鳴く虫の種類
鳴き声を出す虫には、キリギリス・コオロギの仲間とセミの仲間がいます。
東京近辺で比較的容易に声を聴けるものは、キリギリスの仲間10種類ほど、コオロギの仲間20種類ほど、セミの仲間5種類ほどでしょうか。
地方によって住んでいる虫は少しずつ違います。
体の特徴
キリギリスの仲間 | 背が高く横幅がせまい。 |
コオロギの仲間 | キリギリスとは逆に、背が低く横幅が広い。 |
セミの仲間 | 平べったい。 |
住んでいる場所
キリギリスの仲間 | 草の上が多い。 |
コオロギの仲間 | 地面や草の上が多い。 |
セミの仲間 | 木の幹にとまっている。 |
鳴き方
キリギリスの仲間 | 羽をこすり合わせて音を出します。 |
コオロギの仲間 | 羽をこすり合わせて音を出します。 |
セミの仲間 | 腹の中にある筋肉を動かすことで音を出します。 |
バッタの仲間には足を体にこすり合わせて音を出すものがいますが、一般には「鳴く虫」とは呼ばれていないようです。
鳴く時間帯
キリギリスの仲間 | 昼に鳴くものもいれば、夜に鳴くものもいます。 |
コオロギの仲間 | 夜に鳴くものが多いですが、夏は夜だけ鳴き、秋になると昼も鳴いたりします。 |
セミの仲間 | 種類によって朝方鳴くもの、朝夕鳴くもの、昼間ずっと鳴いているものがあります。夜は本来鳴かないようですが、都会では夜でも明るいためか、鳴き声を耳にすることもしばしばあります。 |
鳴く時期
キリギリスの仲間 | 夏から秋にかけてが多いです。中には成虫のまま冬を越し、春に鳴く変わり者もいます。 |
コオロギの仲間 | 秋鳴くものが多いですが、4月頃から鳴き始めるもの、夏に鳴くもの、初冬まで鳴いているものもいます。 |
セミの仲間 | 一部春に鳴く種類もいますが、大抵は夏から初秋にかけて鳴きます。 |
鳴くのはオスだけ?
鳴くのはほとんどの場合オスだけですが、中にはメスも鳴く種類もいます。
種類を見分けるには
種類ごとに鳴き方が異なるので、鳴き声を調べる手段があれば大概どの虫かわかります。このサイトに載せてある音を利用するか、鳴く虫の声を集めたCDで聴きくらべるといいでしょう。
ただし、同じ虫でもいくつか鳴き方があるので、必ずしも声だけでわかるとは限りません。一匹だけでいるとき、メスが近くにいるとき、けんかしているときでは鳴き声は変わります。
また、気温によって鳴き声も変化します。気温が高いとテンポが速く、低温ではゆっくりになり、音質も微妙に変わってきます。
そこで、鳴き声を頼りに虫を探し出し、必要なら捕まえるなり写真に撮るなりしてから図鑑で調べることをおすすめします。形だけでは識別しにくいこともあるので、鳴き声、季節、時間、場所などから総合的に調べるとより確実です。
声の録音
知らない虫が鳴いていたとき、声を録音しておくと種類の同定が楽になります。
とりあえず録音するだけなら、持っている録音機で試してみて下さい。
ただし、高い声で鳴く虫の声を忠実に録るには、ある程度専門的な機材が必要です。
録音機は「リニアPCMレコーダー」、あるいは「ICレコーダー」の中で「リニアPCM対応」とあるものがいいでしょう。単なる「ICレコーダー」はヒトの声を録音することに特化しているものもあり、虫の声はうまく録音できないことがあります。カタログを確認してなるべく高い音まで録音できるものを使ってください。リニアPCMレコーダーは、非圧縮形式の音声フォーマット(WAV)で録音でき、より原音に忠実に録ることができます。
また、外付けマイクもあった方がいいでしょう。こちらもなるべく高い音まで入るものを選びます。特定の虫の声だけを拾うなら、指向性の高いマイクを使います。
可能であれば、録音機、マイクともに、周波数特性が 20kHz 程度まであるものを使って下さい。
鳴いてる虫がいたら、音を頼りにそっと近づき、虫の近くにマイクを持っていきます。十分なレベルで録音できるよう、なるべくマイクを近づけるようにします(ただし、特に大きい声を出す虫は近づきすぎると音がつぶれます)。大抵は近づくと鳴き止んでしまうので、鳴き出すまでひたすら待ちましょう。感度が高く指向性の高いマイクを使うと、多少離れていても録音できる場合があります。
コオロギの仲間は比較的低い音を出すので、録音しやすいです。キリギリスの仲間は非常に高い音を出すものがいて、うまく録音できないことがあります。
屋外で録音すると、風の音や車の音、他の動物や虫の声などが入ってしまいます。じゃまな音を入れたくなければ、虫を捕まえて飼うといいでしょう。
コオロギ・キリギリスの飼い方
鳴く虫を捕まえてきて飼えば、ゆっくりと声を鑑賞することができます。
容器はペットショップなどで売っているプラスチックのものが手軽でおすすめ。
中には、虫を見つけた環境に合わせて、土を入れるなり、草を入れるなりします。草の上にいる虫の場合、その草を餌としていることもあるので、草も一緒に取ってくるようにします。
餌は種類によって違いますが、リンゴ・キュウリ・ナスなどの植物性のものと、にぼしなどの動物性のものを与えておくと、たいていは大丈夫。
動物性の餌を好んで食べる虫は、ひとつの容器に何匹か入れておくと共食いしやすいので、分けて飼うなり仕切りとなるものを入れるなりしなくてはなりません。
声を楽しむには
虫の鳴き声を鑑賞するには、やっぱり自然の状態でナマの声を聴くのが一番。夜風に吹かれながら、草の薫りと共に楽しまなきゃ、ね。
虫によって、住んでいるところ、鳴く時期、時間が異なります。よく知った場所でも夜行ってみると知らない虫が鳴いていたり、ちょっとした道端の草むらに意外な虫がいたりということはよくあります。いつも歩く道をちょっと変えてみるだけでも新たな出合いができるというもの。
近所に公園、草地、林、田んぼ、畑、池、川などがあれば、実にいろんな虫を見つけることができるはずです。
もっと詳しく知りたい方に
「虫はなぜ鳴く」 松浦一郎 著 文一総合出版 1990
「鳴く虫の博物誌」 松浦一郎 著 文一総合出版 1989
「声の図鑑 虫しぐれ」(山渓CDブックス5) 山と渓谷社 1994
「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」 日本直翅類学会編 北海道大学出版会 2006
がおすすめです。
最後の図鑑はかなり高価ですが、直翅類の本格的な図鑑としては唯一のものです。