■■■AYAの宝塚歌劇 観劇記■■■


星 組

バウ・グランデ
巌流

−散りゆきし花の舞−


2003年 12月7日(日)〜12月16日(火)  宝塚バウホール公演

2003年 12月21日(日)〜12月27日(土) 東京特別公演 日本青年館


観劇日
12月9日 に列11

劇場宝塚バウホール


HP主人 森(=SUN)筆。

「2003年の宝塚大劇場の総括」
上記が今回の<金子のよしなしごと>のテーマです。
私は全然行けてないからなあ。
総括出来ません。

明日12月20日は、私自身が演出している舞台の初日です。
詳細は演劇集団 Pal's Sharerの公式HPへ。
いらしてくださいまし。

金子さんの、この劇評の観劇日時は「12月9日」ですが、
私がHPに更新したのが「12月19日」。
すみません、更新遅れました。

12月20日初日の舞台は「ソープオペラ」。
日本人カップル5組の、ニューヨークでの物語。

明日は初日だ幕開きだ。
はりきっていきまっせ。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。





バウ・グランデ
巌流

−散りゆきし花の舞−


作・演出:齋藤吉正


<主な配役>(プログラムより抜粋)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

      佐々木小次郎(伝説の剣士):安蘭けい
  宮本武蔵(小次郎の宿命のライバル):汐美真帆
     伊藤椿(伊藤一刀斎の一人娘):叶千佳
アンナ・ファアラート(オランダ人遊女):陽月華
     鐘巻自斎(小次郎の育ての親):英真なおき
       尾崎清羅(小次郎の親友):大真みらん
     吉岡清十郎(都一の剣の達人):綺華れい
        新田利助(武蔵の弟分):彩海早矢
       阿国(歌舞伎一座の座長):華美ゆうか
   真理(鎖鎌の達人・宍戸梅軒の妹):花ののみ


他 星組「巌流」組


<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 その男は、海に生まれ海に散った。
散りゆく桜花の如く艶やかに・・・。
巌流島(当時は舟島)での宮本武蔵との決闘により
永遠に敗北者として語り継がれる佐々木小次郎。
その人生の終焉を迎えるまでには、波乱万丈の人生があった。

 時は、各地の武将たちの野望と見果てぬ夢が交差する戦国の世。
越前浄教寺 村の海岸に一人の男の子が流されてきた。
彼には記憶が無く、手には大人でも振りきれぬほどの長太刀が握りしめられていた。
その男の子がかつての剣豪・鐘巻自斎に拾われ、
「佐々木小次郎」と名乗り剣の道に励むこととなる。
それから小次郎には数々の試練が待っていた。

 恋、友情、闘い、そしてその終着地に待つ宿命のライバル宮本武蔵との決闘までを、
タンゴの音楽にのせ、ドラマチックに展開する。

 「花吹雪 恋吹雪」のあの石川五右衛門から3年。
安蘭けいが新たな伝説を築く。

(ちらしより)


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「チラシに『新たな伝説を築く』とあるが、そこまでいかないなあ」

 まず、登場人物が多すぎる。
小次郎と渡り合う剣客は何人かいても当然だ。
しかし、短時間の間に次から次へ登場人物が出ては消える
(2役やる人もいるほど)
という感じで、結局主人公へ的が絞れていない。

 全体を観て思うのは、この話は小次郎の「孤独で哀しい生き様」を描いているのだと思うが、
そう感じるのは「俺は夜叉だ」というくだりぐらいのもので、
もっと小次郎の人生というものを深く描くべきだと思う。
「主役」にたいしての重心がぶれていると思う。

特にスターシステムをひく宝塚なのだから、一言で言うと、
「主役が素敵!」にならないとしまらないのだ。
金子は安蘭けい贔屓の人間だが、そう「トウコさん、超カッコいい!」とは思わなかった。
「トウコさん、やはり男役の方がいい」ぐらい。

だから小次郎の宿命の剣から逃れられない運命や、ヒロインとの愛憎、
などもっと主役像を書き込むべきだと思う。

特に小次郎の人生はそんなに歴史的に分かっていないのだからどうと でも魅力的に書けると思うのだが。

 ということで考えていくと、宮本武蔵などは汐美さんには悪いが、
特に今年はNHK大河ドラマでやっているし、大抵の日本人は武蔵が始めは勝てなくて、
上昇志向のもとに小次郎と決戦するまでの剣士になったのは先刻ご承知なのだから、
一幕の終わりだけ出てきて「宮本武蔵!」と名乗りを上げておくだけにして、
二幕に巌流島の決戦に持ち込むまでの過程を描けば十分だ。
一方、ヒロインの椿は出てくるたびに感情が変わっているし、場面も少ないので、
何故小次郎を好きになったのか、どうして意に沿わない結婚を選んだのか、
といった心情説明の場面がもっと欲しい。
ましてや、阿国一座はよく考えると、単なる「小次郎おっかけ」グループで
別に本筋に関係ないので削ってもいいと思う。

 ということで、今ひとつ消化不良の感じで終わり、65点というところか。
あとは人別に。


 佐々木小次郎の安蘭けい(トウコ)。
女役を経たせいか、以前より「艶」「男役の色気」というものが増したように思った。
相変わらず、今回は憂いを秘めた目が印象的だ。
しかし、この脚本では彼の苦しみ・悩みというものが完全に観客側には伝わりにくく、
苦労しているだろうな、と思う。
歌は出演者の中でずば抜けており、男役として力強い声は健在だった。
「歌劇」にも書いてあったが、今年は彼女にとって収穫の多い年になったと思うが、
一番の、と言われたら『雨に唄えば』を挙げたいと思う。
この佐々木小次郎は手足を出したくても縛られているという感じだ。

 宮本武蔵の汐美真帆(ケロ)。
今年のホットな歴史的人物で、男らしく、荒々しく
「俺はもっともっと強くなるのだー!」と雄叫びを上げるところなど武蔵像に合っていたと思う。
ちらちらとテレビで見た武蔵よりは「動」の感じが多く、一直線な感じがしたが、
きちんとまとめていて、小次郎のライバルとして遜色ない存在感を出していた。
やはり巌流島の同期対決は、やるほうも安心感があるのか、
観ている方も固唾をのんで観ていられた。

 椿の叶千佳
出てくるたびに感情が変わる役なのでやりにくいと思うのだが、
それぞれ上手く切り替えていた。
歌はもう1つだが、自分に役を投入する姿勢は『ヴィンターガルデン』(02)のときより
ずっと良くなっていたので、もう少し出番が欲しかった。
星組は意外と中堅娘役の層が薄い組なので頑張って欲しい。

 アンナの陽月華
ポスターメンバーではあるが、ただ小次郎を見守るマリアのような慈愛溢れる女性、
ということであまり小次郎との絡みがないのはこういう設定だからなのだろうか。
『雨に唄えば』に比べれば情感もでてきて、歌も大分上達しているが、
女役としてしっとりしたところがでてきたのはいいと思う。
しかし、歌の上達は急務だ。
外国人役として、メイク・髪型に凝っていたのは買える。

 鐘巻自斎の英真なおき。過去の栄光が忘れられず、拾った小次郎にその復讐を託し、
一方小次郎からは拒絶されても、その運命を分かっている親、という二面性を力強く演じていた。
組長ならでは。
かつては女役などされていた組長であるが、
知らないうちに男役としての線の太さも範疇に入れられたようだ。
また、この舞台のまとめ役であるのは言うまでも無い。

 尾崎清羅の大真みらん
始めは小次郎の友人だが、小次郎に心を残したままの椿を妻とし、
最後は小次郎への嫉妬からとうとう椿を殺してしまう、という2枚目路線の役だ。
嫉妬するところはもう少し悪態をついてもいいと思うが、
椿を妻とするところなどはすっきりできていたので及第点だろう。

 吉岡清十郎の綺華れい
剣士のくせに洒落者の遊び人で、最後には武蔵にやられてしまうのだが、
剣士というより「かぶき男」という感じがして良かった。
最後、アンナの身請けの金を小次郎に渡すところも悟りきっている感じが分かった。
全体の中で色の変わった役で儲け役だとおもう。

 新田利助の彩海早矢
武蔵の弟分だが、「兄貴命」でひたすら軽いのが面白かった。

 阿国の華美ゆうか
この阿国グループは物語の狂言回しをしているのか、
「小次郎おっかけ」をしているのか良く分からないところがあるが、
華美は座長として声が良く出ていて良かった。
元スカイフェアリーズ、活躍するな、と見ていた。

 真理の花ののみ
兄を武蔵に倒されたので、初めは男の子の振りをして
小次郎に兄の敵を討って欲しいと願う少女であるが、女の子に戻って、
「刀は握らない」という小次郎に「お前は武蔵と決闘する」と訴えかけるところが
純粋で印象に残った。

 以上、いろいろ書いてきたが、これで感想を終える。  





<金子のよしなしごと>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 今回は、一応全部観たので「2003年の宝塚大劇場の総括」で。

 まず、芝居(ミュージカル)の方から。

〔ベスト1「王家に捧ぐ歌」〕
→もとが有名オペラだし、筋がしっかりしていて、
 また作品が訴えたいことがはっきりしていて観がいがあった。

〔ワースト1「Romance de Paris」〕
→いったい、クーデターで起こる人間模様を表現したいのか、
 宝塚版「ローマの休日」と行きたかったのか分からない。
 ショーがなければ「金返せー」と言っていたかも。


 次にショー。

〔ベスト1「テンプテーション!」〕
→やはりロマンチック・レビューシリーズは安心して観られる。
 衣装もゴージャスで満足感抜群。

〔これから頑張って・・というところが「Joyful!!」「満天星大夜總会」〕
→どちらも若手の先生の作品だが、どちらももう少し「静」の場面を考えて欲しい。
ショーは55分、イケイケドンドン、ではメリハリが付かない。

 こうやってみるとショーはやはり、ベテランの先生のほうに軍配が上がる。
ショー作りとは難しいのだなと観ている側からも実感。

 次回は「2003年宝塚バウホールの総括」の予定。
それでは。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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