■■■AYAの宝塚歌劇 観劇記■■■


花 組

シアター・ドラマシティ

カナリア


観劇日:12月28日(金)
     昼 13列15番



    作・演出:正塚晴彦

         花組選抜メンバー




<解説>

 新トップスター匠ひびきを中心とした、
花組選抜メンバーが年末に送る、
ちょっとブラックでスパイスのきいた、
大人のファンタジックラブコメディ。
(「歌劇」12月号より)


<あらすじ>

悪魔学校の優秀な卒業見込み生ヴィムは
最終試験として人間界のパリに行き、
最初に会った人物を、最高に不幸に陥れることを命じられる。
パリにやってきた彼が最初に出会った人間は、
スリのホームレスのアジャーニ。
彼女は、眠るところもなく、
スったお金も上納金を収めなければならないほど、
不幸のどん底の人間だった。
これに困ったヴィムは一計を案じる。
まず、彼が考えるには、人間の幸福は「心のやすらぎを得ること」。
しかし、これはお金がないといけない。
それで彼はアジャーニに次から次への銀行強盗を誘いかける。
アジャーニはこれを行動に移し、ホテルの一室に住まうほどになる。
しかし、彼女にも「良心」が芽生え始め、
稼いだお金を教会に寄付してしまう。
彼女を幸せにしてはならじと、ヴィムは彼女を警察に逮捕させる。
しかし、人間の善を知ってしまった彼に、
悪魔界はそれ以上のお人よしはならずに、と釘を刺す。
ところが、アジャーニは稼いだものは、
すべて事業やなにやらに使ってしまう。
とうとう、ヴィムは彼女の「良心」に抗えなくなり、
またアジャーニも悪魔と知りながら、ヴィムを愛するようになる。
最後に彼女にキスをして、ヴィムは「試験は失敗だった」と告げる。
そして、人間界に戻された後、もう一度アジャーニにキスをして、
彼の命は絶える。
しかし、彼を待っていたのは、カナリアの鳴く天国の世界だった。
そして、彼はもう一度、天国学校に入ることに決めるのだった。


<感想>

 かなり、上の感想を書くのは疲れた。
なにせ、1幕・2幕、同じような場面も多く、
また一番のネックは、
舞台上では悪魔の考える考えが台詞で言われるのだが、
こちら観客はそれを人間の考えで考えなくてはならず、
結構筋は面白いが、私としては頭を使わないといけないので、
タフな舞台であった。
また、前楽に行ってしまったせいか、
一部やたらみんなが笑っている場面があったのだが、
私には本当にすべってしまっているのか、
それとも今日が本当に可笑しいのか分からないところがあった。
実感としては、「2回観ないといけないのかな」と思った。
それと、タイトルの「カナリア」が何を意味しているのか、
いまいち分からなかった。
ヴィムが最後にカナリアのように天国で羽ばたける、
という意味だろうか。
それと、上の解説に「ファンタジック・ラブ・コメディ」とあるのだが、
金子には、「ファンタジー」ぐらいにしか感じられなかった。
あまり、ラブラブという感じではないし、
そう無茶苦茶笑った感じはない。
個人的には、ドラマシティの正塚作品では
「ラブ・インシュランス」がやはり一番好きだ。
後は、出演者別に書きたい。


 匠ひびき、ヴィム。
なんやかんや言っても、チャーリーはクールな役がお似合いなのである。
人間界のことを知ったかぶりのお人よしの悪魔。
なかなか、クールで人間と別の存在、というのはよく分かった。
やはりあの目は、1つの武器だ。
ただ、逆立てたあの髪型はいただけない。
普通の7:3でいいのに。

歌も前に比べて、怒鳴り調子が少なくなり、
やはり合わせて書いて貰った歌は歌いやすいのでしょう。
芝居の間にダンスがほとんどなくて、
少しフラストレーションが溜まったが、
フィナーレでの端正なキレのあるダンスは観ていて気持ちよかった。
でも、私から言うと何かが足りなく感じた。
それは「スターの狂気」である。
金子、○学生のときはたと
「トップには狂気が必要なんだ」と持論を持ったが、
それはあながち間違っていなかったらしくて、
紫苑ゆうさんがやめられる時に、同じことを言ってられた。
その「狂気」がどうしてもチャーリーからは感じられなかった。
むしろ「有終の美を飾る一作品としてやっております」という感じだった。
どういう理由でやめられるのか知らないが、
たとえ1作とも「トップの狂気」を観客に見せて欲しい、
というのは贅沢であろうか。
とにかく、たった1作のトップとしてオリジナルの作品なのだから、
「代表作」というべきなのだろうが、個人的には同じクール路線として、
「タンゴ・アルゼンチーノ」のカール挙げたい。

 大鳥れい、アジャーニ。
ヒットである。
始めのほうの、髪の毛を結わえて、ボサボサヘアで、
ベンチにばーんと足を上げて
「なめるんじゃないよ!」
など、長身の彼女ならではの迫力があった。
それが段々、「良心」がもたげはじめ、人のことを考えるようになり、
最後にヴィムに愛を抱くまで、よく出来ていたと思う。
つぎのシャロンが楽しみだ。

 牧師の春野寿美礼。
ノーブルなこの人にぴったりの配役で、
少し腰が引けているのが面白かった。
もう少し歌があってもいいかな、とも思った。
一度、悪役なんかみてみたい。

 ウカの瀬奈じゅん。
悪魔の中では存在感があってよかった。
ただ、台本上、
もう少し人間界との矛盾をのべる台詞があってもいいのではないか。
台詞が明確になってきたので、次のスカーレットが楽しみである。

 専科の矢代、未沙のお二人は要所をしめていて流石である。
ただ、もう少し「カナリア」の意味を説明して欲しかった。

 娘役では、やはり遠野あすかが戦力だ。
途中のニュース・キャスターのところも声が綺麗で、
歌も聴いてみたかった。

 脇役では、やはり、貴柳みどり。
この人はなにをやっても存在感がある。
花組の戦力としてずっといて欲しい感じだ。

ディジョンの蘭寿とむも
急におとなしくなる役であるが、少ない出番で印象に残った。

一方、刑事の彩吹真央は出番も少なく、
歌もないので余り印象にのこらなかった。

 全体的に、60点、というところだが、
もう少し短い時間でやれるような感じがする。
もう少し、悪魔界の掟をはっきり打ち出し、
アジャーニの「良心」の芽生えもはっきりさせたほうがいいと思った。

 以上、感想を書くのが非常に頭を使ったが、
読んで分かっていただけたら幸いである。
読んでくださった方、有難う。
筆者へのメール、お待ちしています。
(ファイル形式は開けませんので、普通のメール形式でお願いします。)


□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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