■■■SUNの観劇記■■■



オイディプス王

◎ ク・ナウカ 公演 ◎

東京都庭園美術館・庭園

観劇日:2000年7月25日(火)19:30〜(全席自由)


2000年7月25日〜7月30日 
     東京都庭園美術館・庭園

     8月 2日〜8月 3日 
     日比谷公園野外大音楽堂

 構成/演出:宮城 聰

@@ CAST @@@@@@@

       speaker  mober
オイディプス:阿部一徳   美加里

  クレオン:吉植荘一郎  大高浩一

テイレシアス:吉田桂子   萩原ほたか

 イオカステ:吉田桂子   江口 諒

    使者:中野真希   中村優子

    牧人:稲川 光   木下貴道

  コロス長:榊原有美


   演奏:寺内亜矢子 原田玖美子 本多麻紀 諏訪智美
      大内 米治 遠藤明香 関根淳子 星村美絵子
      吉川和海 加藤幸夫


【オイディプス王=ものがたり】 - 場内渡しパンフより(追加有り)

古代ギリシア・コリントスの王子として育ったオイディプスは、
父を殺し、母と交わるであろうという神託を受けた。

それを避けるため放浪の旅に出た彼はテーバイに到り、
怪物スフィンクスの謎を解きその国を救い、請われて王位につく。

非業の死を遂げた前王ライオスの妃イオカステを妻に迎え、
幸福な日々が過ぎ去るが、ふたたび災難がテーバイを襲う。
疫病が広がり作物は枯れ、人々の苦しみの声が巷にあふれている。

そこに国を救うための神託がもたらされる。
ライオス殺しの下手人を罰するようにと。

盲目の予言者テイレシアスはオイディプスこそがその殺害者だと言うが、
それを自分を陥れるための陰謀だと考えたオイディプスは
真実を追求してゆき、ついには自分自身こそが
災いの真の原因であることを突き止める。

その真実とは・・・
オイディプスのコリントスの父母は育ての親であり、
生みの親である父は、放浪中にそれと知らず殺害した
テーバイの前王ライオス。
そして、現在オイディプスの妃のイオカステは、
オイディプスの生みの母。

つまり、オイディプスは神託通り、父を殺し、母と交わっていた。

真実を知ったイオカステは自害し、
オイディプスは自らの手で両の目をくりぬいて盲目となり、
ふたたび放浪の旅に出る・・・・・。



ク・ナウカ。
観たい、観たいと思ってた劇団。
やっと観劇かなった。

素晴らしい舞台だった。

上記CASTのとこの「speaker」「mober」というのは、
役者を「語り」と「動き」に別けてやるから。

それってどうなのか? 
やる意味ってあるのか? 
面白いのか? 
効果的か?
人形浄瑠璃みたいなものか?

色々思ってはいたが、なかなか観に行けず・・
演目も「天守物語」やら「メディア」やら、好きな演目やってくれて、
まあ、観ないことには、はじまらぬ、と。

「オイディプス」、劇場は「東京都庭園美術館・庭園」。
お、初日に行けるぞ、と行ってみた。

「雨天決行」の注意書きあっての公演。
開演直前に席に案内される。
開演待っているときに係りの方が配ってくださった簡易レインコートを、
「降るかなー」ってな感じの夜空を仰いで、保険で着込む。
観客みんなで着込む。
寒いくらいだったので、調度よさげでよい。

「オイディプス」の世界となる、
この東京都庭園美術館・庭園の野外舞台は、
能舞台と同様に組まれてある。
背景に庭園美術館の正面があり、
その美術館の列柱を下からライトアップすることで、
古代テーバイの宮殿の列柱に見立てている。

橋掛りの上を、庭園の松が斜に被さっている。
その松の下を、幕開き、テーバイの人々がこの世(舞台)に向って
滑るように歩いてくる。
その姿が、闇の中に浮かぶと同時に、
雨が降りはじめた。

その雨は、オイディプスが、その真実に触れる度、
真実が現われる度、降りはじめる。
強くなる。
そして、静まる。
庭園を吹き抜く風も、オイディプスの揺らぎと共に木々を揺らす。
テーバイの人々の髪を、衣裳を、振りたたせる。

「天がこの舞台を観ている」という感じだった。

そのせいもあるのかな、「語り」と「動き」が別なことが、
それで一人の人間である、ってことが、神憑り的にみえて。
[オイディプス]という
「神の身勝手な運命に翻弄された男」の物語りを表現する手段として、
素晴らしく機能していた。

ラスト。
テーバイの人々が、この世(舞台)から橋掛りを越えて、
彼岸へ戻っていく。
と、オイディプスが流す、涙のように、血のように、
降り注いでいた雨が、
止んだ。

ク・ナウカとの、今日の出会いは強烈でした。

美加里さんという、ク・ナウカの看板役者がいい。
あの存在は、もう独自の世界を築いている。
うーん。いいもの観ました。

今日のような「天」の気分が、
この公演中にク・ナウカに何度向くかは分からないけれど、
観にいかれて損はないです。

この野外公演。
あと何度、天はク・ナウカの舞台を観るのだろうか。


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