朴保ライヴ日誌

 僕がライヴを観る回数が最も多いアーティストは、まず間違いなく朴保だろう。本来なら今までもライヴを観る度に、きちんと記録を残しておくべきだったのだが、ずぼらなため、雑誌や機関誌の記事にする時にしか書いてきませんでした。スタッフの皆様、ごめんなさい。ホームページを作ったこの機会に、そうした態度を改め、今後は出来る限りこの場所で印象を書き残していきます。
 ただここの文章を読む前に、ひとつみなさんに了解しておいていただきたいのは、僕には彼の音楽を広く伝えたいという強い欲求があるため、どうしても注文を付けたくなってしまう部分も出てくるということです。一言で言って他のアーティストのライヴ・レヴューなどに較べて、期待が高い分、きつい言い方も出てくると思いますが、それは彼の音楽に対する僕の愛情の現れとしてご了承下さい。

2005年03月16日 朴保、朴実、大熊亘、みわぞう、ツノ犬、三田村卓、秋山公康
2004年09月18日 朴保、朴実
2004年08月07日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
2004年04月07日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜、Sassy Tomo
2004年03月28日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜、Sassy Tomo
2003年12月20日 朴保、松藤英男、吉田達二、Sassy Tomo、伊藤孝喜、朴実、清水達生
2003年11月02日 朴保、朴実、武田裕一、清水達生
2003年10月11日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
2003年07月11日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
2003年06月07日 朴保ソロ
2003年04月26日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
2003年04月17日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
2003年02月12日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
2002年12月21日 朴保、吉田達二、井手隆一、朴実、伊藤孝喜
2002年11月15日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜、Sassy TOMO、広瀬淳二
2002年09月21日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、松永孝義、KOKI
2002年04月14日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、KOKI
2002年03月10日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、和田啓、井ノ浦英雄
2002年01月31日 波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、KOKI
2002年01月08日 朴保、松永孝義、永原元、朴実、篠原信彦
2001年12月19日 朴保、関雅夫、佐藤英二、松藤英男、和田啓
2001年10月31日 朴保、松永孝義、永原元、朴実
2001年09月23日 朴保、松永孝義、永原元、朴実、矢野敏広、ABO
2001年08月14日 朴保、松永孝義、永原元
2001年07月01日 朴保with永原元
2001年06月29日 朴保Band



◎2005年03月16日
朴保、朴実、大熊亘、みわぞう、ツノ犬、三田村卓、秋山公康
at 東京入国管理局前



 朴実以外のメンバーは、同じイヴェントに出演していたブルースビンボーズ、A-MUSIKなどの出演者を現地調達。

 しかしそのステージは、とてもそうは思えないほどのテンション。特に久々に聴く「フリーダム」から「夜を賭けて」の選曲はすさまじく場の空気にはまっていた。おそらくこの日初めて朴保を見た人の中には、いきなり熱狂的なファンとなる人も少なくないはず。MCと選曲が良ければ、ここまですごいステージをやる人なのだ、と、久々に感動しまくった。



◎2004年09月18日
朴保、朴実
at下北沢 ぐ

 序盤は朴保独りの弾き語り。アコースティック・ギターとピアノを持ち換えつつ、今まで聴いたことのなかった新曲を中心に構成。まだ手探りの段階の楽曲が多かったようだが、そんな中で8月7日に初めて披露した「乾いた心に」が、一番リアルに響いた。
 中盤からはエレキ・ギターで朴実が加わって兄弟デュオ。ただしこの日も朴保は酔っぱらいモード全開。プロテスト的なものをやったと思ったら、今度は突然ヴェンチャーズのカヴァーをはじめたりという構成は、ライヴというよりは宴会ノリのごとし。選曲が成り行き任せなのは別にかまわないが、“どうしてもこれだけは聴かせたい”という切実さに震えたい僕としては、食い足りない想いが残った。



◎2004年08月07日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
at荻窪 ROOSTER

 朴保酔っぱらいモード全開。歌い出す部分で歌い出さなかったり、おそらくリハとは違うフレーズをギターで弾き始めたりすることがしばしば。しかしそれで客席がしらけることがないのは、バンドの包容力と朴保の愛嬌の賜物。
 特に二部では場内を酔っぱらいモードに巻き込むような盛り上がりに、観客としてはマジックを見る思い。こうしたハプニングは、普段と違うアレンジにつながったりもするので、バンドは大変だろうが、スリルもあった。
 ギターだけでなくピアノもチョロリと弾いていた松藤氏や、「HIROSHIMA」における伊藤孝喜のドラムスの起伏の激しさが絶妙。
 アンコールでは朴保独りがエレキの弾き語りで、当日作ったばかりだという新曲を披露。何回も演奏を止めてしまうのにはいらいらしたが、メロディの聴かせ方のうまさには改めて感服。
 ただ、そうした終わり際も含めてこの日のステージは、バンドというよりもセッション的な印象が強かった。


◎2004年04月07日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜、Sassy Tomo
at初台 DOORS

 アルバム発売記念ツアーの東京公演。即興的な要素はあまりなかったが、ツアー・ラストだけあって、ダイナミックなアンサンブルの冴えは格別。以前からの僕のお気に入り「TODAY」も嬉しかった。「LOVE IS A MYSTERY」では、朴保のお子さんがステージに乗っている状態で、Sassy Tomoが一部ヴォーカルをとるという何とも微笑ましくも感動的な一幕も。今回のSassy Tomoは、キーボードでの活躍が目立ち、レギュラー・メンバーの一員に近い存在感を発揮していたのも印象的。
 そしてグループでは最年少である伊藤孝喜の存在感が、どんどん増しているのも素晴らしい。バンドとして上り調子にあるのが傍目にも良く分かった。


◎2004年03月28日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜、Sassy Tomo
at ONE KOREA FESTIVAL TOKYO 2004

 代々木公園における野外イヴェント。横浜を拠点とするFIREBALLのCHOZEN LEE。飛び入りのソニン、そして波人というものすごい出演順。初めて見るCHOZEN LEEは、バンドを従えてのソロ名義のステージ。ノドの強さと言葉をまっすぐぶつけてくるDJスタイルで、客あしらいの巧みさもあって惹きつけてくれた。ソニンはオケを流す部分もあったが、あえて生ギターを持って登場するところに、本人の意志が感じられた。
 そして波人。機材のトラブルで松藤の生ギターが聴こえないという悪条件の中だったが、この場のために用意した「よさこいアリラン」で、客席もステージも渾然となった盛り上がりで場を締め括ってくれた。



◎2003年12月20日
朴保、松藤英男、吉田達二、Sassy Tomo、伊藤孝喜、
朴実、清水達生
at下北沢ぐ

 恒例の年末ライヴ。前半は朴保、松藤英男、吉田達二、Sassy Tomo、伊藤孝喜の5人で、後半にさらに二人が加わるという贅沢極まりないラインナップで、朴保はエレキ・シタール・ギターをがんがん弾きまくり、究極のジャム・バンド状態に。そもそも自然食レストランの片隅で、7人もの大所帯で演奏するということ自体、どアホな行為だが、どアホになった朴保がのりまくった即興の説得力は無敵!! エゴも力みもなく、世田谷が世界に誇る音楽獣の本領を発揮したすさまじいライヴだった。アンコールのクリスマス・ソングも小粋。
 今年も朴保を追っかけてきて良かったとしみじみと思う。



◎2003年11月02日
朴保、朴実、武田裕一、清水達生
atはらっぱ祭り

 今回は波人ではなく、久々に朴実との共演。ベースの武田さんは80年代の切狂言だった人物、ドラムスの清水さんと演奏するのは初めてで、セッションを楽しんでいるといったあんばい。ドラムスは滑らか、武田さん気合い入りまくり、マイペースの朴実、楽しそうな朴保と、メンバーの佇まいもそれぞれで、いかにもセッションという感じ。ただステージ自体はなごやかにやっているのだが、前半の選曲にはヘヴィなメッセージのものが多く、なごんでよいのか、歌と向かい合って聴くべきか個人的には少々戸惑う部分があった。とはいえ観客の盛り上がりは上々。また「峠」はどんな聴き方をしても染みていく曲だな、と改めて実感した。



◎2003年10月11日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
at竹の塚ダンデライオン

 前回から3ヶ月ぶりに見た波人は、リズム・セクションの充実ぶりが印象的。伊藤孝喜のドラムスはタムの響きがど迫力。関さんのベースも唸りまくり。曲自体は特に目新しいものはなかったけれど、「峠」などは以前と完全に違う印象になっているのに驚かされる。バンドとしての充実に拍車がかかった感じで、何か新しい展開がありそうな気配を感じさせるステージだった。



◎2003年07月11日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
at初台 DOORS

 高円寺の颱風の主催によるイヴェント。平安隆バンド、Tequila Circuitに続いて波人はトリで登場。共演バンドも顔見知りが多いためか、場内の空気がなんともいい雰囲気。スタンディング形式ということもあって、久々に最前列でかぶりつくようにして楽しませてもらった。
 まずは天井が高いこともあってか、音の良さと迫力に仰天。「IN MY HEART」を久々に聴くことができたのも嬉しかったし、新曲もあり!
 だが僕にとってこの日の最大の収穫は、5人のメンバーの演奏におけるアクションやアンサンブルを、メンバー同士の目線のやり取りも含めてばっちり体感できた点だった。例えば一番近くで見ることができた松藤さんのアクションは、アコースティック・ギターの響きを客席に伝えたいニュアンスそのまま。言葉を替えると彼の身のこなしのひとつひとつが見事に音楽的なので、演奏に込めるエモーションがさらにリアルに伝わってくるような気がしてときめいた。
 それに加えて伊藤孝喜と関さんをはじめとするメンバーの目線が交差する様子を間近で味わえる贅沢さ! しかもちょいと照れくさいが、僕も松藤さんや関さんと目線が合ってしまった瞬間もあったので、まるで演奏中のメンバー同士のテレパシーのやり取りをわきで傍受しているような気分。歌とバックではなく、5人それぞれが絡み合っていくバンドとしての生々しいスリルが、とても鮮明だった。もちろんこれは波人のチームワークの良さがあるからゆえ。波人というバンドに改めて惚れ込んでしまう幸福な時間を過ごさせていただいた。
 こんな素敵な思いをさせていただいて、どうもありがとうございました。



◎2003年06月07日
朴保ソロ
at国立 Zil

 久々に見る弾き語り。終盤にはベースのゲストもあったものの、前半は生ギター、後半はピアノによるひとりだけの弾き語りが基本のステージ。メンバーとのキメごとに一切とらわれなくても良いため、知っている曲でも、その場の閃きでリズムも構成も自在に変え、新鮮に変えてしまう朴保の天衣無縫ぶりを、とことん味わうことができた。
 特にその凄みを痛感したのは「あるがままに」。それまではどうってことない歌詞だと思っていたのだが、本当にその場その場で生まれてきたインスピレーションを、あるがままに受け入れるためには、実はその閃きに自分を丸ごと明け渡してしまうほどの勇気が必要なのだということを、身をもって示しているように感じ、感動した。
 休憩時間に観客の大半がタバコを吸うために店の外に出ていた時に、ピアノをつま弾く姿も良かった。お店のスタッフが休憩時間にするのか、正規の演奏時間のつもりなのか、気を使った時に「いやいや、みんなのBGMになれば良いと思って。音楽なんてそんなものですから」と言った時のエゴの無い表情の美しさは、怖いくらい。
 終盤間際の演奏にはもうちょい構成を際立たせても良いのではないかと思う部分もあった。だがここまで人前で構えずに音楽を演奏できる朴保の稀有な才能を味わえるという意味では、なんとも贅沢なライヴだった。



◎2003年04月17日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
at大曲 GLOBAL DINING ONN


 伊藤孝喜の故郷での公演とあって、楽屋の空気は「今日は伊藤孝喜&オールスターズだ!」などという声も飛び交うなど、なんともなごやか。
 1曲目の「ピナリ」は波人で演奏するのは初めてのナンバー。もっとアグレッシヴな演奏でも良いとは思ったが、こうした土着的なノリの楽曲も波人でやるようになったのは非常に嬉しいし、もっともっとやっていって欲しい。
 開演直後は初めての会場で客席には年配の方も多いということで、朴保が音量の大きさに観客が驚かないかと心配している気配もあったが、いざスタートしてみると、客席もステージも無理な力み無しに爆発的な盛り上がり!


 なお個人的なこの日のハイライトは、アンコールの幕開けを飾った伊藤孝喜のドラム・ソロ。故郷に錦を飾らせようというメンバーの想いと、前日にお逢いした伊藤孝喜のご家族などの想いを受けて熱演する伊藤孝喜の姿を見ることができたのは、素直に感動的だった。
 そこから続けての民謡メドレーで締め括るというのも「ドンパン節」のご当地に相応しい構成だったと思う。 波人の演奏を見るのは初めてとあって、おそらく観客の中にはカルチャー・ショックに近いものを感じた人も多かっただろうと思うが、この日の朴保の歌とパフォーマンスとMC、そして波人の演奏には、馴染みの無い人間を一気に引き寄せてしまうだけのマジックがあった。
 今回は僕自身もスタッフとして関わっていたため、普段のような距離感で語ることはできないが、終演後の観客の盛り上がりなどを見るにつけ、一回のライヴの重みにしみじみと感じいってしまった。出演者、観客、そしてPAのT氏をはじめとする尽力などが重なり合って、素晴らしいドラマが同時多発的に起きるのを目の当たりにして、音楽の凄みを再確認した夜だった。


↑ドラム・ソロ中の伊藤孝喜
↓終演後、彼あてに届けられた花束を抱えて



◎2003年04月17日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
at高円寺JIROKICHI

 朴保自身は何回も出演しているが、波人では初めてとなるJIROKICHI。今回はプロフィール用のアーティスト写真をデジカメで撮影して欲しいという伊藤孝喜からの依頼を受け、リハーサルのところから立ち会わせてもらった。
 今回のステージで印象的だったのは、朴保がギターを置き、ヴォーカルに専念する曲が多かったこと。おそらくバンドとしての波人の充実が、朴保にそこまで演奏を任せても大丈夫という安心感を与えているのだろう。その分、彼のヴォーカルのテンションは、リハーサルの時からひときわ高い。
 演奏面ではベースの関さんが、フレージングといい、身のこなしといい、素晴らしい存在感を感じさせていた。以前は温厚なお人柄ゆえ、松藤さんの情熱的なキャラに較べると、ステージでは関さんの振る舞いが手堅すぎるように見える時もあったのだが、今回のステージでは、ギラギラと煮えたぎるプレイヤーシップが迸っているようで、ついつい目がいってしまう瞬間が多かった。「東京アリラン」での斬新なベース・ラインも絶品!

 あえてひとつだけ残念だったことを上げるなら、リハーサルでやっていた「FREEDOM」を、佐藤さんのギターの弦が切れるというアクシデントがあったため、本編ではやらなかったこと。今のアンサンブルで、あの野性味溢れる楽曲を観客にガツンとぶつける瞬間が見たかったが、それは次回のお楽しみということにしておきましょう。



◎2003年02月12日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜
at下北沢CLUB Que

 昨年見た波人と較べてもライヴ・バンドとして格段の凄みを感じた好演。伊藤孝喜がドラムスのセッティングを替え、通常のドラムスのフレーズ以外にタム類を使って、パーカッションのようなフレーズを組み立てるのが非常に効果的。
 前半はバラード中心のおとなしめの雰囲気だったが、中盤の「峠」から一気に盛り上がった。「鯨狩り」は朴保と佐藤英二のツイン・リードによるジャム・バンド状態。「ヒロシマ」も迫力のある演奏と、鬼気迫るヴォーカルで、リアルな説得力があった。
 いよいよ波人もバンドとして充実し、朴保の多彩な音楽性を引き出しつつあることを実感。そろそろ「FREEDOM」などのハードなナンバーも、この顔ぶれで聴いてみたくなった。



◎2002年12月21日
朴保、吉田達二、井手隆一、朴実、伊藤孝喜
at下北沢 ぐ

 朴実以外のメンバーは、切狂言で活動していた顔ぶれである。忘年パーティとあって、なんともリラックスしたムード。
 事前に曲順も決めてなかったよう。朴保が1曲目のカウントに入ったらタッチャン(=吉田達二)が「曲は何?」と尋ねるという冗談のような場面もあったが、そこまでリラックスできる顔合わせゆえに生まれる即興的なやりとりが非常に面白かった。序盤はマイクの声が歪んでいたりするのが気になったが、途中で舞踏のバックで完全な即興をやってから以降は、グングンと盛り上がり、音質のことなどどうでも良くなってしまった。
 スタッフにたしなめられるほど、やたらと派手に騒ぐお客さんがいたのも気にはなったが、これもこれで下北沢のパーティらしいといえば言えるかも知れない。



◎2002年11月15日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、伊藤孝喜、Sassy TOMO、広瀬淳二
at初台ドアーズ

 ニュー・アルバム『いつの日にかきっと』の発売が遅れたため、リリースに先駆けて行われる形になったワンマン2DAYSの二日目。
 新作からの曲が中心になった本編は、いつもに較べて几帳面すぎる気がしたが、アンコール以降は、朴保の奔放な魅力が味わえた。結果的に前半ではヴォーカリストとしての実力を、アンコールでは完成度よりも瞬間的な閃きに賭けるロッカーとしての醍醐味が発揮されていたように思う。
 いちファンとしてはもっと後者の比重を増したステージの方が好みではあるが、そのへんの受け取り方は人によって異なるだろうし、朴保自身がその時々でやりたいことをきちんとやっているのなら、僕などが注文を付けるのは余計なお世話だろう。
 ただオール・スタンディングとあって、ノリが自然だったのは良いのだが、演奏中に客席での私語が多かったのはちょいと気になった。



◎2002年9月21日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、松永孝義、KOKI
at竹の塚ダンデライオン

 映画「夜を賭けて」のサントラとニュー・アルバム『いつの日にかきっと』のレコーディングなどもあったため、ライブの機会が減っていた朴保を5カ月ぶりに見た。
 波人の言いだしっぺである関氏が都合により参加できなかったため、松永孝義とKOKIというリズム・セクションの初の顔合わせ。そのせいか普段の波人よりも演奏は白熱していた。大きくはないが会場の音響も素晴らしい。朴保のヴォーカルも、普段のように冗談交じりのMCを引きずることなく、初々しいほど真剣で、特に第一部での「いつの日にかきっと」などのバラードは、かなり胸に迫るものがあった。
 この日、僕は腰が痛かったこともあって、第二部の後半で恒例の「立ち上がれ〜」攻撃は、のりにくかったのだが、ダンサブルなナンバーになると、松永孝義のベースが際立つ。同じフレーズを延々と繰り返し、たまに大胆に崩すというミニマムなスタイルなのだが、そこに込める意志の濃密さに打たれまくる。こうなるとKOKIは、松永の弾き出すグルーヴにのっかって、遊び心を発揮するだけで、アンサンブルのニュアンスがぐんと増してくる。その引き出しはまだまだ広げる余地はあるように感じたけれど、こういうリズム・セクションのコンビネーションもあるのだな、と感心することしきり。松永孝義のストイックにして過激な演奏に、元MUTE BEATの本領を見た気がする。



◎2002年4月14日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、KOKI
at下北沢ロフト

 朴保がトリじゃないライヴを観るのは本当に久しぶり。確かにラストの安曇野めぐ留も良かったのだが、いざそういう場に出くわすと、つい他のアーティストの客に彼の良さを知ってもらいたいと応援する気分が高まってしまう。さらに席が一番後ろだったということもあって、早くから立ち上がってでかい声で歌ってしまった。
 トリじゃなかったせいか朴保恒例の「立ち上がれ〜」攻撃も、今回は言い方が謙虚で可愛らしいので問題なし。元々突き抜けた歌唱力の持ち主なので、こういう彼本来の愛嬌がきちんと伝わる時の朴保は無敵だと思う。即興部分は食い足りなかったけれど、11月に公開が決まった映画「夜を賭けて」のために書いたバラードも素晴らしかった。また「ヒロシマ」の後奏におけるKOKIのドラムスは実はハード・ロックがルーツである彼の出自が良い意味で出ていてなかなかのド迫力。



◎2002年3月10日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、和田啓、井ノ浦英雄
at上野水上音楽堂

 「命どぅ宝・平和世コンサート12」のトリとしての出演。今回は和田啓がパーカッション、そしてドラムスは古くはサンディー&ザ・サンセッツ、最近では海の幸などでも演奏してきた井ノ浦英雄が担当。実は井ノ浦は朴保が広瀬友剛と名乗っていた頃のアルバム『それでも太陽が』にも参加している旧友である。イヴェントということもあって、即興によるインター・プレイはなかったが、パーカッションとドラムスの組み合わせから生まれる躍動感はかなりのもの。特に「東京アリラン」の勢いは爆発的だった。それにしても井ノ浦の演奏のフォームは実に穏やかでいて毅然としている。なんだかチャーリー・ワッツを連想してしまった。



◎2002年1月31日
波人(パド)/朴保、佐藤英二、松藤英男、関雅夫、KOKI
at荻窪ルースター

 久々にKOKIがドラムスを担当する波人(パド)でのライヴ。「峠」などでは改めてKOKIの演奏上のアイデアがどんどん増えていることを実感した。
 最近再び良く起きるようになっている朴保のジャム・バンド現象は、この日は「鯨狩り」で炸裂。朴保と佐藤英二のギター同士のインター・プレイが延々と続く至福の時だった。ヴォーカルでは赤裸々なMCの後に始まった「パンハンドル」の声に震える。さらにコーラスの美しさも波人の得意技として改めて印象に残った。二部構成のうちの一部はちょいとシャレがきつすぎというか和みすぎだったが、あまりにもすさまじい二部を見たら、そんなことはどうでもよくなってしまった。とにかく最近の朴保はかなり忙しいはずなのに、どの編成で見てもすごいパワーを見せつけてくれる。




◎2002年1月8日
朴保、松永孝義、永原元、朴実、篠原信彦 at高円寺JIROKICHI

 映画「夜を賭けて」のサントラのレコーディングの合間に行われたライヴ。フロント・アクトには寿、DJに岡本ホーテン、そして朴保Bandのゲストには、かつてハプニングス・フォー、フラワー・トラヴェリン・バンド、トランザム、萩原健一&ドンファンR&Rバンド、Co-Coloバンド、ウォッカ・コリンズなどで活躍し、現在は石間秀機らと共にピタゴラス・パーティのメンバーとして活動しているベテラン・キーボード奏者、篠原信彦を迎えてのステージである。
 1曲目は久々に聴く「ピナリ」。朝鮮半島の伝統音楽をベースにしたこの楽曲は、朴保のレパートリーの中でも最もワイルドでアヴァンギャルドなナンバー。「決めたるゾ」という気合いが無ければできないオープニングだ。そして2曲目の「鯨狩り」で僕は早々と踊り始めてしまった。朴保の声、強力なリズム・セクションを軸にしたアンサンブル、そこに加わった篠原のオルガンが即興的なスリルを醸し出す。今日の演奏はただ事ではない、と直観したのだ。
 その予感は的中。余計なMCもほとんどなく、テンポ良く進行したステージの中でも特にすさまじかったのは、後半の締めにあたる「フリーダム」だった。この楽曲のスタイルは、元々はレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンに似たファンクとハード・コアのミクスチャーだが、今回のインプロヴィゼーションでは、変幻自在にリズムが変わり、朴保も即興の歌詞を歌い出す。エレクトリック期のマイルス・デイヴィスとフィッシュ(あるいはグレイトフル・デッド)に代表されるジャム・バンド、そしてハード・コアがごちゃまぜになったような演奏とでもいうべきか。場内の空気は明らかに時間、空間を超越した異様な陶酔感に包まれている。朴保歴20年の僕としては、90年代の切狂言以降、最も興奮したライヴだった。
 後半になると例によって朴保が、客に立って踊るように煽る。今まで僕はこのコーナーでも何度かそうしたやり方に苦言を呈してきたが今回は別。僕も朴保の側に立ってしまうぞ。こんな素晴らしい演奏をしているのだから、観客ももっともっと熱狂しなさい(笑)。できることなら今回の編成でフル・アルバムのレコーディングをリクエストしたい。



◎2001年12月19日
朴保、関雅夫、佐藤英二、松藤英男、和田啓 at初台Doors

 今回は波人のドラムスのKOKIの代わりに和田啓のパーカッションが入ったもので、パーマネントな編成ではない。しかし演奏の内容は圧巻だった。「LOVE IS A MYSTERY」で始まり、サンフラシスコ時代のナンバーが次々と飛び出す選曲が僕の好みだったということもあるが、なんといってもパーカッションの弾き出すグルーヴが、お馴染みの楽曲のイメージを斬新に塗り替えていくスリルが素晴らしい。朴保と佐藤英二のギターの掛け合いも楽しかったし、松藤のテンションもすさまじく高く、アコースティック・ギターの6弦が切れるというアクシデントがあったほど。
 メンバー全員がお互いの演奏を楽しんで高めあっていく様子が傍目にも分かる生き生きとしたステージで、曲目の構成も予想を覆す場面が多々あった。当然朴保のヴォーカルも冴えまくり。9月のJIROKICHI以上に素晴らしいマジックを見せてもらった。今年僕が見た彼のライヴの中では間違いなく最高!



◎2001年10月31日
朴保、松永孝義、永原元、朴実 at西荻窪WATTS

 今回のタイバンは、元フールズのヴォーカリスト、伊藤耕がフロントを務めるブルース・ビンボーズと、元吉野大作&プロスティテュートのベーシスト、ヨーカイを擁するギャーテーズ。どちらもある時期の僕に大きな衝撃を与えたグループだったので、因縁の組み合わせである。
 で、結果から言うとブルース・ビンボーズにはとにかく感動。音楽的なスタイルは、ブルース〜ファンク系のギター・バンドと決して目新しくはないのだが、疲れたおっさん風のメンバー(失礼!)が、ステージにあがると、包容力に富んだGROOVEを放つ聖なる存在へと即座に変わってしまうあたりは、JAGATARA以来といっても良いかも知れない。
 しかも伊藤耕はまったく偉そうに振る舞うところがない。むしろ少々身内とはしゃぎすぎという気もするが、とにかく自分を等身大以上のものに見せない潔さが美しい。彼は朴保の時もギャーテーズの時もステージ直前で踊りまくっていた。
 今回の朴保はメッセージ・ソングが多かった。僕は「ヒロシマ」や「傷痍軍人の歌」の歌詞(テーマではない)は苦手なのだが、この日は時節柄もあって、それらの歌詞にも即興的な閃きが加わり、僕の好きな朴保の生々しい魅力が浮かび上がっていた。きわめつけは「FREEDOM」松永さんのベースで聴くこの曲のうねりはすさまじい。人種差別のない平和な世の中を求める歌詞の内容は知ってはいるが、つい「矢でも鉄砲でも持ってこい」ってな気分になってしまう(苦笑)ほど、すさまじかった。
 そしてトリはギャーテーズ。はじめは意外な出演順だと思ったが、それぞれのステージを観ていくうちに納得。確かに彼らが一番アヴァンギャルドなので、禁じ手なしの世界にまで場の空気が暖まってから出てくるのが良いかも知れない。音の印象はクロック DVA(シェフィールドから登場し80年代前半に活躍したイギリスのニュー・ウェイヴ系グループ)がレイヴ対応という形で発展したらこうなったかも? という感じ。なぜかあの後でアナログ盤しか持っていないクロック DVAを繰り返し聴いております。



◎2001年9月23日
朴保、松永孝義、永原元、朴実、矢野敏広、ABO at高円寺JIROKICHI

 トリオではなく、旧友の矢野敏広とディジュリドゥのABOのゲスト参加も含めて、いきなり6人でのステージという意表を突いた展開だ。新たなリズム・セクションとの出会いは、確かに新しい充実へと向かっている。ベースとドラムスは歌に寄り添うというよりも、演奏の土台をがっしりとかためた上で鋭いフレージングで切り込んでくるため、各楽器の役割が非常に明確になった。
 朴保Bandを離脱した朴実のギターも、以前のようにブルージーな局面で映えるだけでなく、アレンジを考えた上で切り込む新境地を発揮。はっきりいって以前とは別人のような堂々とした演奏である。朴保も非常に歌いやすそう。
 「東京アリラン」などは東京ビビンパクラブでやっていた頃のポリリズム的なアンサンブルで聴かせる。新曲はなかったものの「ヒロシマ」「傷痍軍人の歌」「モンジュ」といったプロテスト・ソングも大胆にアレンジが変えられている。それも一時期のように聴かせやすくするといった配慮よりも、歌のテーマを大切にしているため、よりピュアな印象を受けた。テロ事件以降の物騒な世相もあってか、非常にリアリティがある。
 2曲だけのゲスト参加だが、ディジュリドゥがスクラッチに似た効果を生んでいたのも良かった。久々に朴保のマジックを目の当たりにしたライヴ。




◎2001年8月14日
花の祭り 朴保、松永孝義、永原元

 元MUTE BEATの松永孝義、以前ソウル・フラワー・ユニオンのサポート・ドラマーをやっていた永原元とのトリオ編成。実質的にこれは朴保の新バンドといっていいだろう。リズム隊のコンビネーションはかなり強力。その代わりお馴染みの曲も新しいアレンジで、ある種ダンス・バンドとしての機能性に満ちたグルーヴを放っているのが新鮮で、民謡メドレーも痛快。ただその方向性で行くのだったら「風まかせ」のようなホノボノ路線の曲を入れるよりも「フリーダム」のようなゴリゴリのナンバーでハイライトを作って欲しかったとは思う。
 また僕としては切狂言、朴保Bandのような情の濃さを求めてしまいがちになるが、それを始まったばかりの新バンドに望むのはコクというもの。新しい可能性は確かに感じられたので、ツアーなどを経て、メンバー同士の関係が深まっていくことでどうなっていくのかを、楽しみにしたい。




◎2001年7月1日
南北コリアと日本のともだち展〜2001ともだちコンサート
朴保with永原元 at青山・東京ウイメンズプラザホール

 この日はジョイント形式のイヴェント。丁讃宇(バイオリン)、沢智恵(うたとピアノ)、江藤善章(パンフルート)の三組の演奏の後で、朴保はトリを務める。今回パーカッションを担当している永原元は、KOKIの前にソウル・フラワー・ユニオンのツアー・ドラマーを務めていた人物。それが最近では、KOKIがユニオンをやり、元ちゃんが朴保のパーカッションをやるなど、逆の組み合わせになる時があったりするわけだから、ミュージシャン同士の顔合わせというものは不思議というか面白いというか。ま、男女の仲と同じように、その相性ってものは、当事者同士でなければ分からないものがあるはずだ。
 ただし客を強引に立たせて踊らせようとする朴保の狙いは、アコースティック・ギターとパーカッションという組み合わせの今回は外れだったと思う。確かにお客さんは立ち上がったけれど、全然体が揺れてない。そもそも企画色の濃いこのイヴェントのお客さんは、コンサートで踊るって経験がない人が多いみたいで、戸惑っているみたいだった。
 フィナーレのセッションの時に
丁讃宇さんに座るように指示されて、ホッとした人もいたのではないだろうか。




2001年6月29日
 朴保Band at大塚・ウェルカムバック

 朴実(パクシル)の脱退でトリオになった朴保Bandのワンマン・ライヴ。朴保がエレキ・ギターを弾きまくるのを観るのは、ずいぶん久しぶりだ。彼のギターの音色は、まさにサイケデリックで、聴いていて陶然となってしまう。サウンドはかなりハードになっていたが、お馴染みの「鯨狩り」なども、そうした新しいアレンジで聴くと、なかなかに新鮮だ。
 そしてKOKIはドラムスだけでなく、コーラスでも大活躍。朴実の受け持っていたコーラス・パートを補おうという意志が伝わってくるだけでなく、すでに堂々とした声を出しており、実に頼もしい。ただそうなってみると、今度はベースのクマさんだけが、マイクなしでステージに立っているのは、どうしても浮いて見える。まずマイクを立てるだけでも立てておけば良いのに。
 二部構成の後半が始まる前にちょいと座席を移動。最近の朴保は、ほぼ必ずライヴの終盤で客を立たせるのだが、その雰囲気は苦手なのだ。で、予想通りそういう展開に。だがこの日は40〜50代のお客さんが嬉しそうに踊っている。そういう光景を見ていると、確かにこういうお客さんだったら、立ち上がるきっかけを作ってあげるのも良いかも知れない、と思い直す。
 でも一度立たせておいてからバラードをやり、そこからもう一度踊れる曲で立たせようとするのは、やはり強引ではないか? などとぶつぶつ言ってはいるものの「東京アリラン」が始まると、結局自分も我慢できなくなって踊ってしまった。強制しなくても踊りたい時は踊る。それで良いんじゃないかな?