■■■AYAの観劇記■■■


新歌舞伎座特別記念

杉良太郎公演


連続最多48回出演



2003年 7月1日(火)〜25日(金) 大坂 新歌舞伎座


観劇日
7月7日1階10列17 (夜の部)

劇場大坂 新歌舞伎座


HP主人 森(=SUN)筆。

客席交流。
素晴らしい。

今回はモメそうになったらしいですが、
それも、よいでしょう。

それにしても、
「杉さま」。
私は誰かに無理矢理連れて行かれないと行かないだろうな。
でも、何か、行ってみたい気もするんだけどね。

やっぱ、観た事がないものは、観てみたいじゃない。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。




新歌舞伎座特別記念

杉良太郎公演


連続最多48回出演


<杉サマ>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 昨年、高いお金を出して「清水の舞台」で行った、杉良公演、
2トンの紙ふぶきの雪は凄かったけれど、正直「金さん」が観たいな、
と思うことしきりであった。

というのは、金子がはじめてみた時代劇は、
お昼に再放送されていた杉サマの「金さん」で、
「♪すきま風」に合わせて、本当はさして長くない廊下を
粛々と長袴で歩くエンディングは、
「はー、これが時代劇というものか」
とインパクトが強かった。

ということで、今年は、「金さん」でなければ、新歌舞伎座に行く気はなかったのだが、
十八番の大当たりが上演されては仕方ない。
オンステージは付録として(すみません)、
「この桜吹雪が目にはいらねえのか!」の決め台詞、
是非生で聞きたいので、13000円払って行った次第である。

 しかし、「金さん」というのは、時代劇スターの皆さん、お好きなのですね。
梅田コマ劇場では、細川たかしさんの「金さん」も予定されているし、
東京の明治座では西郷輝彦さんもやられるとか。
誰が1番、などといえないだろうが。

ま、金子にとっては「金さん」=杉サマなのである。
新歌舞伎座、出場50回で杉さんは座長公演をやめられるそうだが、
演目はどうあれ、最後は少し行ってみたい気がする。


<よくみわたすと>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 昨年は「満員御礼」の札が出ていたし、
あたふたとプログラムを読んで本筋に入った気がするが、
今回は隣のおばさまがどうも1人で来ていらしているようなので声をかけてみた。

金子「今日は『満員御礼』ではないのですね」
隣「あなた、なんで来ているの?」
金子「えー(上の理由を話す)なのです」
隣「ふーん、ねえ、客席にいる全員であなたが一番年若じゃない?」
金子「そうですかぁ(見渡して)そうかなぁ・・・そうかも」
隣「そうよ!杉さんのファン?」
金子「違います!生の『金さん』が観たいから来たのです」

 というようなノリで、その方とは休憩時間ももりあがって、色々な話をした。
例えば、金子が「絶対、松井誠はいい!」とか、
隣が「松平健は次どこでなにをやるの?」とか。
そして最後には助けていただいた。
なんせ周りはほとんど金子の二回り年上ぐらいの人が観客だったので。
それは最後に書く。


〔1〕遠山の金さん −江戸のおらんだ囃子− −−−−−−−−−−−−−−−

陣出達朗 原案
山野四郎 脚本
杉良太郎 演出

 「よっ、時代劇の御大、杉良!」

 この筋の「金さん」は、昭和59年から何度も上演されているようだが、
あまり物語としてはドラマチックではなく、TV版の方がいいような感じがした。

それと、間に休憩30分が入ってしまうと、物語が切れたようになり、
一気に95分でやってしまうほうがいいと思った。
しかし、それもこれも杉サマの都合であろう。
2部で合計約100分のうち、宝塚を見慣れている金子にとっては、
新歌舞伎座の呪い(そこまでいうか)の音楽がながれるだけで
装置&衣装かえの暗転(約2分)が各場にあり
そこでいちいち流れが切れてしまうのは正直困る。

しかし、杉サマもお年(58歳だそうな)だから、
40代の松井誠のようにどんどんとやっていては千秋楽まで持たないのであろう。
だから、隣のおばさまと意見が一致したのだが
「なんか、楽をしようという設定」になっているのである。
見終わってから二人で
「こういうものだね、ということが分かったらそれでいい、ということかな」という
「金さん」であった。

演目としては、昨年の『下北の弥太郎 からっ風の子守唄』の方が、
最後の2トンの雪もあり良かった。
それと、2部のオンステージで杉サマがおっしゃるのを聞いていると、
もう1つの演目(昼夜入れ替え)の『殺陣師段平』の方が実質3役で、
早変わりありなので体力がいるらしく、そちらの方が見応えがあったかな、と思った。
しかし、もう13000円は払えません。
もう納得しておきます。

 金さんの杉サマ。
TVと違って、各場で遊び人と奉行を演じ分けるのだが、
もうこの役は十八番でまあ皆さんもご存知の決め台詞などはつぼにはまっていて、
「待っていました!」と掛け声がかかるほど「これぞ時代劇」であった。

家に帰って、両親に「『金さん』といえば誰?」と聞いてみたら、
二人とも松方さんをあげたが、金子にとってはやはり杉サマである。
「生金さん」をみてつくづく思った。
あの時代劇特有の台詞まわし、というのは演歌のこぶしのようなもので、
なかなか出来る人はいないな、と思った。
また、それが決まることで時代劇は成り立つのである。
1975年以来演じておられる「金さん」だが、
松平さんの徳川吉宗はまだ1つ追いつかないキャリアを感じた。

 ニセのオランダ人公使の振りをする、本当は前科者の日本人役の団時朗さんだが、
洋物の芝居の方かと思っていたら杉座長公演には初参加とのこと。
体格がいいので、十分オランダ人にみえ、また、ほとんどオランダ語の台詞だが、
最後に金さんに鬘をはがされるところまで公使らしくみせたのは
なかなかの食わせ物の人物を造形していた。
スキンヘッドにしてまでの熱演である。

 実質上のヒロインのおすみ役の筋田詩織さんだが、いくつなのだろう。
盲目の薄幸な少女をけなげに演じていた。
泣くシーンでも、涙が何重にも溢れ、これからが楽しみな存在である。
多分彼女のことを言われているのであろうが、杉サマがオンステージで
「子供はいいですね。役に没頭できるから。大人は『恥ずかしさ』があるからいけない。
 涙や鼻水が流れてきたら思わず拭いてしまいますよ。でも、子供は拭かないですね」
と言っておられた。
確かにそのとおりで、TV時代劇の下手な女優さんなどよりはずっと良かった。
ただ、彼女の役が盲目の設定なので、最後に「奉行=金さん」というからくりが
彼女に分からないまま終わってしまうのは
筋としてはいま1つ、「お約束」がない気がした。

 ニセのオランダ公使の通詞の振りをする浪人役の田畑猛雄さんは、
滑舌がはっきりしていて、老中など重臣に計1万両だすように強要するシーンなどは
押し出しが良かった。

 最後にいつも杉サマの相手役をされている葉山葉子さんだが、
この筋では金さんを知る、長屋のおかみさん、という脇にまわっているが、
いつものはんなりとした風情を感じさせず、世話物に回っているところはキャリアだろう。


<休憩時間>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 また隣のおばさまと盛り上がってしまった。
オンステージでの曲目を調べて盛り上り、芝居の感想は言いたい放題で、
そして最後に
「杉サマ疲れているよ。
 こういう年齢が上の人の座長公演は、初日に近いうちに来なくては駄目ね」 という結論にいきついた。


〔2〕杉良太郎オンステージ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

杉良太郎 構成・演出

 「杉サマ、そろそろ座長公演も
 『これにて一件落着』するときが近づいてきましたね」


 まず、杉サマが競り上がってくると、隣のおばさま

「もう疲れているよ」。

たしかにそのようである。
この日は2回公演だし。
歌は「♪すきま風」は「金さん」をやっているのだから歌わないといけないだろう。
(ちなみに、芝居の最後のBGMもこの曲であった)
あと、曲の間の「語り」の上手さは流石役者、と思わせられるのは「♪瞼の母」であった。
昨年も聞いたような気がするが、隣のおばさま曰く、
この曲はオリジナルで歌っているのは中村美津子さんだそうで、
一度そちらも聞いてみたくなった。

 曲の間のトークはまあ、愚痴ですね。
「ああ、しんどい」にはじまって、
「誰も助けてくれないから」
「二演目1日にやると、『金さん』で『段平』をひきずってしまいそうになる」、
挙句の果ては
「48回も新歌舞伎座に出ているのですよ。
 もう、ファンの半分は死んでいますわね。残りのファンであと2回頑張りましょう」
と来た。
金子と隣のおばさまは
「もうこないのに」とか
「残りのファンに勝手にしないで」
と客席で大笑いしていた。

 しかし、その後が昨年と違って時代劇役者らしい場面が並んでいた。
津軽三味線と真剣による剣舞である。
三味線のほうは、金子の知る限り細川たかしさん並の腕前で、
「時代劇役者にはこういう下地が必要なのだな」と思った。

そして剣舞であるが、御座を丸めたものが、
下手に3本、上手に2本とその御座を3本くくったものが中央に置いてあって、
それを本当の日本刀で切るのである。
ここは凄く集中力がいるのだろう、なかなか出てきてから1本目まで時間がかかった。
それもただ1箇所だけ斬るのではない。
3回の振りで1本の御座を3つに切るのである。
これは見応えがあった。

しかし、最後の3本のものは1本切れなくて、
「あんたたちが悪い。1本残しておくのも技術がいる」
と私たち観客のせいにされてしまったが、あれは切りそこねだろう。
一日に2回もこんなことをやっていては大変だな、
ま、仕方ないか、と大目に見てしまった。
この真剣の剣舞も今回が最後だそうである。

 そしてエンディングにはいるのであるが、ここでは「手拭まき」というものがある。
約30枚のくくった手拭を客席に飛ばしてプレゼントするのであるが、
去年はS席では全然飛んでこなかったし、SS席の人がここぞ、と
きゃあきゃあと言ってもらうので、今年も手拭が出てきた次点で諦めていた。
それに大体杉サマはSS席に飛ばされる。
しかし、若い男優さんなどは10列以降にも投げてくれるが。
すると、なんということか、金子の右隣の空席のところに、
若い女優さんが飛ばしてくれたものが落ちたではないか。
右側は3つ空席があったので3つ向こうに座っている人には拾えない。
思わず貰ってしまった。

家で考えると、座席配置上、この手拭、SSかSの正面センター席でないと
ゲットするのは無理である。
で、オンステージは終わった。
しかし・・・

金子「いやー、貰えた。2度目の正直だわ」
隣 「よかったじゃない。記念になるよ」と言っていたら・・・、前から
前 「あなた、それ取ったの?」
金子「え?」
前 「私、あなたより1000円高い席に座っているのよ!」

金子、あまりのジェラシーに満ちた視線に当惑してしまった。
すると、隣のおばさまが助けてくれたのである。

隣「この人の隣に落ちたのだから拾ったのよ。しょうがないじゃない!」

やはり、同年代同士は強い。
おかげで、手拭はいただけました。
隣の方、7日は有難うございました。
楽しかったし、手拭はゲットできました。
で、家に持って帰ってその手拭を両親と広げてみたのであるが、
ちゃんとサインや公演期間や新歌舞伎座という文字や絵など入っており、
かなりの「お宝物」ということが分かった。
で、上の話をしたら父
「その人、本当のファンでこの手拭、コレクションするつもりだったのではないか?」
と言われた。
なるほどつくづく見ると、価値がありそうである。
いい土産が貰えた。
これで感想は終わる。
でも、来年は行かないだろうな。


<金子のよしなしごと>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 宝塚からはじまった金子の観劇人生であるが、
10年ほど宝塚ばかり見ていると次の3つは演劇ファンとして制覇しておきたいな、
と思うものがあった。

〔1〕藤山寛美の人情芝居→思い切り泣かせてもらおうじゃないの
〔2〕杉良太郎の座長芝居→そんなに奥様方が熱狂するなら観てみようじゃないの
〔3〕沢田研二のコンサート→失神する人が出るまでならば1度聴いてやろうじゃないの

 という3つなのだが、
まず〔1〕は直美さんで昨年『桂春団治』で堪能させていただいた。
〔2〕に関しては、昨年と上の文のとおりである。
意外とチケットがとりやすい、という感じ。
最後の〔3〕に関しては、今年の6月1日に行った。
2時間5分休みなしにほとんどシャウト系の曲を歌うジュリーには、さすが、と思った。
いまどきは、歌手くずれで時代劇や俳優や
あるいはミュージカル俳優に転向する人が多いが、あのジュリーの歌を聴いたら、
「ああ、この人は歌うことがやめられないな」とつくづく思った。
俳優だけでは勿体ない。
今年は音楽劇のほうは関西にこないので、本当に残念である。

 ということで、3つクリアしたのだが、〔3〕はまた行きたいな、と思っている。
それでは今回はこのへんで。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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