玉置浩二/今日というこの日を生きていこう
(ミュージック・マガジン05年3月号掲載)

  安全地帯の復活を経た4年ぶりのソロ。本人の他、安藤さと子と矢萩渉が中心となり、ゲストが加わるという陣容は、00年の『ニセモノ』から一貫しているが、今回のように玉置がソロ名義のアルバムで、作詞家の松井五郎と組むのは、87年の『All I Do』以来。今回のコラボレーションの背景にどういう事情があったのかは知らないが、まるで両者のドキュメントのように響く「UNISON」に象徴されるように、本作には前向きな気配が漂う。またホーンの活躍が華々しいシングル「愛されたいだけさ」も、近年の玉置のストイックなイメージを良い意味で裏切っている。

 とはいえ僕が最も気に入っているのは、歌詞も玉置が自作した「グライダー」。ソロになってからの玉置にとって非常に重要なレパートリーである「しあわせのランプ」の続編ともいうべき楽曲だが、この歌に込められた深い憂いを伴う優しさは、多くの傷ついた孤独な魂を救わずにはおかないだろう。

 「本音で生きよう、本気で生きよう」と言葉にしてしまうのはたやすい。だがそれをここまで虚飾のない形で説得力のある作品にできる存在は、やはり稀有だ。天から与えられた才能を、世の中に役立てる方法を慎重に考え抜いたかのような凄みがある。

 現在の音楽シーンの多くの現場で、仕事は“BUSINESS”かも知れない。だが少なくとも玉置浩二は、“MISSION”として取り組んでいるように思う。

98年 ビデオ「WE CAN BELIEVE IN OUR“JUNK LAND”」レヴュー
98年 アルバム『GRAND LOVE』プレス資料〜玉置浩二論
99年 ビデオ「“GRAND LOVE”A LIFE IN MUSIC」ライナー
99年 アルバム『ワインレッドの心』プレス資料
01年 玉置浩二3万字インタヴュー
14年 玉置浩二ソロ・アルバム『GOLD』