■■■AYAの観劇記■■■



ミュージカル
「モーツァルト!」

東宝創立70周年記念公演



2002年 10月 5日(土)〜10月31日(木) 日生劇場
2002年 11月 5日(火)〜11月20日(水) 大阪 シアター・ドラマシティ
2002年 12月 3日(火)〜12月29日(日) 帝国劇場


観劇日:2002年11月 6日  4列34(中川版)
    2002年11月18日 13列26(井上版)

劇場 :大阪 シアター・ドラマシティ



HP主人 森(=SUN)筆。

そうかい、金子さん両方のモーツァルト観たかい。

あああ。
私も観たい。
帝劇に行けるかなあ。

モーツァルト好きだなあ。
「モーツァルト!」でなくって、モーツァルトさんのほうのことね。
この人の明るい曲って、もう本当に底抜けに明るい。
まさに軽やか!
しかし、殊更「明るい曲」っていうことでなくても
全編明るさが貫いているような気がする。

なんかもう曲が「頭から溢れて出ちゃいました」
みたいな。
おまえ、譜面書き直しとかやってないだろ。
みたいな。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。



ミュージカル
「モーツァルト!」
東宝創立70周年記念公演


脚本・作詞/ミヒャエル・クンツェ
作   曲/シルヴェスター・リーヴァイ

演出・訳詞/小池修一郎

オリジナル・プロダクション/ウィーン劇場協会

音楽監督/甲斐正人
美  術/堀尾幸男
照  明/勝柴次朗
衣  装/有村淳
歌唱指導/楊淑美・山口正義
振  付/前田清美
音  響/大坪正仁
ヘアー・メイク/宮内 宏明
舞台監督/廣田進
演出助手/佐藤万里・ 八木千寿子
オーケストラ/東宝ミュージック(株)
      (株)ダット・ミュージック

指   揮/塩田明弘

プロダクションコーディネーター/小熊節子
翻訳協力/萬代倫子・名和由理
製   作/岡本義次・坂本義和(東宝)
      古沢真・渡辺裕(ドラマシティ)


<メイン・キャスト>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ヴォルフガング・モーツァルト(ダブルキャスト):井上芳雄/中川晃教
        レオポルト(モーツァルトの父):市村正親
               コロネード大司教:山口祐一郎
      コンスタンツェ(モーツァルトの妻):松たか子(10-11月)
                        西田ひかる(12月)
         ナンネル(モーツァルトの姉):高橋由美子
     フォン・ヴァルトシュテッテン男爵夫人:久世星佳
  セシリア・ウェーバー(コンスタンツェの母):阿知波悟美
カール・ヨゼフ・アルコ伯爵(コロネードの部下):花王おさむ
    エマヌエル・シカネーダー(劇場支配人):吉野圭吾


<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 6年前日本で初演されたミュージカル「エリザベート」は空前のヒット作となり、
その作詞・作曲コンビである、ミヒャエル・クンツェ(詞・脚本)と
シルヴェスター・リーヴァイ(作曲)は一躍その名を知られるところとなりました。
この二人が「エリザベート」の次にミュージカルの題材として求めたもの・・・・
それが、「モーツァルト!」です。

 オーストリア、ザルツブルグに生まれた
大作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756年〜91年)。
天才の名声のもとで、真の人間的自由を求めて苦悩する人間モーツァルトの姿を
ドラマチックにあぶりだし、ミュージカル化。

 クンツェ=リーヴァイの人々の心を魅了してやまない名曲と、
歴史的人物の背後に隠された真実を描き出すスリリングなドラマは、
「モーツァルト!」でさらに磨き上げられました。
また、迫力あふれるロックから美しいクラシカルな曲調まで、
幅広いジャンルの音楽に乗せ、緊迫したシーンを次々に現出させます。

 日本版の演出は「エリザベート」でウィーンミュージカルを知り尽くしている小池修一郎、そしてキャストには日本のミュージカル界を担う豪華キャストが集結しました。
どうぞ、ご期待ください。

(ちらしより)

<ストーリー>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 幼いころから神童としてその才能を発揮していたヴォルフガング・モーツァルトは、
その芸術家としての才能ゆえに葛藤する。
常に神童のイメージを押しつける父親、
彼の才能の独占を図る領主司教コロレード、
そして世間は嘘や陰謀で彼を陥れる。
ありのままの人間モーツァルトを愛するコンスタンツェや姉ナンネルの愛情も、
彼を救うことはできない。
彼は自由を求めてもがき苦しむ。
だが、何よりも強く、彼を束縛しているもの
ーそれは自分自身の才能という名の悪魔であった・・・・・。

(ちらしより)


<はじめに>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 昨年9月、四国の元友人に頼まれて、
やっと星組の「ベルサイユのばら」のチケットを取ることができて、
彼女が来阪し、観劇後ゆっくり話をしたのだが、
その彼女はゴールデンウイークにオーストリアに行ってきたそうだ。
それで、なんでもいいからウイーンミュージカルを観たくて、
この「モーツァルト!」を観たらしい。
その彼女いわく、
「ドイツ語のドの字もわからなかったが、もう全身鳥肌が立った」というのだ。
そして続けて「あなた、そんなにミュージカルファンなら、観ないと損だよ!」と来た。
当時、金子はウイーンまでいくお金も、ドイツ語もさっぱりわからなかったので、
「日本版があれば観てもいいけど」とかわしておいた。
すると、12月の大地真央さんのワンマンショーに行った折に、
この「モーツァルト!」のちらしを受け取った。
「これが、あの彼女が言っていたやつか。
ま、日本版なら観てもいいか」と思って、かねがね楽しみにしていた。
しかし、モーツアルト役がダブルキャストというのを聞いて、
どうしようかな、と思ったが、ない袖を振って、両バージョン観ることにした。
発表されたキャストも豪華だし、期待を膨らませて劇場に行ったわけである。


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 「『天才』という『影』から逃れられなかった一人の青年の悲劇」

   なんやかんや書く前に、金子の体感からかいておこう。
すごいミュージカルだった。
1回目の6日はその晩は一睡もできず、次の日は色々をパスして
とうとう布団に倒れこんでしまった。

この「モーツアルト」のテーマを上のように考えていては、
「いや〜私、子供のとき『神童』ではなかったから理解できないわ」
と引いてしまわれる向きがあるかも知れない。
では、この「モーツアルト!」のテーマを次のように考えてみてはどうだろう。
「1人の青年の失敗続きの苦悩の人生」。
この「失敗」は

^ 幼少時は『神童』と呼ばれ、世界を旅行できても、
  長じては、大司教に支配される一介の音楽家という認識の失敗
_ 家族の崩壊という失敗
` 父と生涯理解しあえなかった失敗
a 妻と心から愛し合えなかった失敗
b 父の死後、自立できなかった失敗
c 人生設計を誤り、借金だらけの生活という家計の失敗
d 最期に自分の人生の幕引きを自分でしてしまった失敗

と考えていけば、人間モーツアルトの苦悩、
という観点から共感できる部分もあるかもしれない。
人によって取りようは色々あると思うが、金子はこのように提起させていただく。
さて、キャストのほうに。


  モーツアルトの中川晃教(6日)は初舞台ながら
物怖じしない素直な取り組みで好感を覚えた。
歌は、全体的にポップ調・ロック調だが、
低音のテンポが早い部分になると歌詞が聞き取りにくくなるのは
改善の余地があると思った。
しかし、歌い上げるところのパーンとしたインパクトのある歌い方は
聴いていて気持ちよかった。
演技はまだ荒削りだが、若さをぶつけた自由奔放なモーツアルトで、
最後の熱病にうなされたように「レクイエム」を書き、
アマデと手をとって死ぬ場面は、悲劇性が高まって、最後で帳尻を合わせた感じだ。
もう少し、父との断絶の悲劇、コンスタンツェとのすれ違い、
アマデに象徴される「過去の栄光」という「影」から逃げられない
逼迫した緊張感などが計算して演技できれば、
これからミュージカルの話もどんどん舞い込むであろう。
本職はシンガーソングライターだそうだが、
これからミュージカルも活動の1分野に入れてほしい20歳の若者だ。
なんと、スタンディンクオベーション100%。


 もう一方のモーツアルトの井上芳雄(18日)は、
バラードの曲は圧倒的な歌唱力を示すのだが、
残念なことにこのミュージカル自体の全体の曲調が、ロック・ポップ系で、
「僕こそ音楽」は高音の伸びはさすが、と思ったが
「影を逃れて」などはシャウトする曲なので、
もう少しインパクトのある歌声がいいのでは、と思った。
しかし、演技は父が死んだあと、もう誰も自分をガードしてくれない、
自立しなくてはならない、だけど出来ない、
といったところの苦悩はよく表現できていたと思う。
ただこの場面が「井上君の大ミュージカル俳優へのあがき」
と重なって見えたのは金子1人か。
全体的にやんちゃで、世間知らずの坊や、といった感じだが、
このタイトルロールをやることで、
彼の舞台歴に大きな1ページが加えられたのはいうまでもない。
スタンディングオベーション70%。


 さて、ここで
「まだチケット買ってないのですけど、どちらのバージョンがお勧めですか?」
と聞かれたら、金子は中川版をお勧めする。
チケットの取りやすさ(失礼!)と意外性と、
このミュージカルの音楽に中川君のほうが合っているような気がするので。
CDも両バージョン買ってしまった。


 コンスタンツェの松たか子
小池先生によると「生きている『天才』」だそうだが、
そう彼女が言われるのは、舞台において役との乖離がないからだろう。
舞台にでると、松たか子ではなくて、コンスタンツェそのものなのだ。
この役は、夫から人間的にも愛されず、また芸術家の妻として、
夫の仕事にインスピレーションを与えることもできない、
二重の苦しみから刹那的ダンスに出かける、というのだが、
松さんの「ダンスはやめられない」の歌はなかなかパンチがあって聴き応えがあった。
天才の一面を見せられた感じだ。


 モーツアルトの姉、ナンネル(プログラムではナンネール)は、
楚々として、家族の崩壊を憂い、弟と父の板ばさみになり、
自分も音楽活動を父からとめられるものの文句は言わず、
最後にモーツアルトの死を見つける、
という宝塚の娘役さんがやったらいいような役である。
平野高橋由美子さんは、初めの出の少女のとき、
思わず「可愛い!」と思ってしまったほど
この役に容姿がぴったりで、歌は市村さんと重唱するところも
歌詞が客席にはっきり聞こえてきて、失礼だが予想外の健闘だった。
これから、ミュージカルの出演も増やしていただきたい。


 コンスタンツェの母の阿知波悟美さんは、
モーツアルトから金をむしりとれるだけ取ろう、
という家の筆頭で借金を迫るところなどドスが効いていた。
本当に下賎なところがよく出ていたと思う。


 アマデの鶴岡君(2回とも)。
夜遅くまで台詞のない役で大変だろうが、
一幕の最後で、ペンで腕を刺すところなど、怖く感じた。
このアマデがきちんと役割を果たしていないと
このミュージカルは成り立たないところもあるので、
責任重大だがあと一ヶ月頑張って欲しい。


 アルコ伯爵の花王おさむさん。
ひたすら大司教の臣下で、小役人ぶりが作品にユーモアを添えている。
特に、胴きりの箱に入れられておたおたするところなど面白かった。


 シカネーダーの吉野圭吾さんは音楽座ご出身だそうだが、
音楽座のときの舞台を拝見したことがなかったので、今回が初めてであった。
市民を象徴するようなインパクトのある出だしや、
モーツアルトに「友達だろ」と言って金を浪費させるところもよかったし、
初めの歌もなかなか聞き応えがあって、また舞台を拝見したい、と思った。


 ここで1つ、今回のアンサンブルの水準の高さを評価しておきたい。
一幕、二幕の最後の「影を逃れて」のコーラスは本当に琴線に触れて、
6日など前のほうの席だったので、客席にいてそのパワーが伝わってきてぞくぞくした。
CDを聴くのが今から楽しみである。


 男爵夫人の久世星佳(のんちゃん)。
実は6日に行く前に、CS放送で宝塚最後のバウホールの公演を観たのだが、
初め見たとき「え、オールバックでタキシードが似合っていたあの芝居巧者の男役が、
髪を結い上げ、装飾具をつけ、ドレスを着てー」
と一瞬ギャップを感じたが、それはすぐに慣れた。
ただ、少しふくよかになられたかな、と思った。
しかし、芝居巧者は相変わらずで、台詞は明瞭だし、
モーツアルトをなんとかして世に送り出してやろう、
といういい意味での知的なパトロンの貴婦人を余すところなく表現していた。
欲をいうなら、一番きれいとされる「星から降る金」のナンバーの低音は安定しているが、
高音の伸びがもう少しあったらな、と思った。
これからも、こういう大プロダクションの作品に出演していただきたい。


 大司教殿の山口祐一郎さん。
彼のテノールを聴いた途端、「ああ、素晴らしい」と客席で思ってしまった。
この大司教の役のほうが、「エリザベート」のトートより合っているような感じがした。
特に、神に歌いかける「神よ、何故許される」はこの人の独壇場であった。
大河ドラマなどに出て顔を売られるのもいいが、
やはり、本分のミュージカルに多く出演していただきたく思う。


 パパの市村正親さん。
なんと適切で納得できる演技ができる方だろう。
息子を世の荒波から守ることができるのは自分しかない、
よって息子を愛するあまりに厳格になってしまい、
その厳格さゆえに、息子と最後まで理解し会えない、
という父親の矜持を余すところなく表現されていた。
また、歌も歌詞がはっきりしているので、
パパの苦悩、というのが切々と客席に訴えられていた。
もう、日本ミュージカル界の「至宝」と呼ばせていただいてもいいだろう。


 とにかく、すごいものを観てきた、と思う。
また、両バージョン観てこそ堪能できたと思う。また、再演されるのであろうか。
今晩は眠れそうにない。


<金子のよしなしごと>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 とうとう加入してしまった・・・・
「TAKATAZUKA SKY STAGE」。

初めに言っておきますが、下のメールアドレスからの録画依頼は勘弁してくださいませね。
もういっぱいいっぱいなので。

一番楽しみにしている番組は、「トップスターの系譜」です。
花組編では、安奈淳さんの「ノバ・ボサ・ノバ」がでて、
幼い日の感動がよみがえって、それこそ涙ものでした。

一方、腹がたったのは過去からのTMP・TCAの放送です。
2階のビデオ庫に毎年10000円以上出して買ったビデオが並んでいるのを見ると、
「ああ〜損した」と思ってしまいました。
その上、来年は「エリザベート」をやるとのこと、
この間買ったDVDはなんなのだ〜と天にこぶしを突き上げて・・
とまではいかないがむなしくなります。

また、「なんとか3バージョン一気放送」というのは、正直録画しとかないと顎がでます。
10月の「うたかたの恋」などは、マリーのセリフが全部言えそうになった・・。

それと、「スカイステージ開局記念」と冠タイトルがついた公演は
絶対スカイステージで放送するということがわかったので、
夜の公演の場合とかは行かないことにしました。
(例:吉崎賢治コンサート、なんと生放送だそうな)

まだまだ、番組内容が安定しませんが、
加入者は5万人を越えているそうなので、徐々によくなるでしょう。
しかし、このスカイステージとTCA販売ビデオは
これからどう兼ね合いをつけていくのでしょう。
ディナーショーはトップクラスだと、最新より1つ古いの、
専科クラスだと最新が放送されてしまうので、
キャトルレーヴに行って、「ディナーショー」のコーナーを見ると、
「全部いつか放送されるよ」と思って、全く買う気になりません。
そのうち、バウホールもビデオなし、になる日がくるかもしれません。
そんなわけで、多いに期待を込めて・・・・。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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