バンコックの地下鉄建設

**バンコックの地下鉄など鉄道建設の話題です**


1.バンコックの地下鉄計画

_バンコックは、地下鉄を現在建設中です。
_バンコックに地下鉄が出来たら、とても便利になります。現在の道路交通は、高速道路が出来、以前のようなムチャクチャな状態はなくなりましたが、以前、私の聞いた最悪のケースは、東京発11時のJALに乗って、午後3時にバンコックに到着して、市内のホテル(距離で30km位:普通なら1時間でカルイ)へ車で行った所、ホテルに着いたのは夜の2時ごろだったそうです。

_雨期のバンコックの雨は、日本語でいうドシャブリの夕立で、朝は天気でも、午後に真っ黒な雲と共に降りだし、大雨になり、朝一斉にバンコックに入った車が、市内は排水ポンプが働くのですが、バンコックから出る所の道路の排水がつまって、車が帰れず、大渋滞になるそうです。

_こんなヒドイ体験はありませんが、大使館の近所のスクムヴィット通りのホテルに車で帰るとき、国賓の車が通れば、写真のように、警察官が交通規制をしますから、2時間位は、まわりの道路でウロウロして待つことがあります。
_こんな時に、地下鉄があればモノノ15分十分(!)帰れますから、とても便利になるのです。

_スクムヴィット通りでも、日曜の朝は、左の写真のようにスイスイ通れますが、週日のスクムヴィット通りは、終日(?)写真のように大混雑してます。

_以前は一週間に何回もの停電で、ホテルに常備のローソクがあり、 バンコックは、王様が「米と魚の豊富な自由な国」を建設するため定めた都ですから、運河が発達して地下水位が高く、そのため、停電でポンプの効かない地下鉄で、土左エ門が出るなんてですから、バンコックの都市鉄道は高架による鉄道計画が主でした。

_もちろん、今は王様の在位50年記念の素晴らしい装飾に、電飾が輝いており、自家用車の駐車場も、東京より便利に発展した現在のバンコックは、人口も人口密度も東京とケンカして負けない位の大都会ですから、地下鉄の一つや二つないのが不思議な位です。


2.バンコックの都市鉄道建設計画

_現在、バンコックで建設が進んでいる鉄道の計画は、
  1. タナヨン鉄道建設計画
  2. 地下鉄建設計画
  3. ホープウエル国鉄改良計画

3計画が進められています。

_これらの計画の一般的な特徴を、思いつくまま並べて見ますと、

  1. バンコック市内の重要な既設の道路・鉄道に建設する
  2. バンコック市外からのアクセスも将来考える
  3. BOT(建設、運営を会社が行い年季奉公が終わると公営に返す)方式、地下鉄は建設が公営、運営は民営。
  4. 3計画とも相互乗り入れしない
  5. バンスー地区に将来の交通拠点が出来る
  6. 王宮地区の大改良は難しい

_というようなことでしょうか。

_もちろん、高速道路との目立った連携はありませんし、3計画とも管轄の省庁は異なり、民間の資本が入って独自の計画を進めていますから、全体的・最終的にどう便利になるか、良く見えませんが、バンコック地区の交通委員会事務所に日本の技術者が派遣されていますから、便利な鉄道が実現するものと思います。

_それでは、これら3計画を簡単に紹介します。


3.タナヨン鉄道建設計画

(1) タナヨン計画の概要
_現在、建設が目立って進んでいるのは、タナヨン計画です。
_タナヨン計画は、バンコックの大富豪が経営する大手不動産会社の計画で、子会社であるBTSC社(Bangkok Transit System Corp.)がBOT方式で始めたもので、現在バンコックの大手の建設ゼネコンであるイタルタイ社が20%の資本参加をし、1992年から建設を進めている大計画です。

_事業主体は、バンコック都庁、管轄は内務省、総事業費360億バーツ(1800億円位)で、1998年に開業する計画で、開業日から30年間の運営権で、契約保証金1億5000万バーツ(開業日に返還する)等の条件です。

(2) 路線の概要
_路線の総延長は約23kmで、

  1. スクムヴィット線(ソイ77から北バスターミナル間)
  2. サトーン線(サトーン橋から国立競技場間)の2路線があります。

_また、最大旅客数278人の車両、3両または6両で構成する列車を、最小2分間隔で運転し、一時間あたり、片道50、000人の輸送を計画しています。長さ20m、幅3.2mの車両ですと、JRの車両に近い寸法ですから、1両当たり278人乗ると、日本人はダイエットして乗らないとメイワクになると思われます。
_軌間1、435mm、電圧750v、第3軌条方式、大体の構造は、日本の地下鉄各社の構造と基本的には大差ないものと思われます。信号方式等詳しいことは、会社に聞いて下さい。

(3) 建設の状況
_建造物の基本構造は、幅が8.5mの高架橋で、駅部は2層構造となり、階段で両側の歩道に降りる構造となっています。
_現在の建設は、パノン・ヨテイン通りから、パヤ・タイ、プロンテイット、スクムヴィット、ラーチャ・ダムリ、シーロム通りへと建設が進んでいます。
_しかし、交差点や駅部など工事の困難な個所が多く残っているため、1998年の営業開始には相当の工事促進が必要と思われます。


4.地下鉄建設計画

(1)地下鉄建設の概要
_首都圏高速鉄道公社の地下鉄計画は、一昨年、政府が全面地下鉄方式を決定し、建設が開始されました。それまでは、全長20kmの1期の計画のうち、南半分が地下鉄方式で、北半分が高架方式で計画でした。

_もともとこの計画は、バンコックランド社が免許を取得して、BOT方式で建設する計画でしたが、インフラの建設は、MRTA(Metroporitan Rapid Transit Authority:ペルーとは全く関係ありません)が建設し、運営は民間セクターが実施する計画で、日本の企業も参加を計画しています。

_管轄が首相府、事業主体は首都圏高速鉄道公社(MRTA)で、総延長は20km、1期が600億バーツ(3000億円位)で、他に車両、電気・信号設備が100億バーツ位かかります。
_日本政府も、この計画に海外経済協力基金(OECF)の資金で、協力を計画しています。現地の民間企業も入る大プロジェクトに、OECFの基金が入るのは、珍しいことです。

_昨年の11月19日、この計画は、タイ王国皇太子殿下の臨席を得て、タイ国鉄の中央駅の前で起工式が挙行され、日本からは太田大使が出席されました。

(2)路線の概要
_現在計画されている路線は、ホアランポン中央駅からバンスー駅までの、青線ですが、そのほか、青線の延長路線、オレンジ線紫線等の路線を計画しています。

_ホアランポンからバンスー間の駅は、18駅で、シーロム、ルンピニ、シリキット王妃国際会議センタースクムヴィットペッブリ、フアイ・クアン交差点、ラト・プラオ、チャトチャック等の付近に停車場が出来ます。
_1車両あたり最大225人乗車、6両編成の列車を2分間隔で運転して、一時間当たり、片道40、500人輸送する計画です。

(3)建設の現状
_まだ、起工式が始まった段階で、目立った建設工事は進んでいません。
_建設事務所には、日本から地下鉄の技術者が派遣されており、今後建設が進むものと思われます。


5.タイ国鉄改良計画

(1) ホープウエル計画の概要
_ホープウエル社は、香港の大富豪であるゴルドン・ウー氏の大財閥で、既に中国の高速鉄道、フィリッピンの電力開発等の大プロジェクトで成功を収め、バンコックではタイ国鉄路線の地上権を得て、高架鉄道の建設を計画しました。
_全路線は60kmで、計画では1995年までにヨマラからドン・ムアン間(18.8km)、1996年までにヨマラからホアマク間(18.5km)、を開業させる計画でしたが、現在まだそれほど建設が進んでいない様子で、開業していません。
_ただし、1998年6月のアジア大会までに間に合うように計画が進められるようで、現在ヨマラからドン・ムアン間の橋梁建設が進められるなど、契約の締結が進んでおり、建設が進捗している模様です。
_この計画は、管轄は運輸通信省で、事業主体はタイ国鉄、現在の総工費は800億バーツ(4000億円位)です。

(2) 路線の概要

_計画されている路線は、

  1. ランシットからポニミットまでの南北線
  2. ホアマクからタリンチャンまでの東西線

の2路線ですが、この区間を次の5ステージに分けて

  1. ステージ1:ヨマラからドンムアン間(18.8km)
  2. ステージ2:ヨマラからホアマク間(18.5km)
  3. ステージ3:ドンムアンからランシット間(7km)
  4. ステージ4:ホアランポンからウオンウイエンヤイ間(6.7km)
  5. ステージ5:トンブリからタリンチャン間(9.1km)

建設される予定です。

_ホアランポン駅からヨマラまでは、ホアランポン駅が頭端形停車場のために、列車本数が多く、将来はバンスー駅に近接して遠距離列車のターミナルが必然的に出来るものと思われます。
_現在の計画では、タイ国鉄と平行させて通勤用新線を建設する計画であり、この新線では、1両あたり最大333人の5ドア車両12両編成の列車を、最小2分間隔で運転して、1時間あたり片道120、000人の輸送を計画しています。

(3)建設の現状
_ホープウエル社については、新聞情報で色々と書かれており、一説では負債が90億ドルとも言われましたが、昨年アドトランツ社(英国)と車両の製作契約等、約13億ドルの契約を結び、工事を進めています。
_現在の工事は、ヨマラからドンムアン方面にかけて、橋脚の建設が進んでいますが、全体の進捗は10%とも20%とも言われています。


6.タイ国鉄の概要など

(1) タイ国鉄の概要

_タイの王様のラーマ5世が、鉄道建設を開始したのは、日本と同じころの1891年でした。

_ホアランポン駅の左の方を、奥の方に向かって行きますと、現在地下鉄とか、タイ国鉄のホープウエル計画で使用する車両が展示してありますが、さらに運河沿いに進むと、タイ国鉄の建物が並んでおり、その中に国鉄の本社があって、その正面に、威厳のあるラーマ5世の銅像が立っています。

_国鉄本社に通じる道路には、警備の遮断機があって、その前は鉄道警察隊の本部で、留置所があります。鉄道を無札で乗車すると、ここに留置されますから、ユメユメそうならないよう、注意が必要です。

_現在のタイ国鉄の営業路線長は、JRの1/6の約4000kmで、輸送人員の数は1/200ですが、日本の場合には一人当たりの平均乗車距離は17km程度ですが、タイ国鉄では170km程度で、長距離の旅行に利用されています。

_ですから、100km当たりの運賃は、日本では1500円以上ですが、タイ国鉄では22バーツ(約110円)で生活費と比較しても政策的に低くなっています。そのため、年間の収支は10%もの赤字のようです。

(2)バンコック中央駅(ホアランポン駅)紹介

_列車のサボや、時刻表、自動車のナンバープレートには、バンコックの正式名称である極端に長い名前(寿限無寿限無)の省略形であるクルンテープ:天使の都と書いてありますが、バンコックではホアランポン駅というようです。

_駅は、ヨーロッパスタイルの美しい駅で、強い陽光のもとなどでは、写真うつりの良い駅で、中は意外に涼しく、多くの旅行者が列車を待っています。

_しかし、タイ語の分からない日本人の人が、一人で旅行をするには、まだ十分親切な状況ではないと思われますが、バックパッカーの皆さんが趣味的に利用するのでしたら、十分その機能は発揮出来るものと、思われます。
_特に、夜行ハーチ・ヤイ行きなど、ヨーロッパやアメリカからの若い旅行者が必ずと言っていいほど乗っており、旅行の穴場を形成しているものと思われます。

_駅の左側には乗車券の売り場があり、並んで買っていますが、この窓口では恐らく英語も、日本語も必ずしも通じないと思われ、特にナニナニ線のナントカ駅と言って、正確に切符が買えたら大成功だと思われます。駅の右側の奥には、ブッキングのブースがありますから、こちらで前もってアワテズに買うのが良いと思われます。因みに、入り口は、英語で案内が書いてあります。

_駅にある発車時刻表の看板は、巨大なもので、遠視でも、近眼でも十分に見える物ですが、このような英・タイ併記の掲示でタイ文字の素養をつけて、判読不能な状態を、少なくとも、クルンテープと、チェンマイ、ハーチ・ヤイ、程度の文字を解消しておくことが望まれます。
_ほとんどの列車の車内は、2等車でも非常にきれいで心配ありませんが、必ずしもエアコンは入っておらず、特にハーチ・ヤイ行きの長距離列車の扇風機のみは、相当こたえますが、趣味でバックパッカーの経験をなさる金満家の皆さま方でしたら、特に心配ないと思います。


7.おわりに

_バンコックの鉄道計画の状況について、簡単に説明しました。
_この数年間のうちに、非常に交通事情が好転すると思います。
_タイの王様が、バンコックの交通を大変気に留めておられて、関係者に改善を指示されたのは一昨年でしたが、それ以来高速道路は、目立って改善されたと思います。
_現在の鉄道計画が進めば、バンコックは日本人にとって、非常に暮らしやすい都市になるものと思います。


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    アップデート:1997年1月2日
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