が星組より共存している感じがしたし、
「宝塚的」なところも増えて、のっていけるラテンショーになったと思う。
また、変更した場面も、特別出演+月組メンバーに合わせてあったと思う。
ただ、欲を言えばあの難度の高そうな蛇のダンスのシーンがカットされたのは、
難しい振り付けなので月組コンビでは無理なのか、とも思うがちょっと観たい気がした。
でも、月組も必死になってテンション高くやっていて、
観客として自然に手拍子ができた。
『サザンクロス・レビュー』のように、ショーも再演を繰り返せば
よくなっていくものなのかな、と思った。


第1場〜4場 プロローグ

 洪水のように始まるプロローグだ。
彩輝の黒い髪に紫のメッシュを入れているのは趣味がいい。
また、マリアの映美が踊ってくれて物語の予感を感じさせるのでいい。
わーラテンワールド始まるぞ、というわくわく感。


第5場・6場 海の妖精たち→ハバナ

 星組ではダブルダッチ(いわば二重長縄跳び)に苦しんでいた場面だが、
一人ずつの縄跳び+旗振りに変わって月組は楽だったのでは?
ここは思い切り童心に返っている貴城をみるのが楽しい。


第7・8場 熱砂

 ポノポとマリアの出会いのシーンだが、後ろが良く動いている。
移動が大変だと思うのだが。
ただ、マリアは「キューバの乙女」となっているのに、なぜ黒塗りをしないのだろう?
黒塗りの映美もまたかわいいと思うのだが。


第9〜14場  真夜中のパーティー

 中詰めである。
ここは星組と大分替わっていて月組のほうが良かった。
マリアも歌って踊ってくれるし、
ラテンの名曲のメドレーで知っている曲が多いから乗りやすい。
特別出演で男役スターが豊富でこれも楽しい。


第15場  月下のダンス

 瀬奈、貴城、彩輝の3人が揃ってスーツで踊る、月組の新場面だ。
ダンスに関しては今書いた順に上手い。瀬奈は振りを自分のものにしている。
貴城はちょっとくせがある。
彩輝ははっきりいうがリズムに乗ってない。
(以下の暴言ファンの方ごめんなさい)
ここは音楽も素敵だし3人揃い踏みでこのショーの見所の1つかもしれない。


第17場  灼熱の夜

 墓場の前でのダンスだが、瀬奈がのびのびと踊っていて、
月組のメンバーたちも見習ってほしい、と思った。
瀬奈の「らしさ」が良くわかる場面だ。


第19場 ハリケーン

 一番好きな場面なのだが、正直、あの難しいリフトを月組コンビがやるのか、
とプログラムを見る前は半信半疑だった。
ちょっと風がゆるやかになった気がするが、彩輝・映美、よくがんばったと思う。
かなり必死にみえた。
宝塚が誇る歌姫、美々杏里の歌声が場面を盛り上げている。


第20〜22場 陽は又昇る

 さあラストの総踊り、であるが、
2回観たうち2回とも彩輝の足があまり上がってなかった。

上の場面でしんどいのだろうが、芝居のほうでもかいた2回公演の力の配分、
というものを早くつかむ必要性に迫られていると思う。


 短く書いてきたが、
まあ、ラテンショーとしては十分満足のいく内容になっていて楽しめた。
「。」はあるのだろうか。


<金子のよしなしごと>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 今回のテーマは「役替り公演」。

『飛鳥夕映え』のほうは、3パターンの役替り、となっているのだが、
発表になったのが宝塚友の会の申し込みの後だった。
これは困る。
やはり、早く発表するべきだろう。
金子も7月上旬に申し込んでしまったので、
「あ、1パターンしか観られないかも」と思ったが、運良く2パターン観られる。
しかし遠方から来て、集中してみる人とか、ご贔屓がこの3人のうちの誰かの場合、
ちょっと遅かったのではないか、と思う。

金子の役替り公演の一番「かなわんなあ」と思ったのは、
ちょうど10年前の雪組の『風と共に去りぬ』のレット・バトラー役を、
当時の二番手+轟悠で回したときだ。
当時、金子は真矢みきのファンでチケット奪取に走ったものの、
関西に住んでいないこともあって、平日でなんとか2回公演を2回観て納得したものだ。
よって、ほかの人のレットはNHKで放送された久世星佳しか観ていない。
「80周年企画」ということもあったのだろうが、
ちょっとこれはやる方も、観るほうも酷だった。
今回はあれほどではないが、あのときを思い出してしまった。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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