■■■AYAの宝塚歌劇 観劇記■■■


星 組

バウ・アクトレビュー
ヴィンターガルデン
−春を待ち侘ぶ冬の庭園−



2002年 9月 7日(土)〜9月16日(月) 宝塚バウホール公演

2002年 9月21日(土)〜9月27日(金) 東京特別公演(日本青年館大ホール)

観劇日9月16日(月)ほ列34番

劇場 :宝塚バウホール

HP主人 森(=SUN)筆。

今回、金子さんは文末に「観劇の心得」を書いていらっしゃる。

私自身のHPなのに、私が「観劇感想」をあんまり更新出来ないのは、
このような「心得」が不足しているからだろう。
多分。
と、そうやって己を楽にするべく己を落としてみる。
という上記の物言い、かなり卑怯者入ってます私。
ギゼニスト街道まっしぐら。

HP項目の「観劇感想」が、金子さんのおかげで更新が多い。
という「とっても安心感」があるってのが大きい。
「観劇感想」を自身があんまり更新しないのは。

でも、それより何より、
あまり宝塚観劇出来ていない私は、
金子さんの劇評を、とっても楽しみにしてるわけなのだ。

花組が「エリザベート」をするなあ。
「エリザベート」が、とっても好きな私だが、
今回は「観るぜ観るぜ!」っていう意気込みが自分にないんだよね。
キャストにあんまり魅力を感じられなくて・・・。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。




バウ・アクトレビュー
ヴィンターガルデン
−春を待ち侘ぶ冬の庭園−


作・演出:齋藤吉正


<メインキャスト>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(プログラムから抜粋、追記させていただいた)

クローゼ・ナスティヤツェフ(世界的バレエダンサー。ポーランド人の血をひく)/
トーマ(クローゼの息子の青年時代)
朝澄けい

クラウス・アウゲンターラー(ナチス親衛隊。陸軍少尉)
真飛聖

ジョセフィン・ベーカー(黒人歌手、「世界の恋人」。クローゼを愛する)
秋園美緒

ヒルダ・ギンテル(クラウスの恋人。諜報部員。)/
レオナ・ギンテル(ヒルダの双子の妹。クラウスに恋をする)
叶千佳

真中隼人(ベルリン日本大使館に勤務。クラウスの姉のフィアンセ)
麻園みき

マーサ(ヴァリエテ・ヴィンターガルデンの振付家)
美稀千種

カルステン・メッツェルダー(ヴァリエテ・ヴィンターガルデンの支配人)
鳴海じゅん

トーマス・リッケン(ナチス親衛隊。クラウスの同期生)
嶺恵斗

カテリーナ・ブルガコワ
(ポーランドの血を引くバレリーナ。クローゼの相手役、のちに妻になる)
南海まり

他 星組「ヴィンターガルデン」組

<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 1920年代、‘30年代にドイツの首都ベルリンで隆盛を極めた華やかな劇場
「ヴィンターガルデン」の中で繰り広げられる二人の若者を中心とする青春群像を、
当時のレビューシーンを交えながら綴るショー・ミュージカル。
この意欲作に、バウホール初主演の朝澄けいと真飛聖が挑む。

(「歌劇」9月号から)


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 「休憩時間は隣の人と?の応酬」

 あー書きにくい。
まず、言えることは、ストーリーはボリュームがあるのに、
「アクト・レビュー」ということで、ショーのシーンを多く取り入れたことで、
説明不足が否めなかった。
なにもチケット入手難のバウホールの公演を2回観る観客ばかりではないのだから、
一度で分かるように説明台詞や場面をショーの部分を
少し削ってでも入れるべきだと思った。
ちなみに、休憩時間隣の席の人と交わした疑問は、
「なんでクローゼはカテリーナと一緒に逃げているの?」ということや、
「最後にクラウスの元に現れた女性は、本当のヒルダ?
 それともヒルダの振りをしたレオナ?」や、
「プログラムに載ってないけど、
 なぜフィナーレ前の朝澄の役名がトーマになっているの?」
ということであった。
お互い2幕を観て「分かったね」ということになったのだが、
休憩時間が「?」だらけでは、観客に対して不親切ではなかろうか。
「プラハの春」とはいかないが、筋の書き込みが浅いと思った。

 もう1つ言わせてもらうと、
2つの世界大戦の狭間の不安定な世相をもっと緊迫感を持って描いて欲しかった。
例えば、クラウスがナチス親衛隊としての自分の立場と、
クローゼとの友情の板挟みになって苦悶するシーンとか、
ナチス親衛隊がトルコ系移民に対して高圧的に出るところとか、
もっとナチの脅威みたいなものを表現して欲しかった。
点数をつけるなら、75点というところか。


 クローゼの朝澄けい(かよこ)。
金子としては、細身の上に金髪が似合うタカラジェンヌの5本の指にはいると
勝手に思っているのだが、今回はその容姿に沿ったバレエダンサーということで、
役の設定はよかったと思う。
この役は、友情のためドイツに潜入するも、運命に逆らえず、
ナチに追われて、スイスに亡命して結婚し、
しかしジョセフィンのラジオを通してのメッセージに心を動かされて、
死を覚悟してベルリンに戻り、その危険を犯したために
命を落としてしまう、という純粋な役だ。
白を貴重とした衣装もよくあっていたし、役にすっと入り込めているようで、
さすが座付き作者の目は節穴ではないな、と思った。
演じ分けるのは難しいだろうが、最後、息子の役になって、
クラウスを射殺するシーンの台詞は、難しいだろうが、
ナチへの反抗の気持ちが込められていて良かった。
初主演として、ニンにあった役でいい滑り出しだと思う。


 クラウスの真飛聖(ゆう)。
金子、どうしてもこの人を元月組トップ久世星佳さんと重ね合わせてしまうのだが、
久世が緻密な計算の上で演技していたのに比べて、
ゆうちゃんは役を自分のものにたぐりよせているような感じを受けるが、
こういう男役として線が太い人材は大切だ。
クローゼがヒルダを殺した、と聞いて「嘘だろう!」と悩むシーンや、
レオナをヒルダの化身のように思っておぼれていくさまなどよく表現できていたと思う。
白のかよこに対してずっと黒っぽい衣装だったが、2人の対比のため仕方ないだろう。
ただ、レオナと情事をしたあとのシーンの部屋着などは、
1着ぐらい中間色の衣装でも良かったと思う。
それと、この人の一番の強みは男役として台詞のトーンが安定していて聞きやすいことだ。
一度、「WANTED」を観てみたい。
ただ、ポスターの都合上そうなったのだろうが、
2人とも5年後には長髪になっているのは、不自然に感じた。
どちらかが短髪でも視覚的に区別しやすいのではなかろうか。


 ジュセフィンの秋園美緒(そんちゃん)。
この人のおおらかさが、この公演では母性とあいまって、
「スター」というより「いい女」であった。
特に2幕に歌う「リリー・マルレーン」は主役2人の死とあいまって、
思わずハンカチを隣の人は握り締めていた。
彼女のような、おおらかな娘役さんはほかにはそういないので、歌声とともに、
さっさと宝塚を諦めないで、是非来るべき地位まで残って欲しいと思う。


 ヒルダとレオナの叶千佳(ちか)。
星組に来てから急に売り出し中の娘役だが、
レオナの「姉の振りをしてでも愛されたい」というじとっとした情念は充分感じられた。
課題は歌で、特に地声から裏声への切り替えがいまひとつである。
髪型を一生懸命工夫していうのは買えるので、早急に歌の勉強をしていただきたい。


 あとは、目に付いた人を。

 真中の麻園は初め邪念のない外交官を装いながら、
フィアンセをナチに売り、ころりとナチ親衛隊に変わる、という役だが、
もう少し計算高そうなところを初めの出から見せてもよいかな、と思った。


 マーサの美稀だが、
オカマという設定なので、女役さんなみに高い声がでていたのと、
ずっと明るいキャラクターだったので、
その一層のギャップと最後の死が哀れに感じられた。
「マーサのために特別興業を」というのが充分わかる温かい人物像だった。


 支配人の鳴海だが、
お得意の歌でショーにアクセントがつけられていたのと、
歌と同様に滑舌がいいので、台詞が聞き取りやすかった。
「歌の人」とばかり思っていたが、なかなか芝居も達者なものである。


 トーマスのだが、
なんの表情も変えずに密告者を射殺してしまうところなど、実に毒々しくて、
ナチスの暗い部分を上手く現せていたと思う。
この人も台詞がよく分かった。


 最後に、クローゼの妻となるカテリーナの南海だが、
歌は安定しているので、もう少し「自分は追われているのだ」
という切迫感があればいいと思う。
しかし、まだ下級生で踊れる娘役さんなので、今後に期待したい。


こんなところで感想を終える。


<この感想を書くに当たって>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 読者で、もし、金子がどうやってこれら感想を書いているのか、
不思議に思われる節があればここではっきりしておきます。

(氈j宝塚大劇場公演→
   金子のスケジュールの許す限り、2回観て書くことが多いです。
   特に心がけているのは、一回は1階S席でも後方に座ること。
   全体に眺めないと冷静な観察ができないので。

()宝塚バウホール→
   1発勝負で書いています。
   若手主体の公演なので、なかなか全員は網羅できませんが、
   なるべく家に帰るまでに、「この人のことは書こう」と決めて帰ります。

(。)その他ミュージカル→
   S席(またはSS席)の料金によりますが、
   梅田コマ劇場などは、1回はお金を払ってみて、もう1回はただ席の3階で見ます。
   お金を払う分もなるべく安いカード会社の貸し切りなどでSS席をゲットしてみます。
   シアター・ドラマシティは大体1回しか観ません。

どんなところに出没しているかは、このページの席番をみればお分かりになると思います。
それでは。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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