■■■AYAの宝塚歌劇 観劇記■■■


雪 組

ミュージカル・プレイ
Romance de Paris


レビュー・ファンタティーク
レ・コラージュ
−音のアラベスク−




2003年  8月22日(金)〜9月29日(月)   宝塚大劇場公演

2003年  11月8日(土)〜12月23日(火・祝) 東京宝塚劇場公演



観劇日:
9月4日 1階1列28→水夏希さん観劇
9月14日 阪急百貨店友の会招待会→1階16列10、母と観劇
9月18日 1階8列50→ビデオ収録日


劇場:
宝塚大劇場



HP主人 森(=SUN)筆。

「宝塚トップは人間ローソン」
と、昔あるトップスターさんがおっしゃっていた。
それほど、激務。


と、金子さんは文末の<金子のよしなしごと>に書かれてます。
ホントそうでしょうね。
宝塚の公演日程を見る度に「ハードだ…」と思う私(森)です。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。




<1階1列>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 前回の星組の反動か、今回の雪組は宝塚友の会がなんと一番前を当ててくれた。
1階1列に座ると次の2点が焦点となる。

〔1〕後ろを向けば2階席の状況がよくわかる
→9月4日は数えられるほどしかいなかった。
 全員1階A席でよければ下りてきても十分座れる状態。

〔2〕フィナーレのパレードの時に自分のまん前に誰が来るか
→今回は白羽ゆりだった。
 実は行く前から、
「1階1列なら3ヶ月の受験勉強で音楽学校に受かったという
 白羽をじっくりみてきてやる」
 と思って出かけたので、ばっちりだった。
近くで拝見すると、超宝塚的美女だし、中堅女役にはなかなか感じないオーラを感じた。
3ヶ月で受かるはずである。





ミュージカル・プレイ
Romance de Paris


作・演出:正塚晴彦


<出演者>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

宝塚歌劇団 雪組&専科

   ヴァンサン・シュバリエ(クラブアラベスクのオーナー):朝海ひかる
 ナディア・ジャミーラ(パリに留学中のアッバス国王の息女):舞風りら

        ラシッド・サラム(ファデル将軍付きの武官):樹里咲穂
          ムシャヒド・ナセル(領事館付き広報官):貴城けい
   バンジャマン・ルルーシュ(クラブアラベスクの支配人):未来優希
ディディエ(石油会社アラカトの社長、ヴァンサンの義理の兄):壮一帆
           ディミトリ(クラブアラベスクの店員):音月桂
     パトリシア(ヴァンサンの異母姉、ディディエの妻):白羽ゆり
             アティファ(ナディア王女の女官):愛耀子

専科= 樹里咲穂
他、雪組


<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 パリでクラブを経営するヴァンサンと、
本国でクーデターが起こり身の危険の迫った、留学中の王女ナディア。
二人は恋に落ちるが、身分違いの恋にはほろ苦い結末が・・・。

華やかなクラブのシーンやバリエーション豊かなナンバーを盛り込み、
束の間ながら純粋に恋に生きた大人の夢物語を、笑いとペーソスを交えながら描く。

(ちらしより)


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「あの政治の話、プログラム読まないで分かる人がいる?
 いや、私はまだ役者の顔がわかって識別して観ていたから
 ましかもしれない」(母)

「プログラムによると『難しいことは考えず』ですって?
 ロマンスのところ以外の話の筋を追うのに
 頭を使わない人なんているでしょうか?」(金子)

 まず1言、脚本が悪い!
娯楽作なんてとても思えない。
ラブストーリーも強引に最後にくっつけたような感じだ。
ショーがなかったら「金かえせー」と叫んでいたかもしれない。
これが、あの知的ゲームすら盛り込んだ『カナリア』を書いた
正塚先生の作品とは思えない。

大体、クーデターが起こったことによる政変をなんとかしようとするのがパリという、
いわば遠隔操作で実際どういう風になっているのかは
口で語られるだけではわかりづらい。
その上、プログラムによると「モノローグを多用してスピード感」とあるが、
むしろこれにより話がさっさと進んでしまうので余計わからなくなる。

実は、金子ははじめこの話の筋を母に口だけで説明しようとしたのだが
「あんた、すごく説明しにくそうじゃないの」といわれ、
プログラムを取り出して読みあげたのだが、
プログラムなど買わない阪急友の会の会員の招待会では、
幕間はちらしと、誰かが見つけたのか、
改札口の入ったところにひっそりとおいてある、
プログラムを買わない人用の緑の紙が飛び交っていた。
やはり、根本的に観客が「?」になる芝居はだめだと思う。
これでは、普段の日は2階に人が入らないはずだ。
東京までに改善をお願いしたい。

 しかし、高橋城先生による曲は、
パリのシャンソンの匂いを感じさせる雰囲気のある曲が多くて、
特に「♪綴れ織り」などはパリらしかった。
それでも30点。
相当ヤバイ。
あとは人別に。


 朝海ひかる
これといって、目標も信念もなく「あるがまま」に生きている男が、
父の遺志を継ぐのと王女を助ける必要が重なったことで
これからの人生が変わっていく、という役だ。

朝海の「とらえどころのない」(プログラムによると「飄々とした」)魅力を生かした、
座付き作者ならではの設定の役である。
朝海はクラブでの「俺はこれで気楽にやっているのだから」というあたりは
いかにも世慣れた遊び人らしくて、一方王女が連れ出されそうになると
「クラブの経営者だからといっても俺にも事情があるのだ」
とだんだん熱く変わっていくところが上手く出せていたと思う。
スターの長所を良く見抜いて書かれているのでやりやすいのではないか、と思う。
前作よりはずっとトップらしく感じた。


 舞風りら
自分の「あるべき姿」をわかっていて、清楚で、楚々としたお姫様である。
花にたとえればピンクのカーネーションとでもいうべきか。
この手の役は宝塚にはよくありがちだが、最後にヴァンサンと恋に落ちるのが
「いつもの宝塚のパターン」と違うところだろう。
最後まできちんとまとめていたと思う。
ただ、1ついわせてもらうならば、モノローグにも言われるほどなのだから、
もう1段高い気位を初めの登場では見せたほうがいいのではないだろうか。
最後のデートのシーンでの1人の女性としてのヴァンサンへの思いがつのるところは
よかったので、王女と女性である両面を上手く出し入れできればもっと良いと思った。


 樹里咲穂
この芝居の登場人物の中で一番難しい役ではないだろうか。
一見、たたき上げの軍部にべったりの武官に見えるが、実は国王を助けたくて・・・、
という人物である。
樹里は髭をつけて重圧感を増した創りで、最後には納得の行くようになっていた。

ビデオ収録日に思ったのだが、やはり上級生。
朝海・舞風が台詞をかんでしまうなかで彼女は台詞・歌詞がわからないところがなく、
専科の実力を感じた。
ショーも含めて感じたのは、樹里は実力のある演技者という重みだけではなく、
清涼感も残してくれる、宝塚にとっては貴重な人材だな、ということである。


 貴城けい
お坊ちゃんで押しが弱いが、真面目で国に忠実で最後は名案を思いつく広報官である。
ヴァンサンに言われるままに囮を引き受けることになり、
女官のアティファにつっけんどんに言われるなど、
ちょっと2番手がやる役としては珍しい役であるが、なかなか面白かった。
彼女は先のバウホール公演『アメリカン・パイ』でも、
あれだけ発散のしにくい役をこなしていたので、役に関しては問題なく観ていられた。
台詞の声も大分低いのが安定して出せるようになってきたし、
ここ2年ほどで急に充実してきたように感じる。


 未来優希
前作と比べると役が大分軽いのだが、歌を始めきちんと締めるところは締めていて、
専科が出演するとこんなものかな、と思った。
もう少しみせてもらいたい感もするが。


 壮一帆
「2代目はダメ」の烙印を押されまいと仕事命で、自己中心的な人物である。
あえていうならば、主人公の敵役なのだから、
自分の計画が崩れるところまではもっと高飛車で悪態をついていいと思う。
そうすればこそ、パトリシアしか頼る人がいなくなり崩れるところとの
コントラストがはっきりすると思うのだが。
壮は、この悪態をつくところに少し物足りなさを感じる。
もっと嫌味な野郎でいいと思うのだが。
東京に向けて改善を臨む。


 音月桂
クラブの店員だが、ショーシーンでは十分中心でみられるようになったし、
あとの芝居のところでも力が抜けた感じでこの人の若い魅力が出ていると思った。


 白羽ゆり
優しくて、知的で、徳のある、ディディエが言うように「素晴らしい女性」で、
その上美人がやっているものだから、金子など
「こんな女性がごろごろいたら、自分などカスだな」と思うほど出来た女性である。

白羽は昨年の『追憶のバルセロナ』の頃に比べて、役のつかみ方が的確になっていて、
上昇気流を感じる。
こちらは花にたとえるならばすみれ、というところだろうか。
中堅クラスの女役のいる組はそれなりに役が回っても安心して任せられる。


 最後に王女に忠実なのだけれど、どこかつんつんした女官の愛耀子が、
最初の歌からこの作品にスパイスを与えていることを忘れてはいけないだろう。

 以上、芝居の感想はこれで終わる。




レビュー・ファンタティーク
レ・コラージュ
−音のアラベスク−


作・演出:三木章雄

宝塚歌劇団 雪組&専科 


<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 人間は様々な‘音’に囲まれ、包まれ、抱きしめられて生きている。
ある時は、その音の美しさに引き寄せられ、
またある時はその音の激しさに脅かされ、
またある時はその音の温かさに励まされながら・・・・・。

 波の音、
ナイチンゲールのさえずり、
ボイラー室の蒸気音、
耳をつんざく汽笛。

 人間が最初に発見した喜びである足踏みからダンスが生まれたように、
生きていく上で大切な、様々な発見と感動につながる音の世界の不思議を巡るショー。。

(ちらしより)


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「『ベテラン』と言われるようになった三木先生らしく、
 手堅くまとめたバラエティショー」



 三木先生も「ベテラン」になったな、と感じさせられる破綻のないショーであった。
なにせ、金子が宝塚ファンになったころは(悲しいかな27年のファン歴)
三木先生はまだ旧「グラフ」に毎月面白い文章を書いておられて、
ガキの金子でも楽しく読んでいて、まだ「新進の」先生だったのに、
海外公演を手がけられたりするようになって、
とうとう「ベテラン」の域に入られてしまったようである。
今回は、第6章のノスタルジックな場面で特にそれを感じた。
こういう場面は今までなら岡田先生専門、という感じだったのに。

「バラエティショー」というと、
「なんかごちゃごちゃ一杯あったね」か
「あの場面が良くて他にも色々観られて良かったね」のどちらかに傾くと思うのだが、
初期の三木先生、現在の藤井先生・齋藤先生は前者であるが、
後者になると色々観させてもらって満足感を覚える。
今回は後者だ。
点数をつけるなら、90点。


第1章 プロローグ〜夢のコラージュ〜

 メインキャストを上手く色分けすることでどんどんと出していった、
これまた「手堅い」演出である。
まず、まだトウシューズで踊ることが出来る舞風りらの実力には感服するが、
その後の赤の壮一帆、赤いスーツ・・・似合ってない(ファンの方すみません)。
もっと派手に自己主張するようでないと赤いスーツは着こなせないのだ。
歴代の赤いスーツが似合った先輩はどうだったか(誰とは言わないが)
比較していただきたい。
朝海ひかるの女役は男を突き放したようなところが魅力だ。


第2章 なっつくらっかあ?〜バレエのコラージュ〜

 「胡桃割り人形」の宝塚版か何か知らないけれど、東京はいいだろうが、
この関西の残暑がクソ熱い時に「メリー・クリスマス!」は
勘弁していただきたいところである。
それにこの場面は音月桂の場面なのですよね・・・・、
いやプログラムに「1つの場面任された責任」と書いてあるのだから
そうなのですよね・・・、
樹里さんは芯の場面が多くあるのでいいとしても、壮一帆の場面はないのか?
中詰めの最後に3人で(!)銀橋を歌って渡るだけ?
どうも昨今の歌劇団人事からして、こういう設定はさっぱりわからん。
その音月であるが、早くから新公主役をやるように、
キャリア以上の水準のものを見せる人だが、
今ひとつ「小器用」にまとまってしまっている感がする。
こういう場面でこそ思い切り弾けてもらいたいものだ。
彼女はこのあたりで一つ、いままで出来たものを破壊して
新しい演技者像を作るときにきているのではないか。
この場面での唯一の見所は舞風のエレガントな靴の履き方。
「女」という感じがする。


第3章 ナイチンゲール〜童話のコラージュ〜

 貴城けいが冷酷なプリンスに扮した場面である。
芝居とうって変わって2枚目路線の貴城は今、
宝塚で「プリンス」という設定がもっとも相応しい人であろう。
貴城を囲む、機械のナイチンゲールの愛耀子は芝居から歌と共に大車輪の活躍だし、
無機質な表情が機械の鳥をよく表している。
また、本物のナイチンゲールの天勢いずるは男役と思えないほどしなやかで可愛かった。
この2人の対比が面白い場面であった。


第4章 時のコラージュ

 朝海ひかるのダンスの魅力は「端正」ということだとおもう。
これは相手役の舞風もそうなので2人のデュエットダンスが良いのだが。
その「端正」を引き出すのはこの場面担当の若央りさ先生の振りだと思う。
現役時代がよく反映されているな、と思ってしまうのだが。
ここは、ほとんどのメインキャスト出演なのでもう少し踊りこんでもらいたかった。
でも、朝海に一番あった場面であるような気がした。


第5章 リズムのコラージュ

 ジャズを思い切り使った中詰めである。
三木先生はかつて『ジャズマニア』というショーを創られたほどなので、
ジャズは金子も三木先生のショーと共に覚えた、という印象がある。
今回もガーシュイン・ポーターと王道をいっている曲が使われているので
安心して観ていられた。
印象的なのはカーテン前の貴城けいにからむ森央かずみが
まさにジンジャー・ロジャースばりの髪型で出てきたことだ。
上級生の心意気というところだろう。
また「♪ラウンド・ミッドナイト」で踊るところはカウントがとりにくいだろうが、
樹里中心に良く踊っていた。
そして朝海の「♪ジャスト・イン・タイム」はなぜいままで使わなかったのだろう、
と思うほど耳障りのいい曲なので使われていて安心した。
最後はタンバリンを使っての楽しい中詰めだった。


第6章 記憶のコラージュ

 このショーの中では一番好きな場面である。
今は阪急チェーンのホテルの壁に飾ってある、
旧大劇場の緞帳を思い出させる背景もいいし、メインキャストは全員でているし、
衣装も秋を感じさせていい。
前半の全員が踊るところはジャヴァのリズムが心地よい。
こういう、いわゆる「静」の場面もショーには必要だ。
55分ジャンジャンとイケイケではメリハリがつかないのだ。
こういうことが出来るのが、いわゆる「ベテラン」の先生のなせる技だろう。
しかし、後半の朝海が1人で踊るところは少し不満が残った。
(ファンの方はここから読まないで下さい・・・・)
上に書いた『ジャズマニア』の紫吹淳版にこれと同じような設定の場面があったのだが、
どうしてもそこと比べてしまうのだ。
まず、着崩していくとこで、男の色気、みたいなものを感じられない。
そして、これは朝海のダンスのこれからの課題だと思うが紫吹に比べて緩急がない。
前に書いたが「ダンスの名手」と言われる人は、緩急のつけ方が上手い。
朝海のダンスに「端正」に加え、「緩急」がついたら磐石だろうに。


第7章 フィナーレ〜波のコラージュ〜

 貴城のロックの場面はあまり趣味がいいといえない。
しかし、次の樹里を中心とした黒燕尾での樹里の踊りはこのショーのハイライトだ。
ハイレベルのスピードとキレで踊る樹里には隣の未来優希でさえついていっていない。
ましてや相手役の白羽ゆりなどたばたして見える。
白羽はダンス力の向上が早急の課題だろう。
最後のトップコンビのデュエットダンスは白い衣装で清涼感があってよく息が合っている。

 ということで色々書いてきたが、これで終わる。
お付き合いくださり有難うございました。


<金子のよしなしごと>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 今回は「スターご観劇」。

 金子が大劇場で観劇するのは大体木曜日の3時公演
(昨今はポストカードがもらえる)なので、
よく宝塚スターさんご観劇と一緒になることが多い。
昔は、客電が暗くなってから入ってくる人が多かったのだが、
5分前ぐらいに堂々と1階2列センターに座られる人もいる。

これは昔と変わらないことだが「スターのオフを激写」という人がいる。
金子は昔ならカメラ、今ならカメラ付き携帯を持っていても撮らない。
やはり、オフはオフだから、そうパシャパシャするのは失礼かなと思うからである。

しかし、7月に星組公演に行ったときは、宙組トップコンビが揃って来ていた。
金子は2階だったから、ちょっと首を伸ばして
「ああ、見えないわ」とさっさと諦めていたのだが、2階でもいる!
携帯付きカメラで撮ろうとする人!
写るのかー、と馬鹿な心配をしてしまうが1階はそんな騒ぎではなかった。
彼女らが入るところの通路(つまり一番いいところ)には
開演15分前から携帯にぎりしめた激写組が構えていた。
はあ〜、である。

撮るのがいいとか悪いとかそんなことはその人その人の良識だからなんとも言わないが、
2階から見ているとちょっと異様であった。
携帯握り締めてスタンバイしているの。

金子はたとえ他の劇場でも宝塚スターさんに会っても、
それこそ「拝ませて」もらったらいい、と思っている。
昔、あるトップスターさんが「宝塚トップは人間ローソン」
とおっしゃっていたほど激務なのだから、
オフはそっとしてあげたいなという気持ちである。
今回は以上で。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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