■■■AYAの宝塚歌劇 観劇記■■■


星 組

2002年 4月12日(金)〜5月20日(月) 宝塚大劇場公演

2002年 6月28日(金)〜8月11日(日) 東京宝塚劇場公演

宝塚グランドロマン
プラハの春


グランド・レビュー
LUCKY STAR!



観劇日:4月18日(木)15時 1階16列64番
    5月 9日(木)15時 1階 7列50番

劇場 :宝塚大劇場


HP主人 森(=SUN)筆。

金子さん曰く= 「なんだなあ」

って感じなんだね、この公演。

芝居(?)が谷さんで、ショウが中村氏か(演出ね)。
私的に 現在宝塚で最もアウトに近い組み合わせ。
金子さんが劇評中で嘆いている事は きっとその通り。

これは観に行かないだろうな東京公演。
というか、コレに限らず行きたいモノも行けてないのだが。

演出家(作品)によってものすごく違うからね 宝塚。

私的に 現在宝塚で最もベストに近い組み合わせとは(=演出ね)
芝居(?)が小池氏で、ショウが岡田氏。
芝居(歌劇)のとこは、正塚氏、荻田氏に変更可能。
それに大御所柴田氏もいいです。
柴田侑宏の一本立て大作 とか。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。




宝塚グランドロマン
プラハの春


   原作:春江一也
脚本・演出:谷 正純


<出演者>

 宝塚大劇場:宝塚歌劇団星組69名、(専科)彩輝 直、第88期初舞台生48名
東京宝塚劇場:宝塚歌劇団星組69名、(専科)彩輝 直


堀江亮介(在チェコスロバキア日本大使館員) 香寿たつき
  カテリーナ(東ドイツ人で反体制運動家) 渚  あき

          稲村嘉弘(亮介の同僚) 彩輝  直

ヤン・パラフ(カレル大学生。反体制運動家) 安蘭 けい
   ヘス中佐(東ドイツ秘密特務機関要員) 夢輝 のあ
  シュテンツェル(カレル大学言語学講師) 英真なおき
    ダナ夫人(シュテンツェルの家政婦) 万里 柚美
 レポーター(プラハ国営放送のレポーター) 毬丘 智美
  中沢大使(在チェコスロバキア日本大使) にしき 愛
     ポジェナ(ワインケラーのマダム) 朝峰ひかり
    ペリカン総裁(プラハ国営放送総裁) 高央 りお
シュナイダー局長(カテリーナの離別した夫) 麻園 みき
  ヤロスラフ(シュテンツェルの昔の仲間) 紫蘭ますみ
  テレザ(ワインケラーの娘。稲村の恋人) 秋園 美緒
                          他 星組組生




<解説>

 春江一也氏の長編小説「プラハの春」を舞台化。
チェコスロバキアの首都プラハを舞台に、共産主義社会の反体制活動家と、
西側外交官命の命を賭けた恋を描く、壮大なラブ・ロマンス。
現代史の1ページ、ささやかな自由を求めて戦った人間たちの悲しみのドラマが、
宝塚の舞台に繰り広げられる。
衣装はジャンポール・ゴルチェ提供。
(ちらしより)


<4月18日編>

 最後の台詞「春が再び訪れたのである。」

終幕

A席の団体のおじさま「春ってなんや?」
金子「そのお席は5500円ではなくて、プログラム付き6500円でございます。」

 今年大劇場は年頭から2作とも再演物がつづいているせいか、
予習しない横着癖がついてしまった金子、
「プラハの春」と聞いても「ま、政治物でしょ。行って観ればわかるでしょ。」
と完璧に鷹を括っていた。
これが大誤算。
開演35分前にプログラムを購入したのだが、少し開場まで時間があったので、
「ストーリー」のページをぺらぺらとめくってみた。
そして、一段落読んで、大げさだが顔が青ざめてきた。

「いやっ、こんな政治と思想が関係する難しい話なん!
 こんな歴史的なこと知らないよ」

よって、開場するとすぐに、
配られたカロリーメイトはかばんの中にほりこんで席について、
「ストーリー」のところを2回読んだ。
なんとか頭が回ってくれて分かった。
そして、観たのであるが、終幕後の一言は上のようなものであったのである。


<感想>

(2回観て)
 もう、言いたいことは一杯あるのだが、
まず、台本の歴史的情勢の説明の不親切さをあげたいと思う。
「プラハの春」とは「人間の顔をした社会主義」のことであるのだが、
これは言論や集会の自由、検閲の廃止、といった、
金子に言わせれば「亜流民主主義」のことを言うそうなのだが、
これをしっかり説明しないと、その「プラハの春」が
ソ連軍の軍事介入によって壊される悲劇が浮かび上がってこない。
ちょっとリポーターが「ここはパリのカルチェラタンではありません。」
くらいの説明では全然、「春」の意味が分からない。
これが分からないと、
上のオジサマのように1時間40分、観客は取り残されたままになってしまうのだ。

「春」をしっかり説明するために、
それこそ専科の力でも借りて、ドゥブチェク書記を登場させて、
「政治をこう改革するのだ」という場面でも作って、1本立てにすべきだと思う。
東京では初舞台生の口上の時間が増えるのだから、
その分で説明台詞の応酬になっても、
きちんと当時のチェコスロバキアの情勢を説明するべきだ。
プログラムに押し付けるとはなんたることか。

ここまで言ってしまうのは、金子、家路につきながら、
わが歴史知識の薄さに青色吐息になってしまい、
帰るや否や、両親を捕まえて
「『プラハの春』っていうこういう歴史があったこと知っている?」
と聞いてみた。すると、

父「知るか」
母「ソ連との戦争みたいなやつ?」であった。

1967年の当時を生きた二人ですらこうなのだから、
よく考えると現在一億二千万人の日本人のどれほどが、
この1967年のチェコスロバキアの情勢について知っているだろうか。
知らない人間のほうが多いと思う。
だからこそ、しっかり説明しないと舞台がなりたたないと思うのだ。
東京では大幅改定をお願いしたい。
そしてまた、混乱させることを言うようだが、
家に帰って「プラハの春」で『大辞林』をひいてみたのだが、
そこには「ソ連の軍事介入のこと」とあった。
母の認識もまんざらではないようである。
観るに当たっては、プログラムどおり、
「人間の顔をした社会主義」ととっておかないと混乱の一途をたどるので
観る方は留意されたし。

 それともう一つ、この芝居は「宝塚のルール」を壊している。
これは原作があるから仕方ないのだが、話をまわすのが女なのである。
普通宝塚のそれもトップお披露目ともなれば
「スパルタカス」なんかがいい例であるが、
トップ男役が能動的に動くものである。
(あのときはルシアがあまりにもスパルタカスに袖にされ続けて可哀想であったが)
そこで食い足りなさを感じるのである。
やはり、この原作をやるなら1本立てで、トップ2・3作目にもってくるべきだろう。
私はまた「花の業平」でも良かったのでは、と思う。
だって、タイトルロールの業平が動く話だから。

 堀江の香寿たつき
あくまでも人間らしく、正義と恋に生きる典型的宝塚二枚目の役である。
声のトーンなどは業平と全く違っていて、
こういうタータンを観るのは随分久しぶりの感じで新鮮味がある。
カテリーナを愛しているのに、
見守るしかない立場であるのがもどかしくて仕方ない、
という心情はよく表現されていたし、
2回目に観たときは渚と二人だけで最後に会うシーンでは
泣いていて集中力は高いと思った。

ただ、2つだけ言わせて貰えば、まず髪の色がどう観てもブラウンであること。
特に最初の登場ではライトの加減か、本当に茶髪に見えて
「えっ、日本人の役だよね」と確認したくなった。
重く見えてしまうからなのだろうが、やはり日本人は黒髪でお願いしたかった。
それと、こういう役は今までの彼女の舞台歴からみると簡単にできそうで、
少し食い足りない気がした。
トップともなると、こういう役が回ってくるのは分かってはいるのだが。
次作に期待する。

 カテリーナの渚あき
いい女の役だと思う。
ある面では政治活動家、ある面では恋する女。
そして、物語を回す役。
しかし、ここが渚の技量で、決して物語を回しているのがカテリーナだ、
という感じを観客に与えさせない。
あくまでも清楚で、知的で、つやっぽい。
また、演技にも精進したあとがあって、
2回目に観たときは弟が射殺された動揺を表すシーンなどは、
1回目と格段の出来の差があった。
欲をいうなら、もう少し尋問されるシーンなどで毅然とした態度がでれば満点だが。
花組時代に比べて、余りにも痩せてしまっているのが痛々しいくらいなのだが、
女役トップになって早くも良い役にめぐり合えて1ファンとして嬉しい。

 堀江の同僚の稲村の彩輝直
彼女は髪が本当に黒で、彼女の本質的な美しさが際立っていた。
専科からとしては役が少し小さい感じもしたが、こちらも出すぎず、
控えめながら人物としては骨格がきちんとしていた。
また、テレザに「顔をあげるんだ」というシーンでは、男としての矜持、
みたいなものが感じられた。

 ヤンの安蘭けい
一言で言うとヒットだと思う。
彼女はいままで背丈の都合で、
大人の役でこれ、といったのが大劇場ではない気がしていたが今回はいい。
まず、芝居の第一声が彼女の歌、というのは印象に強いし、
最後には焼身自殺までするヤンの熱い血というのが
こちらに押し寄せてくるようであった。
まだまだ先のことだろうが、ショーと合せて
「いいトップスターになるだろうな」と思ってしまった。

 ヘス中佐の夢輝のあ
カテリーナに偏愛さえいだく、キレた野郎だが、
もう少しナルシズムに酔ってやるといいと思う。
でも、2回目に観たときは大分キレまくっていて、あと一歩である。
ただ、プログラムにはカテリーナを射殺するのはヘス中佐とあるのだが、
2回観てもはっきりせず、どこかからカテリーナは撃たれた、という感じだった。
最後「カテリーナ!」とでも叫んで撃てばはっきりするであろうに。

 印象に残った人をあと2人。
 まず組長、英真なおきのシュテンツェル。
「ああ、こういう教授ってゼミ生多いだろうな」
と思わせる大きな人物の造形ができていた。
組長は昔ダンスの人であったのに、
とうとう演技も組長らしく幅がでてきたなあ、と思った。

 あと、カテリーナの別れる主人の秘密警察署長の麻園みき
包容力があって、ますますお姉さま(元同組トップ麻路さき)に似てきた感じがする。
握手を求めるところなんか良かった。

 また、ゴルチェの衣装だが、学生達のが
「学生のわりにいい服きてるね」
と思うぐらいで、「SPEAKEASY」のときほど、ゴージャスな感じはしなかった。


<5月9日編>

A席の女性「いつまでも〜♪社会主義はわからんわ」

 どうしたことか、金子、
出かける用意をする前に頭痛がして頭痛薬を1錠飲んでも治まらず、
2錠も飲んで出かけた。
「プラハの春」と考えるだけで頭痛?
ああ、恐ろしい。
そして、この日はいつになくいい席で観られたのであるが、
劇場内に入っていくと1階のA席が半分は空いていて、
こんなに空いていることはもしかしたら初めてなのでびっくりした。
TCAビデオの収録日なのに。
そして、終幕後、上のように言われるとなるほど分からない、と思った。
骨の髄まで民主主義につかった日本人にとって、
「国の国家政治主義のために愛し合えない」なんて、
いくら舞台で泣いてもらっても分からないのである。
これも問題だ。

最後に、これからこの公演を観られる方は
次のどれかの予習をすることをお勧めして終わる。


1.原作を読む
 →相当政治に関心があり、本の好きな人でないと無理ですねえ

2.早めにプログラムを買って全部にきちんと目を通す
 →一番横着ができる方法かもしれない

3.「ル・サンク」についている台本を全部読む
 →読んでも分からないと思いますが

4.ビデオを買う
 →一番お金をかけるやり方ですね。観てから買うほうが賢明と思いますが。




グランド・レビュー
LUCKY STAR!


作・演出:中村一徳

<出演者>

 宝塚大劇場:宝塚歌劇団星組69名、(専科)彩輝 直、第88期初舞台生48名
東京宝塚劇場:宝塚歌劇団星組69名、(専科)彩輝 直




<解説>

 香寿たつきの華やかなダンスと安定した歌唱力、
そのすべてをバラエティに富んだ場面により引き出す、
エンターテイメント性溢れるレビュー作品。
男役スターが充実した星組ならではの華やかなレビューとなる。
なお、この公演で第88期初舞台生が恒例のラインダンスを披露。
(ちらしより)

<感想>

「なんだなあ」なんかこの言葉に尽きる。
どうしてかは最後に書く。
シーン順に

(第1章) プロローグ

 スターがどんどん出てきて主題歌を歌い継ぐ、という定番。
主題歌はとても軽快で覚えやすくていい。
中詰めでもつかえばいいのに。
実は金子、芝居のヤンからトウコに釘付けになってしまって、
ショーでも超トウコモードであった。
7列に座ったときは、
「あっタータンさん観なくては」
と一生懸命真ん中を観ようとしたが遅かれし、であった。

(第2章)ラッキー・スター!

 彩輝中心の場面である。
「妖しさ」系専門のサエコがこういう強いのも目新しい。
振りがいかにもバイクに乗っているって感じで格好良かった。
後半のジゴロはサエちゃんの範疇。
ただ一緒に出できた、柚希礼音の方に勢いがあったのも事実。

女役では秋園美緒が意外と(失礼!)セクシーで、
百花沙里のダンスに勢いがあるのだが、
芝居でも思ったのだが叶千佳はもう少しスレンダーにお願いしたい。

(第2章) 星の彷人

 トップコンビががっちり組んだ場面。
こういう場面は安心できる。
ここでのタータンの長髪も衣装も感じがいい。
アキちゃんも豪華な衣装でイケてる。
ただ、もう少しアキちゃんのダンス能力が高ければ
もう少し難度の高いデュエットダンスが期待できるのだが・・言うまい、言うまい。
ここで敵役にトウコを持ってこられるとなんかゴージャスすぎる配役の気がするのだが。

(第4章)闇から光へ

 長い中詰めになる。
始めのネッタンの歌はパンチがあっていい。
しかし、そのあとの白いゴムロープを使ったダンスは、
「凱旋門」「ESP!」で経験済みであるのであまり目新しくない。
そしてスパニッシュ、という超宝塚典型中詰めへと突入。
タータンはここまでなんか、踊ったというより、歌いっぱなしという感じ。
個人的にはトウコのスパニッシュの歌が良かった。

 そして、初舞台生のロケットを経て、もうフィナーレ。

(第6章〜7章)フィナーレ

 これまた定番の男役黒燕尾、大階段でのダンスがあるのだが、
真ん中にいるタータンが頼もしく感じられた。
だた、ドレスシャツにつくドーラン、どうにかして取れないものなのでしょうかね。
ビデオ撮りの日だったし。
ここからやっと「タータン踊る」という感じ。
金子はトウコがアキちゃんはじめ、
女役さんに囲まれるシーンでも結構色気があっていけるな、と完全トウコモード。
あと、背が低い分、視線や手の使い方などを歴代トップから勉強すれば、
トウコ、いいショースターになると思うのだが。
例を挙げると、マヤミキの現役時代なんていいお手本にならないだろうか。
あの手と目で客席をわしづかみにしていたもの。
(金子、こうはいっても真矢みき オフィシャルファンクラブ会員なのである)
そして、最後にこれまた定番のトップコンビのデュエットダンスで終わり。
ここでも、前のトップコンビが思い出されて、
「もっとすごい技やって頂戴」と思ってみていた。
でも2人が本当に信頼しきっているのが、
芝居からもショーからも感じられて安定感があった。

「なんだなあ」のわけ

1、 時間が短い
  →芝居の都合上仕様がないのだが、
   中詰めの後、トウコ中心の場面があってもいいと思う。

2、 定番ばかりで飽きる
  →冒険をしろ、とは言わないが
   1ブロックぐらい演出家の先生のオリジナリティーを出して欲しい。

3、 100人以上出演しているとは思えない
  →これは16列のとき、特に感じたのだがなんか、
   「人気(ひとけ)」みたいなのが全然後ろに伝わってこなかった。
   観客が少なくても引かないで下さいましな。出演者の方々。

4、トップコンビが地味である
  →あああああああ、言ってしまった。
   な〜んか、いい衣装でも衣装に着られている感じがして、
   タータンがいくら豪華な羽根をしょっても「ふ〜ん」という感じで
   「素敵!」にならないのですね。
   ファンの方ごめんなさい。妄言多謝。


 それでは、芝居から長々と書いた感想を終わります。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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