■■■AYAの宝塚歌劇 観劇記■■■


月 組

バウ・ミュージカルプレイ
SLAPSTICK

−スラップスティック−



2002年 6月21日(金)〜6月30日(日) 宝塚バウホール公演

2002年 7月 4日(木)〜7月10日(水) 東京特別公演(日本青年館大ホール)

観劇日6月27日(木)ち列12番

劇場 :宝塚バウホール


HP主人 森(=SUN)筆。

「宝塚おとめ」とは。

と、先に解説してしまうが、
タレント図鑑の宝塚バージョンみたいなものだ。
それを参照すれば、そのスターと、その略歴がわかる。
(誕生地、趣味好み みたいなものもわかる)
ということだね。

「キリヤンってホントにホントにすごいかもしれない」
と、金子さんが言っている「キリヤン」というのは、
ダンス(振付け、演出)の名だたるイリ・キリアンではなく、
宝塚でのお約束的「愛称」でのこと。
霧矢大夢(きりやひろむ)という素晴らしい舞台人のこと。

「ガイズ&ドールズ」という素晴らしいブロードウェイ・ミュージカル
を、ついこないだ宝塚で演った時に、本職「男役」である
霧矢大夢(=キリヤン)は、アデレイドという実に色っぽい
いい意味で「俗」な女を好演していた。

「宝塚」というカンパニーにいる幸せというのは、
と、勝手に外にいる私が思うのは
現実では決してなりえない「男」というものに飛べる空間であるということ。
それにだからといって、その「男役」というものに固執もしないということ。

それは今回のヒロインの紫城るいにもいえること。
金子さんは「元男役である溌剌さ」と書いている。
それはプログラムにも書かれてあることだろうけれど、
実際その舞台を体感した金子さんも「そのとおりである」
と言っているとおりのものだったことだろうと思う。

てなことをガタガタ書いているが、
この「SLAPSTICK」という舞台を
観たいと思っているが、
果たして、観られるだろうか
と相変わらず「いいなあ観られて」と思っている私がいるのだ。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。




バウ・ミュージカル
SLAPSTICK

−スラップスティック−


作・演出 小柳奈穂子


<出演者>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

マック・セネット(オペラ歌手を目指しニューヨークへやってきた青年):霧矢大夢
         メイベル・ノーランド(コメディ映画女優志望の娘):紫城るい
                  ウィリアム・テイラー(芸術家):箙かおる
       ディヴィット・グリフィス(バイオグラフ社の映画監督):光樹すばる
             マリア・ドリー(女優。グリフィスの恋人):美々杏里
             ヘンリー・バテ・レアマン(役者兼道具係):嘉月絵理
                  セシル・B・デミル(映画監督):大樹慎
             ジェニファー・メイヨ(シナリオライター):瀧川末子
                アダム・ケッセル(元ギャンブラー):一色瑠加
           サミュエル・ゴールドウィン(プロデューサー):楠恵華
          ルドルフ・アーバス(セネットの親友。ルディー):月船さらら


                        他 月組「スラップスティック」組

<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 20世紀初頭の実在の映画監督、マック・セネットの伝記物語。
数多くのコメディ映画を製作し、キング・オブ・コメディと呼ばれたその生涯を、
彼が死を間際にして書き上げようとしている回想録体裁で描く。

セネットと彼が生涯慕い続けた女優、メイベル・ノーマンドとのラブロマンスを軸に、
草創期のハリウッドで映画製作に携わった人々の
汗と涙と笑いの日々を描くドタバタ青春群像劇(スラップスティク・コメディ)を、
霧矢大夢の主演でお送りする。

又、この作品は小柳奈穂子のデビュー作となる。
(「歌劇」6月号より)


<「宝塚おとめ」2冊>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 金子、忙しいせいもあって、
WOWOWの「スターの小部屋」などチェックしている暇もないため、
バウホールに行くと帰って必ず、「おとめ」と首っ引きになる。
なにせ、新専科制度発足以来、
各組中堅・若手有望株、専科メンバーさえも退団していく事態なのだから、
目まぐるしいったらありゃしない。

ということで、初めに例年のように1冊買ったのだが、
ボコボコになりそうなので、ぴしっと袋に入れてあるのを見たら
もう1冊手が伸びてしまった。
勿論、後者は保存用である。
そんなこんなで、新人事情に追いつこうとしているわけである。


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 「キリヤンってホントにホントにすごいかもしれない」

 いやー、どう書こうかこの場に来ても迷っている。
なんかまとめにくいのだ。
でもなんとか書いてみよう。

 まず、作品についてだが、点数をつけるなら60点というところか。
特に後半のテンポが悪くなったのが事実ゆえ、とはいえ、悔やまれる。
1幕のハリウッドに乗り込み、スラップスティックを撮るんだ!
という辺りまでは好調だった。
しかし、プログラムによると、
この作品の構想を高校生のときに考えていたというのは正直すごい、と敬意を表する。
もう少し、メイベルとの関係、スラップステックの衰退、というところが書けていたら、
セネットの後半生の寂しさが浮き彫りになってよかったのではないか、と思う。
でも、デビュー作としては上々の滑り出しだと思う。
2作目に期待したい。

 さて、セネットの霧矢大夢
金子、いままで「実力派」といわれる若手スターさんのバウ初主演をみせていただいた。
卑近な例を挙げるならば、香寿たつきの「セ・ラムール」(93年雪組)、
安蘭けいの「イカロス」(98年雪組)というところだろうか。
しかし、今回のキリヤンはこの2人を上回っている、と感じた。
それを感じたのは歌である。
また、ダンスしながら歌える、ということである。
これ、結構簡単なようでなかなかやれる人がいないのである。
金子の記憶では、やれていたのは昭和のベルばら4強の榛名由梨さんぐらいであろうか。
そのうえ、1幕の中盤の「パレードに雨を降らさないで」
(「ファニー・ガール」より=時限が合わない気がするが)
のトリを歌ったときの、緩急のつぼを心得た歌いっぷりは、
観衆を「気持ちいい」を通り越して「恍惚」へと誘っていた。
主題歌を2回歌うときも状況をきちんと踏まえていて、歌い分けも見事だった。
歌に関しては、宝塚5本の指にはいるだろう。
聴いているだけで気持ちいい。
素晴らしい歌唱力だ。
ダンスはバネを活かした踊りで、これもまた安心感を与える。
一番弱いのは演技だと思うが、前半の足が地に付いていないあたりは元気一杯でいいが、
後半の「心の人」メイベルを始め、周囲がスキャンダルに巻き込まれていき、
自分もトーキー到来の時代とともに消えていかざるを得なかった、
諦念みたいなものがあればもっと良かったと思う。
しかし、これは脚本に余りかかれていなかったので、仕方ない部分もあろう。
とにかく、「キリヤンブラボー!」であった。


 メイベルの紫城るい
女役に転向したばかりでの主役だが、
まず、プログラムにある「元男役である溌剌さ」は
初めの出の部分から充分表現されていてよかった。
また、女役に変わったばかりであるのに、
髪形が凝っているのも転向した決意の表れかと思った。
セネットのことを愛していながら、彼が愛を告白してくれないので、
一生「友達」と言い切る、彼女なりの美徳を感じさせるところまではもう一つか。
特に2幕はなぜテイラーのところに行ったのか、いまひとつはっきりしなかったので、
ヒロイン像がぶれてしまったのはいたしかたない。
でも、これから有望な女役さんの出現だ。


 ルディーの月船さらら
気が弱くて最後はアル中になり、スキャンダルにまみれて片足を失って死んでゆく、
というかわいそうな役だが、気が弱いところは良く出ていた。
ただ、アル中になって、体も心もボロボロというところに少し元気すぎる気がした。
最後の死の場面も、また歌も1曲ワンコーラスソロであっていいのではないか、と思った。
なにしろ、メインキャスト全員にナンバーがあるミュージカルなのだから。
伸び盛りの若手なのだから、もう少し大きな役を与えてもいいのではないか。


 テイラーの箙かおる
これがまた、さっぱりどういうフィクサーなのか分からない役なのだ。
最後までわからなかった。
どうして死んでしまったのか。
メイベルにはどういう関係で一緒にいたのか。
ここは脚本のミスだと思う。
もう少し、この役を書き込まなければ。


 グリフィスの光樹すばる
「私が映画のシェイクスピア」のナンバーはもう少し歌詞をキチンと届けて欲しかった。
「夢のノート」をすぐ忘れてしまうのには笑えたが。


 マリアの美々杏里
女優からマネージャーに転じる役なのだが、相変わらず声による存在感が素晴らしい。
とくに、フィナーレでポーターの「私の心はパパのもの」を歌われたときは、
金子の好きな歌なのでぞくぞくきた。


ヘンリーの嘉月絵理は相変わらず要所をしめて、若手を引っ張る。
さらっとした役なので、もう少し出番があってもいいかな、と思った。


デミルとゴールドウィンの大樹慎楠恵華はいつも一緒の出番だが、
最初の「映画会社を起こそう」のナンバーの歌詞をもっとしっかり伝えて欲しかった。
楠は台詞が通るようになっていい。


ジェニファーの瀧川末子だが、
メガネをかけていても、知的で母性本能に溢れた人間、というのがよく表れていた。
「更に狂わじ」のころから注目してみているが、段々とステップアップしているのが嬉しい。


アダムの一色瑠かは、元ヤーサンの今は金貸し屋であるが、
それなりに威勢がいいのがいい。


最後にルディーの初恋の人のマルグリットの城咲あいが目についたが、
1幕のお嬢様のところは良かったが、何故ルディーと結婚しなかったのか、
どうしてスキャンダルに陥ったルディーを助ける気になったのか、
脚本の書き込み不足でよく分からなかった。
清楚な感じのする女役さんだけにもう少し出番が観たかった。

以上、色々書いてきたが、感想はこれで終わる。


<次回予告>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 次回は、雪組大劇場公演「追憶のバルセロナ」「ON THE 5th」の感想です。
下に「プチ自己紹介」もつけます。



□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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