■■■AYAの宝塚歌劇 観劇記■■■


雪 組

〜谷崎潤一郎作「春琴抄」より〜
殉情


2002年3月16日〜3月25日 シアター・ドラマシティ

2002年3月31日〜4月 7日 赤坂ACTシアター


観劇日:3月18日(水)
      昼の部
劇場 :シアター・ドラマシティ



HP主人 森(=SUN)筆。

谷崎潤一郎。
三島由紀夫。
泉 鏡花。
ジャン・コクトー。

我が愛する文豪たち。
耽美派。
うつくしいものを愛して何が悪い。

誰も悪いなんて言ってないだろー。

東京公演 みれたらみたいなー。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。



〜谷崎潤一郎作「春琴抄」より〜
殉情


脚本・演出:石田昌也


   佐助:絵麻緒ゆう
   春琴:紺野まひる

 春松検校:萬あきら
  利太郎:箙かおる
 安左衛門:飛鳥ゆう
   しげ:灯 奈美
   お蘭:森央かずみ
  マモル:音月 桂
   石橋:風花 優
  ユリコ:涼花リサ
   番頭:麻愛めぐる
  およし:花純風香
  おきみ:汐夏ゆりさ
   千吉:貴船 尚     /他 雪組生徒

      雪組27名
     (専科)萬あきら、箙かおる




<解説>

 春琴の墓を見つけた現代の若いカップルが春琴の人生に興味を持ち、
温井検校の孫弟子にあたる架空の人物に
「春琴と佐助の実像」について質問する形式で物語は進行、
日舞やダンス場面を挿入したミュージカル。
新トップスターとなる絵麻緒ゆうが、
平成7年にバウホールで初主演し大好評を博した作品の待望の再演。
脚本・演出は石田昌也。

(GRAPH3月号より)


<感想>

 このタイトルでは1995年初演であるが、
その前(資料不足だが確実に18年以上前)に大地真央主演で
「愛限りなく」というタイトルで大劇場で上演されている。

ということで「春琴抄」は3回目の金子であるが、
一応後に○本文学科、最初のときに原作を読んだ。
そのときの感想は、

「なんでこんな情けない男を主人公にするかなぁ」という感じであった。

まだ○学生だったし、谷崎の深さが全然分からずじまいであった。
そして、95年にまたバウホールで観たのだが、
春琴が佐助を誘惑する場面
(これ以上はすみれコードにひっかかりそうなので書けません)
が一番印象的で、
「春琴ってここまで驕慢なのね、
 いやー芝居とはいえブンちゃん(絵麻緒)、
 大阪弁も含めよくやっているわ」
くらいで終わったのを覚えている。
で、今回である。

観終わって「谷崎は深いわー」とつくづく思った。
こんな男女の愛の姿を創作すること自体、大作家だな、と思わされた。
金子、谷崎は全く教えを受けたことがないので、
全くの専門外の身であるが、
劇場をでるときじーんとした感動が残っていた。
「あー、なんだかしらないけど楽しかった。さあかえろ」
という感じではなく。
(こういう、全く後に残らないのもまた、
 それはそれで観劇の値打ちもあるのだが)
それでは、人別に書いていこうと思う。


 佐助の絵麻緒ゆう
95年のことを思ったら格段の進歩であった。
(まあ、新トップになるのだから、そうなってくれなくては困るのだが)
95年のときは最後まで
「春琴を憧憬する青年」であったが、今回は

「忠僕な下僕(プログラムより)」→
「春琴に思慕をよせる青年」→
「ただ1人の愛する人を身を挺して守ろうとする男性」
と変わっていって、最後には
「誠実さ」の上に針で目をつくシーンでは
「いさぎよさ」さえ感じた。

この2人の関係で本当に強いのは佐助のほうではないか、とすら思えて、
プログラムにある「抱擁力」は充分感じられた。
ファンとしては、せっかくのプチお披露目なのだから、
得意なダンスの多いショーかなんかで、センターパーツに髪を分けて、
視線ガンガン飛ばしながら踊って、
歌ではあの甘い表情で歌って欲しいのだが、
あえて超日本的な谷崎の世界に再挑戦して結果を出したと思う。
次の大劇場公演が楽しみである。


 春琴の紺野まひる
ベルリン公演の「花占い」のシーンに代表されるように、
彼女の持ち味ははきはきしたところだと思うので、観る前に

「あの谷崎のじとっとした、
 いわゆる耽美主義にどううってでるのだろう」と思った。

ところが、はきはきしたところは、
春琴のいわゆるキツイ物言いにはマッチしており、
一方鳥に話しかけるところには可愛さが出ていて、
「ああ、この人はキツイこと言っているけれど、
 本当のところは本心を言えない可愛そうな人なのだな」と理解できた。
ただ、可愛いシーンが鳥のところ以外に皆無に等しいので、どうしても
「キツイ、嫌味な」女、
に見えてしまうのは原作上、作品上仕方ないと思う。
だからこそ、最後に自分と同じ盲人になってくれた佐助への
「ありがとう」が重要なのだが、
ここが本当に声から気持ちがこもっていて良い出来だったと思う。
でも、やはり上に書いた佐助を誘うシーンのじとっとした、
谷崎的なところはもう1つであった。
今、彼女に必要なものとしたら、「情感」であろう。
あとは、十分安心してトップ娘役を任せられる気がした。


 利太郎の箙かおる
失礼だが、ミスキャストであった。
というべきか、95年の千珠晄があまりに快演すぎて、
その印象が大きいのだ。
この話は利太郎が憎たらしければ憎たらしいほど、
2人の悲劇性が高まるのだが、
もう少し自己中心的な嫌味な野郎でお願いしたかった。
春琴に迫る場面でも、もっと強引でもいいと思った。暴言多謝。


 春琴の両親の飛鳥裕灯奈美の2人は
しっかりワキを締めていてよかった。
こういう2人の愛情が春琴をわがままに走らせたのだな、と理解できた。
よって、春琴の妊娠についてだけ、強く問い詰めても無駄だ、
ということが客席からでもありありと分かった。


 お蘭の森央かずみ
初めてこんな大きな役をされるのをみたが、
もっとじたばたと女の意地で悔しがっていいのではないか、と思った。
利太郎と共謀して佐助を誘い出すところはなかなかであった。


現代人の3人。
風早優の石橋はこの人らしく達者なものであった。
感心したのは、台詞が分からないところが一つもなくて、
狂言回しの役を充分に果たしていた。

マモルの音月桂はすがすがしく、本当に伸び盛りで、観ていて楽しい。
また、1場面だけだが妖艶な面を見せてくれて、ますます期待の新人だ。

また、ユリコの涼花リサは初めてこんな大きい役をしているのを観たが清楚な感じでいい。


 最後に、温井検校の萬あきら
あまり、盲人のように見えなかったのだが、
少ない出番で少し勿体ない気もした。


 全体的に前に座ったせいか、音響の良さか、
台詞は100%ちかく聞こえた。
新人まで谷崎の世界、そして大阪弁に努力している様子が心地よかった。
こういう余韻を持たせる舞台もたまには必要だな、
と思いつつ家路に着いた。


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□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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