■■■AYAの観劇記■■■



「風狂伝‘02」
〜ロマンティクコメディ〜


大阪 シアター・ドラマシティ


観劇日:2002年7月9日(火)夜(7列2番)



HP主人 森(=SUN)筆。

オペラグラスか。
でも、私も使わないんですよねオペラグラス。

使う使わないは好みの問題だと思うので、
どちらでもよいのだろうと思っています。

それにしても台風一過青空の今日。
それにしても私の風邪は小康状態のまま。
時折のせきが困りモノです。
稽古の時にせきに見舞われるとタマリマセン。
しかも本日オペラゲネプロ。
只今の私の仕事場であります。
指揮者はもんのすごい怒っていることでしょう。
席を立ちたいのですが、仕事放棄が出来ない身の上。
本番で咳き込んだら(咳き込む前に)消えますので許してくれ。
と、今は謝りながら演出助手席にいる私である。

今回のオペラ「ペレアスとメリザンド」
今週末の13、14日と公演。
ドビュッシー作曲/メーテルランク作。

オペラグラスは外して、
舞台の「絵」を、その画面空間全体を感じてほしいオペラです。

絵巻物が、指揮者のタクトで帯び解かれていく様に、
酔いしれてほしい、新国立劇場。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。



「風狂伝‘02」 〜ロマンティクコメディ〜


作・演出 久世光彦
  音楽 coba
  作詞 岩谷時子


<主な配役>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

剃刀譲次(かみそりじょうじ。昔上海でマフィアの一員を殺した男。今は床屋)
:沢田研二

仕立屋銀次(元はやり手のスリ。今は肺結核を患う77歳の老人。リルの父)
:緒方拳

デカ金の親分(横浜の親分。上海のマフィアとの繋がりもあり、昔譲次を助けた)
:小松政夫

帝大(東京大学中退のデカ金の子分。実は警視)
:田中隆三

一升枡(デカ金の子分)
:冨岡弘

上海リル(銀次の娘。上海がえりで、チャブ屋
     =風俗店+ショーをやる所に勤める娘。銀次の娘)
:三木さつき


<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 昭和7年、横浜。
ある冬の晩、夜汽車で巧みに乗客の財布をする老人がいた。
その老人こそ、かつてはホテルを通り抜けるうちに
16個の時計をすったという凄腕のスリ仕立屋銀次。
その銀次に目を向けたのが剃刀譲次。
彼もまた今は床屋を営んでいるが、かつては上海で
マフィアの一員を殺してデカ金の親分に世話になって横浜に戻ってきた男だ。
2人の奇妙な友情が始まる。
そんな折、親分が上海がえりのリルという娘を
訳もきかずに自分の馴染みのチャブ屋に預かって欲しいと連れてくる。
リルはアヘン中毒だが、心根はとても純真な娘で、
ある夜ばったり会った譲次に彼女は自分は父親に捨てられたという生い立ちを話し、
譲次もその父親が銀次だと分かりつつも、2人は惹かれあう。
一方銀次は夜汽車で親分が、リルが上海のマフィアのお宝のオパールを盗んでいて、
刺客に狙われている身だということを聞いて、娘が生きていたことを喜ぶとともに
その身を案じ、会いに行く。
しかし、「自分を捨てた父親などいまさら」と邪険に扱われる。
譲次はリルを愛していることを銀次に打ち明ける。
それでは、と決着をつけようとしたらリルがとめに現れそれを狙って刺客も現れる。
2人でリルを助けたところで、帝大が現れ
「正当防衛だから罪はない」と言って事件は収まる。
リルは一度は靴のヒールに隠していたオパールを親分に渡すものの、
譲次との関係を察した親分はそれを譲次に託す。
一方、リルへの譲次の本当の愛情を知った銀次は2人になにも言わず去っていく。
残された2人は、2人でまた海を渡ろう、と愛を確かめ合うのであった。

(金子筆)


<はじめに>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「1500円のプログラムならあらすじぐらい書いてよ」

 ここまで大分時間がかかってしまった。
このプログラム、40ページのカラーであるが、あんまり字が書いてないのである。
書いてあることといえば、出演者のプロフィールと、
昭和初期の世相の話、と作者の弁だけ。
あとは写真。
どうみても高い。
1幕の芝居だから先に筋を知られてしまってはいけないからか、
それともプログラム製作時に筋が決まっていなかったからかしれないが、
もう少し1500円に見合うだけ書いて欲しいものである。
まだ、宝塚1000円プログラムのほうが、ずっとましである。


「スターが客を呼ぶのか」

 場内に入っていったら、99%女性客だったのには、
「宝塚でもないのに・・」と驚いてしまった。
それも大体金子の一回り上とおぼしき方たち。
ジュリーファンとはこういう人たちなのだ、と変なことで感心してしまった。
また、7列目に座った金子、周りも当然オペラグラス使用だろう、
と思ったら列のなかでオペラグラス使っていたのは金子ただ一人だった。
皆さん、ジュリーが出ると宝塚なみの爆竹拍手で肉眼で観ておられる。
いつもコンサートのスタンスにいられるからだろうか、なんか違いを感じてしまった。


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 「肩のこらない人情劇」

 昨年の「いつかヴァスコ・ダ・ガマのように」に続いての
演出・音楽・主演者の作品だが、
任侠の世界といいつつ、デカ金の親分はひたすらコメディリリーフだし、
ジュリーのミニショーはあり、最後はハッピーエンド、
というあまり頭を使わずに即時的に楽しんで、
あとに観客になにかを考えさせるというものではなかった。
こういう後になんにも残らないのもたまにはいい。

さて、剃刀譲次の沢田さん。
どうしても、この先生にかかるとジュリーは二枚目の設定になるのですね。
「桂春団治」が快演だっただけに、また違うジュリーが見たかった。
思いっきり情けない男とか。
今回は、影を背負った役だが、それなりに台詞のトーンを落としてあり、
一方床屋でふざけるところは茶目っ気一杯で、
またいつもの「計算しつくした演技」に戻っていた。
計算のほとんど見えなかった春団治がよかったので
「ああ、いつもに戻ったな」という感じがした。
最後の岩谷時子さん作詞の「何処へ」の歌が良かった。
なんやかんやいっても、年に1度はこのドラマシティでお会いしたいものである。

 仕立屋銀次の緒方拳さん。
客演、というにはもったいないぐらいの人材だが、
実年齢より老けた77歳の今は昔の陰もなく、
肺結核に侵されて、娘のことが心配で仕方ない、という老人をさらりと演じていた。
出番が少なくても、残像がくっきり残っているのは技量だろう。
充分の仕事をされていたと思う。

 デカ金の親分の小松政夫さん。
いやあ、お疲れ様です。
ピンクのスーツにマフラーといういでたちから、もうコメディリリーフという感じで、
急に浜村淳さん調になったり、笑いの部分はほとんど持っていかれた感じだ。
でも、芝居の部分でもオパールを譲次に託すあたりはきちんとしていて、
「芸人」というのを見せ付けられた感じだ。

 リルの三木さつきさん。
「ヴァスコ〜」のときの甘えたに加えて、今回はヒロインで、
お色気とエロスはたっぷりであった。
歌もダンスも頑張られたみたいで、いちおうショーをやっていた、
というのは納得できる。
充分、2人の男に愛される可愛い女であった。
女、というものを思い切りだせる役者さんだと思うので、
今度は固いキャリアウーマンの役などされたら面白いと思う。

 帝大の田中隆三さん。
「〜でない」という語尾を巧みに使って笑わされた。
最後まで、警察の人、というのが全然わからない役作りはお上手である。

 一升枡の冨岡弘さん。
親分をひたすら盛り上げていて軽くて面白かった。
最後に今年も黒柳徹子さんの声の出演は面白かった。

 以上、いろいろ書いてきたが、とにかくいい気分になって家路につけたので良かった。
また、来年もこのトリオの芝居が観たいものである。
以上で感想を終える。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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